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アメリカに根強く残るマイノリティ差別のリアル【デイリーニュースで振り返る2017 vol.2】

アメリカに根強く残るマイノリティ差別のリアル【デイリーニュースで振り返る2017 vol.2】

こんにちは。
カリフォルニア生まれ、日系アメリカ人のエリックです。

DMM英会話の大人気教材である『デイリーニュース』から毎回気になるニュースをピックし、英語のポイントだけでなく文化や歴史、イマの社会情勢などにも触れながら紹介する新連載『デイリーニュースで振り返る2017』。

今回はその第2弾、ピックした記事は『新硬貨、アフリカ系女性として“自由の女神”を描く』です。

人種差別問題などのセンシティブな話題にも触れていきますので、留学、移住などで、今後アメリカで生活をする予定の人にはぜひ読んでいただきたい内容になっています。

それではいきましょう!
 

アメリカ新硬貨アフリカ系女性として“自由の女神”を描く

"New Coin Shows ‘Lady Liberty’ as African-American Woman"
『新硬貨、アフリカ系女性として“自由の女神”を描く』
(January 30, 2017)

上記記事より英文を一部抜粋し、解説していきます。
※全文はこちらからご確認いただけます。

 
【解説】
"Lady Liberty" は「自由の女神」の別名。

"Lady" が「レディ」で "Liberty" は「自由」ですね。

同じような表現で "Lady Luck" というのもあります。こちらは「幸運の女神」という意味です。

"Mint" は「造幣局」。
もちろんチョコミントとかの「ミント」という意味もあります。

アメリカには多くの人種の人がいるので、「アジア系アメリカ人」のように呼ばれ、英語では "Asian American" のように表現します。

「日系アメリカ人」なら "Japanese American" となります。形容詞として使う場合は、ハイフンでつなげることが多いです。

※"Indian American" は「インド系アメリカ人」という意味ですが、「ネイティブアメリカン(先住民)」の意味で使われることもあります。

今回は「インド」はアジアに含まれていることと、造幣局ツイッターが「ネイティブアメリカン」のことであると訂正している(下記参照)ため、上記のように訳しています。先住民を指す場合は "Native American" が好まれますので、ご注意ください。

 

上:「プレスリリースで "designs representing… and Indian-Americans" とありますが、"Indian-American" とは "Native-Americans" の意味でしょうか?」
下:「はい、ネイティブアメリカンです。謝りがあったことをお詫びいたします。」

 

アメリカが抱える人種差別問題

アメリカにおいて、ダイバーシティは一大トピックです。

筆者もまさに人種のるつぼであるカリフォルニアで生まれ育ち、さまざまな文化や思想を持つ人々に囲まれて生きてきました。そうした多種多様な考えを持つ人々が集まっていること、これはアメリカの大きな特徴であると言えます。

一方、人種差別も依然として大きな問題となっています。軽いステレオタイプから、根深い人種差別や白人至上主義まで、多くの問題は完全になくなったわけではありません。

テレビなどのメディアでもたびたび話題になっていますが、現在ではトランプ大統領の誕生によって、多くの移民やマイノリティーに影響が出ています。

今回のニュースは、特にアメリカの文化と人種の多様性、また、ダイバーシティの概念がどれだけ普及してきたかを象徴するものだと思います。

 

初の黒人の自由の女神

「史上初、硬貨に黒人の自由の女神が登場する」

アメリカで人種差別の問題がとりあげられるときは、黒人に関する話題であることが多いです。オバマが史上初のアフリカ系大統領になったように、メディアや音楽界をはじめとする芸能界、また一般市民に関しても黒人の地位は向上してきました。

一方で、現代でも黒人に対する差別は根強く残っています。最近では警察によって非のない黒人が射殺されるという事件も相次いでおり、このような差別に対して、"Black Lives Matter"(黒人の命は大事だ)と抗議する表現をよく耳にするようになりました。

このように、「アメリカの人種差別」「ダイバーシティ」といえば、黒人が思い浮かぶ人は多いのではないでしょうか。

しかし日系アメリカ人として、今回のニュースで特に嬉しかったのは "Asian-American"(アジア系アメリカ人)の自由の女神も将来登場するという点です。

「ダイバーシティ」「人種差別」の対象はなにも黒人だけではないのです。

 

マイクロアグレッション

みなさんは「マイクロアグレッション」という言葉をご存知ですか?

