横浜のレゲエ・サウンドMighty Crownに聞く!「世界で名を上げるために必要な力」とは?

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MIGHTY CROWN
- the Far East Rulaz -
【メンバー】
MASTA SIMON、SAMI-T、COJIE、NINJA
1991年横浜で結成されたダンスホール・レゲエサウンド。MCのマイク・パフォーマンスとセレクターの選曲で音楽のパワーを倍増させてフロアに伝える彼らのスキルは早くから評判となり、99年サウンド同士の音のプロレスとも言われるサウンド・クラッシュ「WORLD CLASH」(ニューヨーク)でアジア人として初の優勝。一躍世界レベルの支持を獲得した。これまでに7つの世界タイトルを保有し、今では世界のレゲエ・アイコンとして欠かせない存在となっている。
▷ Mighty Crown Entertainment

    世界の特A級クラスとして、1991年から活動を続ける横浜のレゲエ・サウンド(*1)Mighty Crown(マイティー・クラウン)。NYで開催されたワールド・クラッシュ(世界大会)においてアジア人として初めて優勝するなど、世界中のレゲエ・ファンを熱狂させ続けている。国内では「横浜レゲエ祭」「SOUND CITY」などビッグなイベントを開催し、海外のトップ・アーティスト達たちを招聘。日本のレゲエ・シーンを盛り上げている。
    今回は、Mighty CrownのメインMCであるMASTA SIMON(マスター・サイモン)さんと、MC兼メイン・セレクター(*2)のSAMI-T(サミー・ティー)さんの2人にお話を伺いました。

     

    やりてえ! そのためにはどうすればいいんだ?

    レゲエとの出会いについて教えてください。

    MASTA SIMON:横浜生まれの横浜育ちなんだけど、地元でよくたむろってるレゲエ・バーがあって、そこへ毎週のように行っていたのが最初だね。当時(1980年代後半)はIDチェックとかもなくて、16歳くらいから出入りしていて。

    SAMI-T:俺は最初、パブリック・エナミーとかヒップホップを聴いててさ。そこからテーンテーブルとか、7インチ(シングル盤レコード)をいじるようになって。
    あれ、これまでは他のインタビューで「ボブ・マーリーがキッカケだった」って話してるんだけど、今よく考えてみたらレゲエの最初ってボブ・マーリーだったかな……

    MASTA SIMON:いろんなとこで散々言ってきて、今さらかよ!笑

    SAMI-T:レゲエとの出会いは忘れたけど、「この人のメッセージすげえな!」って感じて “レゲエに目覚めたキッカケ” は、間違いなくボブ・マーリーだったね。

    パブリック・エナミーやボブ・マーリー。ジャンルは違えど、パンク的な反逆的メッセージという共通点はありそうですね。

    SAMI-T:そうだね。その前はザ・ブルーハーツを聴いていて、REBEL(反逆、反発)的に訴えてる感じが、うわーって響くというか。

    MASTA SIMON:そういう意味では、俺は元パンク・バンドをやっていて、14〜15歳でレコーディングをしたり、ライブハウスをまわったりしていた。イギリスのゴリゴリのパンクが好きで、そこからアメリカのハードコアへ入って、ブラックミュージックからヒップホップ、そしてレゲエと来たね。

    「レゲエでやっていこう! これでメシ食っていこう!」と決意した頃は、どんな感じでしたか?

    MASTA SIMON:俺は “ノリと遊びの延長” って感じだったかな。これでメシ食おうなんて思ってもいない。自分たちのまわりでスケボーやってるやつ、BMXやってるやつ、そういうストリート・カルチャーのムーブメントがあって、俺のホットスポットがレゲエだった。「俺らもパーティーやってみようぜ!」って感覚。

    SAMI-T:ガキ過ぎてクラブとかに相手してもらえないから、自分たちで箱(会場)借りて、人前でやるキッカケを自分らでちょっとずつ作ってた。これでメシ食うなんて誰も考えないっしょ。「やりてえ! それをするにはどうすればいいんだ?」っていうだけ。

    NYに住んでいた頃も、金が無いからジャパニーズ・レストランでバイトしながら「俺はこんなところで何をやってるんだ?」って思ってた。そうやってやっと貯めた金でジャマイカへ行ってきたんだ。

     

    「学校だけじゃダメ! 実践が一番役に立つ」海外で名を上げるにはまず英語から

    後ろにズラリと並ぶトロフィーが気になりますが、Mighty Crownさんが戦ってきたという「サウンド・クラッシュ」とは何ですか?

