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【これぞプロ】翻訳不可能?なダジャレ英語の美しすぎる訳し方

【これぞプロ】翻訳不可能?なダジャレ英語の美しすぎる訳し方

皆さん、こんにちは。いきなりですが、問題です。

Q. “Did you hear about the guy whose whole left side was cut off? He’s all right now.”

これを日本語に訳せますか?

A.「左半身を切り取られた男のことを知ってますか。今ではもう大丈夫です。」

これでは何のことかわかりませんよね。これは "right" の「右」と「大丈夫」の意味を掛けたダジャレだからです。

このように、ダジャレを翻訳することは本質的には不可能です。けれど世の中には、かなりアクロバティックかつ強引な方法で、何とかダジャレ翻訳をしている例もあります。

今回はそうした強引すぎる、それでいて見事なダジャレ翻訳をご紹介していきます。

 bear(熊)と bear(我慢する)

ある映画でクマの絵が描かれたお菓子のパッケージに「unBEARably GOOD !!」という文句がありました。

これは "bear"「熊」と「我慢する」の意味があることをかけたダジャレです。直訳すれば「我慢できないほど美味しい!」ですが、それではダジャレにならないので翻訳者はこう訳しました。

〈日本語訳〉
美味しくてクマっちゃう!

「我慢する」という意味にこだわらない柔軟さが生んだ、アッパレな名訳です。

 miners(炭坑労働者)と minors(未成年)

あるSFコメディ映画の会話のシーンです。鉱山惑星に住む小さいエイリアンを見て以下のやり取りをします。

〈英文〉
A : Could they be the miners ?

B : Sure, they're like three years old.
A : Miners, not minors.

これを直訳すると以下のようになります。

〈直訳〉
A :「採掘してるのか?」
B :「そうだな、三歳くらいかな」
A :「未成年じゃなくて採掘だよ」

意味不明ですね。これは "miners"(炭坑労働者)と "minors(未成年)" を掛けたダジャレだからです。これを翻訳者は次のように訳しました。

〈日本語訳〉
A :「採掘してるのか?」
B :「どうかな、退屈してるようには見えないけど」
A :「タイクツじゃなくサイクツだ」

もはや "minors" の要素は完全無視です。しかしこの訳のおかげで、B のおとぼけぶりをきちんと表現していますね。

 two thirty(2:30)と tooth hurt(歯痛)

〈英文〉
A : What time do you go to the dentist?

B : I don’t know.
A : Two thirty.

〈直訳〉
A :「歯医者に行く時間は?」
B :「さあ」
A :「2:30」

これも直訳すると意味がわかりませんね。これは  "two thirty(2:30)" に "tooth hurt(歯痛)" の意味を込めているからです。

〈日本語訳〉
A :「歯医者に行く時間は?」
B :「さあ」
A :「6:48(ムシバ)」

翻訳者はこの「2:30」を「6:48(ムシバ)」に変えることで苦難を乗り切りました。流石です。

 issue(報酬)と ahachoo(くしゃみ音)

〈英文〉
A : The thing to do is as follows. First, issue a reward.

B : You sneezed?

〈直訳〉
A :「あなたがやることは以下の通りです。最初に報酬を出します」
B :「今くしゃみしました?」

これは "issue"(報酬)という単語が "ahachoo"(くしゃみ音)と似ているというダジャレなのです。そこで翻訳者は以下のような翻訳をしています。

〈日本語訳〉
A :「あなたがやることは以下の通りです。まず薄謝をしておきます」
B :「今くしゃみしました?」

報酬を薄謝と言い換えることで日本語の「ハクション」に近い音を表現しています。見事としか言いようがありません。

 Full Moon(満月)と Fool Moon(バカな月)

ある童話で太陽と月が登場し、太陽が月に対し

〈英文〉
“You are a Full Moon.”(君は満月だな)

と言うと月が怒りだすシーンがあります。これは月が “You are a fool Moon.”(君はバカな月だ)と聞き間違えたからです。

翻訳者はこれを、

〈日本語訳〉
「されば かの月か」「去れ バカの月か」

と訳したそうです。上手いですね。

名作文学のダジャレに挑む翻訳者たち

名作文学のダジャレに挑む

世界的名作「不思議の国のアリス」には様々な翻訳バージョンが存在します。そのため作中のダジャレも、翻訳者によって様々なバージョンがあります。ここで、翻訳者たちの努力と閃きを見てみましょう。

「ニセ海ガメ」と「グリフォン」が、アリスに海の中の学校について説明するシーンです。彼らの説明によると、海の学校の授業時間は、1日目は10時間、2日目は9時間、3日目は8時間というように、どんどん減っていくというのです。

アリスが「なんておかしなの!」とあきれると、グリフォンはこう答えます。

〈英文〉
"That’s the reason they’re called lessons," the Gryphon remarked: "because they lessen from day to day."

