新井 リオ
(更新)
Q&ABCは、『英語日記BOY』著者の新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます。)
第22回のテーマは「コロナ禍で海外に行けない今、日本でできること」についてです。
行く前の過ごし方が肝心と頭では分かっていますが…納得のいく頑張りができていません。
私が甘いのでしょうか…。
コロナ禍でのモチベーション維持は大変ですよね。
例えばお金がない、日常が忙しい、とかは自分自身の問題だったりもするので、これらの要因によって何かができないときは、割と納得してしまう感じがあります。
僕も、「甘いなあ」と自分で思うことは日常のなかでけっこうあります。
一方で、新型コロナウイルスの蔓延による渡航制限、国によるルールの厳格化などは、もう自分じゃどうにもできないことじゃないですか。
なので、せっかく嬉々として計画したカナダへの渡航計画が、コロナで延期になりモチベーションが下がってきてしまったことについては、ののさんのせいではないと思います。
期待しているときほど、裏切られたときは活力を失いますよね。
今落ち込んでしまっているのは、ののさん自身が、それほど力を込めて準備をしてきた真面目さの現れなんじゃないでしょうか。そもそも海外へ行くことに強い思い入れがなければ、「まあいいか」とすんなり受け入れられていたかもしれませんし。
コロナ禍でのモチベーション低下は社会問題でもありますが、海外渡航を目指していた人たちは特に、直接的にダメージを受けてしまった部類に属されると思います。(飲食店経営の方に並ぶくらい)
なので、これが自分の甘さだけに由来するものとは思わず、「ある程度は仕方のないものなんだ」、「海外を目指していたみんなが今はそうなんだ」、くらいに割り切って、あまりご自身を責めないでほしいなと思います。
「自分を責めないマインド」に変えていくのってすごく大事です。
落ち込んでいる状態で義務的にやる勉強って、本当に頭に入ってこないんです。
今は、最低限のオンラインレッスンは続けつつも、あえて勉強勉強とならず、こんな状況においても自分の気分を上げてくれるものや考え方に集中しても良いのかもしれませんね。
勉強って、机に向かっている時間のことだけを指しているわけじゃないですからね。もっと大きく、「人生の中の一行為」と捉えると、最高の気分を保ち続ける努力も、勉強に真剣に向き合う人間が行うべき大切な時間なのかもしれません。
気分が上がれば、「むしろ勉強したい」!と思える瞬間がきっと来ます。
すごく褒められた直後とかって、嬉しくなって、自尊心も上がって、「なんでも頑張れちゃうな〜」みたいな感覚になったりしませんか?
村上春樹「風の歌を聴け」に、デレク・ハートフィールドという架空の作家が出てくるのですが、彼の作品に、
「気分が良くて何が悪い?」
"What is so bad about feeling good?"
というものが出てきます。
あくまで小説の中の架空の作品なんですけど、僕はこのタイトルがすごく好きなんです。
気分が良いって強いなぁと思います。
僕自身、コロナ直前にヨーロッパ移住を計画していたのですが、日本の家を解約し、家具を売り始めた段階でコロナが来てしまいました。
当初は少し落ち込みましたが、気を取り直して前を向くことができた対処法のようなものがあるので、今から紹介します。
すべて、「僕たちにはまだ日本でできることがたくさんある」という考えに基づくアイデアです。
以前カナダに住んだとき、「海外現地でやろうと思っていたことって、想像以上に、日本でもできたのかもしれない」と思ったことがあります。
例えば、英語力の向上。
海外に住んだらみるみる英語が上手くなるイメージを持ってしまいがちですが、日本でもたまに「今日はだれとも話してないなあ」という日があるように、海外で「自分1人だけ」の環境を作るのってすごく簡単なんです。
というか、まだ友人もいない地へ1人で行くのですから、最初の方は特に、世界が自分だけになってしまったのではないかと思うほど「1人であれこれやる時間」が生まれます。
そうなると英語を口から出している時間も少なくなり、「あれ、カナダに来たのに全然英語話してない」ということになりかねません。
