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「デタラメでもいいから話せ」Facebook 史上初の英語を話せない社員が辿り着いた英語学習法とマインドセットーー元 Facebook Japan 副代表 森岡康一氏【後編】

「デタラメでもいいから話せ」Facebook 史上初の英語を話せない社員が辿り着いた英語学習法とマインドセットーー元 Facebook Japan 副代表 森岡康一氏【後編】

インタビューの*前編では、Facebook Japan 副代表を経て、現在は KDDI のグループ会社である Supership株式会社 の代表取締役社長を務める森岡康一氏に、Facebook 時代のエピソードや、これまでの経験に基づくビジネス論を伺った。

匿名制 SNS 全盛の時代に、実名制である Facebook の日本における躍進を支えた森岡氏であったが、驚くべきことに「Facebook 入社時は全く英語が話せなかった」と言う。

インタビューの後編では、そんな英語難民であった森岡氏が英語をモノにした方法や、今だから笑える英語での失敗談など、濃い話を聞くことができた。

* Facebook の日本でのグロースハックを託された男のビジネス論ーー元 Facebook Japan 副代表 森岡康一氏【前編】

 

Facebook 史上初の英語の話せない社員だった

ー Facebook に入社された時は、英語を話せなかったとお聞きしたのですが。

全く喋れなかったです。本当に全く。高校は進学校でしたし一浪して大学にも入っているので、それなりに英語は勉強してきたんですよ。

それもあってか、ちょっと過信してましたね(笑)。できるだろうと。でも、もう無理でした(笑)。

 
ー それまで働かれていたインテリジェンスや Yahoo! JAPAN でも英語は使ってなかったのですか?

使ってなかったですね。なので本当に英語は分からなかった。

ブログにも書きましたが、Facebook 入社初日、シリコンバレーにある本社に、児玉(Facebook Japan 初代代表)に連れて行かれるんですね。彼はバイリンガルなんです。それで集合場所に着いたら、「なにか問題あればこれ使って電話して!じゃあねー!」とだけ言われて、携帯を渡されたんですね。

でもね、僕は児玉の電話番号教えてもらってないんですよ(笑)。だから、かけようにもかけれない。ただ携帯が手元にあるという状態(笑)。

すると周りの外国人の同僚に英語で話しかけられるんですけど、なんて言ってるか分かんないので、とりあえず「オー!イエス!イエス!」みたいな。とにかく「イエス」って言えばなんとかなるかなって(笑)。

それで一日の後半くらいから、なんか扱いが変だなとは思ってたんですけど、後から気づくと僕ずっとインターンシップのグループに入れられてて(笑)。それくらい英語ができなかったんです。

 
ー Facebook に誘われた時は、英語ができると思われてたんですか?

面接は通訳をつけてもらってたので日本語で大丈夫だったんです。

でも「英語は勉強してもらいますよ」とは言われてて、僕も「やります」って言ってたんですよ。だから「コイツならなんとかなるだろう」と思わせてしまったんじゃないですかね。

 
ー なるほど(笑)。
それで、英語習得までどれくらいの期間の猶予をもらえたんですか?

最初は半年ですね。
でもね、それも僕は何言ってるか分からないままに「イエス」って言ってるんですよ。

一緒にいた児玉いわく、「半年で英語マスターしないとだめだよ」って言われて、それに対して「イエス」って答えてたみたいで。そんなこと言ってたの俺?みたいな(笑)。そういう世界でした。

 
ー 当時の英語が分からなかったゆえの失敗談、今だから笑えるようなエピソードはありますか?

やっぱり「イエス」と「ノー」の間違いはありましたね。

"Would you mind if ~" って聞かれて、とにかく「イエス」みたいな(笑)。笑顔で「イエス」って(笑)。

※ "Would you mind if ~"「〜してもいいですか?」の、"mind"は「気にする」という意味のため、"Yes" だと「気にする→ダメ」、"No" だと「気にしない→ OK」のように逆の意味になる。

 
ー 意味が逆になるから、え?どっち?ってなっちゃいますよね(笑)。

そうなんです。それを笑顔で言うもんだから、相手からすると訳わかんないですよね(笑)。

あと、アメリカでバスに乗っている時にお年寄りの方がいたので、「座ってください」って言おうと思って、「シット(shit) プリーズ」って言い続けたんですよ。"down" もつけずに。

するとこっちは頑張って言い続けるんですけど、なんか周りがケラケラ笑ってるんですね。そのお年寄りはどうやら理解してくれたみたいで「ありがとう」って言ってくれたんですけど、なんで笑われてるのか分からなくて…。

で、今思えば「うんこしろ」って言ってたというね(笑)。ひたすら親切に「うんこ」って言い続ける日本人みたいな(笑)。そういう一生懸命喋ろうとしたゆえの失敗もありましたね。

 

まずは英語耳を作れ

ー 一般的に、英語習得には2000時間とか3000時間かかるって言われてるじゃないですか。半年でそれを達成するのはかなり厳しいと思うのですが、どのように英語学習されていたのでしょうか?

最初は、勉強の仕方も分からなくて。幸いにも家庭教師をつけてもらっていたので、週1回くらい来てもらってちょっと喋る、くらいで僕の英語学習は終わってたんですね。

でもはっきり言って、半年経っても上達しなかったんですよ。それから「これはやばいぞ」と思って真剣にやり始めるんですが、それまでは英語を分かった気になってただけで、ほとんど分かってなかったんです。

 
ー 英語学習法について書かれているご自身のブログの中で、「文法の勉強をやめて、まずは英語耳を作れ!」とあったのですが、なぜそう思われたのでしょう?

