多くの言葉を生みだしたシェイクスピアの魅力を徹底解説!
イギリスの文学をはじめ、英語という言語にまで多大な影響を与えたウィリアム・シェイクスピア。
英語圏に住む学生のほとんどが授業で学ぶ作品の、多くを生みだした人物でもあります。
今回は、イギリスの歴史上もっとも有名な劇作家として知られるシェイクスピアの魅力や、どのように英語という言語に影響をもたらしたのかを説明してみたいと思います。
シェイクスピアって誰?
ウィリアム・シェイクスピア (William Shakespeare) は、1564年にイギリスで生まれた詩人、劇作家、そして俳優です。彼は、イギリスのエリザベス朝時代とジャコビアン時代(*1)の演劇界で活動していました。
初期のシェイクスピアは主にロンドンで活動していました。そこで出版した「Venus and Adonis(ヴィーナスとアドニス)」(1593年)と「The Rape Of Lucrece(ルークリース凌辱)」(1594年)という2つの長編詩が彼のキャリアの始まりだと言われています。
また、俳優集団「The Lord Chamberlain's Men(ロード・チェンバレンズ・メン)」の創設メンバーでもあり、シェイクスピアはこの劇団の正劇作家として約20年間、年に平均2本の劇を上演しました。
シェイクスピアはその人生のなかで38編の戯曲、2編の物語詩、そして154編のソネットを書いたそうです。また、150作品以上の詩も執筆したと言われています。
*1…エリザベス朝時代は1558年 - 1603年、ジャコビアン時代は1603年 - 1625年を指します。
シェイクスピアの魅力
イギリスの国民的詩人、そして史上最高の劇作家とも呼ばれるシェイクスピアですが、なぜこれほど賞賛されるのでしょうか?
彼の作品は現在でも世界中で日々研究され、上演されていますが、これにはもちろん理由があります。
英語を標準化した
まず、シェイクスピアは英語を標準化した人物だと言われています。
実は、彼が活動するまでは英語のルールは特に定まっていなかったのです。彼の作品によって、文法や綴り、そして語彙のルールが徐々に決まり、英語は標準化されていきました。
詩や文学に大きな影響を与えた
シェイクスピアは詩や文学に大きな影響を与え、それは何世紀にもわたって続いています。
また、詩の基本となる「ブランクヴァース」を完成させた人物として挙げられるのがシェイクスピアです。ブランクヴァースは英語では blank verse と言い、日本語では「無韻詩(*2)」と呼びます。
*2… 1行のうちに弱強のリズムが5回繰り返され、規則的な韻律を持つが、韻は踏まない詩のスタイルです。
シェイクスピアが生みだした英単語・言い回し
シェイクスピアは約1,700個の英単語を作りだしたと言われています。
これだけ多くの言葉を作るのに、単語を組み合わせたり、名詞を動詞に変えたり、すでに存在する言葉に接頭辞や接尾辞を付けていたそうです。
では、どのような単語や言い回しが生まれたのかを早速見ていきましょう。
単語編
bedroom(ベッドルーム)
ベッドルームという言葉は「ベッド」と「ルーム」という別々の単語を組み合わせて、初めてシェイクスピアが使ったそうです。
当時は寝室のことを bed chamber(ベッドチェンバー)や sleep space(スリープスペース)と呼んでいたみたいですよ!
fashionable(ファッショナブル)
こちらは「Troilus and Cressida(トロイラスとクレシダ)」という悲劇のなかに出てくるセリフです。
「おしゃれ」ではなく、「時代に合った」という意味で使われていたそうです。
gossip(ゴシップ)
もともと名詞だった gossip という言葉を、初めて動詞として使ったのはシェイクスピアだそう。
名詞の gossip は ~to be a gossip のように be と組み合わせますが、シェイクスピアは to gossip と短縮し、動詞化したのです。
日本語では「ゴシップ(うわさ話)をする」と、名詞の形で使用しますが、英語ではどちらもよく耳にします。
lonely(ロンリー)
こちらは、シェイクスピアが lone(孤独)という言葉を形容詞化して、lonely(寂しい)という単語が生まれたそうです。
undress(アンドレス)
接頭辞の un- は not という意味で、元の単語の反対を表すときに使われます。
そのため、dress(着る)の反対は undress(脱ぐ)になるのです。
言い回し編
シェイクスピアは今でも使われている数々の言い回しを作りました。なかには以下のようなものがあります。
The world is your oyster
意味:世界はあなたのもの
実際には 「Why, then the world's mine oyster」というセリフですが、徐々にフレーズが変わり、今は「The world is your oyster」という形で耳にすることが多いです。
「君の可能性は無限大」や「世界は思いのまま」と捉えることもできますよ。
ちなみに、ここで使用されている oyster という言葉は「牡蠣」ではなく「真珠貝」を表しています。
Break the ice
意味:緊張や冷たい雰囲気をほぐす
こちらは、「The Taming of the Shrew(じゃじゃ馬ならし)」という喜劇で登場し、当初から比喩として使われていたそうです。
日本語でもアイスブレーカーと言うことがありますが、こちらのフレーズに由来しています。
A heart of gold
意味:思いやりのある優しい心
直訳すると「黄金の心」になるこちらの慣用句は、シェイクスピアの「The Life of Henry the Fifth(ヘンリー5世)」という史劇で初めて登場しました。
今ではよく知られているフレーズで、曲名や歌詞に使われることが多いですよ。
また、DMM英会話のオリジナル教材「デイリーニュース」でもシェイクスピアがなぜこれほど言葉を生み出せたのかという内容の記事があるので、気になる方はぜひ読んでみてくださいね!
