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ハンドスピナーはゾンビ化のツール?ロシアが調査へ【デイリーニュースで振り返る2017 vol.11】

ハンドスピナーはゾンビ化のツール?ロシアが調査へ【デイリーニュースで振り返る2017 vol.11】

こんにちは、エリックです。

DMM英会話の大人気教材である『デイリーニュース』から毎回気になるニュースをピックし、英語のポイントだけでなく文化や歴史、イマの社会情勢などにも触れながら紹介する『デイリーニュースで振り返る2017』。

今回は『ロシアが調査、ハンドスピナーを選挙キャンペーンに使用か』です。

「ハンドスピナー」とは、世界中で大人気のおもちゃのこと。英語では "fidget spinner" と呼ばれます。

今回のニュースは、そんなハンドスピナーが、ロシアのプーチン反対派勢力によって支持者を集めるために使用されているのではないかとして、ロシアの消費者監視団体が調査をする運びになった、というもの。

ハンドスピナーを調査ってどういうこと?と思われた方も多いのではないでしょうか。

ことの始まりはロシア国営のテレビ局の報道。放送された番組ではハンドスピナーが「ゾンビ化」のツールであり、また「一種の催眠術」であると説明されたのです。

これだけ聞いてもまだピンと来ないことでしょう。本記事では、今回の調査が行われることになった背景と、その一連の流れに対する海外メディアの反応も見ていきたいと思います。

ロシアが調査、ハンドスピナーを選挙キャンペーンに使用か

"Fidget Spinners as Campaign Goodies? Russia Probes Claims"
『ロシアが調査、ハンドスピナーを選挙キャンペーンに使用か』
July 28, 2017

上記記事より英文を一部抜粋し、解説していきます。
※全文はこちらからご確認いただけます。

【ニュース本文】
<英文>
Russian authorities are investigating fidget spinners after state television reported that opposition activists are using them to attract supporters.

State-owned Rossiya 24 put out a report last month, claiming the popular toys were sold at opposition rallies and that online advertisements for them lead to YouTube channels promoting opposition politicians.

<和文>
ロシア当局は反対派勢力が支持者を引き付けるためにハンドスピナーを使用しているという国営テレビの報道を受け、調査を開始している。

国営(テレビ局)ロシア24は先月、人気のおもちゃが反対集会で販売されていることや、その(おもちゃの)オンライン広告が野党の政治家を宣伝するYouTubeチャンネルにつながると主張する報告を伝えた。

解説

"state-owned"「国有の」という意味。"state" は自治権のある「国」「国家」の他、米国などの「州」も表します。

【ニュース本文】
<英文>
Fidget spinners - toys usually made of metal designed to keep small hands occupied - have taken the world by storm in recent months.

Russia's consumer watchdog said in a statement that it is concerned about “an aggressive promotion of spinners” among children and teenagers. The Consumer Oversight Agency said it has teamed up with researchers to “study the influence” of fidget spinners on children's well-being.

<和文>
通常金属から作られていて、子どもたちが手のひらの上で熱中するようデザインされているこのハンドスピナーは、ここ数カ月の間で一世を風靡した。

ロシアの消費者監視団体は声明の中で、子どもや10代の若者たちの周りで行われている「ハンドスピナーの強引な販売促進」を懸念していると述べた。 ロシア消費者権利保護・福祉監督庁は研究者らと共同し、子どもの健康に対するハンドスピナーの「影響について調査する」と語った。

解説

"small hands" は直訳「小さな手」ですが、ここでは「子供の手」というニュアンスで使われています。"watchdog"「番犬」「監視役」の意味があります。

ハンドスピナーとは

「ハンドスピナー」はアメリカ発祥のおもちゃで、本来はストレス解消が目的とされているようです。最近では日本でもよく見かけるようになりました。

英語名 "fidget spinner" の "fidget"「そわそわする」「いじくりまわす」のような意味があり、指などでプレート部分を回転させ、その様を眺めたりして遊びます。

海外ではあまりにも人気のため、下の動画のような「もうハンドスピナーはうんざりだ!」系の投稿もSNS等で多く見られます。ハンドスピナーの基本的な遊び方もこちらの動画を見ればなんとなくわかるかと思います。

アレクセイ・ナワルニーという男

アレクセイ・ナワルニーという男性の存在を知っておくと、今回のニュースはより理解しやすくなります。

ナワルニー氏はロシアの弁護士、政治活動家。

彼はロシアの汚職問題やプーチン大統領への批判で注目を集めていて、国民に大規模なデモへの参加を呼びかける指導者として知られています。主にインターネット上のブログを通じて情報を拡散しています。

国際的な影響力を持つ新聞、The Wall Street Journalは2012年に彼のことを"The Man Vladimir Putin Fears Most"(プーチンが最も恐れる男)と紹介(*1)。

2014年にナワルニー氏は「進歩党」を結成し、「反汚職」「リベラル」「新欧米」などを掲げ、党首として活動し、ロシアの若者の支持を多く集めています。

そんな彼は、自身が主催し、2017年3月下旬に行われた反腐敗デモで逮捕されました。

そのデモは2011年と2012年の大統領選時のデモ以来最大規模のもので、90以上の都市で数千人が集まりました。ロシア当局はデモ行為を「違法」と警告しており、ナルワニー氏を含め500人以上もの逮捕者が出たといいます。

