「学生時代は英語がビリだった」― 25歳で英語を学び直し、社内通訳者として活躍する安藤みやこさん

社内通訳者として活躍する安藤みやこさん

日本語を話せない海外メンバーのミーティングや、社内でのコミュニケーションを円滑にする役割を担う、社内通訳という仕事。

今回お話を伺ったのは、25歳から英語を学び直し、ファッション業界から社内通訳者へと転身したDMM英会話ユーザー・安藤みやこさんです。

「私にとって英語とは、視野を広げ、人生を楽しくしてくれたものであるのと同時に、一生消えないコンプレックスでもあります」

こう語る安藤さんに、その真意や、大人になってから英語を学び直し、どのような勉強法で通訳の仕事をするまでに至ったか、また英語を学んで広がった世界観について伺いました。

 

人生の価値観が180度変化:青年海外協力隊での経験

青年海外協力隊での経験

ー まずは、これまでのご経歴を含めた自己紹介をお願いします。

現在、デジタルマーケティング会社で社内通訳の仕事をしています。パーソナリティーとしては、不可能や前例のないことに挑戦するのが大好きな人間です(笑)。

経歴をお話すると、アパレルの専門学校を卒業後、20代半ばまではファッション業界で仕事をしていました。その後、25歳から英語を学び始め、27歳のときに「先進国しか知らない自分の幅を広げたい」と思い立ち、青年海外協力隊(JICA)のプログラムに参加。フィリピンで2年間働きました。

フィリピンでは、それまでのアパレルの知識を活かし、現地女性にローカルの素材を使ったお財布やバッグの作り方を教えるような仕事をしていました。

 
ー アパレル業界から、青年海外協力隊にチャレンジするのは、大きなキャリアチェンジだったと思うのですが、恐れや不安は感じなかったのでしょうか?

日本でしか働いたことがないことの方が不安でしたね。視野の狭いまま20代が終わると思うと、そっちの方が怖かったんです。

 
ー 実際、青年海外協力隊の活動を経て変化はありましたか?

人生の価値観が180度変わりました。物質的なものではなく、心の豊かさに重きを置くようになったんです。

それまではファッション業界にいたこともあって、「美しい物、かっこいいものを作りたい」という方向に情熱が向かっていました。でもフィリピンの経験以降、物ではなく「心の豊かさ」に関心を持つようになりました。

そうした価値観の変化もあり、帰国後は学んだ英語を活かして「人の人生の可能性を広げたり、悩んでいる人の心を自由にしたい」と思い、英会話講師として働き始めました。

 
ー そこから英語を仕事にする道に進まれたんですね。

はい。英会話講師として約1年働いた後、「自分が成長しながらより大きなインパクトを生める仕事って何だろう」と思い始めました。

そこで、会社内で通訳として働く「社内通訳者」のポジションに出会い、この仕事に就きました。今で1年くらいです。

 

通訳に「尾ひれ」はいらない

通訳に尾ひれはいらない

ー 社内通訳者とは、具体的にどのような仕事をされるのでしょうか?

ミーティングの通訳を主に行っています。

「マーケティング・インテリジェンス・ディレクター」としてチームに入ったインド人の方が私のボスで、日本語が話せない彼のコミュニケーションを円滑にするための通訳が私の仕事です。

具体的には、ミーティングに同席して、ボスが発言するときは英語を日本語に直し、他の方が日本で会話しているときは、その内容を英語に直してウィスパリング(耳元でつぶやく)します。

 
ー 通訳をする中で特に難しいと感じるのは、どういった場面ですか?

専門用語についていくことです。

私のボスが所属するのは、デジタル広告に使うツール開発を担うチームで、ほぼ全員エンジニアなんですね。私自身広告業界が初めてで知識もなかったため、専門用語が飛び交うと日本語の会話ですら理解できない状態でした。

なので、最初は広告用語を覚えることに力を入れるようにしました。

 
ー 逆に、仕事で最もやりがいを感じるのはどういった場面でしょうか?

自分が内容をきちんと理解できて、英語と日本語両方の言語で発話者の意図通りに伝えられたときです。

たまにボスが、「ミヤコ、さっきの会議バッチリだったよ」と褒めてくれるときがあって、その瞬間は本当にうれしいです。

 
ー なるほど。通訳の仕事って、先ほどおっしゃられた業界への理解もそうですし、普段の英会話と違う点がたくさんあると思います。安藤さんが通訳の仕事をするうえで、普段から意識していることはありますか?

はい。私はこの仕事を始めてから通訳学校に通い始めたのですが、そこで先生に言われたのが「尾ひれをつけるな」ということだったんです。

 
ー 尾ひれ、というと?

「無駄な形容詞や副詞をつけない」ということですね。

例えば、以前は「相手を理解して伝えよう」という気持ちが大きすぎて、「とても」や「Very」をつけて通訳してしまうことが多かったんです。発話者が言っているわけでもないのに。

 
ー なるほど、そうすると発話者の意図に合わなくなってしまうんですね。

そう、通訳の仕事はあくまで「パス」すること。気合いが入るがあまりやってしまいがちなのですが、それはしないように心がけています。

 
ー 他にも通訳の難しさを感じることはありますか?