おすすめの作品4選
シェイクスピアは一生のうちに実に多くの作品を手がけたということがわかりましたね。
ではここで、そのなかで筆者がおすすめする4選と名セリフをぜひ少しだけ見ていってください!
Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)
- ジャンル:恋愛・悲劇
- 初演公開日:1594-1596年
世界中で映画やミュージカル化されているこちらのタイトルは、1度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
思いやりのない世界でふたりの若者が恋に落ち、最後まで一緒にいようとする物語。長年に渡って人々の心を動かしている、切ないストーリーです。
「ロミオとジュリエット」にはどのようなセリフが登場するのでしょうか? 心に響く名言を選びましたので、ここでご紹介します。
Don't waste your love on somebody, who doesn't value it.
「ありがたみがない人のために愛を無駄にするな」
Value は「価値」という意味ですが、ここでは「ありがたみ」というふうに解釈することができます。
Love is a smoke made with the fume of sighs.
「愛とは、ため息でできた煙だ」
「ため息」で作られた煙が愛とは、こちらもかなり詩的で心に響くフレーズですよね。恋愛は良いことばかりではないと実感させるようなセリフです。
The Tragedy of Julius Caesar(ジュリアス・シーザー)
- ジャンル:政治劇・悲劇
- 初演公開日:1599-1600年
「ブルータス、お前もか」という言葉を聞いたことはありますか? 英語では「Et tu, Brute?」と言います。
こちらはシェイクスピアが手がけた政治劇・悲劇「ジュリアス・シーザー」で登場した名セリフで、「信頼していた者の裏切り」を意味する表現として今でも使われることがあります。
では、「ジュリアス・シーザー」にはこれ以外にどのような名言があるのか見てみましょう。
Men at some time are masters of their fates. The fault, dear Brutus, is not in our stars but in ourselves, that we are underlings.
「人はいつしか自分の運命を支配するようになる。親愛なるブルータス、我らが下っ端なのは星のせいではなく、私たち自身のせいだ」
自分の行いを他人のせいにするのではなく、自ら反省をしなければならないという教訓ですね。
The evil that men do lives after them; The good is oft interred with their bones.
「人が行う悪は、その後も生き続ける。善はしばしば骨と一緒に埋葬される」
こちらも、悪いことはするなという教訓。悪い行いは人々の記憶に残るが、良い行いはすぐに忘れられるという表しです。
ちなみに、このセリフに出てくる oft という言葉は、often(しばしば)の古い言い方です。
Hamlet(ハムレット)
- ジャンル:悲劇
- 初演公開日:1599-1601年
世界でもっとも賞賛されている復讐劇、「ハムレット」。
デンマークの王子であるハムレットが、父親の死と、父親の兄弟で後継者であるクローディアスと結婚した母親との闘いに苦しむ様子が描かれています。
そしてもちろん「ハムレット」にも、数多くの名セリフがあります。
Give every man thy ear but few thy voice.
「誰の話でも聞いてやれ、しかし自分のことはあまり話すな」
現代の言葉に言い換えると、「Listen to many, speak to a few」になります。聞くことは大事だが、喋りすぎるのは良くないという意味です。
To be, or not to be. That is the question.
「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」
こちらは「ハムレット」から生まれたもっとも有名なセリフで、ハムレットが生と死について悩んでいる場面で登場します。
Macbeth(マクベス)
- ジャンル:悲劇
- 初演公開日:1606-1607年
「マクベス」は、「ハムレット」、「オセロー」、「リア王」と並ぶシェイクスピアの四大悲劇のひとつです。そのなかでは最も短い作品であり、最後に書かれたものだと言われています。
この劇は、「友人、ローマ人、同胞、私にあなたの耳を貸してください (Friends, Romans, countrymen, lend me your ears)」で始まる登場人物の政治家マーク・アントニーの演説で有名で、このスピーチはシェイクスピアの独白のなかでもっとも有名なもののひとつです。
では「マクベス」からはどのような名言が誕生したのか早速見ていきましょう。
Fair is foul, and foul is fair.
「良いは悪い。悪いは良い」
Fair という言葉は「美しい、正しい」という意味合いを持ちます。そして foul は「汚れた、不正な」ということを表します。
これらの単語を等しく並べることで、「良さや美しさのなかには悪があり、悪さのなかにも正しさがある」というなんとも難しい概念が表現されています。
また、「一度美しかったものはいつか醜くなる」という捉え方もできます。
Things without all remedy should be without regard: what’s done, is done.
「やり直しのきかないことは、くよくよ考えるべきではない。終わったことは、終わったこと」
要約すると、「済んでしまったことは考えても仕方がない」という意味のフレーズです。
Remedy は「治療法」という意味の英単語です。どうすることもできない出来事についてはもう考えるべきではないことを表しています。
おわりに
いかがでしたか?
シェイクスピアの偉大さについて少しでもわかっていただけましたでしょうか。
言葉作りから、歴史上でもっとも有名なセリフを世に送り出したシェイクスピア。
筆者はアメリカで高校時代を過ごしたので、英語の授業で上記で紹介した作品はすべて読みました。
当時読んでいたときは難しくて意味がわからなかったのですが、今思えばシェイクスピアの表現力や想像力は本当に超人的なんだなと改めて実感しました。
また、デイリーニュースにも「A Beginner's Guide to Shakespeare」という記事があります。次の英会話レッスンで使える豆知識にもなるかもしれません。気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。