「授業」の"lesson"と、「減る」の"lessen"をかけたダジャレです。このダジャレ、翻訳者たちはどう訳したのでしょうか?

  •  「一日一日少なくなっていくからね、だから“少”学校と言うんだよ」グリフォンが説明しました。(田中俊夫訳/岩波少年文庫)
  •  「それがおさらいといわれる理由さ」とグリフォンが口をはさみました。「一日ごとにさらわれてへってくのさ(生野幸吉訳)
  •  「だからこそ時限というんだろ」グリフォンがいいました。「毎日、時間が減ずるから時減というわけだ。(柳瀬尚紀訳/集英社)
  •  「ちっともへんじゃないよ。毎日、勉強に時間を喰えば、だんだんにへるの、あたり前だろ」(石川澄子訳/東京図書)
  •  「だから時間割りなのさ。毎日少しずつ割り引かれていくからな」グリフォンが、言葉をはさみます。(立原えりか訳/小学館)
  •  「だから学校というんだよ。一日一日と、スクナクナル、つづめてスクール、すなわち学校さ(中山知子訳/岩崎書店・フォア文庫)
  •  「一日一日と軽くなっていくから、“軽古”っていうんだよ。(原昌訳/国土社)
  •  「そりゃお勉強だもの、少しずつおまけしますってわけさ」とグリフォンの説明だ。(矢川澄子訳/新潮社)

どうでしょう?翻訳者によってまったく違ったダジャレになっていますね。皆さんがもし翻訳者だったらどんな訳を作りますか?

 ダジャレ英語、翻訳してみました

ここまで様々なダジャレ翻訳の例を見てきましたが、どうにも筆者自身も挑戦してみたくなりました。

iKnow!BLOG の過去記事「英語でだってダジャレを言ってみたい!英語のダジャレまとめ」から引用した英語ダジャレの翻訳をしてみましょう!

〈英文〉
“Two ladies were discussing the planetarium show they had just seen. One said the show was fantastic. The other agreed but added ‘Most of it was over my head’.”

〈日本語訳〉
「二人の女性がさっき見たプラネタリウムについて話していた。一人は素晴らしかったと言い、もう片方も同意したが『ほとんどが頭の上(理解できない)のことだった』と付け加えた。」

プラネタリウムは頭上で上映されることと “over one’s head”(理解できない)をかけたものです。

これはダジャレ要素を活かして『ほとんど上の空だった』と訳してはどうでしょうか・・・?

えっ、悪くないですか?ありがとうございます。

〈英文〉 
“What is the seasoning that you catch?”
“Ketchup”

〈日本語訳〉
「あなたが捕まえる調味料はなあに?」
「ケチャップ」

“catch up” (~に追いつく) “ketchup” をかけています。これは難問です。

いっそ質問から変えてしまいましょう。

〈筆者訳〉
「あなたが納得できる調味料はなあに?」

「ソース」

ソース、そうす、そうっす・・・。はい、次です。

〈英文〉
“What ant is the largest?”
“Giant!”

〈日本語訳〉
「どんなアリが一番大きい?」
「ジャイアント!」

"Ant"(アリ) "Giant"(巨大な)をかけたダジャレです。これもちょっと難しいので、まるごと変えてみました。

〈筆者訳〉
「世界で一番大きい虫は?」

「宇虫!」

これは宇宙と虫(ちゅう)をかけたものでして・・・

はい、ダジャレを翻訳するのが非常に難しいことがわかっていただけたと思います。ダジャレを見事に訳す翻訳者さんたちのセンスと努力に脱帽です。

 おわりに

おわりに

ダジャレの翻訳という、一見不可能なことを可能にする翻訳者たちの荒業をご覧いただきました。

ダジャレに限らず言葉遊びというものは、得てして翻訳が難しいものでプロも頭を抱えているのですが、そこにはまた新たな「創造」が生まれているのです。

これから映画字幕や翻訳書でダジャレが載っている際には、是非とも原文をチェックしてみることをお勧めします。そこにはきっと、新しい英語の面白みがあるはずですよ。