映画「クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asians)」がハリウッドを変える。 全米で大ヒットの理由と重要性【デイリーニュースで振り返る2018 vol.8】

こんにちは、エリックです。

DMM英会話の大人気教材である『デイリーニュース』から毎回気になるニュースをピックし、英語のポイントだけでなく文化や歴史、イマの社会情勢などにも触れながら紹介する『デイリーニュースで振り返る』。

今回のニュースは『映画クレイジー・リッチ!、公開早々全米で大ヒット』です。

現在アメリカで話題沸騰中のこちらの映画。なんと「今後のハリウッド映画を変える」とも言われており、テレビのトーク番組などで主要キャストを見ない日はないほど、世間もメディアも注目している作品です。

邦題は「クレイジー・リッチ!」となっていますが、原題は Crazy Rich Asians。このタイトルに、これほどまでに注目されている理由の一つのヒントが含まれています。

今回は映画「クレイジー・リッチ!」アメリカで大ヒットの理由と、今後のハリウッドにとって本作のヒットが重要な理由についてご紹介します。
 

映画クレイジー・リッチ! 公開早々全米で大ヒット

今回のニュースはこちらです。

Crazy Rich Asians Has Early Success in American Theaters
『映画クレイジー・リッチ!、公開早々全米で大ヒット』
August 26, 2018

上記ニュースより英文を一部抜粋し、単語や文法等の解説を交えながら、関連情報やネットの反応等を見ていきましょう。

全文はこちらからご確認いただけます。
 

Crazy Rich Asians 予想覆す大ヒット

【ニュース本文】
<英文>
The movie version of the popular novel Crazy Rich Asians received a warm welcome in American theaters and has been praised as a young, fun, romantic comedy. More than $8.5 million worth of tickets were sold in just two days.

<和文>
人気小説クレイジー・リッチ・アジアンズを映画化した作品が、米国の映画館で温かい歓迎を受けており、若々しく、楽しいロマンチック・コメディとして高い評価を受けている。 たった2日間で850万ドル以上に相当するチケットが販売された。

* "movie version" は「劇場版」の意味。他に "adaptation(脚色)" という表現もよく使われます。

8月15日の公開後、最初の週末の興行収入が2500万ドル(約27億6000万円)で初登場首位になり、5日間の興行収入は3400万ドル(約37億5000万円)を超えました。

公開後2度目の週末を迎えるも、その人気は衰えず、脅威の前週比「-6%」を記録しました。多くの話題作が前週比「-50%」も珍しくない中、「クレイジー・リッチ!」の数字は衝撃だと言います。

辛口の評価で知られる映画批評サイト Rotten Tomatoes では93%の高評価を得ており、専門家の予想を大きく覆し、全米で大ヒットとなっています。
 

ストーリー

まずは予告編をぜひ見てみてください。

大方のあらすじは以下の通りです。

【ニュース本文】
<英文>
In the movie, Constance Wu plays Rachel – a young economics professor from New York City. Rachel is in a happy relationship with Nick Young, played by Henry Golding.

The relationship is going well until the time comes for Rachel to meet Nick’s family in Singapore. On the plane, Rachel learns that the Young family is extremely rich and powerful. And after arriving, Nick's mother makes it clear that she doesn't think Rachel is good enough for her son.

<和文>

映画の中でコンスタンス・ウー演じるレイチェルは、ニューヨーク出身の年若い経済学の研究員だ。 レイチェルはヘンリー・ゴールディング演じるニック・ヤングと恋人関係にある。

交際は順調だったが、それもレイチェルがシンガポールに暮らすニックの家族に会うまでであった。 飛行機の中でレイチェルは、ヤング一家が莫大な富と権力を持っていることを知る。 到着すると、ニックの母親はレイチェルが自分の息子にはふさわしくないということをはっきり告げる。

アメリカで生まれ育ったアジア系アメリカ人のレイチェルが、恋人であるニックの超お金持ち家族に会いにシンガポールへ行く、というストーリー。

「神よりもお金持ち」と言われる名家出身のニックと、言葉通り住む世界が違うレイチェルは、その格差やニックの母親とのバトルを乗り越えてハッピーエンドを迎えることができるのか…。

そんなラブコメ映画です。英語では "rom-com(romantic comedy)" と言います。
 

「クレイジー・リッチ!」大ヒットが映画界にとって重要な理由

映画「クレイジー・リッチ!」がこれだけ注目されている理由はいくつかあります。

ここでは主な理由を見ていきましょう。
 

キャスト全員がアジア人

まず、大きく取り上げられているのは「主要キャスト全員がアジア人」という点。

同様にメインキャストがアジア人だった映画は、実に25年ぶりとのこと。しかもこのような異色な作品が初登場1位を記録するのは初めてなのではないかというくらいの偉業なのです。

ハリウッド映画は、歴史的に主役やメインのキャラクターに白人俳優を起用してきた事実があります。アメリカの映画といえば白人が主演、のようなイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか?

