K. Inoue
(更新)
自分の英語力の確認のため、また入学試験や留学、就職採用試験等で必要なため、英語力を測り証明することのできる試験を受けることは今では当たり前になりました。
代表的な試験に以下のようなものがあります。
・実用英語技能検定(英検)
・Test of English for International Communication(TOEIC)
・Test Of English as a Foreign Language(TOEFL)
・International English Language Testing System(IELTS)
これら以外にも、GTEC、日商ビジネス英語検定、ケンブリッジ英語検定、観光英語検定、工業英語能力検定、保育英語検定、英単語検定、EPT・英語発音テストなどなど、有名なものから「え、そんな試験もあるの?」と思うようなものまで、様々な英語系試験が存在します。
それらは主催団体はもちろん、試験内容、レベル、受験する目的、料金も様々です。
さて、数ある英語系試験の中から、今回は外務省後援 国際連合公用語英語検定試験、略して「国連英検」についてご紹介します。
※当記事の国連英検に関する情報は国連英検HPに基づき、一部抜粋しています。
「国連英検(正式名称:外務省後援 国際連合公用語英語検定試験)」は、公益財団法人日本国際連合協会という外務省の外郭団体が主催する英語試験で、40年近い歴史がある伝統的な試験です。
「英検」の名がついてはいますが、お馴染みの「実用英語技能検定」とは全くの別物です。
国連の普及活動の一環として、国際協力と理解、国際的コミュニケーション能力の育成などを目的に実施されています。
国連と聞くとなんだか堅そうな響きがあるかもしれませんが、試験自体は6つのレベルに分かれていて、中学生から社会人、シニアまで幅広く受験することができます(詳しくは後述します)。
確かに国連をはじめとする国際機関で働きたい人や、国際公務員を目指す人が受験したりもしますが、実際には小学生の受験者もいますので、あまりにも難しくて手が出せないようなものではないと思っていただいて大丈夫です。
ご自身の英語力をアップしたい、英語学習のモチベーションを維持したい、いろいろな英語系資格を受けてみたい、などの理由で受けても全く問題ありません。
国連英検にはE級、D級、C級、B級、A級、特A級の6つのレベルがあります。
E~B級が「スキルアップレベル」、「A級と特A級がプロフェッショナルレベル」とされています。
各級の大まかな内容と出題形式は以下(HPより抜粋)の通りです。
E級
中学修了程度の文法・文型に基づく英語の理解力が要求されます。簡単な趣味や自己紹介が出来るコミュニケーションレベルです。
【出題形式】
試験時間: 80分/満点: 80点
リスニング: 30問/リーディング: 50問D級
高校1、2年程度の文法・文型に基づく英語の理解力が要求されます。買い物の簡単なリクエストができたり、外国人に道を聞かれて案内が出来るコミュニケーションレベルです。
【出題形式】
試験時間: 100分/満点: 100点
リスニング: 40問/リーディング: 60問C級
高校修了程度の文法・文型に基づく英語の理解力が要求されます。高校卒業程度認定試験(旧大検)において、文部科学省はC級以上を英語資格として認定しています。旅先やフランクな食事の場で会話を楽しんだり、簡単な電話の取り次ぎの出来るコミュニケーションレベルです。
【出題形式】
試験時間: 100分/満点: 100点
リスニング: 40問/リーディング: 60問B級
英字新聞や雑誌の比較的やさしい記事、日常生活で遭遇する場面を扱った会話文、読みやすい随筆や短編小説などが理解できる読解力が要求されます。インターネットや雑誌の情報を活用できたり、電話の応対が大きな支障なくでき、日常生活で自由に意志を伝えられるコミュニケーションレベルです。
【出題形式】
試験時間: 120分/満点: 100点
リスニング: 40問/リーディング: 40問
作文: 配点20点A級
英字新聞等の記事、小説や劇の一場面などを短時間に理解する、あるテーマについて論理的にまとまった内容を英文で表現する、外国人と日常の身近な出来事、時事問題などに関して討論する能力が求められます。
【出題形式】
試験時間: 120分/満点: 100点
リスニング: 無/リーディング: 80問
作文: 配点20点/面接: 10分間
※ 面接は1次試験合格後の2次試験特A級
英語力はもちろんですが国際的に通用する知識・情報なども要求される点に特徴があります。文化、経済等、多くの分野の問題を自由に討論する能力が要求されます。
【出題形式】
試験時間: 120分/満点: 100点
リスニング: 無/リーディング: 80問
作文: 配点20点/面接: 15分間
※ 面接は1次試験合格後の2次試験A級以上では、国際会議等で意思を自由に伝えることができる、グローバルな話題に対応でき、通訳なしで英語の契約交渉ができるコミュニケーションレベルを目標としています。
※出題形式をもう少し詳しく補足しておくと、短文の四択空所補充問題、短文中の正誤問題(文法的な誤りを見つける問題)、長文中の語法や並べ替え、空所補充、語彙問題など、多岐にわたり、どちらかと言えば大学入試に近い問題が出題されます。
基本的には上記のような内容の出題となりますが、国連英検最大の特徴は、『わかりやすい国連の活動と世界』という指定のテキストがあり、B級以上ではこれに基づく内容の出題がされることです。
たとえば、「ある国連関連機関の役割は何か」とか、「国連関係のあるイベントがいつどこで開催されたか」、「国連憲章の何条にどのようなことが書かれてあるか」など、国連に関する様々な知識が問われることになります。