「結局、頑張るのは自分なんだな」、「カナダに来たという事実は、自分を頑張りやすくしてくれる補助的な意味合いでしかないんだな」、と痛感したことを覚えています。
もうちょっと、カナダが僕を(なかば自動的に)底上げしてくれると思ってたんですけどね。
それ以来、基本的には「自分はどんな環境でも努力ができる人間になりたい」と思うようになりました。
まあ、思ったらすぐに実行できるようなことでもないんですけど、少なくとも、ヨーロッパ行きがコロナで断念したときも、「ま、頑張る舞台が再び日本になったんだな」くらいの楽観的なイメージを持つことができたと思います。やることはあまり変わらないので。
とにかく、日本でもできることはまだたくさんあって、これは僕たちの希望なんですね。
まず、ノートを用意してください。見開き2ページを丸々使います。
左ページに、「海外に行ってやりたいこと(やろうと思っていたこと)」を箇条書きで書き出してみてください。
行きたい国や街が決まっている人は、具体的に書いた方が現実味は増します。僕の場合、来年からロンドンの大学院に通いたいと思っているので、以下のようになりました。
次に、「日本で代わりにこれができるな」と思える代替案のようなものを、右ページに書いてみてください。
僕の場合こうなりました。
もちろん、ロンドンでやろうとしていることと完全に一致する行動はできませんが、かなり近しい行動は取ることができることに気付きます。
次に、みなさんが右ページに書いた項目たちに、これから全力で取り組む日々を妄想してみてください。
もしこれをまっとうできたら、今、日本でなんとなく生きてしまっている毎日とは明らかに異なる収穫が得られる気がしてきませんか?
住んでいるのは日本なのに、自分だけ、毎日の行動が完全に海外を向いていて…不思議な気持ちになってきませんか?
なんだか日本―海外の絶妙な合間を生きているような。
まさに僕たちは今、この絶妙な合間にいるんです。
そしてこの合間の中で留学するイメージを持つんです。
僕の部屋は今、ほぼロンドンと東京の合間ですね。
ずっとBBCラジオが流れているし、DMM英会話レッスンはほぼすべてイギリス人の講師を選ぶようにして、毎日イギリス英語で会話しています。
パソコンとスマホの言語設定もすべてイギリス英語で、SNSも居住地をイギリスに設定したのでイギリスのニュースが入ってきます。部屋はビートルズのアイテムだらけですし、キッチンにはロンドンの大きな地図のポスターを貼っています。
もっと言うと、より雰囲気を出すために去年、赤レンガのアパートに引っ越したんです。家に帰ってきたとき、ここがイギリスだって本気で思い込みたいんです。
もう、ハリーポッターの9と3/4番線みたいに、リビングの壁を勢いよく突き抜けたらビッグベンが見えてきそうです。
こんなにも大好きなイギリス行きが、コロナで2年も延期になっていますが、今は今でけっこう楽しいんです。
むしろ、当時の実力でとりあえず現地に着いてしまったときのことを想像すると「ゾッとする」といいますか。
もっと最高な、仕上がった自分で、憧れの地に行きたいので、ちょうど良い猶予を与えてもらったんだと思うようにしています。あと1年間、自分を磨いてから行くロンドンが、本当に、涙が出てきそうになるくらい楽しみなんです。
質問してくださったののさんのように、毎日レッスンを受けたり、最善を尽くしているけど、自分ではコントロールできない要因によって海外行きが叶わず、落ち込んでしまっている方はたくさんいると思います。
こんなときに必要なのは、さらに追い込んだ勉強ではなく、「気分の良さ」かもしれないと思って、今回の記事を書きました。
理論で詰めた勉強継続法をいくら並べても、気分が乗らなければできないんですよね。
ほんと、今は気分が落ち込みやすい社会だと思います。
でも、誰でも平等に使えるツールがこんなにもあって、海外との距離がここまで近くなった社会はこれまでになかったとも思います。
スマホもネットも、そもそもは誰かが世界をもっと楽しいものにしたいと思って発展した文化だと思うので、僕たちの意識で気分よく使っていけたら素敵ですよね。
質問も引き続きお待ちしています!
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