Mizuho
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12月になると一気に冷え込みが厳しくなって、暖かい服が手放せなくなりますよね。この寒さと一緒にやってくるのが、クリスマス シーズン!
ツリーやイルミネーション、ケーキやプレゼントなど、クリスマスならではのものはたくさんありますが、もう1つ欧米では欠かせないものがあります。
それは...「Christmas sweater(クリスマス セーター)」です!
日本人の私たちにはあまり「ピン」と来ないクリスマス セーターについて、今回はご紹介します。
クリスマス セーターは主にトナカイ、サンタクロースや雪だるまなど、クリスマスにちなんだものが編み込まれているセーターのこと。別名「Ugly sweater(アグリー セーター)」とも言われ、「ダサいセーター」というレッテルが貼られています。
この始まりは、クリスマスにおばあちゃんが孫たちのために編んで贈ったセーター。孫を想って編んでくれたセーターですが、若者や子どもにとっては「どういうセンス?」と思わずにいられないデザインが多々あったそう。
それに「暖かいほうがいいだろう」とウールの毛糸で編んでくれるのはいいのですが、肌が当たるところがチクチクして痒くなってしまうのが玉にキズ。込められた想いはうれしいものの、敬遠してしまいたくなるセーターだったため、「アグリー セーター」というあだ名がついてしまったのです。
みなさんも、おじいちゃんやおばあちゃんなど年配の人からプレゼントをもらって、リアクションに困ってしまったことが1度はあるのではないでしょうか。
クリスマス セーターが登場したのは、1950年代のアメリカ。今でこそクリスマス セーター...「アグリー セーター」という名がついてしまっていますが、当時は家族で一緒に着てクリスマスを楽しむためのもので、「Jingle Bell Sweater(ジングルベル セーター)」という名前でした。
当時のクリスマス セーターは、雪の結晶など使われる柄に変わりはないものの、現代目にするものよりは少しおとなしいデザインだったそう。
その後、より一般的にクリスマス セーターが着られるようになったのは、1980年代のことです。映画やテレビなどでクリスマス セーターが多用され、「面白いもの」と認識されるようになったそう。しかしそれも、1990年代になると下火になってしまうのです。
それから10年ほど経った2001年、2人のカナダ人男性が動きます。バンクーバーで、クリスマス セーターの着用がルールづけられた「Ugly Sweater Party(アグリー セーター パーティー)」を、ガンを患う友人を元気づけるために開催したのです。
このパーティーは大成功で、トレンドとして一気に広まり、今度は名だたるファッションブランドもクリスマス セーターを発表するようになりました。Stella McCartney(ステラ・マッカートニー)やDolce&Gabbana(ドルチェ&ガッバーナ)などがその例です。
加えて、クリスマス セーター パーティーが行われた2001年は、映画でもクリスマス セーターが脚光を浴びます。大人気映画の「Bridget Jones Diary(ブリジット・ジョーンズの日記)」に登場する弁護士のダーシーが、トナカイの顔がいっぱいに編まれたクリスマス セーターを着ていたのです。
普段落ち着いていてダンディな装いをしているダーシーが、かわいらしいセーターを着ていることにギャップを覚えた人は少なくなかったはず。
こうして再注目されてから、クリスマス セーターは「ダサい」ところが逆にかわいかったり、「楽しい」、「面白い」と考えられるようになりました。今はクリスマスならではの風物詩となっています。
ここでは、紆余曲折があったクリスマス セーターの楽しみ方を見てみましょう。
先ほど登場した、カナダ人男性たちが開催したアグリー セーター パーティーを発端として、アメリカでは12月の第3金曜日を「Ugly Sweater Day(アグリー セーター デー)」としています。
この日は普段着ている服を脱ぎ捨てて、アグリー(クリスマス)セーターをまとうのです。単に着ているだけでも楽しい気分になりますし、周りの人も見ているだけで笑顔が絶えないはず。H&Mなどのファスト ファッションブランドでもクリスマス セーターが販売されているので、意外と手に入りやすく、誰でも参加することができますよ。
SNSでは「#uglysweater」や「#christmassweater」などのハッシュタグで、さまざまなクリスマス セーターを見ることができるので、お気に入りを探してみてはいかがでしょうか。
Ugly Sweater Dayにあわせて、「クリスマス セーター パーティー」や「アグリー セーター パーティー」を開く人も少なくありません。テレビの司会者やセレブリティなども、アグリー セーターを着て楽しみます。
例えば、アメリカのテレビ番組では夜のトークショーがとても人気です。その人気番組の1つ、「Jimmy Fallon Show」では毎年「12 DAYS OF CHRISTMAS SWEATERS」というコーナーを設け、さまざまなクリスマス セーターを紹介しています。
見ると思わず笑ってしまう、ジョークとして楽しめるものから、なんだか心がほっこりするものまで、セーターの種類はさまざま。毎年クリスマス シーズンになると、「次はどんなセーターが紹介されるのかな」と思わずチェックしたくなってしまうはずですよ。
アグリー セーター ランは、「みんなでアグリー セーターを着て走ろう!」というイベント。参加者はそれぞれ渾身のアグリー セーターをきて、決められたルートを走ります。
大勢の人が一度にアグリー セーターを着て走るので目にも賑やかなイベントで、楽しい気分になること間違いなしです!
「楽しみ」の1つとなっているクリスマス セーターですが、その一方で弱者や社会問題に対する意識を高めたり、募金を集めたりするためにチャリティ活動で使われることもあります。
例えばよく知られているのは、イギリスでクリスマスの1,2週間前の金曜日に行われる「Christmas Jumper Day(クリスマス ジャンパー デー)」。
これはイギリスで子どもへの支援をしているSave the Children UKが始めたもので、イベント当日にクリスマス セーターを着て職場や学校などに行き、募金をする活動です。イギリスではセーターのことを「ジャンパー」と言うので、「クリスマス ジャンパー」という名称になっています。
2012年に始まって以来、セレブはもちろんのこと、職場ごと、学校ごとなど一般の人も多く参加します。
下の画像は、2020年のクリスマス ジャンパー デーの様子。子どもたちが指揮をとり、著名人にクリスマス セーターを着せて、写真撮影をしたそうです。子どもたちが先導しているだけあって、どの作品も楽しい雰囲気ですね!
また、俳優のRyan Reynolds(ライアン・レイノルズ)さんが、病気の子どもたちのためのチャリティと協力している「Ugly Xmas sweater for SickKids」という活動もあります。
実はこれ、いたずらで友人たちにクリスマス セーターを着せられたレイノルズさんが、「せっかくだからチャリティにしてしまおう!」 と動いて始まったもの。すごい行動力ですよね!
そのほかにもさまざまなチャリティ活動に使われているので、クリスマス セーターって意外とすごいパワーを持っているのかもしれません。
おばあちゃんが子どもや孫のことを思って作り始めたクリスマス セーター。一時はそのダサさや、着るとかゆくなってしまうことから敬遠されていましたが、今となっては家族や友人と笑顔になるきっかけとして着られています。
また、チャリティの一環として着ることで、援助を受ける側の人にも笑顔がもたらされているのです。
みなさんも、今年はアグリーなクリスマス セーターで楽しいひとときを過ごしてみませんか?