Yuki Toy
(更新)
ハリウッド映画や海外ニュース映像などで、スターが指でVをつくる「ピースサイン」を見たことのある人は多いと思います。日本では、写真を撮るときの「はい、チーズ!」でおなじみですよね。
しかし、アメリカにおける「ピース」とは、ただのポジティブなジェスチャーとは限りません。もともとこのサインにはどんな意味があり、どのようにして用いられ、どのようなときに使われているのでしょうか? 今回は、そんなピースサインの真実に迫ります。
1960年代のベトナム戦争中に、平和と愛の象徴としてアメリカやイギリスの若者を中心に多く用いられたピースサイン。現代でも、その名の通り「ピース(平和)」を表現するときや、平穏な感情、フレンドリーさを表現するときに使われています。
反戦運動により自由主義を掲げた若者らは、ヒッピーやフラワーチルドレンと呼ばれ、人間に擦り付けられた価値観や文明を否定し、「自然へ帰れ」派的な態度を露にしました。自由、フリーラブ、平和、そして自然を愛し、 ファッション、文学、歌などによって反戦を表現していきます。
イギリスのロックバンド「ザ・ビートルズ」のメンバー、ジョン・レノンは、自由主義の象徴的な存在として敬われ、彼が作曲した反戦ソング「イマジン」「ワー・イズ・オーバー」は、今日でも有名な楽曲です。
また、日本生まれのアーティストである妻のヨーコ・オノと共に行ったパフォーマンス「ベッド・イン」は、「戦うよりも、ベッドで愛を深めよう」というコンセプトでピースサインを掲げ、人々の支持を得ました。
また、終戦に尊敬を表すという形で両手のピースサインを掲げたリチャード・ニクソン元大統領の写真はあまりにも有名です。嫌われ大統領であった彼が、若者の共感を受けようと意識したことがうかがえる一枚です。
海外のドラマや映画の中で、会話をしながらピースサインをした両手の指を数回折り曲げる仕草を見たことはありませんか? 「なんだこれ?」と理解に悩む日本人は多いのではないかと思います。
実はこの仕草、英文を書くときに使われる「ダブルクオーテーション(“ ”)」を指で表現しています。発せられた言葉に裏の意味がある場合、または言葉に皮肉が込められている場合に使われています。
アメリカでは「Air Quotes:エアークオーツ(空中台詞)」と呼ばれることもあり、文化的なジェスチャーとして会話中に頻繁に用いられています。
アメリカンなカジュアルトークが満載のコメディドラマ「フレンズ」では、このエアークオーツジェスチャーが日常会話の中に頻繁にちりばめられています。
中でも、知的でいい人だけれどちょっと神経質なキャラクターのロスは、この仕草の達人。アメリカでは、皮肉たっぷりの「キング・オブ・エアークオーツ」として有名です。
下記の会話は、エアークオーツがジョークとして使われた有名なワンシーン。友人であるジョーイが、衝動に駆られロスの元カノであるレイチェルにプロポーズしてしまったことを謝りに来るシーンです。
Joey:Technically, I didn't even do anything wrong!
ジョーイ:「厳密にいえば、おれは何も悪いことをしていないぞ!」Ross:What? You…you didn't do anything wrong?
ロス:「なんだって? 君は…君は何も悪いことをしていないって?」Joey:I…I said I didn't technically…
ジョーイ:「厳密には…っていったんだよ…」Ross:Ok, let's put aside the fact that you “accidentally” picked up my grandmother’s ring, and you “accidentally” proposed to Rachel?
ロス:「君が “うっかり” おばあちゃんの指輪を拾って、“うっかり” レイチェルにプロポーズしたっていう事実はそっちのけか?Joey:Can I stop you right there just for a second? When people do “this”, I don't really know what that means.
ジョーイ:「ちょっと待って。“この” しぐさってさ……意味わかんないんだよね」Ross:「……」
Joey:And you are saying?
ジョーイ:「それで?」Ross:And I can even understand that you couldn't tell Rachel, but why couldn't you tell me? Huh? You had all day to, and you didn't.
ロス:「レイチェルには言えなかったとしても、どうして僕に教えてくれなかったんだ? え? 時間はいくらでもあっただろう」Joey:I know, I should’ve! …I’m “sorry”.
ジョーイ:「わかってるよ、そうすべきだった!…… “ごめん”」Ross:…Not using it right, Joey.
ロス:「使い方を間違ってるぞジョーイ……」
ジョーイがエアークオーツの意味を知らず、間違った使い方でロスに突っ込まれるというシーンです。
“Accidentally” には「偶然にも」「間違って」という意味があり、ロスの手の仕草によりジョーイの不適切な行動を皮肉まじりに表現したジェスチャーとなりました。
時代が流れるたびに新しいスラングや流行表現が生まれるアメリカで、またもや面白いスラングが誕生しました。最近よく目にするピースサインの表現です。
その名も「Swag:スワグ」。英語の「Cool(かっこいい、いいね)」のように、「超イケてる!」と思うときにピースサインのポーズと一緒に発せられる言葉です。
若者を中心に広まったこの新しい英語の表現と一緒に、ピースサインが使われます。日本と同様、気分が盛り上がったときやポジティブな感情を持ったときに掲げられるようです。
ちなみに、「スワグ」ではなく単純に「ピース!」だけでも「いいね!」の意味合いがあります。
「平和の意味を持つ表現」、「会話の中で裏の意味や皮肉を込めるときに使われるサイン」、そして「スラングとしてのピースマーク」などなど、様々な場所や感情で変化するピースサインのジェスチャー。うまく会話に取り入れることで、ぜひスワグな英語表現を楽しんでみてくださいね!