DMM英会話ブログ編集部
(更新)
"e-sports" という名称で、昨今ゲームがスポーツとして注目を集めている。プロ野球選手、プロサッカー選手と並び、「プロゲーマー」としての生き方が、人生の選択肢として生まれてきているのだ。
そんなe-sports業界を牽引しているのが、プロゲーマーのももちさんとチョコさん。世界初のプロ格闘ゲーマー夫婦として知られ、現在は株式会社 忍ismを立ち上げて、若手の選手育成にも力を入れている。
しかし、プロになるまでの道のりはそう簡単なことではなかった。自腹で海外への大会に出て、地道に英語でブログを更新し、PR活動。当時、日本では数少ないプロゲーマーになるチャンスを、彼らはいかにして手に入れたのか。いまなお世界で挑戦し続けているおふたりに伺った。
― 2011年にプロゲーマーとなられていま5年経ちましたが、この5年間を振り返っていかがでしょう。
ももち:すごい楽しいけど大変……というのが正直なところですかね(笑)。
プロになってよかったなと思う反面、まだまだ道半ばなので、これからという感じ。プロ3年目で名古屋から東京に出てきたんですけど、名古屋時代の3年間は本当にツラかった期間でした。
チョコ:(ももちは)一昨年の世界大会で結果を出すまで、苦しい日々が続いてましたよ。
今でこそいろいろなメディアに取り上げていただいてますが、結果が出ないと活動の場があまりないですからね。
ももち:所属している北米のチーム(Team EG)との契約が1年更新なんですけど、結果が出ていない時期は「来年もまた契約してもらえるだろうか」って年末はいつもソワソワしてました。
プロゲーマーになれたらゴール、というわけではないので、プロゲーマーになってどう結果を残すかがやっぱり大事だなと実感しています。
― プロになって一番大きな変化はありますか?
「プロになった」ということで、良くも悪くも注目されるんですね。
そのため、いままでアマチュア時代に何気なく発していた言動は、プロになってからすごい気をつけるようになりました。
SNSでの発言だったり、動画配信しているときの発言だったりですね。
やはり良いお手本じゃないですけど、「プロゲーマーってすごいんだな」「あんな風になりたいな」という憧れの存在であるべきだと思うので、そういった身の振る舞いの変化が、プロになっての一番の変化かもしれません。
― ちなみに、所属しているチームの他のプロゲーマーの方々との交流はあるんですか?
チョコ:同じ大会に出ていたりすると、一緒にご飯行ったり、観光したりしています。日本に来たときは一緒に観光したり。
ももち:この前はメイドカフェにいきました(笑)。
同じチームメンバーが彼女と二人で来ていたので、4人でメイドカフェ行って、お台場行って。ダブルデートみたいな感じで(笑)。
― そもそも、なぜ北米のチームに入られたのでしょうか。
ももち:プロゲーマーになりたいと思ったとき、2010年ですね、まだ国内でプロゲーミングチームというのがそれほどメジャーではなかったんです。むしろ、ほぼなかった。
一方で海外にはゲームプレーヤーをサポートしてる企業というのが多かったので、プロゲーマーになるとしたら、海外のチームに入るしかなかったんですよね。
それで海外を視野に入れて活動し始めたことがキッカケです。
チョコ:だけど、どうやって契約に至るのかもわからなかったので、「とにかくアピールしよう」と英語でブログを書いてみたり、海外の大会に参加したついでに「私たちをプロにしてくれないか」みたいな、軽い営業を海外企業にしたり、何が正解かはわからず1年間いろいろやってました。
ももち:すごい大変でした。自分は大会に出場して、いい結果を残して注目してもらおうとひたすらやってきて。
でも、自分はまったく英語ができないので、それしかできないわけです(笑)。
一方で彼女(チョコ)が海外のチームに英語でPRしてくれたり、コミュニケーションをしてくれたりと、すごいサポートをしてくれました。彼女のほうが大変だったと思います。
チョコ:最終的にプロになれたのは、タイミングとか運とか縁とかで、本当にラッキーだったなと思います。
ブログも2011年の11月で更新終わってますね(笑)。
途中からFacebookで発信するようになって、Team EG(所属しているチーム)から「チームに入らないか」とFacebookにメッセージが届いたのがキッカケでした。
ももち:その当時は、Team EGには日本人選手が1人もいなかったんですよ。
なので、まさか自分たちが入れるとは思ってもいなかったし、EGに対してアピールもしてなかったので、ビックリしましたね。
― 他チームを見ても、当時はあまり日本人のプロゲーマーがいなかったんですか?