日本語ならではのビジネスフレーズを訳すのは難しいですね。「よしなにやって」とか(笑)。

 
ー そう言われてみると、日本語ならではのビジネスフレーズっていろいろありますね。

あとは「検討します」とかもそうですね。

ポジティブな意味で言っているのか、本当は興味ないけど表現を柔らかくするために言っているのか。そこのジャッジが難しい場面が多いです。

 

英語の4技能は両手両足

英語の4技能は両手両足

ー 続いて、安藤さんのこれまでの英語勉強法についても詳しく教えてください。
留学経験もなく独学で青年海外協力隊に挑戦し、今は通訳者もされているくらいなので、もともと英語は得意だったのでしょうか?

いえいえ。高校生のときは、英語の成績がクラスで一番ビリだったくらい、英語が苦手でした。

転機は25歳のときで、ふと「英語を話せる人ってやっぱりかっこいいよな」と思い、英会話学校に入学したことでした。初めはその学校のクラスも、「Yes」と「No」しか言えないような一番下のレベルだったのですが(笑)。

1年間やって向いていなかったら辞めればいい、ぐらいの軽い気持ちで始めたのですが、「会話」から入る勉強スタイルは私に合っていたようでハマってしまって。1年間通ってみて、むしろ「学校のペースは自分にとって遅いな」と感じるくらいでした。

 
ー 文法先行の学習スタイルは合わなくても、会話重視のスタイルはマッチしていたんですね。どういった点が特に楽しく感じられたのでしょうか?

自分の口から聞いたことがない音が出てくることです(笑)。

 
ー 面白い視点ですね(笑)。具体的には、どうやって英会話を勉強していたのですか?

シャドーイングをたくさんやっていました。映画やTED動画など、題材は自分が好きなものを選んで。

TEDだったら、まるで自分がスピーカーになったかのように、目の前に人がいっぱいいるのを想像するんです。何度も何度も練習し、同じスピードでほぼ100%完璧に言えるくらいまで繰り返しました。

 
ー 安藤さんが考える、独学で英語力を伸ばすコツは何ですか?

自分の英語力を客観的に見ることでしょうか。英語の4技能「聞く・話す・読む・書く」って、両手両足だと思うんです。

例えば階段を上ることを想像してみてください。手ばっかり前に進んでも、足が止まっていたら、それ以上は上に行けないですよね。上に行くためには、何が一番足を引っ張っているのかを見つけて、それを強化することが重要だと思います。

 
ー なるほど。でも、「何が足を引っ張っているのか」を自分で客観的に認識するのは難しいのでは?

そういうときは、自分の英語力を年齢に置き換えてみるんです。「自分の会話力って何歳かな」、「作文力って何歳かな」という感じで。

何歳かをどう判断するかというと、例えば、「日本の5歳の子どもは何を話せる?」というのを考えてみるんです。実際、5歳の子を思い浮かべてみると、結構ペラペラですよね(笑)。

 
ー たしかにそうですね。

じゃあ自分の英会話力は5歳以下だなと。

次に作文について考えてみると、「5歳の子供って文章は書けるか書けないか」だよな。となると、「書く力は5歳より上で、小学3年生ぐらいかな」とか。

このように、4技能を全て年齢に置き換えることで、そのときの英語力を把握します。

 
ー なるほど。その方法を使うと、客観的に、具体的に自分の英語力を知ることができますね。

はい。それで、一番低い年齢のスキルに特化し、総合的に英語力を引き上げていく方法でやってきました。

 

楽しいを求める

楽しいを求める

ー オンライン英会話はどのタイミングで始められたのですか?

青年海外協力隊に参加したタイミングです。時間があったので、仕事以外の勉強も並行してやっていました。だから、もう5年以上DMM英会話をやっていることになりますね。

青年海外協力隊での活動を終え、帰国後の英会話学校講師時代も学習は続けていました。

そのときは、アメリカの高校生が読む歴史の便覧の資料を使ってレッスンを受けていましたね(笑)。全部スキャンして、DMMの先生とシェアして毎日それを読んで。サマリーを作ったりディスカッションをしたりしました。

ー 便覧の資料? どうしてそれを使おうと思ったのですか?

日本の歴史用語と、国際的な歴史用語って実はかなり違うんです。例えば、日本ではローマ帝王の名は「カエサル」ですが、国際的には「シーザー」だったり。

最近の例だと「リーマンショック」。海外で「リーマンショック」って言っても伝わらないんですよ。「financial crisis」って言うんです。

ー 全然違いますね。

それって悲しいと思ったんですよ。本当は知っているのに、単語が違うから知らない人みたいになってしまって、会話もつながらない。

そうしたギャップを感じたので、海外の教材でイチから歴史を学ぼうと思ったんです。

 
ー なるほど。今もDMM英会話を継続されているとのことですが、どういった活用をされているんですか?

今は「プラスネイティブプラン」で日本人講師の先生にお願いしています。レッスンは今も毎日受講していますよ。

 
ー 日本人講師を選ぶのはどうしてですか?