マイクロアグレッション(microaggression)とは、多くの場合、無意識的で悪意のない差別的な言動など、異文化に対するステレオタイプなどの偏見から、相手を傷つけてしまう可能性がある発言や行動を指します。

このような軽度な人種差別を受けるマイノリティーはアメリカにたくさんいます。

アジア系のアメリカ人に対するステレオタイプも多くあり、例えば、アジア人は英語が下手、運転が下手、頭がいい、背が低い、目が細いなどです。

「え、アジア人なのに成績微妙なんだね」
「アジア人なのに運転上手だね!」
「アジア人の割には背が高いね」

アメリカに住むアジア系の人の多くはアメリカで生まれ育ち、アメリカ国籍を持つ「アメリカ人」。同じ「アメリカ人」なのに、このような小馬鹿にしたような差別的発言が「マイクロアグレッション」です。
 

マイクロアグレッションのリアル

これからご紹介するものは、アメリカの写真家Kiyun氏が、学生が経験したマイクロアグレッションをプラカードに書いてもらい、撮影したものです。

出典
http://nortonism.tumblr.com/post/68892136749/nortonism-here-are-10-photos-out-of-22-from

「白人と同じだけ見えるの?ほら、目があれだから…」

こちらは「アジア人は目が細い」というステレオタイプから来ている発言ですね。「アジア人」というだけでこのように言われることがあるのです。

出典
http://nortonism.tumblr.com/post/68892136749/nortonism-here-are-10-photos-out-of-22-from

「いや、本当はどこから来たの?」

"Where are you from?"(どこ出身なの?)という質問に対して、例えば筆者の場合「カリフォルニア」と言えば、写真のメッセージのように "No, where are you really from?"(いや、そうじゃなくて、本当はどこから来たの?)のように返されることが少なくありません。

こうした差別的発言は「アメリカ人=白人」という思い込みから起きます。「白人」だってもともとはヨーロッパ等の国から来ているのに、変な話だと思いませんか?

以下はちょっと大げさですが、上記のような例を面白おかしくした動画です。

リスニングの練習にもなると思いますので、ぜひ一度見てみてください。
聞き取りづらい場合は英語の字幕があります。

これは、アジア系の容姿だからといって、「アメリカ人ではない」と決めつけ、暗に「あなたの居場所はここではない」と伝えているシーンを表現しています。

あまりピンとこないかもしれませんが、日本でも最近テレビに出ている芸人で、容姿は外国人だけど日本で育ったために英語は話せず、日本語はペラペラということがありますよね。

彼らは「日本人」として育っています。でも「外国人」の容姿なので、特に初対面の人なんかには「どこから来たの?」「日本語上手だね!」と言われることも多いと思います。

筆者も日本に来たばかりの頃は、日本人顏なのに日本語が下手で、よく周りから怪訝な顔をされました。

小さなことだと思うかもしれませんが、外見だけを見て、自分が生まれ育った国や自分の居場所だと思っていた場所でよそ者扱いされること、そしてそれが一度だけではなく日常的に続くこと、これが実は結構キツイんです。

アメリカでアジア系の人が警察に射殺されるなどの過激な話題はあまり聞きませんが、黒人をはじめとする全てのマイノリティに対して、さまざまな面で「平等」と言えるまでにはまだ時間がかかりそうです。

今回の黒人の自由の女神の登場、そして来るアジア系などの自由の女神コインは、アメリカ国民全員が人種関係なく「アメリカ人」として受け入れられる日への大きな一歩なのではないでしょうか。

 

おわりに

いかがでしたか?

ニュースを読むだけでなくその文化的な背景を知ること、より深く理解することで、英語学習もより楽しくなるのではないでしょうか。

今後もデイリーニュースで楽しく英語を勉強していきましょう!