    MASTA SIMON:簡単にいうと音のバトル。ヒップホップでもスキルを競い合うDJバトルがあるけど、それにマイク・パフォーマンスを加えて相手をDISる(こき下ろす)という、DJバトルとMCバトルを混ぜたようなものだね。
    そこで自分たちでしかかけられないダブ・プレート(*3)や、カスタム・ダブっていう歌詞に相手の名前を入れた曲をその日のためだけに用意したりする。
    とにかく、客を沸かしたもんが勝ち。それがサウンド・クラッシュ。

    トロフィーはいくつくらいあるんですか?

    MASTA SIMON:20個以上あるんじゃないかな。全部、海外のサウンド・クラッシュで戦って優勝した時のトロフィーです。

    海外で戦うには、どういう力が必要ですか?

    SAMI-T:まずは言葉がわかんないと始まんないでしょ。そっからだよ、土俵は。英語が話せないと何もかも理解できないわけだからさ。

    MASTA SIMON:俺らは2人とも幼稚園の頃からアメリカン・スクールに通っていたから、英語とは小さい頃から密接な関係で。日本語と同じくらいの感覚だったかな。

    SAMI-T:たしかにガキの頃から英語は身近だったね。恵まれた環境で育ったと思う。

    でもサウンドクラッシュで使う英語って、日常会話やビジネス会話とは違いますよね。その語学力はどこで磨いたのですか?

    MASTA SIMON:経験の積み重ねだね。音楽スタジオへ行くのもそうだし、人と話すのもそうだし、イベントに参加するのもそう。学校で習ってるだけでは難しいだろうね。いざ、アメリカ人と会話してみると「あれ? 学校で習ったのとはどうも違うぞ」って感じるはず。実践が一番役立つし、身になるよ。

    SAMI-T:ストリートだよ、ストリート。ストリートから学ぶでしょ、普通に。人が話しかけてくるのもストリートだしさ、出会うのもそう。そこで語学力が付くか付かないかの大きな違いは、日本人とつるまないことだね。俺は黒人のコミュニティーにガッツリ入っていっちゃってたから。(NYの)フラットブッシュとか、ブルックリンの黒人しかいない奥地の方とか。
    当時は怖かったけど、好奇心がすごかったからね。実際そこには、すげーアーティストとかいるわけでさ。そういう感じで体当たりしていったかな。

    ストリートの黒人コミュニティーで打ち解けるには、英語だけじゃない力が必要な気がしました。

    MASTA SIMON:半分くらいは「なんだお前?」って思われるし、逆に「あいつの知り合いだったら受け入れてやろうか」って人もいるし、それは人によるかな。
    あと、海外って言ってもいろんなところがあるから。NY、ジャマイカ、ロンドン。俺はLAに5年半ほど住んでいたけど、LAにも黒人街があって、人は皆それぞれ。とにかく自分が興味あるんだったらそこに行く。言葉が喋れなくても行く。音楽以外のライフスタイルでもそうだよ。

     

    アグレッシブであれば、アジア人とか関係なく世界でやれる

    海外で外国人相手にパフォーマンスして、会場を盛り上げる。やっぱり日本とは勝手が違いますか?

    MASTA SIMON:日本以外の全てが海外なわけじゃん。よく言われるんだけど、外国って言っても、どこの国かによって全然違うから。

    たとえば、ヨーロッパのレゲエ好きが多い地域へ行っても黒人がいなかったり、いてもジャマイカ人じゃなくてアフリカ人が多かったりする。あと、イタリア人は英語しゃべんないけどドイツやスイスでは通じる。イギリスはもちろん英語は通じるけど、移民が多かったり。やっててその違いを感じるのが面白いよ。

    SAMI-T:向こうはやっぱり緊張感が違うね。ちょっと転けたらブーイングしてくるし。そこに関しては必死というか、勝負だよね。フラップ(=スベる、ウケないこと)したら、そこでの営業は今後無いと思った方がいいね。

    俺が言う「向こう」っていうのは、ジャマイカをベースにカリブ・コミュニティーがあるところ。NY・マイアミ・カナダ・イギリスとか、ジャマイカン・コミュニティーが強いところ。あとは、カリブの島々もそう。そこでしっかりやれるとすごく喜ばれるんだよね。「なんでこんなアジア人が、俺たちのカルチャーを理解しているんだ」って。

    Mighty Crownの名前が世界で知られる前は、“アジア人” というハードルがあったのでしょうか?