ももち:格闘ゲームでいうと、自分たちがプロになろうと思うキッカケとなった梅原大吾さんが最初のプロで、そのあとに "ときど" さんや "マゴ" さんといった日本人プロが出てきていました。
3人ともマッドキャッツというメーカーのチームに所属して、「あの選手たちはすごい強い。誰が倒すんだ!?」と注目されていたので、自分たちがEGから声がかかったのは「マッドキャッツの選手を倒せ」という意味があるのかなとか思ったり。違うのかな(笑)。
― プロになる前は、海外の大会に出るのも自腹ですよね?
ももち:はい、今でこそチームから渡航費がでたりするんですけど、当時は1回の大会に出るのに10万とか20万円かかってました。
だけど、アピールするためには自費でどんどん海外に行くのは大事だったので、積極的に行ってました。
― ももちさんは英語が話せないのに、よく海外に飛び出しましたね。
ももち:そうですね。でも格闘ゲームって日本の文化だから、日本が好きな人たちがとても多いんですよね。
なので日本語を喋れる方も結構いたり、逆に向こうで日本語で話しかけてもらったり。
チョコ:死ぬことはないな、という感じですよね。税関とか、入国審査とかも、なんとかなりますし。
ももち:まぁ、でも相当不安ですけどね(笑)。
1回、見知らぬ人の車でどこかに行ったことありましたよ。
イギリスでホテルの場所がわからなくて困ってたら、「どうしたんだ」って聞かれて、なんかその人の車に乗ることになったんですよ。
そして乗ったら全然違うところに連れて行かれた。
― なんで車乗っちゃったんですか?(笑)。
ももち:なぜか乗っちゃってました(笑)。
いま思うと、ホント危ないですね。まあでも、トラブルはたしかにこれまでありましたけど、命に別状はなかったのでラッキーだったかなと。
タクシーに乗って「あれ?これって明らかに料金が高くないか?」ということもありましたが、英語が話せないので文句も言えない(笑)。
英語は大切だなと思います。自分は本当に「YES」か「NO」かしか言えないレベルなので……。
― チョコさんは英語でブログを書いたりと、英語を使いこなしている印象ですが、いかがですか?
チョコ:わたしも中学英語レベルですよ。
ブログもGoogle翻訳を使ってなんとかやってた、という感じで。
いまも海外の人にアドバイスをくれとよく言われるのですが、ゲームの英語って学校で習わないので、わたしも答えられないんですよね。むしろ日本語ですら説明が難しい。
ももち:でもゲームってすごいなと思うのは、ゲーム自体がコミュニケーションツールになっている、ということかなって。言葉は伝わらないんですけど、対戦が終わった後に握手して、「お前強かったぜ、ありがとう」みたいなのをゲームを通じて、分かり合えてる。
って思い込んで英語を勉強していない自分がいるんですが、絶対英語で話せたほうが通じ合えるので、やっぱり勉強しなきゃなと思いました(笑)。
― 最近は株式会社 忍ismを立ち上げられましたが、どういった活動をされているのですか?
チョコ:忍ismでいま大きく掲げてやっているのが若手の育成と、オフラインイベントなのですが、徐々に弟子の子たちも力をつけて活躍しはじめているので、楽しみですね。
ただ、まだまだ海外へは忍ismの活動が伝わってないので、もっと注目してもらいたいな、と思ってます。
ももち:先日も弟子3人を連れてラスベガスの大きな大会に行ってきたのですが、「彼らがももちの生徒か」と声をかけてもらったり、Webメディアで取り上げてもらったりということはありますけど、忍ismの活動としてはまだ認知が弱いと感じています。
「忍ism」として自分たちの活動や思いをもっと海外に広めていきたいなと思っています。
チョコ:若手の子たちがいつか世界大会で優勝するくらいに成長したら嬉しいですね。
そのとき、その子たちが英語でインタビューを受け答えしてたら、かっこいいな(笑)。
― お弟子さんたちはラスベガス、楽しんでました?
チョコ:みんな初海外だったので、とても楽しんでましたね。
3人の弟子のうち、ふたりは飛行機もはじめて、という感じで。
ももち:やっぱり1回、世界に飛び出すってすごく大切だなと。
完璧に準備してからではなくて、いま自分が持っている武器で1回海外に出てみて、そこで経験したことが刺激になって、日本に戻ってきてまた勉強をする。
そのサイクルが自分を成長させてくれると思うんですね。
日本でこもってずっと勉強していても、なかなかモチベーション保つのが難しいじゃないですか。
それはゲームも英語もそう。ずっと部屋に閉じこもってやっているだけだと、なかなか続かない。
だけど、下手でも大会に出て、たとえ1回戦で負けても「次は頑張ろう」「家に帰って、もっと練習しよう」って気持ちになる。こういうのが大切なんだと思っています。
自分たちがプロゲーマーになれたのも、英語が話せなくても海外の大会に出続けたから、つまりは行動をし続けたからであって。
頭でいろいろ考えて何もしないより、とりあえず動いてみる。それが人生を変える、すごい良いキッカケになるんじゃないかなと思っています。