DMM英会話 ブログ 英語でつながる インタビュー

安定のために常に挑戦。メディカルイラストレーターの日本人第一人者を目指して|宮本麻央さん【Our English Journey: vol.3】

安定のために常に挑戦。メディカルイラストレーターの日本人第一人者を目指して|宮本麻央さん【Our English Journey: vol.3】

DMM英会話は、グローバルに活躍したい日本人クリエイターをサポートすべく、2020年8月から1年以上にわたって「アドビ株式会社」(以下アドビ)の「Adobe Creative Residency Community Fund」に参加する方に英語学習サポートをしてきました。

Adobe Creative Residency Community Fund
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で厳しい状況に置かれたクリエイターの創作活動を支援するため、アドビ米本社が創設したグローバルで約1億円(100万米ドル)のファンド。
アドビ×DMM英会話

アドビが全世界で展開中のクリエイター支援ファンド 「Adobe Creative Residency Community Fund」の日本人参加者へ、英語学習のサポートを実施【2021年7月以降も継続】

7月 1, 2021

今回は、ファンドメンバーであり、フリーランスのメディカルイラストレーターである宮本麻央さんにインタビューを実施しました。


【宮本麻央(みやもとまお)さんプロフィール】
ボストン在住、フリーランスイラストレーター。アメリカの大学院を卒業後、メディカルイラストレーター公認資格を取得。世界中のクライアントと仕事をするメディカルイラストレーターで、国内外から仕事を受注している。自身のメディアでは英語、フリーランス、海外キャリア、作品づくりなどについて発信。

Twitterアカウント
Instagramアカウント
ブログ


アメリカ在住8年目の麻央さんは、20代でアメリカの永住権を取得し、現在はフリーランスのメディカルイラストレーターとしてグローバルに活躍されています。

海外に住み、英語を使ってバリバリ仕事をこなす麻央さんですが、海外の大学院に進学する準備としてDMM英会話を利用していたそう。本インタビューでは、そのあたりのお話にも触れています。

海外で専門スキルを磨きたい方やグローバルに活躍したいクリエイターの方は必見の内容となっていますので、ぜひ最後までお楽しみください。
 

メディカルイラストレーションとの出会い

メディカルイラストレーションとの出会い

ー まずは簡単に自己紹介をお願いします。

アメリカでイラストレーターをしている宮本麻央と申します。メディカルイラストレーションが専門です。

メディカルイラストレーションは、科学や医療の専門知識をもっている人が描くイラストのことで、そのイラストを描く人を「メディカルイラストレーター」と業界では呼んでいます。わかりやすくいうと、「理科の教科書の挿絵を描いている人」ですね。

教育のバックグラウンドとしては、神戸大学で生物学を専攻して、アメリカの大学院に行くまでは癌の研究をしていたんです。在学中にメディカルイラストレーションの存在を知ってアメリカに留学し、本格的にメディカルイラストレーターになるためのキャリアを積んでいきました。

ー 大学ではなぜ生物学を?

我が家のルール的に、「絶対国公立で、浪人しちゃダメ」っていうのがあったんですよ。でも、第1志望の前期試験に落ちちゃって…

それで「どこかに入らなきゃ」となったときに、たまたま受かって入学したという感じなんです。なので、生物学に対してすごく強い気持ちがあったというよりも、成り行きでやることになったというのが正しいですね。

ー なんと! でもその偶然の成り行きが現在のキャリアにつながっていらっしゃるという。

もちろんその、生物学というか生命に対してはボヤッとした興味はあって。実際に専門的に勉強をしていく中で、自分の中にあった興味のタネがより明確になっていったという感じです。

なんで細胞が癌になるのか、癌細胞と普通の細胞はどう違うのか、とか。次第に癌の研究にのめり込んでいきましたね。

がん細胞▲麻央さんが描いたがん細胞のイラスト
出典:JCI Insight Figure 2

ー 在学中は卒業後の進路について、どのように考えていらっしゃったのですか?

大学の先輩たちを見ていると、普通に就職する人がほとんどで、研究者になる人は圧倒的少数だったので、そのまま就職するのかなって思っていました。

そんな感じでボヤッとしたまま過ごしているうちに、メディカルイラストレーションに出会って、「これだったらやりたい!」となったんです。

自分は研究も生かしたいし、クリエイティブなこともしたいなって思っていて。どっちもやれる道を探していたときに、「どっちもできるやつあるじゃん!」って。

メディカルイラストレーションを教えてくれた人がずっと海外で活躍している人だったこともあって、これをきっかけに世界に飛び出すことで、「自分が今見えていないことや知らないことができるかもしれない」と思い、メディカルイラストレーションの道に進みました。

ー 「メディカルイラストレーション」と「海外」というのはセットだったんですね!

当時はメディカルイラストレーション自体が、本当に日本では知られていなくて。今も勉強できる場所っていうのも全然ないし、職業としても知られていません。でも海外では、メディカルイラストレーションを専門に学べる学校もあるくらい、日本とのギャップが大きいんです。

それで、「本気でやりたいんだったら海外に行った方がいい」、「海外に出ることによって可能性もさらに広がるかもしれない」と思ったので、自分的には一石二鳥の選択でした。
 

作品へのこだわり

作品へのこだわり

ー 作品をつくる上で心がけていることはありますか?

