Erik
(更新)
こんにちは。
日系アメリカ人のエリックです。
DMM英会話の大人気教材である『デイリーニュース』から毎回気になるニュースをピックし、英語のポイントだけでなく文化や歴史、イマの社会情勢などにも触れながら紹介する新連載『デイリーニュースで振り返る2017』。
今回はその第6弾、ピックした記事は『トランプの慈善活動に関する調査がピューリッツァー賞を受賞』です。
『ピューリッツァー賞』とは、新聞などの印刷報道、文学、作曲に与えられるアメリカで最も権威ある賞で、コロンビア大学ジャーナリズム大学院が運営しています。
特に特集写真部門と速報写真部門は、受賞作品が映し出す壮絶な光景に毎年注目が集まります。
本記事では、今年のピューリッツァー賞受賞作品を紹介しながら、それらの背景にあるアメリカの社会問題について触れていきます。アメリカの社会問題やメディアに興味がある方にはぜひ読んでいただきたい内容になっています。
TOP PHOTO: Gil C / Shutterstock.com
"Investigation of Trump's Charity Wins Pulitzer Prize"
『トランプの慈善活動に関する調査がピューリッツァー賞を受賞』
(April 16, 2017)
上記記事より英文を一部抜粋し、解説していきます。
※全文はこちらからご確認いただけます。
“magnate” は「有力者」や「大物」という意味。
"real estate" は「不動産」なので “real estate magnate” で「不動産王」のような意味になります。
"raise doubts"(疑いを起こさせる)と “call into question”(問題にする)は、どちらもニュアンス的には「疑問を投げかける」に近いです。
"expect" は「期待する」「予期する」のような意味です。
ここでは "can expect to see more of me on Twitter"「ツイッター上でもっと私を見ることを期待できる」→「ツイッター上でもっと私を見ることになるだろう」のような意となり、「私と関わるのはこれが最後じゃない、これからもっと頻繁に見かけることになるだろう」的なニュアンスが含まれています。
ピューリッツァー賞は、その年を象徴する出来事の報道や写真などが受賞することが多いです。
特にアメリカの今が読み取れるいくつかの作品を、その背景とともに見ていきましょう。
この1年、アメリカで最も話題になったのは間違いなくトランプ氏でしょう。
上記デイリーニュース記事でも、ピックアップされていたファーレンソールド記者(以下、F記者)がトランプ氏に関する報道で国内報道部門を受賞した、とありました。
F記者はトランプ氏の慈善活動に関して、ツイッター上のフォロワーに協力を求める形で調査を進め、その非常に透明性の高い調査方法と、大統領選真っ最中のトランプ氏に関する報道の内容は大きな話題となりました。
彼はトランプ氏が本当に各慈善事業に寄付をしたのかについて調査し、またトランプ氏自身の慈善団体の資金流用についても報道しました。
I've now called 313 charities in my search for proof @realDonaldTrump gives his own money away. Not much luck lately pic.twitter.com/2ZelpZu48b
— David Fahrenthold (@Fahrenthold) 2016年9月2日
ドナルド・トランプが自分のお金を寄付している証拠を探して、現時点で313の慈善団体に電話をしました。最近はあまりうまくいっていないです。
※ファーレンソールド記者は、トランプ氏が「払っていない証拠」ではなく「払った証拠」を探すと言って調査を開始しました。もちろん本心は違うでしょう。
さらに大きな話題となったのはトランプ氏の女性軽視発言。
そのような調子で大統領に就任してからも話題が尽きないですが、今後もトランプ氏の動向には注目していきましょう。
特集写真部門は、アメリカ中西部の新聞シカゴ・トリビューンのジェイソン・ワムスガンズ(E. Jason Wambsgans)氏が受賞しました。
受賞作品は、シカゴでの銃撃事件の犠牲者の10歳の男の子とその母親のフォトエッセイです。銃撃事件の後に元の生活を取り戻そうとする姿を映しています。
Chicago Tribune photographer wins Pulitzer Prize https://t.co/43nwKHAgPf pic.twitter.com/vBpobvEKlH