通訳の練習をするためです。

『起業家の英語』という、ザッカーバーグなどのインタビューが日英両方で載っている本を教材にし、私は教材を見ずに先生に英語を言ってもらってそのまま日本語に訳す。もしくは先生が日本語で言ったものを英語に訳す、というのが主なレッスン内容です。

 
ー 英語を仕事にできるほど上達してもなお、英語学習を続けられていると思うのですが、やめようかなと思う日はないのですか?

全くないわけではないですが、基本的に歯磨きするようにやっているので、やらない方が気持ち悪いです。

私が思うモチベーションキープのコツは「楽しいを求める」こと。「楽しい!」と両手離しで言えない状態にきたら、勇気を出してやめる。

日本だと「我慢することこそが美徳」みたいに考える人も多いと思うんですけど、楽しくないと思って続けるのって、結局吸収率も低いし時間の無駄だと思うんです。

 
ー なるほど。

私が英語学習を続けられるのは、そのときの自分がワクワクする勉強しかしないから。逆に、飽きたり嫌になったら違う勉強法に変えます。TOEICの勉強に飽きたら、次はTOEFLの勉強をしてみたり。

とにかく、自分の情熱を燃やせる方法を考案して試してほしい。例えば洋楽が好きなら、好きなミュージシャンの英語の歌詞を調べて、カラオケで練習するとかもとても良いと思います。

 

英語を勉強したおかげで
心のカラーパレットの色が増えた

心のカラーパレットの色が増えた

ー 英語を学んでみて、スキルだけではなく精神面にも変化はありましたか?

まるで羽が生えたようですね。もしくは息ができるようになった(笑)。

 
ー すごい(笑)。「自由になった」という感じでしょうか?

今振り返ると、日本語しかわからなかった25年間は息苦しかったなと思います。例えば英語では、「You」とよく言いますが、日本では「あなた」って普段使わない言葉ですよね。

 
ー そうですね。

そうした文化だと、目の前に人がいても名前を知らなかったら、どうコミュニケーションを取っていいかちょっと難しい。その時点で苦しいんです。

あと、心の状態を表す言葉が日本語だと圧倒的に少なくて。

 
ー どういうことでしょうか?

例えば、英語に「I feel for you」という表現があるのですが、日本語に無理やり翻訳するなら「気持ちを重ねるよ」という意味になります。

日本語で「あなたの気持ち、わかるよ」と言うと、「いや、経験してないからわかんないでしょ」って言われちゃう。だから、そういう場面で何て言っていいかわからないんです。「かわいそう」って言ったら同情してるの?と思われれるし…

たしかに、わからないし経験していないけど、あなたのそばにいて、気持ちを感じて、あなたの味方でいるという気持ちは本物。そういう思いを端的に表す言葉が日本語にはないんですよね。

こういった、相手との心のつながりを深める言葉が英語にはたくさんある一方、日本語には少ない気がします。

 
ー たしかに、そうかもしれないですね。

だから、日本語で話すときはもどかしさを感じることもあります。英語の方がのびのびと自分らしく話せているのかも。

カラーパレットに例えると、英語だとパレットにたくさんの色があるような感じです。日本語だと原色しか使えないのに、英語にすれば24色入りみたいな(笑)。

そういう意味で、もし日本で息苦しい思いをしている人がいたら、ぜひ英語にチャレンジしてみてほしいです。

また言葉以外の部分において、一般的に日本の中で「社会適応能力が低い」と言われているようなことでも、世界ではそんなレッテルを絶対貼ったりしないので気にする必要がありません。

そこを感じるだけでもすごく自由に、楽になれるんじゃないかなと思います。

 
ー 最後に、英語学習を頑張っていらっしゃる読者のみなさまにメッセージをお願いします!

できない理由じゃなくて、できる方法を見つけてほしいです。

私たちには舌があって、歯があって、唇がある。その三種の神器があるので、できないわけがないんです。

 
ー なるほど、力強い。

って自分でも言い聞かせてきたんですけど(笑)、人生は1回なので、日本語しか知らない人生ではもったいないと思います。

私にとって、英語は表現の幅を広げ人生を楽しくしてくれたものであるのと同時に、一生消えないコンプレックスでもあります。

 
ー 安藤さんの熱い思いが伝わってきました。
本日はお話を聞かせていただき、ありがとうございました!

 

おわりに

「英語は表現の幅を広げ人生を楽しくしてくれたものであるのと同時に、一生消えないコンプレックス」

そう語る真意には、「帰国子女でもなく、留学経験もないというハンデを自覚しているからこそ、1日も無駄にできない、という思いでここまで頑張ってこれました」という安藤さんの言葉がありました。

今回の取材は、そんなご自身のコンプレックスを受け入れながら、前に進むエネルギーの燃料としている姿勢がひしひしと伝わるようなインタビューでした。

さらに、「自分と他人のユニークさを受け入れ、愛して応援し合うという文化を、日本にももっと広めたいです。私にしかできない方法で広めて、日本人の心の豊かさを促す活動がしたい」とも語られた安藤さん。

今後はYouTube等を通じて、ご自身の経験を発信していきたいとのこと。楽しみに待っていたいと思います。