K. Inoue
(更新)
英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。
そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?
中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。
それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「進行形の使い方」についてご説明します。
これまでの連載を通じて、動詞の「現在形」、「過去形」、そして「未来表現」と、大きく3つの時制についてご紹介してきました。
今回はこれらの時制に関係する内容として「進行形」というものをご紹介します。
「進行形」を学ぶことでさらに時制の表現幅を広げ、ますますリアリティのある英語力を磨いていただければ嬉しいです。
「進行形」は基本的には「~している(ところ)」という意味を表し、「その時間の中で行われている具体的な動作」をリアルなイメージとして伝えるための表現方法です。
たとえば、
といった具合です。いずれも具体的でリアルな動作(動き)がイメージできますね。
「~している真っ最中」と考えるとよりそのイメージがつかみやすいかもしれません。この「真っ最中である」という事実が、日常の習慣としての繰り返しの行為を表す現在形との決定的な違いでもあります。
まずはそうした具体的動作のイメージを持つのが進行形だと覚えておいてください。
なお、上記の3つの例では表現する動作を行っている時間が異なっていますね。それぞれを「現在進行形」、「過去進行形」、「未来進行形」と区別します。
「進行形」は<be動詞+動詞のing形>という形で作ります。
be動詞については過去の記事ですでに解説しましたが、動詞のing形については馴染みがないかもしれません。
動詞のing形とは、簡単に言えば動詞にingをつけたものです。
ただし、どんな動詞も全て単にingをくっつければいいというわけではなく、以下のようにある一定の作り方に従ってing形をつくることになるため注意が必要です。
なかなか複雑に感じてしまうかもしれませんが、これらを全てルールとして暗記しようなどと思う必要はありません。多くの英語使用者たちは、私も含めて上記①~⑤にいちいち照らし合わせて考えたりしていません。
これまでの英語経験の中で自然に身に付け、今では理屈抜きにほとんど感覚的に使いこなすことができるようになっています。そういう人が圧倒的多数だと思います。
ですから、これから何度もing形は登場しますので、たくさん触れ合っていくうちに自然と覚えていくことができると思って、あまり心配なさらないでください。
話を戻して、be動詞に上記のような動詞のing形を組み合わせることで進行形は出来上がります。
「現在進行形」、「過去進行形」、「未来進行形」の形をそれぞれが表す時間帯のイメージ図とともにまとめると次のようになります。
冒頭の3つの例文をそれぞれ進行形で表すと次のようになります。
be動詞の形が主語と表現したい時間帯に応じてかわっていることがわかりますね。
なお、進行形の文章では、“now”「今」、“at that/this time”「その/この時間」、“then”「そのとき」、“when~”「~したとき」のように、いつのことかを明確にする言葉や表現が使われることも多くあります。
ところで、進行形は基本的には「~している」という日本語訳になりますが、同じ「~している」でも意味が異なる場合があるので注意が必要です。
たとえば「私はもう食べていますので、お昼ごはんはいりません」という日本語における「食べている」は、「食べ終わった」という意味ですね。
「明日には現地に到着していると思います」の「到着している」は「到着が完了している」という意味ですね。
このように日本語の「~している」には「終了」や「完了」の意味合いもあり、「実際に行為を行っている最中」を表す進行形の意味とは異なる場合があります。
「葉っぱが落ちている」という日本語も、今現在葉っぱがひらひらと舞い落ちている最中なのか、それともすでに地面に落ちてしまった後なのか、この一言だけでは分かりません。余談ながら、地域によっては両者を区別する言い方を持っている方言もあります。
つまり同じ「~している」であったとしても、安易に進行形を使えばいいと考えるのではなく、状況や文脈に応じて進行形を使うべきかどうかを適切に判断しなければならないということです。
