りっか
(更新)
2010年度全米文系学生就職先人気ランキングで、Google、Appleなどを抑えて一位を獲得した
"Teach For America" に端を発する、世界36カ国の教育ネットワーク "Teach For All"
その世界中のネットワークと協同し、日本教育の変革を牽引するリーダー、認定NPO法人 "Teach For Japan" CEO 松田悠介さん。
"世界経済会議(ダボス会議)" のイニシアチブの一つ、高い英語能力を必須とする "Global Shapers" の一員でもあり、世界中を飛び回って活動されている松田さんですが、
ハーバード大学留学以前は英語が非常に苦手で赤点レベル、留学時もなんと英語試験は合格基準を満たしていなかったということ。
そんな松田悠介さんの、ハーバード大学留学当時のお話しと現在について伺いました。
先ほど受付でカプチーノをお願いしました。
このように会社(DMM英会話)でカプチーノが出てくるというのは珍しいので、後ほど写真を撮ろうと思っています。(笑)
Teach For Japan は「教育機会の不均等の問題」に取り組んでいます。
その問題を、「お金ではなく人を通して解決していく」のが "Teach For Japan" です。
厳しい選抜プログラムとトレーニングを通過した、優秀で情熱のある人材を "フェロー" と呼び、問題を抱える学校などで実際に2年間教師として活躍してもらいます。
教育が抱える問題は様々ありますが、その中に「貧困の連鎖」という問題が存在しています。
貧困により学習の機会を得られない子供達が、学歴や知識の不足により仕事を得られず、そのまま大人になり、引き続く貧困により自分の子供に教育を受けさせることができないという連鎖の問題を、「すべての子供達に最高の教育を提供する」ことで解決していこうとしています。
また、フェローが教師として生活する2年間は、とても優れたリーダーシップを身につける経験となります。
リーダーとして成長するのみならず、また各界で活躍するのみならず、「教育問題に対する当事者意識」を持ったリーダーになる、というところが非常に重要なところです。
将来的には、社会全体を巻き込みながら、一番厳しい状況にいる子供たちを支援する社会インフラを整えたいと思っています。
(Teach For Japan についてさらに詳細はこちら)
はい、特に現在は英語教員のフェローを学校へ送っています。
英語教育にご興味のある方は是非ご応募いただければと思っております。
(フェロー応募についての詳細はこちら)
英語教育は変えていかなければなりません。
異国の言語を学ぶ喜びというのは、国籍や文化の違う人とつながるという瞬間や、新しいことを学ぶという瞬間から生まれる、知的好奇心、興味関心を引き出す喜びなどがあって初めて動機付けができると思います。
現在の日本の英語教育は異国の人や異文化の人とつながる前に、とりあえず日本人同士で、しかも文法やリーディング、ライティングから入る。
私にとっては、宇宙語を記号で覚えさせられているような感覚だったので、中学校、高校での英語のテストの点数はほとんど赤点に近かったです。
私が留学をしようと思ったのは教員1年目の終わりくらいで、その時から1年半くらい受験勉強したのですが、最初TOEFLのスコアアビリティは50点台でした。
これはまあひどいものでしたね。(笑)
自分自身の受けた英語教育もそうですが、中、高、大と英語を勉強しているにも関わらず、これだけ英語が話せないのは教育として改善を余儀なくされているのだと思います。
現在の英語教育について言うなれば、英語嫌いを輩出していると言っても過言ではありません。
Teach For Japan は、「英語を話せる楽しさ」を伝えられる人材に英語の教師として現場で活動してもらうことにフォーカスしています。
私は本当に教育と子供に思いがあって、教員になりました。
子供と向き合うことが本当に天職だと思っていて、これほどやりがいのある仕事はないと心の底から思っています。
しかし、中には子供と向き合い続ける情熱を維持することができない先生もいらっしゃいました。
色々とお話を伺うと、業務の多忙さや、学校にばかり責任をおしつける社会の風潮、学校をとりまく制度の問題の中で、情熱を失ってしまっていたんですね。
その頃から「どうすれば一人でも多く、子供と向き合っていくことのできる大人を増やしていけるんだろうか」と思索する日々が続きました。それともう一つ、「同じように熱い思いを持っている人たちのその思いが持続できる仕組みを作りたい」と考えました。
その時に思いついたのは「学校を創ろう」なんですね。自分の学校を創設し、賛同してくれる仲間たちを集め、「教育を受けたい」と願う子供たちに対して120%の力で教えていく、というのが最高の教育改革だと思っていました。
学校を作るということであれば、自分がリーダーシップやマネジメントを学んでいないといけないなって思ったんです。
今の学校というのは多忙感であったり、成果が何なのかよくわからない人事評価などマネジメントの課題がとても多くあります。
