誤発表だけじゃなかった!異例続きの今年のアカデミー賞【デイリーニュースで振り返る2017 vol.3】

こんにちは。
ハンバーガー大好き、日系アメリカ人のエリックです。

DMM英会話の大人気教材である『デイリーニュース』から毎回気になるニュースをピックし、英語のポイントだけでなく文化や歴史、イマの社会情勢などにも触れながら紹介する新連載『デイリーニュースで振り返る2017』。

今回はその第3弾、ピックした記事は「『ムーンライト』が有力候補『ラ・ラ・ランド』を破る番狂わせで最優秀作品賞を受賞」です。

日本のニュースでも大きな話題になった「最優秀作品賞の誤発表」以外にも、実はさまざまな「異例」な事態が起きていた今回のアカデミー賞。多くのアメリカ国民が視聴する一大イベントなだけに、アメリカの「今」を色濃く表していました。

本記事では、前代未聞の誤発表、授賞式から見えた映画界の政治的な立場、そしてアカデミー賞のあまり華やかではない面などにも触れていきます。ハリウッドに興味がある方や、アメリカの社会問題に興味がある方にもぜひ読んでいただきたい内容になっています。
TOP Photo:Helga Esteb / Shutterstock.com
 

最優秀作品賞の歴史的な誤発表


'Moonlight' Upsets 'La La Land to Take Top Oscar Prize - Best Picture
『ムーンライト』が有力候補『ラ・ラ・ランド』を破る番狂わせで最優秀作品賞を受賞
(February 28, 2017)
上記記事より英文を一部抜粋し、解説していきます。
※全文はこちらからご確認いただけます。

【解説】

"fiasco" とは「大失敗、失態」の意味。"unprecedented" は「前例のない」という意味です。
"race" は「競争」(名詞)や「競争する」(動詞)の意味がありますが、ここでは「大急ぎで向かう」といった意味で使われています。

【解説】

"seesaw"(シーソー)は公園によくある遊具のことですが、動詞になると、その遊具のように「上下する、変動する」という意味になります。

ここでは、ドナルド・トランプ氏への "jab"「批判的なコメント、嫌味」と "passionate arguments for inclusivity"「包括性(多様性)への情熱的な主張」の間を行ったり来たりしていた、というようなニュアンスになっています。

シーソーの片方に "jab" が、もう一方に "arguments" が座っていて、順番に上がったり下がったりしている様子をイメージしてもらえると理解しやすい のではないでしょうか。
 

誤発表の瞬間

アカデミー賞の中でも「最優秀作品賞」は最重要部門であり、授賞式のクライマックスで発表されます。
今回の場合、本当の受賞作品である『ムーンライト』ではなく、『ラ・ラ・ランド』が誤って発表されてしまい、混乱を招きました。原因はプレゼンターに渡された封筒が「最優秀作品賞」ではなく「最優秀主演女優賞」のものだったため、であるとされています。

プレゼンターの一人であるウォーレン・ベイティ氏は、封筒を開けると異変に気付き(最優秀作品賞なので、女優の名前ではなくプロデューサーの名前が書いてあるはずなのに『ラ・ラ・ランド』主演女優の『エマ・ストーン』の名前が書いてあった)、もう一人のプレゼンターのフェイ・ダナウェイ氏に封筒を見せます。

するとダナウェイ氏はそのまま『ラ・ラ・ランド』を最優秀作品賞として発表してしまいます。

下の動画を見ると、ウォーレン・ベイティ氏が戸惑っているのがわかりますね。

ツイート:「オスカー最優秀作品賞に『ラ・ラ・ランド』が発表されるも、『ムーンライト』が本当の受賞作品であるとの間違いが発覚する。」

この大失態は、票を集計する機関の会計士、ブライアン・カリナン氏が間違った封筒を渡してしまったことが原因とされています。

カリナン氏は舞台裏で最優秀主演女優賞を受賞したエマ・ストーンの写真をツイッターに投稿するなど、SNSに気を取られていた可能性があるとしているメディアもありますが、そのツイートは後に削除されています。

