後藤知子
(更新)
こんにちは。「使える英語ドットコム」の後藤です。
クリスマスパーティやイベントで盛り上がる12月。イルミネーションで輝く街には大きなクリスマスツリーが飾られ、ロマンチックなひとときを過ごす幸せそうなカップルが目に止まります。
人口の9割以上がローマ・カトリック教徒であるマルタでは、クリスマスにどんなことをするのでしょうか。マルタにはキリスト教に関連する行事がいろいろありますが、そのなかでも、クリスマスはイースター(復活祭)と並ぶ重要なイベントの1つです。
ということで今回は、マルタのクリスマスについて詳しくお話しします。
まずはクリスマスについての基礎知識を追ってみましょう。ここでの内容を頭に入れておくと、マルタだけでなく、本場ヨーロッパのクリスマスをより楽しむことができます。
キリスト教では、クリスマスは「イエス・キリストの降誕」、つまりキリストがこの世に誕生したことを記念する日です。12月25日がキリストの「誕生日」だと思っている人が多いですが、聖書に実際の日にちを示す記述はありません。
キリストは馬小屋で生まれた、という話を聞いたことがありますか? 新約聖書の「ルカ福音書」によると、マリアは精霊によりイエス・キリストを受胎しました。
そのころローマ帝国は、イスラエルすべての人に故郷へ戻り住民登録をするよう命じました。マリアも夫のヨハネと共に故郷であるベツレヘムに向かいましたが、宿を見つけることができなかったので、かわりに馬小屋に宿泊することにしました。その馬小屋が、イエス・キリストが降誕した場所と言い伝えられています。
私たち日本人が考えるクリスマスの定番は「クリスマスツリー」ですが、マルタの伝統的な装飾品は、キリストが降誕したシーンを表現した「クリスマスクリブ」(“Christmas Crib”、もしくは “nativity scene” とも呼ばれる) という模型です。
クリブは飼い葉桶に横たわるイエスを中心に、それを見守るマリアとヨセフ、イエスの降誕を祝う「東方の三博士」や羊飼い、天使や動物達のフィギュアで構成されています。
もとはイタリアで13世紀にはじまったクリスマスの装飾(プレセピオ:クリブを表すイタリア語)で、17世紀ごろからマルタの教会でも飾るようになったそうです。
マルタの宗教グッズ店では、クリスマスの時期になるとクリブにちなんださまざまな商品が売られます。最近はプラスチック製のものが多いそうですが、家族代々受け継ぐ昔ながらのクリブを大切に飾っている人もいます。
9割以上がカトリック教信者であるマルタ人にとって、クリスマスだけは特別です。24日と25日の間におこな行われるMidnight Mass(真夜中のミサ)には、マルタ中の教会が賑やかな雰囲気に包まれます。
マルタのクリスマス礼拝では、選ばれた地元の子ども達が説法をします。また、礼拝の前後はキャンドルを手にして、キャロルを歌いながら町を練り歩きます。数ヶ月がかりで準備をするそうで、家族や地元の人たちがとても楽しみにしている行事です。
また、バレッタの「聖ヨハネ大聖堂」では、例年クリスマスキャロルのコンサートもおこなわれます。
クリスマスが近くなると、外観をなぞるように施されたイルミネーションで、マルタ中の教会がライトアップされます。
町の大通りには、クリスマスのシンボルである鈴や星、ひいらぎなどの電飾がキラキラ光ります。窓際やバルコニーに飾り付けをする家も多いので、それを眺めて歩くだけでもクリスマス気分を楽しめますよ。
バレッタの目抜き通り「リパブリックストリート」のイルミネーションは年々豪華になってきていて、電飾に映える中世の街並みを散歩する人々で賑わいます。
また、バレッタのシティゲートにある国会議事堂前には、毎年「イムディーナグラス」(Mdina Glass) というガラス工房が制作したクリスマスツリーが飾られます。
イエス・キリストの降誕地とされているパレスチナの「ベツレヘム」を再現したものが、クリスマス期間中、マルタのゴゾ島、アインシーレム(Ghajnsielem) にオープンします。
このビレッジには羊飼いやパン屋、鍛冶屋、村を巡回するローマ兵士といった当時のベツレヘムを象徴するキャラクターに扮するキャストがあちこちにいて、マーケットでも商人風の衣装に身を包んだ人が地元の食べ物やワインを売るなど、クリスマスの村の様子を表現しています。
パン屋さんには美味しいパンの焼き方を、広場にいるローマ人役には、モザイクの作成方法などを気軽に尋ねてみてください。
一番の見どころは、馬小屋で生まれたイエスと、寄り添うメアリーとヨセフです。「降誕したイエス役」はゴゾ島出身の赤ちゃんが担当します。
12月10日と1月7日はベツレヘムの物語に関したイベントがおこなわれます。ビレッジは期間中終日オープンしていますが、キャストがいる日時と時間帯は限られています。詳しくはウェブサイトをご覧ください。
マルタのクリスマスの伝統的な装飾であるクリブ。 “Friends of the Crib” という協会が存在するほど人気で、作り方の指導などもおこなっているようです。
熱心なアマチュアが数ヶ月以上かけて作成するオリジナルクリブは、キリスト降誕の物語を表現するだけではなく、マルタの風景を思わせる岩山や巨石神殿、鳥猟をするハンターがいたりなど、工夫が凝らされています。
クリブの展示会は、12月上旬あたりからマルタ各地でおこなわれています。会場の目印は “Wirja”(ディスプレイ) や “Presepji” (プレセピオ)と書かれた大きな垂れ幕で、無料で一般公開されています。バレッタやイムディーナで展示されるクリブは見ごたえがありますので、ぜひチェックしてください。
24と25日は家族が集まり家庭料理を食べるのが伝統ですが、最近は、レストランで食事会をするケースも増えているそうです。
もっとも人気なのは、豪華なホテルバイキングです。クリスマス料理の定番である七面鳥やローストビーフ、イギリス発祥の「ミンスパイ」や「クリスマスプディング」などのスイーツを試してみたい人にもおすすめです。
マルタにある主要ホテルのヒルトンやウエスティンホテルなどで、クリスマスの特別ディナーが提供されています。真夜中のクリスマス礼拝が終わった後、その足で朝食を食べに行くこともできますよ (Early Christmas Breakfast)!
場所や時間帯によっては1ヶ月前から予約でいっぱいになりますので、興味のある方は早めに予約しましょう。
マルタのクリスマスについてお話しましたが、いかがだったでしょうか。
カトリック教を重んじるマルタ人は、ほかの欧米諸国と比べてもより伝統的なクリスマスを過ごします。みなさんも、日本では味わえない本場のクリスマスを、ぜひマルタで体験してみてください。