Kurumi
(更新)
今回は、会社員、漫画作家、寿司職人という3つのユニークな肩書を持ち、現在はフィンランド移住を目指して英語学習にも精力的に取り組むchikaさんにインタビューをしました。
【chikaさんプロフィール】
北欧好きをこじらせてしまった会社員。フィンランドが好き過ぎて12年以上通い続け、ディープな楽しみ方を味わいつくした自他ともに認めるフィンランドオタク。いつかフィンランドに住みたいと寿司職人を志し、ついに2022年春に移住。モットーは「とりあえずやってみる」。好きなものは水辺、ねこ、酒、1人旅。
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▶書籍「マイフィンランドルーティン100」(ワニブックス、2021年9月24日発売)
海外移住に興味があるけど一歩を踏み出せない方や、「夢や目標が見つからない…」という人は必見! 必ず読了後にポジティブな気持ちになれるはず!
ー SNSのプロフィールに「北欧好きをこじらせた人」と書いてあるのですが、まずこの「こじらせ」の部分について教えてください。
キャリアをこじらせている気がします。
今は会社員をしつつ週末は寿司職人の養成学校に通って修行をしているんですが、その理由が「フィンランドが好きすぎて」なんです。フィンランドに住みたいから寿司職人を目指しているという…
単なる「好き」を通り越して、人生にも大きな影響を与えるほどにフィンランド好きをこじらせている、ということで「こじらせ」と言ってます。
ー 本業はどのようなお仕事を?
今は会社員で人事を担当しているんですけど、その前は7年ぐらい営業をやっていました。メインキャリアは営業で、今は人事というキャリアです。
ー 本業以外ではどのようなことをしているんですか?
会社員の仕事以外だと、お寿司屋さんの修行と漫画の作家活動の2つ。
週末はお寿司屋さんで働きつつ、それ以外の時間で創作活動をしています。
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ー 今やっている2つの副業を将来的には本業にしていく予定なんですか?
将来的には両立できたらいいなと思っています。
私、学校でお寿司について学ぶにつれて、お寿司が好きになってきていて。
例えば、対人コミュニケーションでリアルな反応がわかったり、自分のスキルが目に見えて伸びていったり。そういうのが、なんかすごく楽しいと言うか、自分にあっているなぁと思っていて。
今は寿司のスキルはまだまだなんですが、ちゃんと1つの柱として伸ばしていけたらなと思っています。
ー 何かに挑戦するとハマりやすいタイプなんですかね?
全然そんなことなくて。いろいろやってみてもハマらないものがけっこうあるんですよ。
例えば、一時期ウェブショップを運営してみたのですが、商品を発送するだけだと相手の反応が分かりづらくて。私にとって、仕事とは「顔の見えるコミュニケーション」が大事なんだと気づきました。
あと他にも、お好み焼き屋さんで働いていたこともあるのですが、季節やお客様によって提供するものを変えていくお寿司の方が、自分には合っていることにも気づきました。
ー いろいろやってみて自分に合うものが見つかったんですね。
オリジナリティが出るものとか、ルーティーンすぎないものとか、毎回誰かと話したり、コミュニケーション次第で提供するものが変わるものが自分に合うようです。
例えば、お寿司だと「おまかせ」があるのもいいなと感じています。
ー 最初にフィンランドに興味を持ったきっかけは何だったのですか?
8歳まで遡るんですけど(笑)。
誕生日が12月25日で、サンタさんがすごく好きだったんですね。当時通っていた英語教室で、サンタさんに手紙を書くという企画があって、そこで「絶対サンタさんに会いに行きます」と書いたんです。
これがフィンランドとの関わりの始まりでした。
ー 手紙での宣言通りに、実際にフィンランドに行ったのはいつだったのですか?
大学生のときに初めて旅行で行ったんですけど、そのときまで、本当に「サンタの国」としか知らなくて。
でも実際に行ってみたら、なんかこうすごく、肌に合うというか。人との距離感や、街の静けさが自分にぴったり合う感じがしました。
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ー フィンランドの人の国民性なんですかね?
それもあるかもしれません。「目の青い日本人」ってヨーロッパの人に言われるぐらい、日本人に気質が似ているそうなんです。真面目でちょっとマニアックで、シャイなところなどが、そう言われる理由だそうです。
実際に行ってみると、あまり人に干渉しないというか、自立している感じの人が多くて。
「私はこれが好き。あなたはこれが好き。それはそれでいいよね」、というような「尊重と無関心の間みたいな距離感」があって。
ー 絶妙ですね。
私が田舎で育ったのもあると思うんですが、これまでは「人と違うことをして目立たないように、みんなと同じように生きていこう」と思っていた中で、フィンランドに行って「みんながみんな自由だと、こんなにもいい距離感ができるんだ」と知ってびっくりしました。
無口な感じとか、必要じゃなければ喋らないというか、変に空気を読みすぎて過度に気をつかいすぎない感じが、とても心地良く感じたんです。
日本も大好きなんですけど、日本以外に住みたいと思える国に出会ったのが初めてで。そうした衝撃をきっかけに、フィンランドにハマっていきました。
ー 「移住」を決意した出来事やきっかけはあったんですか?