    MASTA SIMON:アジア人を見たことがない人ばっかりの前でやるから、最初は物珍しさで喜ばれることもあったね。だけど見慣れてくると「もうわかったよ、それは。で、次は何できんの?」って期待が高まる。それに応えていかないと世界のサウンドとしては認められないっていうのはあったね。

    SAMI-T:1999年、NYで開催されたワールド・クラッシュ(サウンド・クラッシュの世界大会)で俺らが優勝して、ゲートが開いた。「世界には他にもレゲエ・サウンドがあるんだ」って、みんなが気づいたんだ。

    そこからヨーロッパのサウンドも発掘されていく。ジャマイカじゃないカリブの国々の奴らに、「お前らのおかげでジャマイカ人じゃなくてもサウンド・クラッシュで勝てるってわかったよ!」って言われて、期待とか希望を与えることができたのがすげー嬉しかったね。

    お二人が考える「海外で活躍できる人」とは、どんな人間ですか?

    SAMI-T:アグレッシブなやつだね。これは文化の違いもデカいと思う。
    ジャマイカへ行くと、日本の文化とはもろ真逆。例えばダンスイベントに行っても、日本だと男は男でかたまって、女は女で集まる。ジャマイカじゃ、女がいれば男が近づくし、男女で踊るってことが自然なんだよね。日本だと「うわー、あいつ女いってるよ!」とか後ろ指さされるでしょ(笑)

    世界じゃ遠慮はいらない。「あ、僕はちょっと……」なんて言ってると、いつまでたっても自分には何もまわってこない。アグレッシブにいかないとね、特に俺らの世界は。

    MASTA SIMON:確かにアグレッシブさ、図々しさは必要だね。日本だと知らない人に声をかけにくいけど、たとえば「これ俺がつくった音楽だ。聞いてくれ!」ってアピールすることで広がることはたくさんある。生意気なことを言えって言ってるわけではなくて。

    あと、「俺はこうなりたい!」「こうしたい!」っていう、自分のモチベーションをそこに持って行くことも大切。自己暗示というか「俺はこうなるんだ!」っていう。

     

    もったいねえな〜! もっと世界を覗いたらいいのに!

    世界中を見て回って、日本のレゲエ・シーンについてどう感じますか?

    MASTA SIMON:日本のレゲエは独自の方向へ広がっているよね。ヨーロッパでは海外アーティストを見て育つサウンドがいるから、音やカルチャーがジャマイカ寄りになってくる。だけど、日本とジャマイカは遠いからなかなかフェスにも呼べないし、そもそもフェスの数も全然違う。お客さんが本場を見る機会が少なくて、日本独特な感じになっていると思う。もちろん独自性があるのは良いことなんだけど、レゲエってくくりで見たときに世界から「え、そうなの?」って思われることが多いのかなと感じるね。

    SAMI-T:アメリカにある日本人以外がやってるジャパニーズ・レストランみたいな感じかな。(包丁を振り回しながら)シャンシャンシャーン!「はい、これがジャパニーズフードです〜!」みたいな。向こうの人はそれが日本食だと思って食べてるんだけど、日本人からすれば「これは日本食じゃないでしょ」っていう。

    MASTA SIMON:実は日本は世界的にもレゲエ大国って言われている。でも本場からは離れていってるところがあって、その独自性と本場のカルチャーをうまくくっつけられないかなと考えていて。

    「無理! そんなのできねえよ」っていう人もいるんだけど、それをどこまで近づけられるかっていうのは、レゲエ外交官としての俺らの役目でもあるかなって思ってるね。

    SAMI-T:もっと掘ってほしいよね。「なんでこの人たちは、こんなことやってるんだろ?」って、もっと辿ってほしい。本質を、ルーツを忘れて欲しくない。
    良い悪いじゃないけど、表面だけを覗いて満足している人を見ると「もったいねえな〜もっと覗いたらいいのに」って思うね。

     

    「海外でやってみたい!」と思った瞬間、行ったほうがいい

    「俺も海外でチャレンジしたい!」という気持ちがある人へ、何かアドバイスをいただけませんか?

    MASTA SIMON:海外でやってみたいと思った瞬間、行ったほうがいい。ダメだったら帰ってくりゃ良いじゃん。行動力と努力ってのは、才能につながると思うんだよ。

    SAMI-T:ということで、俺も来年からアメリカでチャレンジしてくるわ! そこで開花できたら、日本のシーンももっと良くなると思うし。

    え、本当ですか?

    SAMI-T:本当だよ。何言ってんだよ、俺はいつでも本気だよ。昔もアメリカに住んでいたけど、今は前よりも知識があるから、また違うだろう。自分の可能性に常にチャレンジしていきたいんだよ。

    MASTA SIMON:自分が海外へ行くことによって、周りに迷惑がかかるならダメだと思うけど、別にそんなことってそうそう無いじゃん。行ってみたら結果出してくる奴も多いし、仮に失敗しても、それをひっくり返して良い結果にするんだよ。海外でチャレンジする奴らは、そんな人が多いかな。だから行きたいと思ったらすぐに行くべき。アドバイスとしては「直感を信じろ!」だね。