DMM英会話ブログ編集部
(更新)
恋愛・婚活マッチングサービス『pairs』、カップル専用アプリ『Couples』の運営を行っているエウレカをご存知だろうか。2015年、米国IACグループの傘下に入り、現在は本社とのやり取りはもちろん英語で行われている。
ビジネスで求められる英語力とは、一体どんなものだろうか。海外を飛び回り活躍しているエウレカ副社長の西川順さんに、世界での日本人の仕事の仕方とともにリアルな現場のお話を伺った。
ー ビジネスで英語を使うというと、日常会話より高いレベルの能力が必要だと思うのですが、いかがでしょう?
私は、留学や外資系企業で英語を使ってきましたが、いまだにネイティブレベルには程遠いし、まだまだ自分の言いたいことを英語で100%は言えません。
でも、US本社の経営陣と会話が成立しているのは、「ビジネスの本質」が経験的にわかっているからだと思います。
社内にも、私より英語のできるメンバーはいっぱいいるけれど、米国の親会社とのやりとりで、彼らが求めている経営レイヤーの回答を即座に理解できたり、言い回しから「本当はこういうことを聞きたいんだろうな」と汲み取るとか、対等に話せるマーケティング知識などのビジネス能力が英語力より優っているからかなあと。
私の英語、本当に大したことないんです、このインタビュー受けていいのか、というレベルで、申し訳ないです……(笑)
でも極論な話、仕事が圧倒的にできれば、英語力が別になくても通訳つけて仕事はできちゃうんですよね。
実際、エウレカの共同創業者の赤坂は英語が話せないんですが、親会社は彼のビジネス能力を認めているので、彼がいつまで経っても英語を勉強しないことに関して何も言わないんです。「
Junが通訳するから問題ないよね〜」的な(笑) 私はプロの通訳ではないので、毎回結構ツラいから、「そろそろ英語やってよ」とお願いしてるんですが……。
ー あくまで英語は手段で、中身が大事ということですね。
本当にそうですね。ビジネス力がハードで、英語や語学力はソフト、みたいなイメージ。ハードがしっかりしてないと、上に乗ってるソフトが機能しない。
ただ、そうは言っても、シビアに世界で英語がどれくらいのレベルで必要かということを考えると、Excelで四則計算ができない社会人って「大丈夫?」って思われますよね?
それと同じくらいで、英語ができないとヤバイと感じます。できる人がすごいのではなく、できて当たり前というか0点。これが世界の現状だと海外出張するたびに思います。
そして、世界を見ると、中国とインド2つの国の人口を合わせると25億人になる。
ここからどんどん優秀な人材が出てくるとなると、日本の人口は1.2億人だから20倍の中から出てくる優秀な人材と戦っていくことになるんです。
なので、中国語か英語、またはその両方ができて仕事ができる人は、ビジネスの幅がものすごく広がるなあと痛感しています。実際、アメリカの親会社の幹部も4人がインド人です。
「インド人が4人もCクラス(*注:CEO、COOなどの「C」が付くポジションのこと)にいるのって、すごいね」と彼らにいうと、「だって、インドの人口は日本の10倍だもん、人数多いんだから優秀な人の数が多いのも当然でしょ」と(笑) そもそも数で圧倒的に負けてるんで、相当頑張らないと、仕事も英語もできない日本人は、海外で活躍するのはまず無理ですよね。
そういう意味では重要なのは中身だけれど、世界と対等にやっていこうと思うと、ビジネスの能力はもちろん、英語力は必要不可欠になっていく。
だから、仕事も中途半端で、英語も中途半端にできる人が、実は一番どうにもならないと思います。だったら、先にビジネス能力を突き詰めたほうがいいと思う。
中途半端だとどちらも使えないですからね。
ー 英語を身につけるためのポイントは、どんなものがあると思いますか。
英語やその他の語学って、本気でやれば誰でもできると思うんです。
日本語だって、子どももみんな喋れているじゃないですか。ただ、絶対にやらなきゃいけない状況にないから身につかない。
私も、実は留学や外資のインターン時代より、圧倒的に英語力がついたのは、20代前半で働いていたイギリス外資のベンチャー時代です。
なぜかというと、「英語で仕事ができないとクビになる」という環境だったから。絶対にクビになりたくなかったので、本当に死ぬ気で英語で仕事をしました。