では、そもそも何故「主要キャストがアジア人」の映画がこれほどまでに少ないのでしょうか?
 

映画におけるホワイトウォッシング

「アジア人が中心の映画はヒットしない」という従来からのネガティブな考えがあり、そのためか、白人以外の役柄に白人が配役されることがよくあります。これを「ホワイトウォッシング(whitewashing)」と呼びます。

例えば、有名な例では日本の「攻殻機動隊」という漫画を原作としたハリウッド映画「ゴースト・イン・ザ・シェル」では、アジア人の主人公役に白人女性のスカーレット・ヨハンソンが抜擢されるなど、本来アジア系のキャラクターが白人の俳優によって演じられた例は多くあります。

アメリカでは「ゴースト・イン・ザ・シェル」のキャスティングはホワイトウォッシングだと、各方面から批判され、その影響もあってか、興行収入では当初の予想を下回る結果となりました。

他にも日本の漫画が原作の例だと、ハリウッド版「ドラゴンボール(DRAGONBALL EVOLUTION)」の主演、孫悟空役も白人男性が演じました。

「ハリウッド版なんだから白人の役者が演じて何がおかしいの?」と感じる方もいるかもしれません。これを理解するために重要な単語の一つが「レプリゼンテーション(representation)」です。
 

アジア系アメリカ人のレプリゼンテーション

「レプリゼント(represent)」は和訳すると「代表する」や「典型となる」のような意味。例えば何かの組織の「代表」は、その組織を「レプリゼント」する人なので、"representative(代表)" と呼ばれます。

映画においては、自分と同じ、もしくは似た容姿やバックグラウンドのキャラクターが登場することで、人々は「レプリゼント」されていることになります。今回の場合は、マイノリティであるアジア系の人々がレプリゼントされています。

日本人が大多数を占める日本では、映画に関しては、このような概念はあまり話題になりません。

が、昨今アメリカでは「ダイバーシティ」という言葉がとても大きな力を持つようになっています。それはハリウッドにも影響し、キャストの大半を黒人がつとめた映画「ブラックパンサー」の記録的大ヒットからもわかります。

つまり「クレイジー・リッチ!」はアジア系アメリカ人にとっての「ブラックパンサー」的作品であり、今後のアジア系アメリカ人の画面上、さらには社会的なレプリゼンテーションにつながると期待されているのです。
 

なぜレプリゼンテーションが大事か

さて、なぜ「レプリゼンテーション」がそんなに大事なのか、なぜ「ホワイトウォッシング」に怒りを覚える人が多いのか、まだピンと来ていない人もいるかもしれません。

アジア系のアメリカ人は、容姿はアジア人でも、生まれも育ちも、通った学校も、多くの場合は国籍も、白人やその他のアメリカ人と同じです。ですが、マイノリティです。

人種差別は今も根深く存在していますし、家での文化が周りの人とは異なることがあります。そしてメディアではレプリゼントされることが圧倒的に少ない。

では、親や祖父母の世代が離れた国へ戻れば、そこで完全に受け入れられるのかと言えばそうではありません。アメリカで育ち、価値観も考え方もアジアで育った人とは違うアジア系アメリカ人は、アジアへ行ってもマイノリティなのです。

どこに行っても「部外者」扱いされる。自分はどこの社会にも居場所がない。そう感じてしまうこともあるでしょう。

今回「クレイジー・リッチ!」を観て、大画面に映る自分と同じ容姿や中身を持った人間が主役を演じていることに多くのアジア系の人々が感動を覚えました。

もちろん、今までの映画でも「アジア人」は登場してきましたが、そのほとんどが笑いのネタにされるようなオタクキャラや、武術を使いこなす悪役など、典型的なステレオタイプな外国人役。アメリカで育ったアジア系の人とは似ても似つかない存在でした。

日本に住む日本人は映画の中のステレオタイプにいちいち怒りを感じないかもしれませんが、アメリカに住むアジア系アメリカ人にとってはこれが唯一のレプリゼンテーションなのです。

ネガティブなレプリゼンテーションしかないということは、社会的にそれほどの価値しかない、というメッセージを常に受け取り続けることと同じなのです。

「クレイジー・リッチ!」はステレオタイプではない、実際の「アジア系アメリカ人」やその文化を忠実に表現していることが大きなポイントなのです。アジア系の人々も社会の一部である、という貴重なメッセージが多くのファンの心を動かしたのです。
 

