アメリカとキューバ、54年ぶりに国交回復 ~夢のキューバ観光が実現する!?

今年7月、ついにアメリカとキューバの国交が復活しました。
1961年に両国が相互のドアを完全にとじ、人・モノ・文化、一切の交流が断たれて以来、54年目の歴史的な出来事でした。

政治・経済面で複雑な背景をもつキューバとアメリカの国交回復ですが、一般のアメリカ市民にとって何が一番大きな変化かといえば、やはり「キューバへの観光旅行ができるようになる」ことでしょう。

カリブ海のトロピカルな風景、エキゾチックな街並み、社会主義ゆえの素朴さ。今も走りまわる1950年代のアメリカ製クラシック・カー、ビーチで飲むモヒート、芳醇な香りを放つキューバ葉巻……こうしたイメージにアメリカ人は長年憧れてきたのでした。

そんな人々の夢を叶えるかのように、ニューヨークのJFK空港からキューバの首都・ハバナへの直行便もすでに飛び始めています。直線距離にして2,100km、2時間42分の旅。アメリカ国内でキューバに最も近いのはフロリダ州のマイアミですが、そこからだとなんと378km、たった1時間のフライトです。

とはいえ、対キューバ経済制裁はまだ残っており、一般の観光客が気軽にキューバに出かけられるようになるのは、もう少し先になりそうです。
現在、キューバに入国できるアメリカ国籍保持者は、家族や親戚に会いに里帰りするキューバ系アメリカ人、政府関係者、ジャーナリスト、リサーチャー、宗教関係者などに限られています。

有名なラッパー・ピットブルもキューバ系

© Lunchbox LP

1961年の国交断絶前、アメリカにはキューバからの移民がたくさん暮らしていました。当時の移民はすでに高齢になり、他界した人も少なくありませんが、今はアメリカ生まれの若い二世、三世が活躍しています。

世界的な人気を誇るエンターテイナーのなかにもキューバ系はいます。

かつてサルサの女王と呼ばれたセリア・クルーズ Celia Cruz(1925-2003)や、1980年代にマイアミ・サウンド・マシーンというグループで「コンゴ」などヒットを連発し、今も活躍するシンガーのグロリア・エステファン Gloria Estefan(1957-)などなど。

彼らは共にキューバ生まれですが、セリア・クルーズは1959年のキューバ革命時にはすでにアメリカでシンガーとして活動しており、政情不安な祖国には戻りませんでした。
グロリア・エステファンは、父親がカストロ以前の政府に仕えた軍人であったため、2歳の頃に一家でアメリカに移住をしています。その2年後の1961年に両国の国交は断絶しました。

2010年に全米1位となった大ヒット曲「Give Me Everything」などで知られるラッパー・ピットブル Pitbull(1981-)は、マイアミに移住したキューバ人の両親から生まれた二世。現在、大統領選に立候補しているマルコ・ルビオ上院議員(1971-)も、ピットブルと同様にマイアミでキューバ移民の両親のもとに生まれています。

© PROAdam Jones

キューバ移民一世や、アメリカ生まれの二世、三世たちは、国交断絶中は祖国キューバを訪れることができず、キューバに残った家族親戚もアメリカに来られず……。実に54年間の長きにわたってファミリーの交流が断たれていました。
つまり、今回の国交回復は彼らキューバ系アメリカ人にとって、とても大きな意味を持つのです。

ちなみに、アメリカ在住の日本人は、アメリカとキューバの国交断絶中もキューバへの渡航が可能でした。ただしアメリカから直行はできず、いったん他国に出国し、そこからキューバに向かう遠回りの方法でしか入国できませんでした。

ことの始まりはコロンブス

10月12日はコロンブス・デー。クリストファー・コロンブスが新大陸を「発見」した功績を讃え、ニューヨークでは毎年、盛大なパレードもおこなわれます。
しかしキューバも含め、中南米出身者のなかにはコロンブスがカリブ海にやってきたために、その後の苦難の歴史が始まったと考える人もいます。

コロンブスは1492年にカリブ海に到達し、そこをインドと勘違いします。そのためカリブ海諸島人は「Indio(インド人)」と呼ばれました。

当初、島々に暮していたのは先住民であったため、以後、どの地域に暮らす先住民も “Indio” と呼ばれるようになりました。アメリカ先住民の場合は “Indian” ですね。
のちにインドは東(アジア)にあることがわかったため、カリブ海諸島は「西インド諸島」と名前を変えられました。

このように、コロンブスの勘違いをもとに “Indio” “Indian” の言葉があちこちで使われるようになったのでした。

いずれにせよ、島々の先住民はヨーロッパ人によって全滅させられてしまい、ヨーロッパ人は労働力としてアフリカから黒人を奴隷として連れてくるようになります。こうした歴史があるため、カリブ海の人々には先住民、ヨーロッパ人、アフリカ人の混血が多いのです。

その後、アフリカからの奴隷は北米にも連行されるようになり、アメリカ黒人の中にも「奴隷制が始まったのはコロンブスに端を発する」と考える人が多くいます。

現在のニューヨーク市の人口のうち、白人は33%に過ぎませんが、イタリア系が多く祖国の英雄コロンブスを大きなプライドとしています。その一方で、ヒスパニック(中南米系)と黒人が合わせて55%を占めます。つまりニューヨーカーのコロンブスへの思いは非常に複雑だと言えます。

コロンブスによる「発見」後、キューバは約400年間、スペインの植民地となります。そして1898年の米西(アメリカとスペイン)戦争で戦勝国アメリカの保護下に入ります。
その前後も独立戦争など政治的に非常に不安定な状態が続き、1959年、ついにフィデル・カストロ前議長(キューバ元首)がキューバ革命を起こし、アメリカとの国交を断絶したのです。

フィデル・カストロは疾病のために2006年に議長を退き、現在はフィデルの弟のラウル・カストロが議長に。そしてオバマ大統領との間でアメリカとの国交回復を実現させました。

両首脳の会談実現には、先月訪米を果たしてアメリカ中を熱狂させたローマ法王の大きな尽力があったことも伝えられています。

《参考記事》
ローマ教皇がアメリカにやって来た!78歳の教皇も「英語」でスピーチ

さいごに:政治にまつわる英単語

では、今回も内容に関連するボキャブラリーのリストをご紹介します。

日常生活では不要に思える単語も、政治系のニュースを読むためには必要です。そのため、アメリカでは小学校高学年の頃から、社会や歴史の授業でこうした単語を学び始めます。

皆さんも小中高生に負けないよう、がんばって覚えてくださいね!

政治・外交にまつわる主要ボキャブラリー

  • consular office:領事館
  • embassy:大使館
  • economic embargo / embargo:通商停止
  • economic sanction:経済制裁
  • voyage:航海。実際の航海だけでなく、"人生の航海"といった意味でも使うことも
  • colony:植民地
  • independence:独立
  • revolution:革命
  • socialism:社会主義
  • communism:共産主義
  • capitalism:資本主義