日本語に縛られ過ぎないように注意してくださいね。「終了」や「完了」を表す方法についてはいずれご説明いたします。
「~していない」を表す否定文は、be動詞の後ろに “not” を入れて作ります。
「~していますか」や「何を/いつ/どこで~していますか」などと尋ねる場合には、これまでに学習したbe動詞の疑問文や疑問詞を用いた疑問文の作り方にならいます。
※1…日常会話で定番の挨拶フレーズです。
→“(I’m doing) good/OK.”などと答えます。
「~している最中」という具体的でリアルな動作感が進行形の特徴ですが、それとは少しだけ違った意味やニュアンスで使われることもありますので、いくつかご紹介しておきます。
この「読んでいる」は発言しているその瞬間にまさにその本を読んでいる状況にあるというわけでは必ずしもありません。
「ここのところ毎晩本を読んでいるんだけどね」と昼間に発言してもおかしくないように、ここ数日や数週間程度といった一定の範囲の習慣的行為として語られています。
未来表現に関する記事でも少し触れていますが、現在進行形は未来を表すこともできます。
これはイメージとしては、「叔父さんを訪ねる」という今週末の動作に向けてすでに準備が進んでいるとか、気持ちがもうワクワクし始めているとか、「訪ねる」という行為に向けた物理的行動や心理的意識が今すでに動いている、という感じです。
あるいは次のようにも考えられます。
たとえば “He is playing soccer.”「彼はサッカーをしているところです」と現在進行形で発言した場合、「サッカーという行為は、現在行われている」ことであると認識されるのと同時に、「サッカーが終わるまでは続けられる」ことも想定されます。
現在進行形というのは、その発言があった瞬間に動作が終わりを迎えるものではありません。
「~している最中である」ということは、「途中」ということでもあり、その意味で現在進行形は、未来に片足を入れているようなものなのです。そうした解釈も、現在進行形が未来を表すことに繋がっているのかもしれません。
現在進行形は「途中」の意味でもあると述べました。
その解釈から、このように「~しようとしている・~しつつある」という具合に、結末へと向かう変化の過程を表す場合もあります。
“always”「いつも」のような高頻度を表す言葉と共に、「いつも~してばかりいる」といった繰り返しを表すこともあります。
話者の感情が入り、ネガティブな内容で使われることが多くあります。
動詞のing形を使うことで進行形にするとは言いましたが、進行形として使うことができない動詞もあるので注意が必要です。
進行形にならない動詞には次のようなものがあります。
これらはまとめて「状態動詞」と呼ばれ、状態動詞は進行形には基本的にはできません。
進行形は「~している最中である」ということは、その「始まり」から「途中」を迎えているということでもあり、さらに言えば「やがて終わりを迎える」行為であるということでもあります。
つまり、「始まりと終わり」を意識することができる動作こそが進行形になるのであり、逆にこれが意識できない動作は進行形にはできない、ということになるわけです。
この “walk” であれば「歩き始めと歩き終わり」を明確に意識できますね。別の言い方をすれば、「歩く」という動作を始めることと終えることはコントロールすることができます。
ちなみにこのような動詞は「動作動詞」と呼ばれ、進行形にすることができるのもこの動作動詞が基本です。
ところが、
この “know” の「始まりと終わり」は意識できるでしょうか?「知り始めと知り終わり(?)」をコントロールできるでしょうか?
知っているものは知っているのであり、その状態はいつまでも続きます。つまり動作の始まりと終わりに明確な線引きができません。明確な線引きができないということは、始まりから終わりまでを意識させる進行形にできないということです。
ただし状態動詞であっても、意図的に進行形にすることで「一時的に~している」のニュアンスで表現できる場合があります。
仕事の都合などで「一時的に」暮らしている様子が伝わってきます。
「一時的に」であれば「始まりと終わり」が意識できるため、その意味での進行形として使用されるのです。
いかがだったでしょうか。
「~している」が基本となる進行形ですが、こうしてみると実に幅広く表現が広がっている様子が分かります。
こうした意味や使い方の幅広さに「大変だ・難しい」と思うのではなく、基本的な意味からイメージしながら、何度も音読を繰り返し、一つ一つしっかりと身に付けるように取り組まれてください。