そのため、単に英語力さえあれば解ける、というようにはなっておらず、事前に上記テキストを使って勉強し、国連知識を蓄えておく必要があります。なお、テキストは英語と日本語の両方で書かれています。
読解内容も世界の環境、政治、経済、平和、人権、医療、世界情勢、国際時事問題など広範囲に及びます。
さらにB級では作文、A級以上では作文と面接があり、世界が抱える様々な問題や課題について自分の意見や解決策をまとめ表現する力が求められます。
単に語学力だけを鍛えるのではなく、日ごろから世界に関心を持ち、テキスト、新聞、ニュースなどからいろいろな情報を得、自分の考えを持つよう心掛けておくことが大切です。
ちなみに、E~B級で出題されるリスニングはかなり配分が大きく、そのことからも、総合的な国際コミュニケーション能力が求められていることが分かります。
これまでのテキスト『わかりやすい国連の活動と世界』がこの度刷新され、2020年度の実施より『新わかりやすい国連の活動と世界』という新しいテキストに移行することが先般発表されました。
今後の受験を考えておられる方は『新わかりやすい国連の活動と世界』が必要ですので、間違えないように注意してください。
また、2020年度以降の試験の級ごとのテキスト出題範囲は、2020年2月下旬頃にHPで発表されるとのことですので、忘れずにご確認ください。
国連英検には「国連英検ジュニアテスト」と呼ばれる幼児~小学生を対象にした入門レベルのテストもあります。当記事ではその内容は割愛しますが、ご興味がある方はHPをご確認ください。
国連英検を受験する際にどの級を受ければいいのか迷ってしまうと思います。
まずは、先に示した級別のおおまかな内容や形式を参考にしてください。また、書店やネットで過去問題集を手に入れることもできますから、これを参考に決めても構いません。
少し古い情報ですが、国連英検HPによると2008年~2010年第1回試験までの統計では、C級以上の合格者のTOEIC平均スコアと英検保有率は以下のようになっています。
(国連英検HPより抜粋)
ただし、国連英検はTOEICや英検とは内容が異なるため、これをお読みの方が必ずしも上記に当てはまるとは限りません。
特にB級以上では、上述のように国連の知識問題や作文が出題されたり、A級以上では面接もありますから、そのあたりの知識と技能力をしっかり身に付けておかなければ、いくらTOEICのスコアが高くても合格は難しくなります。
あくまで参考とする程度に留めておいてください。
国連英検は毎年5月と10月の年2回実施されています。
各回の約3カ月前から申し込みが始まりますので、その時期にHPで確認してみてください。
なお、A、C、E級が午前、特A、B、D級が午後の実施なので同日中のダブル受験も可能です。
※ダブル受験の場合は合計金額から1,000~2,000の割引があります。
HPから申し込みができる他、コンビニ(セブンイレブン・ローソン)の設置端末からも申し込みができます。
※具体的な日程や料金、申し込み方法等は、くれぐれもHPを確認し、間違いのないようにしてください。
文部科学省はC級以上を英語資格として認定していますが、これは高校卒業程度の認定であることを意味し、レベルとしては英語の基礎を身に付けた段階だと言えるでしょう。
より実践的な力としての英語力という意味では、難易度も上がり、かつ作文が課されるB級以上を目指されるとよいです。
大学によってはB級以上を単位認定しているところもあり、国際事情に関する教養が必要という点でも、社会で通用するレベルのスタートはやはりB級以上と言えます。
特A級の成績優秀者には外務大臣賞が、A級の成績優秀者には日本国際連合協会会長賞が授与されることになっていて、表彰式が大々的に行われます。
A級以上では外務省ロスター登録制度(国際機関への採用を希望する人の経歴を国際人事センターにあらかじめ登録しておき、国際機関の空席ポストに適切な人材を選出する制度)における語学のレベル認定をされます。
特A級は、海外派遣候補者の選考試験で語学審査の対象としても認定されます。
A級以上はこのようにメリットが盛りだくさん。これらを目標に、A級以上を目指してみるのもよいかもしれません。
最後に、国連英検受験に向けた学習教材と対策についてです。
英検やTOEICほどメジャーな試験ではない分、市販されているテキストもそれほど多くはありません。
まずはB級以上を目指す方は『新わかりやすい国連の活動と世界』を手に入れましょう。
それ以外には、どの級でも『国連英検過去問題集』という級別の過去問が販売されていますから、これを使って出題内容や形式に慣れておくことをお勧めします。
複数年度分解いてみると、同じような問題が出題されていることにも気が付けたりして、覚えておくべき重要な知識も見えてきます。
その他、国連英検とは直接関係が無くても、文法教材や長文教材、新聞やニュースなどを用いて日ごろから英語の知識を身に付け、読解力やリスニング力を高めておくことは言うまでもありません。
さらに、ある時事テーマについて意見を書くなど、作文の練習も行っておきましょう。
いかがだったでしょうか。
国連英検は、その響きからも歴史と権威ある英語資格試験と言えるでしょう。
と言ってもE~C級程度までは、一般的な英語学習を積み重ねていれば問題なくクリアできるものでもあります。B級以上は重厚な内容ですが、その分チャレンジのしがいがあり、合格したときの喜びは格別です。
国連や国際機関に興味がある方もそうでない方も、なんとなく取っつきにくいと思われていた方も、単に英語が好きなだけの方も、あるいはこれから苦手な英語力を磨いていきたい方も、この記事を通して少しでも「受けてみようかな」と思っていただけていれば幸いです。