何より映画自体が面白い

ここまで主に「アジア人がメインキャスト」という点に注目してきましたが、もちろんそれだけでは映画はヒットしません。

「クレイジー・リッチ!」は、辛口の評価で知られる映画批評サイト Rotten Tomatoes では93%の高評価を得ており、さらには "rom-com(ラブコメ)" というジャンル自体を復活させる力があるとまで言われています。

今回は「主要キャストがアジア人」という事実が大きく話題になりましたが、今後、同じような映画がたくさん出てくるようになり、アジア人やその他マイノリティのキャラクターがハリウッド映画で正しくレプリゼントされる日が来ることが、この映画を支持する多くの人の願いです。

「クレイジー・リッチ!」はその第一歩として、大きな役割を果たしたと言えるでしょう。
 

映画を見た人の反応

それでは実際に映画を見た人の反応を見てみましょう。

この映画がハリウッド映画界やアメリカ社会全体、そしてアメリカに住むアジア系の人々にとってどのような意味があるのかを読み取ることができます。

みんな、「クレイジー・リッチ!」を見て!私は今日この映画を見て大号泣した。なぜなら、私はアジア系アメリカ人で、アジアの文化とアジア系アメリカ人の文化がぶつかるのを大画面で見たとき、やっと私の存在が認められたように感じた。

白人社会の中で育った韓国系アメリカ人として、「クレイジー・リッチ!」は私が青春時代に必要としていたことの全て。他人化やエキストラだけじゃない。今回だけは、私たちがデフォルトのように感じた。白人はいつもこういう気持ちなのだろう。私たちのために作られた美しさ、ロマンス、ファンタジー。すごい。もっとくれ!

「クレイジー・リッチ!」がシングルマザーとその娘に関する強いメッセージもあるとは聞いてなかった。私は号泣してた。クレイジーなくらい号泣してたよ。

これを言ってどれくらいの価値(*)があるかわからないけど、「クレイジー・リッチ!」は2回目の方が面白い。1回目はただ大画面にたくさんのアジア系の顔が映っていることが信じられなかった。今回はちゃんと笑いあり涙ありのラブコメとして観ることができた。

(*)チケットもう1枚、16ドル。ぜひ。

「クレイジー・リッチ!」後は、東アジア系の役者を見つけることができなかった、というのは言い訳にならないと気づくといいんだけど。

「クレイジー・リッチ!」観てきて、最高だった!!レプリゼンテーションは本当に大事。キャスト全員がマジで美しかった。

西洋で育ったアジア系の人々は、これまで自身の住む世界に広く無視されてきた。「クレイジー・リッチ!」は、そんな彼ら彼女らへのラブレターだ。

「クレイジー・リッチ!」を観て映画館で泣いた。アメリカの映画で初めて自分の文化の一部を見たから。中国語を話してたんだよ!そんで餃子作ってた!アジア系の美しさで!もう、本当に。

みんな今週末「クレイジー・リッチ!」観に行こう!最高。ジョン・チュウ監督、おめでとう。

「クレイジー・リッチ!」を観るにあたって思うこと:
人々はレプリゼンテーションの力をわかっていない。大画面に尊敬できる人が映ることは強力だ。その人物が自分と似ている場合は特に。主要な役に自分が映っていることは大事なこと。そうすれば自分も自身の人生の主役になれる。これらのキャラクターやストーリーは自分の一部になる。長すぎる間、アジア系の人々は自分のストーリーを持つ機会がなく、他の誰かのストーリーの脇役でしかなかった。永遠の外国人、もしくは武道家のキャラクターとしか自分が重ならなかった10歳の頃の私はきっと、キャストが全員アジア人の映画を観たら大喜びしただろう。そして22歳の私もそうだ。これはただの映画じゃない、始まりなんだ。

まとめ

いかがでしたか?

「アジア系が中心の映画はヒットしない」というネガティブな印象を見事に覆した「クレイジー・リッチ!」。

映画にアジア人がたくさん出ているからという理由だけで騒ぎにならないほど、映画界においても社会全体においても、人種や容姿、様々な違いの垣根がなくなる日が来ること。世界中に存在する多くのマイノリティの切なる願いです。

「クレイジー・リッチ!」の日本での公開は9月28日です!ぜひ!

ニュースを読むだけでなくその文化的な背景を知ること、より深く理解することで、英語学習もより楽しくなるのではないでしょうか。今後もデイリーニュースで楽しく英語を勉強していきましょう!

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