参加者の半数は20歳未満の未成年で、インターネットから情報を得る若い世代だった、ということも一つ重要な点です。

それでは今回、ロシアの消費者監視団体が調査すると発表したおもちゃ「ハンドスピナー」と反プーチン指導者「ナワルニー氏」との関係性を見ていきましょう。

ロシアはハンドスピナーによる「ゾンビ化」を危惧

ハンドスピナーはこれまで、気が散るからという理由でアメリカのいくつかの学校で禁止されたり、Bluetoothスピーカー搭載のものが爆発したりと、様々な問題も発生しています。

しかしロシアは、また別の角度からハンドスピナーによる悪影響を懸念しています。

ナワルニー氏率いるプーチン反対派勢力の集会でハンドスピナーが販売されていたそうで、これについてロシア国営のテレビ局である Rossiya 24 は、反対派勢力が支持者、特に若者を集めるためにハンドスピナーを使用していると報道。

西洋などでは人気がピークを過ぎたこのおもちゃですが、ロシアでは現在人気絶頂となっています。それはなぜなのか?誰が広めているのか?

Rossiya 24 は番組内でこのような疑問を呈し、「ハンドスピナーを広めているのは反プーチン勢力である」としました。

さらに、アメリカ発祥のハンドスピナーの爆発的人気はアメリカの陰謀であり、「ある種の催眠術」、そして「ゾンビ化のためのツール」であると主張したのです。(*2)

番組内でハンドスピナーが反政府団体の支援に使用されている「証拠」としてあげられたのは、「ナワルニーからのスピナー」と書かれた横断幕、英語しか書かれていない商品パッケージ、そしてナワルニーが自身の裁判でこのおもちゃを手に遊んでいたということ。

先述の集会の参加者の多くがハンドスピナー人気を支えている若い世代だったこともあってか、ロシアの消費者監視団体はこの報道を受け、ハンドスピナーの子供に対する影響(悪影響含む)について調査をすると発表したわけです。

海外メディアの反応

さて、このニュースを読んで、みなさんはどのような感想をお持ちでしょうか。

ここではロシア以外の海外メディアの反応をいくつかピックアップしてみましょう。

The New York Times

The West in general and the United States in particular are hatching all manner of diabolical anti-Russian plots, if reports in the state-controlled news media are to be believed.

Yet the latest example of what is being portrayed as American skulduggery might be a stretch, even by the elastic standards of Russian television.

<和訳>
ロシアの国営メディアの主張を信じるのであれば、西洋諸国、特にアメリカは様々な極悪非道な反ロシアの陰謀を計画していることになります。

しかし、アメリカの陰謀として説明されている今回の件は、今までのロシアのテレビの基準からしても、ちょっと無理があるのではないでしょうか。

引用:
https://www.nytimes.com/2017/07/18/world/europe/russia-fidget-spinner-plot.html

GIZMODO Australia

There are a lot of strange and unsettling things going on with the investigation of collusion between the Trump campaign and Russia in its efforts to influence the 2016 US election. There are also a lot of absolutely insane theories going around. Next time you hear something wild, search your soul and ask yourself if it would it sound as completely stupid as this does.

<和訳>
2016年の選挙でのトランプ米大統領とロシアの共謀に関する調査で、人々を不安にさせるような不思議なことがたくさん起こっています。そしておかしな説もたくさん出回っています。次にあなたが何かトンデモな話を聞いたら、自分に聞いてみてください。それが今回のニュースほどばかげたものかを。

引用:
https://www.gizmodo.com.au/2017/07/russian-government-investigating-fidget-spinners-a-political-technology-that-controls-children/

THE VERGE

While fidget spinners have actually posed problems (…) that they are being used as a zombifying recruiting tool for vulnerable youth seems laughable, even for Russia.

<和訳>
ハンドスピナーは実際に今まで問題を起こしてきたこともありますが、(…)無防備な若者の支持を集めるためのゾンビ化ツールとして使われているというのは、たとえロシアの主張だとしてもばかばかしく感じます。

引用:
https://www.theverge.com/2017/7/19/15997990/russian-media-fidget-spinners-opposition-tool-zombify-youth

まとめ

いかがでしたか?

「ハンドスピナーを調査」の意味がわかりましたでしょうか。

ロシアはハンドスピナーの人気がアメリカの陰謀で、反プーチン勢力の支援のためのゾンビ化ツールではないかと怪しんでいるのです。

若者に人気のおもちゃですから、若い世代に興味を持ってもらうためのツールという捉え方は理解できます。が、催眠術のような効果が実際にあるのかどうかは、ロシア当局の調査結果を待ちたいですね。

今後もプーチン反対派勢力や、それを率いるナワルニー氏の動向に注目していきましょう。

ニュースを読むだけでなくその文化的な背景を知ること、より深く理解することで、英語学習もより楽しくなるのではないでしょうか。
今後もデイリーニュースで楽しく英語を勉強していきましょう!

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【参照】
(*1) http://archive.is/01P8
(*2) http://www.newsweek.com/fidget-spinners-vs-putin-russian-state-media-warns-toy-will-turn-kids-against-636096