リーダーシップを発揮できる人材も少ない。
そもそも学校の管理職や校長になる人とは、リーダーシップやマネジメントを勉強してからなっているわけではなく、20年〜30年の現場の指導経験をもって校長試験をパスした人です。
そもそもリーダーシップやマネジメントを育む仕組みになっていないため、最終的に、このような結果が当然生まれるという問題意識を持っています。
自分が学校を創設するためにリーダーシップやマネジメントを勉強しようと考え、いろいろな大学を調べたんですが、自分がわくわくするようなプログラムは国内にはなかったんです。
MBAプログラムすらもなかったんです。
私は教育というコンテンツでリーダーシップとマネジメントを勉強したいと思っていたので、徹底的にいろいろ調べました。
最初はMBA留学しようと思っていたんですが、「ビジネスの中で問われるマネジメントと非営利のセクターや、教育というコンテクストの中においてどのように教育理論とリーダーシップ論というのを相互関係相乗効果を持たせながら学べるのだろうか」と考え、最終的にハーバード大学にしました。
ハーバード大学以外でも、非常にワクワクするプログラムがたくさんあるんですよね。
ハーバード大学も、その他の大学もすごくレベルが高いなって感じました。教えてる教授陣が違うんです。
プロフェッショナルスクールというのは日本のように大学を出てそのまま教授になるのではなく、民間で働いたり、学校で教員になったり、大学院に戻ってみたりと行ったり来たり。理論が理論だけで一人歩きせずに、理論と実践が融合されているというのが非常に印象的でした。
とても苦労しました。ただ、モチベーションを保つという点で、「勉強しながら行きたい学校について調べる」というのは非常に有効でした。
あの時は、体育教師として働きながら本当に体に異常が出てしまったくらいに勉強しました。
英語だけで朝と夕の部活動後に毎日4時間、週末は1日中勉強していましたが、
ただ単に「さあ、あの学校へ行くぞ」と決めて、ひたすら勉強のみを続けていたら、辛くてできなかったのかもしれないです。
学校についていろいろと調べながら勉強をしていたので
「こんな学校あるんだ、こんな生活があるんだ、こんな教授がいるんだ、こんな学科があるんだ」と、
常にワクワクしてモチベーションを高く保つことができました。
私の場合の独特な英語のアプローチ方法は、「単語帳を作って1分1秒でも無駄にしない」というものです。
もちろん論文なども取り寄せているので、リサーチがてら英語の文章は読んでいましたが、とにかく通勤電車も英語漬け、単語帳を使って歩きながら英単語を頭の中に詰め込んでいく。
単語を暗記するということはとても重要で、文章はそもそも単語の構成なので、単語がわからなかったら何を言っているのかわからない。
そういう意味で単語はとても大切で、ここは徹底して記憶しました。
その次にやったのが耳です。英語の音声教材を利用して、同じスクリプトを1日10回弱くらい聞くと、帰りにはなんとなくわかるようになっていいました。
そして喋ること。学校の中にALT(Assistant of Language Teacher)がいたので、毎日一緒にごはんを食べて話をしたり、アイリッシュパブなどで外国の方に話しかけてみたり。
自分も楽しみながら、モチベーションの維持をしながら英語を使うということを心がけていました。
あ、カプチーノが来たのでいただきます(笑)
私はそもそも試験での点数は基準をパスしていませんでした。
しかし、当時の授業や審査官、教授陣がどういうクラスにしていきたいかと考えたときに、学力以外の軸で当てはまったんです。
"Personal Statment" というものがあり、論文を書かなければいけないんですけれども、とても重要で非常に大きい。入学審査官も「非常に印象的だった」と言ってくれました。
自分の思いや経験などの、私自身が提供できる付加価値、アウトプット型の授業であればあるほど自分の付加価値というものはあったんじゃないかと思います。
最初の1学期は相当苦労しました。英語の点数が足りてないので「早くこい」と言われて。(笑)
通常の学期は9月から始まるんですが、私は7月からで、毎日ハーバード大学の先生から英語の特訓を受けました。非常に辛かったですね。(笑)
ハーバード大学入学に必要な英語の点数は、TOEFLの場合120点満点で112点でしたが、私は104点しかとっていなかったんです。ミニマムリクワイアメント(最低基準値)に達していなかったんです。
GRE(Graduate Record Examination)も、800点満点で日本人の留学生であれば650から700くらいは必要と言われていますが、私は400点前後しかとっていません。点数でいうと全然満たしていないですね。
おかげで学期が始まってからも、朝7時半には図書館について毎日2時くらいまで勉強していました。
大学では、毎週本何冊分も論文を読まなければいけないんです。