日本の学校では、"This is a pen" から学ぶじゃないですか。で、僕はそれを「ディス イズ ア ペン」って発音するんですけど、外国人はそうは発音しないんですよね。

すると「あれ?俺が今まで勉強してきた発音はほとんど違うぞ」とギャップに気付き始めて、これを解決しないと会話が成り立たないなと。メールはなんとなく読んだり書いたりできるんですけど、会話は無理だったので英語を聞ける耳を作ろうと思ったんです。

よく「聞けるけど話せない」って言う人いるじゃないですか。でもそれはありえないと思ってて、実際は聞けてないんだと思うんですよね。だって聞けてたら "Yes / No" だけでも答えられるじゃないですか。

 
ー 確かにそれはありますね。一部の単語だけ聞き取れてるって人も多いと思います。

聞けるようになるにはどうしたらいいのかと考えて、とにかく聞くことをやり始めたんですよ。そうすると、少しずつ聞き取れ始めるんですよね。「あれ?今 "would" って言ってた!」みたいな。それで少しずつ面白くなっていったんです。

色々と英語関連の文献とか調べてたら、やたら「英語耳を作れ」って書いてあるんですよね。それで何かの本で、「言葉は周波数」だっていうのを読んだんですよ。

日本語には日本語の周波数、英語には英語の周波数がある。英語の周波数の方が高くて、この周波数をちゃんと耳でキャッチできるようになれば、英語力は伸びると。そのためには耳を鍛える必要があったので、もう愚直にやりました。

 
ー その他にもリスニングが苦手な日本人って、単語の意味を知らない場合が多いと思います。

それはありますね。単語は絶対重要。

僕は同じ辞書をずっと繰り返し読んでました。するとだんだん汚くなってボロボロになってくるので、また同じ辞書の新しいものを買って、全部で3回書い直しましたよ。

でも、何回やっても覚えられない単語ってどうしてもあるんですよね(笑)。そういう単語は塗りつぶしたりとか、色々と工夫しながら覚えていました。

 
ー 仕事でお忙しい中、どのようにして勉強時間を作っていたんですか?

今思えば、最初はサボってましたね。でもそこから真剣に英語を勉強しようと思って、どうやって時間を確保しようかなと。

要はどれだけスキマ時間を作れるかという中で、食事中とか寝る前って絶対時間作れるじゃないですか。だからそこは「英語まみれにしよう」と決めたんです。他にもトイレの時間とか、とにかくスキマ時間は全部英語に充てることにしました。

あとはもう、決意の話なんでね。外国人と話すときは頑張って英語で話すようにしてましたし、日本人の友達と一緒にいて日本語を話していると、時間を奪われているような気すらしていた時期もありました。とにかくやらないとダメだ、クビになるって(笑)。

 
ー 英語学習を始めて半年経ってダメだなとなった後、改めて勉強し直してから英語ができるようになるまで、どれくらいの時間がかかったんですか?

そこから半年かかったので、やり始めてから1年くらい。でも今だって全く完璧ではないですよ。

言いたいことを上手く言えないこともありますけど、最低限のコミュニケーションが取れればビジネスできますし、1人で海外出張に行って帰ってくるくらいなら問題なくできます。

今考えると、日本語に比べて英語は簡単な言語だと思います。逆に日本語が読めて話せる外国人はすごいですよね。

「グロービッシュ」っていう基本の1500語を使って英語を話す方法があるんですけど、その基本単語を最低限抑えておくと、ほとんどのことは伝えることができるので、まずはそれをしっかりとマスターするのがいいと思います。

 

日本人じゃないと思えば怖くない

ー 英語に苦手意識を持つ日本人は多いと思うのですが、森岡さんはどのようなマインドセットで英語に取り組まれていたのでしょうか?

日本人って、ペラペラじゃないと恥ずかしいと思っちゃうじゃないですか。だから最初の一歩を踏み出すのが難しいんですけど、英語を聞けるようになってから気づいたことがあって、世界中の非ネイティブの人たちって、けっこうめちゃくちゃな英語を話してるんですよ。でもすごい喋るんですよね。

シリコンバレーなどに行くと本当に人種が多様で、そこではみんな下手な英語を頑張って駆使してるんですよ。だから聞き手側も下手な英語に慣れているし、臆さず喋る方がいいんですよね。

 
ー 森岡さんは声が大きいから有利ですよね(笑)。英語って声が小さいと伝わらない言語なんで。

日本人じゃないって思えばいいんですよ。すると突然、無敵感がでてきて喋れるようになるんです(笑)。

間違えても全然怖くない。だって他の国の人たちもめちゃくちゃなんだから。

 
ー 面白い発想ですね!でも納得感あります。
では最後に、英語が苦手な方や、英語学習に行詰まっている方に、一つアドバイスを送るとしたら?

う〜ん。
キャッチーなことが言いたい(笑)。

 

 

「デタラメでもいいから話せ」ですね。

言葉に出すのが大事だと思います。頭の中できれいな英語を話せても、言葉にすると全くできてないので。とにかく音を出せば話せるようになりましたね。

あとは本気かって話ですよ。英語学びたいとか、英会話スクールに通いたいって言うけど、本当に身につけたいと思ってる人がどれだけいるのか。

お金払って英会話スクールに通えば話せるようになる、という訳ではないので。本気で取り組んでみて欲しいと思います。

 
ー ありがとうございました。

 

おわりに

Facebook 史上初の英語が話せない社員として入社し、辛い経験や悔しい思いを乗り越えて辿り着いた英語学習法、そして英語を話す上でのマインドセット。

「日本人じゃないと思えば話せる」というアドバイスは、まさに目からウロコでした。

より具体的な英語学習法を知りたいという方は、こちらのブログで複数の記事に渡って紹介されていますので、ぜひ参考にしてみてください。

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