フィンランド人みたいな生き方なり生活の仕方って日本でもできるんじゃないかと思って、最初は日本で「北欧カフェ」を始めようと、カフェ修行をしてみたんです。
でもそれが、当たり前ですが実際に働いてみると大変で。
そこで、どうせ苦労するならば本当に自分が生きたい場所で思いっきり苦労をした方が、「苦労対効果」というか、苦労した分得られる価値がより大きいんじゃないかなって。もっと大変な道になったとしても、自分にとって挑戦する価値があると思えたんです。
そう思ったときに、フィンランドで暮らしながらそういうチャレンジをしてみるのが、自分にとっては1番いいんじゃないかなって。
ー それで「フィンランドに行ってみよう、住んでみよう」と?
はい。自分らしさを生かして誰かに喜んでもらえるような仕事をしながら、かつ自分の理想のライフスタイルを送れて、どこにいても何歳になっても働けて、それが価値になるような仕事をしたいなと思ったときに、自然と自営業的な働き方に惹かれました。
フィンランドでもそこの大事な部分は変わらないから、フィンランドでチャレンジするのも良いんじゃないかなと思ったんです。
ー フィンランドでのお仕事として、寿司職人を選んだわけですが、どんな寿司職人になりたいですか?
目の前の人に合わせて、その人好みのお寿司を、コミュニケーションをとりながら提供できる寿司職人が理想です。
あとできれば、北欧スタイルの寿司も学んで、北欧らしいお寿司を作れる人になりたいなとも思っています。
自分の人生のモットーが「ありのままを価値あるものに」なんです。
こう、何か無理をして合わせるのではなくて、その人とかその場所とか、その物のありのままの価値っていうのをちゃんと大事にしていけたらなって。
その土地ならではのものをお寿司にするっていうのは食にも通じる「ありのまま」ですよね。
その土地に無いものを「美味しいでしょ」と出すのも面白いけれど、やっぱりその土地にあるものをうまくアレンジしながら出すっていうお寿司職人のあり方が、すごく好きなんです。
フィンランドには現地ならではのお寿司があったり、デザインを生かしたお寿司もあるんです。寿司職人としてのキャリアを北欧で築くとなったときには、向こうでしか学べないお寿司も吸収していきたいですね。
ー chikaさんのお店は「おまかせ」が評判になりそうですね。
いつか自分のお店としてやるのか、ポップアップストアのような形でやるのかまだ分からないですが、「おまかせ」のスタイルはとても素敵だなぁと思っています。いつかそんなお店ができたら素敵だなと思います。
ー フィンランドのお寿司需要ってすごいんですか?
すごいと思います。北欧だけ見ても、歩けばお寿司屋さんがありますし、「日本食=お寿司」というイメージが定着しています。
また、ビザをとるという観点でも、食の需要があるということは、レストランの求人もあるということなので、やっぱり「お寿司スキル×英語スキル」があると強いと思います。
ー 寿司職人に求められる英語とは、どういうものでしょうか?
カウンターでお仕事していると、目の前のお客さんを会話で楽しませたり、お寿司のこだわりポイントをお話したりとか、そういう場面でのコミュニケーションで英語が必要になるそうです。
せめてこれがどんな魚で、こういう風に食べると美味しいとか、それに合うお酒の説明とか、そういったことが求められるそうです。
ー ちなみに、なぜフィンランド語ではなく、英語を?
フィンランドの人たちの9割は英語が話せるので、英語さえできれば生活に支障がないということと、フィンランド語があまりにも難しくて挫折中というのも理由の1つです…
あと、英語を話せるとフィンランド以外の国でもやっていけるので、まずは英語を話せるようになりたいなと思いました。
英語についてはずっとコンプレックスを抱えていたので、このタイミングでちゃんと英語をやりたいなって。
ー コンプレックス?
高校生のときに、2週間のショートホームステイというプログラムがあってオーストラリアに語学留学をしました。
その留学がきっかけで、「将来、日本と海外を繋ぐような仕事がしたい」と思い、国際系の大学に進学したのですが、周りがどんどん留学に行って英語を話せるようになっていくなか、自分は思うように話せるようにならなくて…
以来、大人になってからも、英語に関してはずっとコンプレックスを感じているんです。
ー 学生時代にフィンランドに行ったときは、英語でコミュニケーションをとることはできたんですか?
最低限の意思疎通ぐらいは高校英語でなんとかなったんですけど、「話せなくてもどかしいな」と思うこともたくさんあったり、自分が本当に何を思っているのかを言えなかったり…
ヒアリングはできても話すというのはずっと苦手でしたね。フィンランドの人が無口でよかったと思っていました(笑)。
ー 今はどのような英語学習を?