— ChicagoBreaking (@ChicagoBreaking) April 10, 2017
こちらの画像は、フォトエッセイのうちの1枚。
犠牲者の男の子の手術前の写真です。
シカゴはアメリカ第3の都市。近年銃撃事件が急増し、アメリカで最も重犯罪が多い都市となっています。
昨年の殺人件数は過去20年で最多の762件に達した、とシカゴ・トリビューン紙は伝えています。
全ての写真はこちらで見られます。
特集写真部門とニュース速報写真部門の作品は、ピューリッツァー賞の中でも特にインパクトの強い部門で、惜しくも受賞を逃してしまった作品にもアメリカの今が色濃く表れています。
ジェイク・メイ氏は、フリント市の水道汚染に関する報道で特集写真部門のファイナリストとなりました。
Jake May of the Flint Journal was a finalist for the 2017 Pulitzer Prize in Feature Photography. pic.twitter.com/65zHRSA2g0
— NPPA (@NPPA) April 10, 2017
ミシガン州フリント市は深刻な水道汚染に悩まされている地域です。
かつてはゼネラルモーターズの企業城下町として栄えていましたが、工場の閉鎖によって経済が破綻。ヒューロン湖を水源としていましたが、支払能力がなくなったフリント市はやむなくフリント川から取水を始めました。
しかしこのフリント川の水質が悪く、水道管が腐食、水道管の鉛が水道水に溶け出すなどしました。
この汚染水を使用したフリント市の住民に多くの健康被害が出ているにも関わらず、州の対応が遅れてしまったのです。これについて、フリントは人口の過半数が黒人で、貧困層が4割を超えるとされており、人種差別が背景にあるのではとの批判もあります。
ニュース速報写真部門では、写真家ジョナサン・バックマン氏の作品がファイナリストとなりました。
Congratulations to @Reuters contributor Jonathan Bachman, @PulitzerPrize finalist for Breaking News Photography! pic.twitter.com/85HVm1MIC6
— PR Team at Reuters (@ReutersPR) April 10, 2017
こちらもまた昨年を象徴する1枚で、「見た事がある」という方もおられるのではないでしょうか。
武装した大勢の警官の前に、静かに一人立っている黒人女性。
アメリカでは警官によって黒人が射殺される事件が相次ぎ、これらの事件に対して抗議デモが多く行われました。この女性もそのデモの参加者の一人でした。
いまだに根強く残る人種差別に対して、静かながらも力強く抗議する彼女の姿勢がアメリカ中で賞賛されました。
ジョナサン・バックマン氏の写真とプロフィールはこちらで見られます。
時事漫画部門は、マイアミ・ヘラルド紙のジム・モーリン氏が受賞しました。
The Miami Herald's @morintoon wins the #Pulitzer Prize for editorial cartooning. See his work here: https://t.co/IAY62Cxerp pic.twitter.com/jgXB5Rv3CB
— Miami Herald (@MiamiHerald) April 10, 2017
こちらの画像はモーリン氏による受賞作品のうちの一つです。
I pledge allegiance to Donald Trump, and his properties, brands, and investments, and to the profits from which I benefit...
「私はドナルド・トランプと、彼の財産、ブランド、投資、そして私が得をする利益に忠誠を誓います…」
“I pledge allegiance...” というのは、アメリカ国民なら誰もが暗記している “Pledge of Allegiance”(忠誠の誓い)というアメリカへの忠誠心の宣誓からきているのですが、コミックではトランプバージョンに変更されています。
この「忠誠の誓い」は公式行事でしばしば暗唱され、小学校の朝の会などで、生徒全員が右手を左胸にあて、星条旗に向かって唱えます。
実際の「忠誠の誓い」は以下のとおりです: