濱名 栄作
(更新)
グローバル化が叫ばれてから久しい。
これまで英語がなくても、日本語だけでしっかり仕事が出来ていたのに、なぜこの期に及んで英語を勉強しないといけないのだろうか。
「ひとことで言えば、グローバリゼーションの進展が無視できない程になってきたためです。」
そう語るのは、米 Google で副社長を務めたこともある村上憲郎氏。そしてグローバル化と常にセットで話題に出されるのが「英語」である。グローバル化する世の中の公用語は何かと考えると、「英語」と答えざるをえない。
今回は、村上氏が考えるグローバル人材、後半部分では大人になってからでも実践できる英語学習法を紹介する。
※本記事は2016年10月28日、村上氏をゲストに招いて行われた法人向けセミナーの内容をまとめたものです。
「グローバル組織」と一口に言ってもその定義は曖昧な部分が多く、はっきり「こういう組織だ」と説明できる人は少ないのではないだろうか。
ここでは村上氏が考える「グローバル組織」を紹介する。
企業組織のグローバリゼーションは3段階に分けられると言う。
まず第1段階の「インターナショナル組織(企業)」は、国内で事業を行いながら、製品の輸出や原材料調達など必要に応じて国境を越えることがある、そうした組織を指す。
第2段階は、本国指揮の下、複数の国に拠点を持ち、輸出だけではなく国外に販売拠点を構えたり、国外での原材料調達に加え調達支部や工場を現地に設けるなど、そうしたアクションへ移った組織を「マルチナショナル組織(企業)」と呼ぶ。
そして第3段階が、あまり聞きなれない人も多いであろう「トランスナショナル組織(企業)」。
つづいては、本記事のメインテーマである「グローバル人材」について。組織だけでなく、人材についても3段階を踏むと話す村上氏。
第1段階「インターナショナル人材」
第2段階「マルチナショナル人材」
第3段階「トランスナショナル人材」
基本的には先ほどの組織の第三段階をそのまま人材に置き換えて考えることができる。
例えば「インターナショナル人材」とは、日本に留まりながら、必要に応じて海外出張など国外で活動のできる社員である。
「マルチナショナル人材」は、海外拠点に家族とともに数年赴任することをことができ、本国のパスポートを持ちながら赴任国の就労ビザを取得、給料は現地法人から支給され、所得税・社会保障費なども赴任国に納める。
そして村上氏が「グローバル人材」だと考えるのが3つ目の「トランスナショナル人材」だ。人生の各段階ごとに複数の国に滞在し、人生の各段階を、各段階ごとに最も効率的に行える国で行う、そのように計画的に複数の国に移り住み、ネイティブレベルのマルチリンガルを手にいれた人材こそが、これからの真のグローバル人材だと語る。
そのためには両親の計画と実行が必要で、一例としては次のようなケースです。
日本人でありながら、アメリカで子供を生み米国籍を取得させ、初等教育まで受けさせて英語の基礎をネイティヴ並に習得させ、その後日本人としてのアイデンティティを養成するために日本へ戻って中等教育を受けさせます。高校卒業後はヨーロッパの大学に進学し、就職はシンガポール、起業するならシリコンバレーというように、人生におけるステップにおいて複数の国へ分けて教育しよう、成長させようという計画です。
このようにして育ったトランスナショナル人材に国境はありません。地球全体が一つの国のように考えられる人、言い換えれば「地球人」なのです。
完全なトランスナショナル人材には、大人になった今からではなることは出来ませんが、そのような育ち方をしなかった人でも、「日系地球人である」という意識を持つことは今からでも手遅れではありません。
その意識をきちんと持っていれば、グローバル人材なのです。
「今の会社は次のステップへの踏み台です。そんな会社への忠誠心がない社員はいらない!と思う人事の方もいるかもしれませんが、終身雇用はすでに崩壊しかけています。」と話す村上氏。
従来の企業慣習が崩れ、急速にボーダーレス化、グローバル化が進む現代で勝ち抜くためには、これまで以上に個人の能力、すなわち「あなたは何ができるのか」ということが重要になってくる。
そして真のグローバル人材になるためには、「自分には何が出来るのか」を常にチェックし、「出来ることリスト」を日々増やし続けていく必要があるようだ。
良くも悪くも世界の公用語は英語となった。
21世紀において何よりも大切なものは英語運用能力であり、それがないと仕事はもちろん、国外でボランティアや慈善活動を行うにしても、かえって活動の足手まといになってしまうという。
ここでは世界という舞台で活躍するための英語力をどう養えばいいのか、英語初級者のビジネスマンでも今すぐ実践できる学習法を紹介する。
中学英語レベルから怪しいです…という人は、まず中学の英語のテキストを手に入れましょう。そして、テキストについているCDを聞きながら、1日1時間、CDの音をひたすら真似して音読しましょう。
覚えようなんて考えなくていいです。ひたすらオウム返しでいいのです。
学習開始時の英語レベルに関係なく、1年も続ければ、繰り返した内容が頭の中で鳴るようになります。これは誰でもできるようになります。できなかったら努力不足ですね。
そして、中学のテキストが全て頭の中で鳴るようになれば、インターナショナル人材として必要な基本的な英語力が既に身についています。
この勉強法ではインタラクションが一切ないので、DMM英会話などのサービスを使って実際の対話を行うのも、一人で出張へ行って帰ってくる力を身につけるためには効果的ですね。
また中学英語の教科書を終えた後は、以下の教材にトライ。
これらの教材を、付属の音声を聞きながら繰り返し音読しよう。①の英検2級と準1級の内容が頭の中で自然に鳴るようになればマルチナショナル人材、②を含む全10冊をマスターすれば、ネイティブレベルだと言う。
ちなみに、①は特に高校生、②は大学生にもオススメの教材なので、将来、グローバルで活躍することを夢見る学生のみなさんにも参考にしてみて欲しい。
これらの教材は、高校レベル、大学レベルと学習レベルを上げていくごとに、「英語を勉強する」のではなく「英語で勉強する」段階へ自然にステップアップする。これが、ネイティブレベルの英語力を身につけるためのポイントである。
いかがだっただろうか。
これからのグローバルな人材「トランスナショナル人材」になるためには、語学だけでなく、マルチな文化や慣習への適応力、そしてマルチなスキルや才能など、多くの能力が必要となりそうだ。
しかしどれもこれも一朝一夕に身につくものではない。長い目で見た地道な努力が必要なのは明らかだろう。
だが諦めるのはまだ早い。かと言って、焦る必要もない。
「日系地球人である」という意識をしっかり持って行動すれば、だれでもグローバル人材になれるのだ。
まずは最重要の「英語」から取り組んでみてはいかがだろうか?
マルチナショナル組織とかなり近いですが、本社機能が複数の国に渡っていること、その国で行うことが最も効率的なことをその国で行う組織、そんな企業をトランスナショナル組織と呼んでいます。例えて言うなら、SONY さんとかがそうですね。
こうした企業組織は「地球を一つの国」として捉えています。この3段階の「トランスナショナル組織(企業)」まで達した組織が、「グローバル組織」だと考えています。