基本的には、瞬間英作文と文法書、DMM英会話レッスンに絞っています。
あとは、フィンランドにいるペンパル*友達と週2で会話練習もしています。
その友達とは一度も会ったことがないのですが、毎週決まった時間に英語でいろいろなことを話しているんです。それが今の英語学習ルーティンです。
*遠く離れた友人や知り合いと、手紙やメール、各種SNSを通じてコミュニケーションをすること。
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ー DMM英会話で印象に残ったレッスンや、思い出に残ったレッスンはありましたか?
ちょうど昨日のレッスンなんですけど、フィリピンの先生で、繋いだ瞬間から外から「コケコッコー!」って音が聞こえて、先生が「ほんとごめんね。隣の人がチキンをたくさん飼ってて。40羽も飼っているのよ」って。
「40羽も飼ってるんですか!? 食べるためですか?」と聞いたら「ファイティングチキン*なのよ」って教えてくれて、その話で盛り上がったり。
あと、他のフィリピンの先生とはオーロラについて話していて、先生に「オーロラを見たことはありますか?」と聞いたら「オーロラはないけど、フィリピンのスコール後の虹はオーロラみたいだよ」と話してくれてほっこりしたり。
気温や環境の話をしてくれる先生が多いので、外国のことをリアルに感じられるのがすごく楽しいんですよね。
*フィリピンには、コックファイティング(闘鶏)と呼ばれる、ニワトリを闘わせる競技がある。
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ー 英語に関して、最近できるようになってきたこととか、効果を感じたエピソードはありますか?
レッスンの最後に、テーマに沿って自分の思っていることを話すパートがあって、以前は一問一答みたいになっていたんですけど、今は一つ一つの質問に対して、前よりも長く話せるようになったので会話が盛り上がるようになりました。
自分が話す量が増えたり、詰まることがなくなったことがすごく嬉しいです。
ー chikaさんはフルタイムのお仕事に加えて副業もされているなか、どうやってオンラインレッスンを含めた時間を作って学習を継続できているんですか?
「ちゃんと朝に時間を作る」というアドバイスを先生からもらってからは、「朝の始業前の1時間で勉強とレッスンをする」というのをベースにしています。学習時間を決めてルーティーンにして、他の予定をそれに合わせて入れるんです。
あとは「無理のない目標を立てる」ことも大事だなと思います。最初は張り切って高い目標を立てていましたが、達成できないと後ろめたく感じてしまって。
なので今は「ここまでは必ずやる」という、小さくても必ず達成できるミニマム目標を掲げています。この2つが、楽しく継続できている理由な気がします。
ー 寿司職人養成学校はもうすぐ卒業ですが、これからもDMM英会話を続けていく予定ですか?
続けたいなと思っています。
座学がすごく苦手で、誰かとのコミュニケーションがないと、英語に対して気持ちが向かなくて。
レッスンで生身の誰かと話して元気をもらえたりとか、そういうのがモチベーションになっているので、楽しく続けていきたいと思います。
ー 今後の仕事やプライベートでの目標や展望があれば教えてください。
まずは「フィンランドで生きてみる」という夢に向かって頑張りながら、自分に合うと感じているお寿司と作家としての仕事を両立できるように、そしてそれがお互いに相乗効果を生み出せるよう、どちらも大切にしながらチャレンジを続けたいです。
ー 最後に、ブログ読者へメッセージをお願いします。
私も最初は自分が何をしたいのか分からない状態からのスタートでした。
とにかくいろいろとトライして人生の選択肢を増やそうと、ウェブショップ、ブロガー、お好み焼き屋さん、そしてカフェまで、さまざま経験する中で、ようやく「いいなぁ」と思える道が見つかりました。なので「とりあえず、まずは小さくても始めてみる」というのも1つの方法だと思います。
そして、1つのことをずっと続けるのも大切ですが、色々と挑戦していくうちに思いもよらない経験が掛け合わさって、自分ならではの唯一無二のキャリアに繋がることもあります。
なので、1つを極めるだけではなく、「掛け合わせによって新しいものが生まれる」という考え方も持っていると、人生がより柔軟で面白いものになるんじゃないかなと思います。
ー ありがとうございました!
自身のキャリアに悩みながらも、たくさんのアクションを起こし、夢に向かって確実に前進し続けるchikaさんのインタビュー、いかがでしたか?
読んでいるうちに「勇気をもらえた」「ワクワクしてきた」、そんな人もいらっしゃるかもしれませんね!
「こじらせるほど好き」なものを見つけて、それを追求してみると、いろんな道やチャンスが見えてくるのかもしれません。
いつか、chikaさんの「好き」が詰まったフィンランドのお店で、「おまかせ」を食べられる日を楽しみにしています!