研究者の人たちは、自分の研究に対する愛情がすごく深いんですよ。

自分もやっていたから研究の大変さがわかるし、何年もかけてまとまった成果を出せた研究しか世に出すチャンスは得られません。

なので、彼らが伝えたい専門的な内容を「どういう風にすれば伝えられるのか」、「どういう風にすれば見ている人に驚きと興味を与えられるのか」というのを考えるようにしています。

ー 今までで1番思い入れ深い作品は?

未熟児の脳みそから出血してしまう病気がありまして。

それを描いたこのイラストは特にお気に入りです。

赤ちゃんの脳のイラスト

健康や成長への影響を考えると、赤ちゃんのX線検査やMRI検査は必ずしも安全ではないのでリソース(資料)がないんですよね。

なので、本当に自分で、何にもないところから赤ちゃんの脳を描くのが大変でした。

作品をお医者さんに見せたら、「合ってる! これは誰も作ったことがないぞ!」って言われて嬉しかったですね。

ー このイラストでこだわった点は?

お医者さんが病気の説明をするときに、リアルな赤ちゃんの出血を見せてしまうと、お父さんとお母さんがショックを受けてしまって冷静でいられなくなるかもしれません。

なのでそうならないよう、どのように表現するか、どうすればショッキングにならないか、という点に非常にこだわりました。

ー とても優しいこだわりですね。このような医療用のイラストの他に、インスタグラムにはアーティスティックな作品もありますよね。

やっぱり医療だけだと、わかんないって人もいると思うんですよね。

「アートと医療がかけ合わさるとこうなるんだ! 面白いな!」と思ってもらえるような作品をインスタには載せています。

これは子宮の作品で、女性のパワーをかたどっているというか、「生命の源になっている子宮」を表現しました。

必ずしも正確に描写した作品ではないのですが、「遊び心を使えばインスピレーションになるんだよ」というメッセージを伝えたくてつくった作品です。

ー メディカルイラストレーターをやっていく上で、特に重要なスキルはどのようなものでしょうか?

サイエンスや医療の情報をちゃんと伝えるっていうのが1番重要なので、描写力は大切ですね。

あとは、基本的には英語の学術論文を読んで理解して、正しく作品に反映させる必要があるので、描写力のほかに、読解力も求められると思います。
 

メディカルイラストレーターに求められる英語とは

メディカルイラストレーターに求められる英語とは

ー 今では英語の情報を読み解き、英語を使ってイラストのお仕事をされていますが、海外留学を決めたときの英語力はどれくらいだったのですか?

留学を決めた時点では、会話などのアウトプットには自信がありませんでした。

その程度の英語力だったので、海外の大学院に進むにあたって英語でのやりとりが必要なときも、いちいち誰かに英文を添削してもらう必要がありましたね。

ー そこからどうやって入学できるレベルまで伸ばしていったのですか?

大学のゼミで毎週英語の論文を読まないといけなかったので、読み書きはある程度できました。でも、スピーキングとリスニングが本当に難しくて。

自分からアクティブに英語を話したり聞いたりする機会を見つける必要があったので、積極的にポットキャストを聞いたり、DMM英会話で会話の練習をして、少しずつキャッチアップした感じです。

ー なかでも特に効果を感じた学習法は何でしたか?

個人的に今も昔もしている学習法は、「とりあえず会話する」です。

話をしていると絶対にわからないところがあるので、それを家に帰ってひたすら英語で調べるというのを繰り返すのがいいと思っています。

例えばアメリカだと、政治・人種・歴史についての会話になることが多いんですけど、それを家に帰ってネット検索して、背景だったり歴史だったりを調べることによって、次そういう会話をするときにより理解が深まっている状態にするんです。

ー 会話をきっかけに自分に必要な英語や知識を学んでいくスタイルは効果が高そうですし、何より楽しそうですね。

楽しい方が続くし、進んでやるんですよね。

英語って本当に会話のツールだから、日本語の会話を楽しむように、英語の会話も楽しめたらいいなって。「喋ってる言語が違うだけ」という状態になれるのが理想ですね。

ー メディカルイラストレーターとして活動していく上では、どういう英語力が求められるのでしょうか?

メディカルイラストレーターは提案することが多いんです。

クライアントから「これを描いてください」って言われるよりも、「こういうのを描きたいんだけど、どういう風にすればいいかわからないから、一緒に考えてください」という感じ。

描いたものを見せるときも、「こう考えたから、こういう風に描いている」というのを伝えるのがすごく大事なんです。会話をすることによって、どんどん作品がブラッシュアップされていくので。

ー メディカルイラストレーター以外のクリエイターだとどうでしょうか?