なので、週2回英会話にちょっと通うくらいなら、やっても意味がないんじゃないかな。
それなら、本当に必要になったときに必死でやった方が効率が良いはず。
「明日からシンガポール行って、英語で30人の部下をマネジメントして、年間売上10億作ってね! じゃ、行ってらっしゃい〜!」と言われて死ぬ気でやった方がずっと早く身につくと思います。
ー 中途半端な学び方はよくないと。
毎日本気でやるんだったら意味があると思います。本気ならできるようになるまでやり続けるはず。
当社でもオンライン英会話受講の補助が福利厚生にあるのですが、会社負担の条件は「1カ月に15日以上受けること」。
それ以下の受講数になった月は、自腹に切り替えます。
中途半端に月2,3回ちょろっと受けるくらいの人は、そもそも英語をやらなければいけない切羽詰まった状況じゃないし、本気じゃないので、やっても伸びないから補助していません。
それと、日本人はきちんと発音しないといけないとか、ちゃんと文章にしなきゃいけないとか、恥ずかしがってしまうのももったいないですね。
今、世界中の英語話者の7割はいわゆるネイティブではない、と言われています。
シンガポール人はシングリッシュと呼ばれる英語を話すし、インド人はインド英語、フランス人もフランス語訛りで話します。
日本人もカタカナ英語でも通じればいいんだから、まずは発音とか気にしないで喋り倒すのが重要だと思います。
私は海外出張で東南アジアやアメリカに行くことが多いのですが、仕事で会う人も、レストランの店員、タクシードライバーなど含め、日本人が思っている「綺麗な英語」で話している人は10%もいないんじゃないかなあ。
逆に、東南アジアだと、カタカナ英語の方が通じやすかったりするので、私はその人が話している英語を聞いて、例えばタクシー運転手さんがインド系の人なら、彼に正しく理解してもらうために、単語でしか話さなかったり、カタカナ発音ではっきり話すようにしたりします。
と偉そうなことを言っている私も、留学したばかりのときは、発音とか文法を気にして全然話せなかったんですが、「このままだと勉強わからないから単位とれないし、そもそも絶対友達できないわ……やばい!」と思って、開き直ってから発音とか文法の間違いとかとりあえず忘れて話すようにして、話せるようになりました。癖になっていた文法の言い間違いはその後、矯正して直しました。
ー 恥ずかしがっているのは、やはり伝わってしまいますか。
考えて話しているし、受験勉強をちゃんとしていればボキャブラリーも豊富なはずなのに、きちんと言おうとして会話の間合い、沈黙が長すぎる人がいますね。
日本人同士の会話でも、「え〜〜〜〜〜〜〜っとぉ……」と言われて2分も待たされたら、「……オイッ!」ってテンションが下がりますよね。
会話のテンポが崩れるというか。相手はこちらがネイティブでないことを知っているんだと開き直って、多少の間違いは気にしないで何か言う方が良いと思います。お互いがネイティブじゃないシーンも多々ありますし。
日本人にも日本語を正しい文法で理路整然と話せない人はいっぱいいるし、言い間違いもする。
それでも平気で話しているのに、英語になった途端に、どうしても正しく話そうとしてしまいますよね。
英語だけ何か特別なもののように思い過ぎというか、綺麗な発音や文法に縛られすぎている。まずは、その考えを辞めることからスタートすることが大事ですね。
ー 英語でコミュニケーションをとるときに大切にしているのは?
当たり前なんですが、「イエスかノー」を最初に言う、相手の質問に簡潔に答える、と言うことですね。日本語は、結論が最後にくるので、最後まで聞かないと言いたいことがわからない言語じゃないですか。例えば、「今日渋谷へ行」「く」のか「かない」なのか、文末まで聞かないと分からないですよね。
外資系企業に勤めていたときに、最初は日本語的な話し方で英語を話していたんです。するとイギリス人の社長にものすごく怒られたんです。「俺が聞いているのは、YesかNoかだけだ」と。「この仕事は終わってるのか?」と聞かれ、終わってるなら「Yes.」と言えば話は終わる。終わってないなら「No.」と言ってその理由といつなら終わるのかをその後で話す、で終了。日本語は、「検討してご連絡します」「そう思われます」という曖昧な言葉も多いので、そういう表現を頭から排除して、明確に話すことを意識しています。
ー そうした英語の思考の仕方や、順序の流れがポイントになる?