ハーバード大学の授業というのは、講義を受けるというより、「授業でインプットするな。この授業では教えないぞ。リーダーシップ論は頭に入れてこい。それをどう感じたのかアウトプットしろ」と。アウトプットしながら、議論をしながら理論を深めてくというものです。
まず論文の内容は全て事前に頭に入れておき、そして、自分がどう感じたのかってまとめてから授業に参加します。
他の生徒達は母国語ですから、こんなのは余裕なんです。彼らはパラ読みで要点を頭に入れることができますが、私は彼らの10倍くらい時間がかかるのでずっと図書館にこもりっきりでした。あまり英語ができなかった分、努力をしました。でも、努力したからこそ得られたものもたくさんある。
留学生活が終わるまでにディスカッションで貢献できたのかというと、頑張りましたし、成績もそれなりにいい成績もとりましたけれど、それは努力賞ですね。
初めの頃はやはり失敗をしました。
私は現地のアメリカ人達と一緒に寮に住んでいたんですが、朝食でたまたま一緒に話した人が通りすがりに "How’s it going?" と声をかけてくれるんです。
「調子はどう?」と聞かれているので、私は立ち止まって、「すごく授業が大変で」とか「アメリカの生活に慣れるのが大変で」とか一生懸命心情を語っていました。
そうしたらなんだか迷惑そうにしてるんです、とてもきまずそうに。(笑)
後々、「そんなのは通りすがりの挨拶なんだから "How’s it going?" て声をかけられたら、"Fine. And you?" とか返しとけばいい」と聞いてとても恥ずかしい思いをしました。最初の1週間くらい毎回しっかり答えていましたから。
私からすると、話しかけられたので答えていた、というだけなんですが、「調子どうよ」って聞いてくれているのに無視でいいの!? と思って、カルチャーショックを受けました。(笑)
私としては英語の練習になるので結構いいなと思っていたんです。同じことを通りすがりに声をかけられる度に言えるんですから。
一人に "How’s it going?" と声をかけられて答えて、階段を降りたら別の人にまた "How’s it going?" と聞かれて、同じ話が何度もできる。
最初の一週間の3日目くらいから、前日あった出来事を簡潔にまとめて、練習までして備えていました。
けれど声をかけてくれる人達の対応があまりにもひどいので、朝食を食べているときに
「なんでみんな "How’s it going?" て聞くくせにあんまり話しを聞いてないの?」と言ったら、
「あれって通りすがりの"やあ!"っていう感じなんだよ」と教わり、「ああ、そっか・・・」って。(笑)
全然知らなかったんです。教科書だと挨拶は "Hi Kumi, how are you? - I’m fine, thank you. And you?" ですから。
みんなが声をかけてくれて、「調子はどう?」と聞いてくれるので当然のように答えていました。(笑)
二つあります。
一つは学びの在り方です。
ハーバード大学の面白いところは、学びの場を設計しているというところです。多様なバックグラウンド、価値観の人たちが同じクラスメートになるように学力以外の軸で測って入学させている。年齢、性別から国籍、教員出身もいれば校長先生、政治家志望もいればコンサルタント、投資銀行員、弁護士など多種多様です。
みんな同じ理論をインプットするのだけれど、感じ方であったり、アウトプットすることがまったく違う。
自分が思いもしなかった見解を得られることがたくさんあり、学びのイノベーションのようなものを感じることができたというのはすごく印象深いです。
もう一つは "Teach For America" に出会えたこと。
これは非常に大きいことでした。たまたま講堂で予習しているときに人が集まってきて、満席になり、最終的にウェンディ・コップ(Teach For America創設者)の講演会が始まったんです。
私は何も知らなかったんです。Teach For America なんて知らなかったし、ウェンディ・コップも知らなかったし、その場で何かしらの講演が催されることすら知りませんでした。
Teach For America に出会ったのも偶然ですし、ハーバード大学に入学できたことも偶然でしたね。
ハーバード大学ではトップのリーダーたちを隔週のように招待し、様々な講演会をしていて、それを毎回聴けるというのはとても有意義なことでした。
Teach For Japan というのはグローバル組織で36カ国のパートナーがいるので、英語でのEmailのやりとりや電話会議は頻繁です。Teach For Japan 創設時も最初の2年間はTeach For All から職員や卒業生がコンサルタントとして常駐します。
ハーバード大学を卒業してからも毎日英語を使うので、おかげで帰ってきてから英語がすごく上達しました。今は結構ペラペラに話せるんです。
ハーバード大学時代の仲間が日本に遊びにくると、「悠介、本当に英語上手になったね」と言ってくれる。