イラストの仕事と一口にいってもいろんな種類の仕事がありますが、例えば「裁量権が大きい仕事がしたい」、「提案がしたい」という風になると、高いコミュニケーション力が必須になりますよね。

最低限の英語力で、翻訳ツールを使ってイラストの仕事をすることもやろうと思えば可能ですし、どれくらい英語を勉強するのか、どれくらいの規模の仕事をしたいのか、次第かなと。

作品に自分の意見を反映させたいのであれば、それを伝えるための勉強をするのがいいと思います。

ー つづいて、DMM英会話のことについて伺います。DMM英会話を使った時期と期間を教えてください。

ざっくりいうと、大学院受験の試験準備中に1年くらい使っていて、なかでも集中的に2〜3ヶ月使っていた時期がありました。そのときは週に2、3回受けていましたね。

私の場合ですが、大学院受験で1番大事なのって研究実績とポートフォリオなんですよ。英語はもちろん喋れないとダメなんですけど、優先順位はどっちかというと低くて。

研究を続けながらの忙しい日々でしたが、DMM英会話は1日24時間のなかで30分程度、自分がやりたい時間に合わせてレッスンを受けられるのでいいなと思って使っていました。

ー レッスン内容はどんな感じでしたか?

受験の一貫でオンラインインタビューがあったので、それに向けての準備に使っていました。

面接で聞かれそうな項目を事前に用意しておいて、それらをレッスン内で模擬インタビューしてもらう形です。あとはメールの文面チェックをしてもらったりもしました。

ー 特に印象に残ったレッスンがあれば教えてください。

面接練習のために始まったレッスンだったんですけど、最終的には講師の方がものすごい興味を持ってくださって話を聞いてくれて。「いち生徒なのにこんなに興味を持ってくれるんだ」ってすごい嬉しかったですね。

しかも、レッスン中にアドリブで聞いてくれた内容を実際の試験でも聞かれて。自分が用意したインタビューの質問よりも役立ったんですよ。

ー すごい! わかりやすい形でレッスンの成果が現れたんですね。
DMM英会話を1年間やって、どれくらい英語力が伸びた実感がありましたか?

想定外の咄嗟の質問にもパッと答えられるようになったので、自信につながりました。日本だとやはり実用で英語を使うチャンスがなかったので、レッスンでの練習が役立ちましたね。
 

安定するためには、常に不安定な状態にいないといけない

安心感を得るために常に挑戦

ー 今後の目標やビジョンを教えてください。

大きな目標としては、「メディカルイラストレーター」と聞いて、パッと私の名前が浮かぶような人になりたいなって思っています。

あとは、図鑑の仕事とかしたいですね。でも、すごく難しいんですよ。実際に目の前に検体があるわけでもない状況の中、正確に描かないといけないので。

図鑑のような教材って何年も何十年も残るものなので、それを1から作り上げられたらめっちゃかっこいいじゃんって思っています。

ー 麻央さんは日本を出て、とてもパワフルに活躍していらっしゃいますが、生きる上でのモットーや哲学はありますか?

変化の激しい世の中で、みんな安定を目指そうとしますよね。

私も安定を目指すんですけど、安定するためには、常に不安定な状態にいないといけないと思っていて。

「自分がこのままでいい」ってところにずっといると、時代についていけなくなると思うんです。

なので「『時代についていっている』という安心感を得るために常に挑戦し続ける」というのが自分のモットーになっていますね。

誰もやったことがないメディカルイラストレーションをやるっていうのは、側からみると無謀な挑戦に思えるかもしれないですけど、私のなかでは、そこに飛び込むことによって「常に学習する場所に身を置く」という安心を手に入れているんです。

ー 普通の人だと常に挑戦するのは不安になりそうな気が(笑)。

大変だけど、常に何かをし続けるんだったら、楽しいものがいいじゃないですか。

楽しいものとか、自分が興味があったり、挑戦しがいがあるものだったりをやる方がいいと思っているので。

自分から挑戦したいと思うところに行くことで、「どうせずっと勉強しないといけないんだったら、興味があることばっかりやる環境にいるぞ!」みたいな状態になりたいという感じです(笑)。

ー では最後に、海外での活躍を目指す読者の方たちに向けてメッセージをお願いします。

自分がまさにそうだったんですけど、なかなか周りにそういう人がいなくて、孤独で。

でも、そのぶんワクワクしていたんですよね。

自分がやっていて楽しいことをするのが自分を幸せにすると思うし、社会貢献にもなると信じています。大変なことはいっぱいあると思うんですけど、そういうパッションのようなものを忘れないようにして欲しいです。

ー ありがとうございました!
 

インタビュー後記

日本ではまだまだ知る人が少ない「メディカルイラストレーション」という職業。

その道を極める麻央さんの作品の一部をブログ内でご紹介しましたが、その精密さやクオリティーはもちろん、背景にある作り手の知識や想いまで感じ取ることができたのではないでしょうか。

英語学習もキャリア形成も、自分に合ったやり方で突き進み、素晴らしい成果を出している麻央さん。

彼女の聡明さもさることながら、その行動力にも刺激を受けたインタビューでした!

メディカルイラストレーターの日本人第一人者として、麻央さんのお名前を耳にする日も、そう遠くはなさそうですね。

さらなるグローバルな活躍を楽しみにしています!