西東 たまき
(更新)
インドなまりの英語を聞いたことがありますか?
ときには、英語であると認識できるまでに時間がかかるかもしれません!
世界の共通語として君臨する英語は、世界中の人がそれぞれのお国なまりを交えて使っています。
日本語なまりの英語を聞けば母語が日本語の人だと分かるように、なまりによって母国語や出身国・地域が分かったりしますよね。
昨今、インドはIT分野の強さで知られていますが、それに伴ってインド英語の存在感が増しています。
インドなまりの英語、通称「Hinglish」とはどのようなものなのでしょうか。
今回はその特徴についてご案内して行きます!
海外IT関連会社のエンジニアの名前に注意してみると、インド系の名前がとても多いことに気付きます。
また、「華僑」に対して「印僑」(いんきょう)という言葉もあるように、インドにルーツを持つ人たちが世界各地でビジネスを手掛けていることからも、海外ではインドなまりの英語に出会う機会が少なくありません。
その特徴ある英語は、インドを代表する言語「Hindi(ヒンディー語)」と「English(英語)」を掛け合わせて「Hinglish(ヒングリッシュ)」と呼ばれています。
インドの言語といえば、一本の横線が突き抜けるヒンディー語のイメージが有名ですね。インドでは、このヒンディー語のほか、英語もまた連邦政府の公的共通語とされています。
そのため、海外からの旅行者は英語さえ分かればインドのどこに行っても言葉で苦労することは、まずありません。そもそも、インドは1947年に独立するまでイギリスの植民地でもありましたよね。
英語が通じるのは便利とはいえ、耳慣れない者にとって「Hinglish」は、なかなか苦労するのではないでしょうか。まずは、インドなまりの英語「Hinglish」の特徴を知ってみましょう。
特徴の具体的な説明に入る前に、こちらの動画でインド英語とはどのようなものなのか、実際に一度聞いてみましょう。英語字幕をオンにして、普段聞き慣れている発音との違いをぜひ比較してみてください。
インド英語を耳にして、まず気付くのは「R」の音の強さです。巻き舌の「R」の音に耳をかなり刺激されるでしょう。
また、カタカナ表記だと長音符「ー」で書き表すような伸ばす音は、しっかりした「ル」の音で発音されます。
「W」や「TH」の発音もインド英語では独特の音に変わります。まったく別の単語に聞こえたりするため、これもまた苦労するポイントです。
インド英語では「W」が「V(ヴ)」に聞こえることが多いです。
さらに、「Th」が「T(タ)」や「D(ダ)」に聞こえます。
よく知っている言葉も、独特のリズムのために別の言葉に聞こえることがあります。インド英語にも独特のリズムがあることを理解しておきましょう。
一度知ってしまえば問題ありませんが、最初は何を指しているのか分からないかもしれません。
さて、独特のリズムと発音を持つインド英語の聞き取りに慣れるにはどうしたらよいでしょうか。
インド英語は強いなまりの反面、抑揚はあまりなく、しかしスピードはかなり速かったりします。1つ1つの言葉を捉えようとするうちに相手のペースに飲まれ、話の筋を見失ってしまいそうな思いをした経験者もいるのではないでしょうか。
筆者は、逆に力を抜いて、音から少し距離を置くような心持ちで会話全体を捉えるように臨むのが近道だと感じています。
もちろん、追いつけないようならペースを落としてもらえるよう依頼したり、気になる言葉があったら聞き返したりするのは、会話の基本姿勢です。
インド英語でコミュニケーションするときに知っておきたい特徴をもう1つ。
私たちは「OK」と了承を示すとき、首を“縦”に振るジェスチャーをします。横に振るのは「No」のサインですよね。
しかし、インドでは首を“横”に振るのが「了承」の意味になるんです。首を横に振りながら「OK」と言われても惑わされないように!
インド英語を特徴付ける音が分かったところで、次はインド英語ならではの表現・インド英語でよく耳にするフレーズもいくつかご紹介しましょう。
「あなたの名前は何ですか?」と英語で人に名前を聞く場合、What is your name? で済むところですが、ヒンディー語の表現をそのまま英語化して話す人には、こういう言い方をする人がいます。
何かが「とても良い」ことを表現するとき、「ファーストクラス」という言葉をよく使います。
たとえば、first-class service「最高のサービス」や first-class car「最高の車」のように。
相手の言葉を引き出そうとするときは、Tell me!「さあ、言ってごらんなさい!」とストレートに問いかけてきます。
そしてこの Tell の音も、ネイティブの発音のような柔らかいものではなく力強い「ル」の発音になっています。
了承の意を伝えるとき、男性に対しては OK Boss、女性に対しては OK Madam が口癖のように多く使われます。
たとえば、お店の人がお客さんに対して使ったりすることからも分かるように、相手へのリスペクトを込めた返答です。
ヒンディー語などでは、語尾に「-ji」を付けると丁寧な表現になります。
その要領で、OK と言うときも、後ろに「-ji」を付けた OK ji(オーケージー)が使われることも。
インドを離れ海外に出たインド人の英語ではあまり耳にしませんが、インド国内だとときには「-ji」が付いたバージョンを聞くことがあるかもしれません。
日本語が母語の人の英語が日本語なまりになるように、インドの言葉を母語とする人たちの英語にはインドなまりがあります。
しかし、彼らはそれを「恥ずかしい、直したい」と思っているようには見えません。
なまりなど気にせず積極的に語りかけてくるインドの人達の堂々とした姿勢を、発音を気にして尻込みしてしまいがちな人は見習うべきかもしれません。
発音を聞けば即インドの人だと分かっても、使われる表現は教育レベルや暮らしぶり、あるいは海外で暮らすインド系の人が話す英語か、インド国内にいるインド人が話す英語かなどで違いが出てきます。
「ネイティブ」の英語とは異なる「Hinglish」を知って、英語の多様性を感じてみましょう!