ツイート:「ブライアン・カリナンは昨日の大失態の直前に投稿したこのツイートを、削除しました。気が散っていた?」

視聴者の反応

今回の騒動は大きな話題となり、SNS上でも多くの反応がありました。

ツイート:「この画像がオスカーの全てを表している。」

こちらの画像は誤発表が発覚した時の会場のゲストの表情です。

下のようなコラージュ画像も多く見られました。

ツイート:「こうだったならよかったのに…」
画像:「ヒラリー・クリントン アメリカ合衆国大統領」

実はこのような事件が起きたのは初めてではないのです。

以前、ミス・ユニバースの決勝で優勝者が誤発表されるということがありました。

その時の司会者がスティーブ・ハーヴィ氏というアメリカのコメディアンで、彼が今回のアカデミー賞の後、以下のようなツイートをしています。

ツイート:「みんなおはよう!昨日は早めに寝たんだ。で…何かあった?」
(授賞式翌日のツイートです)

こちらはその時の映像。0:30あたりからが誤発表の映像です。

 
"Steve Harvey moment"(スティーブ・ハーヴィの瞬間)という表現で今回の騒動を説明しているメディアも多いです。
 

政治色の強い授賞式

2017年を振り返る中で(まだ3月ですが)、どのニュースに関してもトランプ氏の話題は避けて通れません。そして今回のアカデミー賞授賞式も例外ではありませんでした。

最後の誤発表が衝撃的過ぎて、式の他の場面は埋もれてしまった感がありますが、今回の授賞式は非常に政治色の濃いものでした。
 

司会者ジミー・キンメル氏のジョーク

アカデミー賞授賞式の司会者、ジミー・キンメル氏はジョークでトランプ氏へメッセージを送りました。

こちらの動画がその様子です。ご興味のある方はぜひ見てみてください。
字幕ボタンを押せば英語字幕が出るので理解しやすいと思います。

まず、動画の0:20〜0:30でジミー氏は次のように言っています。

This broadcast is being watched live by millions of Americans and around the world in more than 225 countries that now hate us.
「この授賞式は多くのアメリカ国民と、私たちを嫌う225以上の国で放送されています。」

さらに2:55〜3:10では、次のような皮肉たっぷりの「お礼」も

Maybe this is not a popular thing to say, but I want to say thank you to President Trump. I mean remember last year when it seemed like the Oscars were racist? That’s gone! Thanks to him.
「これは多くの人が言うようなことじゃないと思いますが、私はトランプ大統領にお礼が言いたいです。だって、去年オスカーが人種差別的だと言われていたのを覚えていますか?あれは綺麗さっぱりなくなりましたね!彼のおかげです。」

昨年はアカデミー賞が「白人偏重」だと騒がれました。こちらについては後ほどまた触れますが、トランプ氏が批判の的になっているおかげでアカデミー賞はそんなこと言われなくなった、ありがとう!というジョークですね。

7:30〜8:00では、トランプ氏が「過大評価されている女優」とツイートしたメリル・ストリープ氏について話しています。

Meryl, stand up if you would. Everybody please join me in giving Meryl Streep a totally undeserved round of applause, will you? The highly overrated Meryl Streep, everyone. We’re gonna have fun tonight. I hope we’re gonna have fun tonight. Nice dress by the way, is that an Ivanka?
「メリルさん、立っていただけますか?みなさん、メリル・ストリープに完全に受けるに値しない拍手を。非常に過大評価されているメリル・ストリープさんです。今夜は楽しくなりますよ。楽しくなれば嬉しいです。ところでそのドレスいいね、それイヴァンカの?」

ストリープ氏は会場内のゲストからスタンディングオベーションを受けます。「イヴァンカ」はトランプ氏の娘の名前であり、彼女がプロデュースするファッションブランドの名前でもあります。

ちなみにストリープ氏は、アカデミー賞に史上最多の20回ノミネートされています。
 

トランプ氏宛のツイート

キンメル氏はジョークを炸裂させるだけにとどまらず、授賞式の途中でなんとトランプ氏のアカウント宛にツイートを送りました。

「番組が始まってから2時間以上経っているのに、ドナルド・トランプが1回も私たち宛にツイートしていません。ちょっと彼のことが心配になってきました。」と言って、以下のツイートをトランプ氏宛に送信したのです。