ハーバード大学に留学していた一年という期間は自分にとってとてもいい期間でした。英語の土台を作ることができ、それをさらに仕事で使うというのがとても重要です。
英語が上達する環境を自分で作る。
そもそも、英語に限らずどのようなことでも「何かがしたい」っていうときには自分でその環境を作ることが大事だと思います。
私は日本で必死で英語を勉強してから留学しましたが、それでも大変でした。
私が感じるのは、英語を学ぶために留学してしまったらその他のことが学べないので非常にもったいないということです。
そもそも語学留学をしたとしても、言葉が通じない人達の中にいるとフラストレーションが溜まってしまって、日本人で固まり閉じこもる場合が多い。
留学は英語を学ぶために行くのでなく、英語はあくまで手段。
「その先に何をしたいのか」ということが何よりも重要だと思っています。
私であれば、教育論やリーダーシップ論を学ぶことでした。つまり、他者から学ぶということも含めて、ツールとして、「英語ができている」ことが前提です。
本当に、留学は英語はできている前提で行ったほうがいいと思います。でないと損をします。
本当に「新しい人と出会い、新しい学びを得たい」というのであれば、また、複雑化、グローバル化していく社会の中で生きて行くためには「英語」というツールは使いこなせた方がいいです。
英語が話せることで得ることのできるチャンスはたくさんあります。
私の体験だけで言うと、留学先で Teach For America に出会い、Teach For Japan を設立することになりました。今は仕事を通して海外の資金調達もしています。日本では寄付金がないとなると、海外へのアプローチを考えることが必然となります。そこでは英語でのコミュニケーションスキルがとても大事で、ただ文章だけを書くのみでなく、電話会議や、海外から来てくれた人を案内する力というのはとても重要です。
また、現在、Teach For All を始め、世界中で協力し合い課題解決を進めていく活動が活発になっています。実は日本独特の教育課題というものは存在しておらず、教育課題というのは世界共通課題なんです。
そういう様々な面からも、英語という世界共通言語を自分自身が使うことは必須であり、且つ、あらゆることを可能にしてくれる大変重要な能力です。
今もALTなどはありますが、外国の方と会話をする機会をいかに日常化していくか、という点を模索しています。日本にはこれだけ外国の方が住まれているのに、なかなか接点が見出せていません。そのような既に存在するリソースをどのように活用していくのか、ということも課題ですし、だからこそ教員というのはコーディネータになっていかなければならないと思います。
地域リソースを活用し、自分たちで新しい授業を作っていくリーダーシップを発揮できる人材を教師として活躍させたい。
また、英語を日本語の観点に落とし込み、言葉の本質を伝えることのできる日本人英語教師の質も高めていきたいです。
英語はあくまでもツールでしかありません。英語を学んでも、「何のために使うのか」という目的がないと意味がない。
どのような世界で何を成し遂げたいのか、というものがとても重要じゃないかなと思っています。
“where there is will there is a way” 自分の意思のあるところに道あり
という言葉があります。
何よりも大事なのは自分の意思。
英語というのは道を補強してくれる材料、もしくは、道を開拓をし、より遠くへ連れて行ってくれるドリルであると思います。
多くの方に、是非とも頑張っていただきたいと思います。
わたしも頑張ります。
『認定NPO法人 Teach For Japanからのメッセージ』
私たち、認定NPO法人Teach For Japanでは、「日本の全ての子どもが素晴らしい教育を受けることのできる社会の実現」を目指して、独自に選抜・育成した人材をフェローとして公立学校の教師として深刻な社会課題の解決に取り組む地域の学校に2年間送り出しています。
2年間、学校現場の課題解決に取り組んでいただいた上で、2年後に再びキャリアを選択していただき、それぞれの進路上での成功を支援しています。
フェローとして小学校、中学校英語教師になりたい方は「募集要項」を、団体への支援をご検討くださる方は「寄附・支援の方法」をご確認ください。
認知度向上のため、大きなイベントの企画にご協力いただける方も随時募集しております。
ご不明点がありましたら、info@teachforjapan.org・070-5372-2164(担当 武藤)までご遠慮なくご連絡ください。☆ クラウドファンディングサービス READY FOR? で資金調達に挑戦しています!ご支援をお願いいたします。「教育現場に情熱と多様な経験を兼ね備えた人材を送り出すための合宿型研修を実施したい!」詳細と支援へのご参加は、「こちら」から。
この日はさらに、DMM英会話事業部長 上澤貴生と「教育と未来」について対談をしていただきました!
二人の教育に対する知識と想いとがぶつかりあう白熱の対談、近日公開予定です。