堂本 かおる
(更新)
101(ワン・オー・ワン)とはものごとの基礎、基本、または入門講座のこと。このコラムでは毎回、多彩で雑多でホットでクールでクレイジーで奥の深い魅力に溢れたニューヨークの基本を、英語のワンフレーズ紹介と共にお伝えしていきます。
ニューヨークの風物詩はいろいろありますが、コーヒーショップも外せないもののひとつです。ニューヨークには無数のコーヒーショップがあり、毎日、一体どれほどのコーヒーが飲まれているのか、その量は想像もつきません。
マンハッタンを歩くとすぐに気付くのが、スターバックスの多さです。とにかく多い! エリアによっては2~3ブロックに1軒あります。調べてみるとニューヨーク市内全域では約250軒あり、そのうち200軒ほどがマンハッタンに集中しているのです。面積たった60㎢のマンハッタンに200軒とは!
これほどあると、仕事の打ち合わせや友人との待ち合わせ場所としても使うため、ノン・スターバックス生活は無理になります。逆にスターバックス中毒者だらけです。John McCourtさんというニューヨーカーはあまりにもスターバックスが好き過ぎて、1年かけてマンハッタン全店を制覇し、ブログに書き留める偉業を成し遂げました。
マンハッタンにスターバックス第一号店がオープンしたのは1994年。アッパーウエストサイドのブロードウェイ87丁目でした。以後、怒濤の勢いで開店ラッシュを続け、それ以前にあったコーヒーショップ・チェーンがほぼ全て撤退してしまったほどです。
こうして一時はスターバックスの独占状態となりましたが、その後、それぞれに個性を打ち出した個人経営のユニークなコーヒーショップが盛り返しました。
さらに今はまたブルーボトル・コーヒーなど新しいチェーン店も次々にオープンしています。エスプレッソの濃いコーヒーを飲み慣れたことによって、それ以前とは異なる新たなコーヒー文化が華開き、根付いたのです。
かつてアメリカ人にとってコーヒーとは高い料金を払って飲む特別な飲み物ではなく、薄く淹れたものを特に意識もせずゴクゴクと飲むものでした。日本で薄いコーヒーを“アメリカン”と呼ぶ由来です。ただし、これは和製英語なのでアメリカでは通じませんが。
したがって座ってコーヒーだけを飲むコーヒーショップ、日本で言うなら喫茶店に当たる店は昔は少なく、デリと呼ばれる食料雑貨店でテイクアウトするか、ダイナーと呼ばれる大衆レストランで食事と共に飲むことが多かったのです。そのためダイナーはレストランであるにもかかわらず、昔はコーヒーショップとも呼ばれていました。
今、ユニオンスクアにあるその名も"COFFEE SHOP"というレストランはヒップスターに人気がありますが、レトロさを醸し出すために敢えてそう名付けられているのです。
コーヒーショップは人間観察にうってつけの場所です。ノートパソコンを持ち込み、壁のコンセントを(勝手に)使って充電しながら延々と仕事をするデジタル・ノマド。中には名の知られたブロードウェイの脚本家や小説家だっています。あらゆる職種のミーティングや就職面接をする人たちもたくさんいます。
他人の会話を盗み聞きするのはマナー違反ですが、聞こえてくるものは仕方ありません(笑) CM制作のプロセスが話し合われていたり、アート系NPOの面接内容が手に取るように分かったり。
つまりニューヨークのコーヒーショップとは、たった3ドル程の出資でニューヨークのリアルを味わえる場所でもあるのです。ニューヨークを訪れたら、ぜひ一度は敢えて独りでコーヒーショップに脚を運び、じっくりと腰を落ち着けてみてください。
コーヒーショップの多くはミルク、ローファット・ミルク、"Half and Half"(クリーム)、店によってはアーモンド・ミルクやライス・ミルクまで揃えており、砂糖やダイエット・スイートナーと共にお客が自分で好きな量を入れますね。
けれどデリやストリートのコーヒー・カートでは"How would you like it? "と聞かれます。「どのようにしたいですか?」つまり「砂糖やミルクは?」という質問です。
ここでニューヨーカーを気取りたいならば、一言クールに"Regular."とだけ返しましょう。「砂糖2つとミルク」のことですが、ニューヨークと周辺地域でしか通じない言い方です。ちなみにクリームではなく、ミルクです。
入れてもらったミルクの量が少なければ、"Could you/Can you make it light?"と言えば注ぎ足してくれます。ミルクを増やせばコーヒーの色が明るくなることから「明るくして」と言うのです。ブラックはもちろん"Black."でOKです。
とはいえ、どんな言い方でも通じます。それぞれに思い付く方法で注文したら、後は Enjoy your coffee in New York!