ツイート:「やあ、トランプさん。起きてる?」

ツイート:「#メリルがよろしくだって」

こちらは先ほどのメリル・ストリープ氏のことですね。
 

メキシコ出身プレゼンターが「壁」に反対

トランプ氏と言えばな「壁」に対する意見もありました。

ツイート:「メキシコ人として、ラテンアメリカ人として、移住労働者として、人間として、私は、私たちを隔てようとするどんな壁にも反対です。」

イラン人監督、授賞式をボイコット

「外国語映画賞」受賞のイラン人監督、アスガー・ファルハディ氏は、アカデミー賞授賞式をボイコットしました。
その理由を次のように手紙を通して述べています。

My absence is out of respect for the people of my country and those of other six nations whom have been disrespected by the inhumane law that bans entry of immigrants to the U.S.
「自国の人々と、移民の米国入国を禁ずる非人道的な法律によって軽蔑された他の6カ国への敬意から、私は欠席しています。」

今年の授賞式が政治色強めになったのは必然かもしれません。ハリウッドや映画界の政治的な姿勢がよくわかりますね。
 

白人偏重から黒人偏重へ?

先に述べたように、昨年のアカデミー賞は「白人偏重」だと批判を浴びました。
しかし今年は「黒人偏重」なのではないか、との批判の声もあります。

最優秀作品賞は、前代未聞の誤発表の後、黒人の少年の成長を描く『ムーンライト』が受賞しました。

今年のアカデミー賞では多くの黒人俳優にスポットライトが当たるなど、去年と打って変わって「黒人偏重」になっているのではないかと一部で批判を受けているのです。
 

その他のマイノリティ

前回の「デイリーニュースを振り返る 2017 vol.2」で、黒人以外のマイノリティ差別の問題について触れました。

アカデミー賞などでも、黒人以外のマイノリティが全くいない、選出されていないとの声が多いです。アジア人役に白人がキャスティングされるなんてこともよくあります。

昨年のアカデミー賞授賞式では司会者のクリス・ロック氏が、ジョークで「会計士」役の子供3人をステージに登場させました。

アカデミー賞の票の集計を行なっている機関の会計士を紹介すると言いステージに呼んだのですが、そこに現れたのが3人のアジア人の子供だったのです。
そのときの映像がこちら。

これは、「アジア人がみな勤勉で数学に強い」というステレオタイプによるジョークでした。そしてこの3人の子供達は、事前にこのようなジョークのオチに使われるとは知らされておらず、契約が結ばれた後に初めて知ったようなのです。

このジョークに対して多くのアジア系アメリカ人の著名人が反発しました。

この一件がステレオタイプによる差別的なジョークであると、また、アジアの児童労働に関する不適切なオチだったとの理由で、ロック氏は非難の的となってしまったのです。

ツイート:「アジア人有名人がクリス・ロックの趣味の悪いジョークに抗議し、アカデミーが謝罪」

一見褒め言葉にもとれるこのステレオタイプですが、ステレオタイプが定着するということに問題があるのです

その理由が下のツイートでわかりやすく説明されています。

ツイート:「ジョージ・タケイがクリス・ロックのオスカーでのアジア人ジョークを酷評」
画像:「私はステレオタイプには非常に敏感である。それがどんなに温和な、無害なもののように思えてもだ。なぜなら、たった一度の悲劇的な事件が起これば、そのステレオタイプが私たちに対して使われる凶器になるからだ。」

こちらのジョージ・タケイ氏は、アメリカの人気テレビドラマシリーズ『スター・トレック』に出演していたことで有名な日系アメリカ人です。

アメリカ生まれ、アメリカ国籍のアメリカ人であるにもかかわらず、第二次世界対戦中、まだ幼い彼は強制収容され、「容姿が日本人であるから」という理由だけで被害を受けています。ステレオタイプの本当の怖さを知っている彼だからこそ、その発言の重みも増します。

今年のアカデミー賞では多くの黒人がノミネートされ、一見映画界がダイバーシティに満ちた未来に向かっているように見えるかもしれません。

しかし実態は、こういったマイノリティの差別問題も残っていたりするのです。
 

おわりに

いかがでしたか?

みなさんの中には、ニュースなどで今回のハプニングをご存知だった方も多いかもしれません。

しかし、一大イベントであるアカデミー賞では、他にもアメリカの「今」を知ることができる多くの要素がありました。

そして、一見華やかに見えるアカデミー賞でも、実は根深い人種差別問題の批判の的になっていたりもするのです。

ニュースを読むだけでなくその文化的な背景を知ること、より深く理解することで、英語学習もより楽しくなるのではないでしょうか。

今後もデイリーニュースで楽しく英語を勉強していきましょう!