英語の思考の仕方というより、効率的にビジネスを進める思考の仕方が英語の語順に向いているので、この10年くらいは意識的にそうしているという感じですね。社内でも、「日本語を英語的に話すように」とかなり昔から言っています。なぜかというと、その方が仕事が早く進むので、時間短縮できるからというのと、明確に話すことで、誤解が生じにくいからです。
ただ、英語話者でも結論を先に言わない人はいっぱいいますよ。最後まで話を聞いていても、「うーんと、結論何がいいたいの?結局Yesなの?Noなの?」とこちらが聞くこともある。英語話者がすべてロジカルに話すかというと、そんなことまったくないので安心して大丈夫です(笑)
ー もともとロジカルな言語体系になっているのかと思っていました。
英語は結論が先に来る、日本語は結論が後に来る、という意味で言うと、「最後まで聞かなくても答えが分かるので話が早い」という点では、英語は日本語よりロジカルだと思うし、主語が明確じゃない表現、例えば「〜だと思われます」みたいな「誰が思っとんねん!」的な表現はないのですが、英語話者が全員ロジカルかというと、日本人が全員曖昧じゃないのと同じレベルで違うと思います。それこそ、ハーバードとかスタンフォードのMBAホルダーでも、話していることがよくわからない人はいますよ(笑)
もう一つ言うと、アメリカの会社と仕事をしていて、彼らとスムーズに仕事ができる人は、仕事ができるのはもちろん、コミュニケーション能力が高い人なんです。というか、これはもはや言語に関係ないかもしれないんですが、日本人ってカルチャー的に見知らぬ人に「Hi!」とか「その靴素敵だね」とか言ったり、目を合わせてニコッとしたりする習慣がないじゃないですか。そういう意味で、日本人はシャイだと思われがち。
さらに英語が苦手だから日本人同士ではそうでもなくても、外国人と話しているとより喋らず、シャイに見られてしまう。でも沈黙が苦手なカルチャーの人たちもいて、そういう人たちはいわゆる“無駄話”も得意なんですが、日本人はそれができない人が多いなと思います。これはどっちのカルチャーが正しい、という話ではなく、「相手のカルチャーをマーケティングできるかどうか」なので、日本人同士、アジア人同士のときはそんなことしなくてもいいけど、そうじゃない時は必要な態度に切り替える。
これって、例えば、年下が敬語を話さなくても気にしない日本人もいれば、1歳でも年下なら敬語を話さないと気分を害す人がいるのをきちんとマーケティングしてうまくビジネス上のコミュニケーションを取れるか、と同じ話だと思います。
あと、日本人は礼儀正しいので、「これを聞いたら失礼なんじゃないか」と思って遠慮したりすることも多いと思うんですが、ビジネスで関係値ができている外国人と話すときは、聞きたいことをダイレクトに聞いていいと思います。仕事を進めるのに必要なら。空気を読みつつ、「ここまで聞いても大丈夫なんだな、この人」と思ったらもっと深い話を突っ込む。でもこれって日本語でビジネスしてても同じなので、正直私は、「最近、何語で話しているからどう」みたいなのはまったく気にしてないです(笑)
ー コミュニケーションそのものが、ローカルルールになっていると。
そうです。そのローカルルールがほとんどの国で通用しないということに日本人は気がついていないですね。空気を読んで言葉が少ない人より、拙い英語でもどんどん話しかけていく人の方が、圧倒的に好かれますね。なぜかというと、話さないとその人のパーソナリティがわからないから。何考えてるかよくわからない人と仕事してもうまく行かなそうじゃないですか(笑) でも、それって、日本語話者同士でも同じじゃないですか?
ー 西川さんは普段、海外のニュースはどんな風に入手していますか。
目に止まった面白そうな世界中のメディアのFacebookページを「いいね!」しまくっているので、そこに流れてくる情報の中で、気になる見出しや画像やニュースがあれば、Google翻訳にかけてチェックするという感じです。それは英語に限らず、中国語、韓国語、タイ語など、今後ビジネス展開をしようと思っている国の言語はすべてです。翻訳にかければどの国の言葉でも、正しい日本語になっていなくても要旨は掴めるので。情報は、オリジナルの言語で一言一句正しく理解する必要はまったくなく、Google翻訳があれば内容把握には十分です。
英語の記事も、時間がないときは英語で読まないでGoogle翻訳にかけます。英語で読むことが重要なんじゃなくて、中身を理解することが重要なので、「えーっと、この単語なんだっけ……」と調べながら英語で読もう、とわざわざ時間をかけて読むことはないですね。
ー どれくらいの数をチェックしていますか。
あまり記事数を気にしたことはないですが、多いと1日200件以上は読んでるかなあ。ランチを食べながら、寝る前、仕事中もPCの画面上で仕事をしながら、端の方にFacebookを出しながら、ザーッとタイムラインを見てたりします。気になったらGoogleで翻訳にかけて大意を掴んで、重要だと思ったら、後で調べて詳細に読むために自分のタイムラインにシェアしておく。もう癖になっているので、全然苦じゃないですね。Facebookで友人の記事が流れてくるのを見ているくらいに自然にやってます。
日本語になっている情報は本当に限られています。でも、英語や他の言語ができないから、情報を知ることができないというのは甘えだと思います。だって、この世には、Google翻訳っていう神ツールがあるんですよ(笑)
ー どんどん国と国の境界のようなものがなくなっていくような気がしますが、このような状況で日本人にとって重要なものは何だと思いますか。
“日本に住み続ける”という概念をあまり持たなくてもいいんじゃないかな、と思います。住みたいところに自由に住んで働けて、「違う国でビジネスしてみたいな」と思ったらまた引っ越す、というぐらいになってもいいのになあ、と。
私の従姉妹夫婦は二人で8カ国語話せる日本人とオランダ人のカップルなんですが、彼らは「日本に住みたい!」と言って日本に来て、数年日本で働いて、「日本はもう飽きたから」と今はアメリカで暮らしています。こんな風に暮らせるのが、一番グローバルな人材なんじゃないかなと思います。彼らはもちろん、大前提としてビジネスマンとして優秀なので、どこでも仕事があるんですが、それにプラスしていろんな言語が話せるので、どの国でも働けるし、友だちもつくれる。
英語やいろんな言語ができてコミュニケーション力があれば、本当に世界でもっと活躍できるし、たくさんの友達ができるので人生を楽しめると思います。「日本じゃない国に住んで働いてみたいな」と思ったときに、どこでも働ける。そういう方が、楽しいじゃないですか(笑)