Michiru
(更新)
お仕事の関係でアメリカへ異動が決まった。
プライベートな事情で渡米することになった。
新境地では新しい生活への期待と、異国の地での右も左もわからない不安が交差するもの。そんなときは、 "excited and nervous at the same time"(同時にワクワクドキドキする)になりますよね。
やはり、文化の違いと言葉の壁は、誰しもが感じるギャップではないでしょうか。
自らの意思で移住する人、駐在員または帯同者として渡米する人、人それぞれ様々な事情があるにせよ、慣れないうちは「日本語が通じる」ことだったり、「和食が食べられる」ことへの喜びと有り難味を身に染みて感じるのではないかと思います。
そこで今回は、アメリカの日本人コミュニティーについてご紹介します。
日本人コミュニティーの存在は、日系企業の有無、その地域に居住する日本人人口に比例します。日本人が密集する大都市ロサンゼルスやニューヨーク市、ニューヨーク市に隣接するニュージャージー州北東部の日本人コミュニティーは大規模で、Japan Society(ジャパン・ソサエティー)や日米協会をはじめ、日系商工会や日系人会などの非営利組織が多々存在します。
Japan Societyは1907年に設立して以来、アメリカで暮らす日本人や日系人とアメリカ人の相互理解、お互いへの感謝を深めることを主な目的として運営されています。現地人のための日本語指導、日米文化交流イベント、日系企業や日系人のための講習会など、幅広い活動をしています。
日米協会や日系人会(New Jersey・New York・Philadelphia・
DC・Washington ・Oregon)は、アメリカ人そしてアメリカで暮らす日本人を対象としたイベントやプログラムを多く取り入れています。日本人講師による趣味や教育関連のクラス、その他諸々、英語を特に必要としないコンテンツも充実しています。主婦の方向けの日常英会話教室や駐在員の方向けのビジネス英語などのレッスンも提供しています。
また、ジャパン・フェスティバル(NYC Japan Festival・NYC Japan Day ・Boston Japan Festival・LA Japanese Festival)では、日本のお祭り風に屋台を出店したり、日本文化を紹介することで、在留邦人がアメリカで居心地よく暮らして行けるよう、ローカルコミュニティーとの親睦を育む活動に積極的に取り組んでいます。
セントラルパークで行われた Japan Day の様子(PHOTO: a katz / Shutterstock.com)
セントラルパークで行われた Japan Day の様子(PHOTO:a katz / Shutterstock.com)
日本人生徒数が多い現地校には、日本人PTAが存在するところもあり、現地校の関連情報やPTA役員会の議事録などを日本語版で伝達したり、その他アメリカ生活に役立つコミュニティー情報をまとめて便利帳を発行したり、日本から来たばかりの人には強力なサポートです。
日本人コミュニティーが盛んな地域では、お母さん達の為の日本人講師による習い事も充実しています。アメリカで起業する多彩な日本人女性は多く、マクロビオティックやビーガンなどのクッキングクラス、アロマセラピー、石鹸づくり、ジュエリーメイキング、エッグシェルアート、フラワーアレンジメント、書道、ヨガ、コーラス、その他、ありとあらゆる習い事の選択肢があるのも魅力的です。
日系スーパーも数多く、日本に比べると値段は高めですが、日本の食品以外に、日用雑貨や医療薬品などの商品を入手できるお店もあります。また、日系食品の品揃えが豊富な韓国系スーパーもあり、値段設定が比較的低い韓国系スーパーで買い物する日本人も結構います。大規模な日本人コミュニティーでは、日本食に飢えることはありません。
日系医療に於いては、日本人医師や看護師、日本語が話せる非日本人スタッフがいる診療所もあり、言葉の壁が不安な方には心強い存在です。また、日本人の精神科医や心理カウンセラー、児童教育アドバイザー、などの専門家もいるので、いざと言う時は安心です。
大人向けの日本人野球チームもいくつかあり、野球好きなお父さんや子供達には持って来いです。お父さん向けの日本人サッカーチームもあります。
日本人人口が比較的多いニュージャージー州は、21個の群で形成されています。その中でも、ニューヨーク市に近いメトロポリタンエリア(大都市圏)の一部にあるバーゲン群は日本人に大変人気があり、在留邦人は2万人以上と報告されています。
日系企業が集中していることから、駐在員帯同家族も多く居住していて、海外子女教育も充実しています。全日制日本人学校、土曜日の日本語補習授業校、日系幼稚園、日英バイリンガル幼稚園、日本の学校を受験するお子さんを対象にした塾もあり、選択肢が多く、教育レベルが高いことも人気の理由の一つです。
土曜日の日本語補習授業校は、文科省のお墨付きで赴任されている校長先生と副校長先生を除く教員の大半は、アメリカに永住する労働許可がある日本人です。また、日本人が教えるお子さん向けの習い事も充実していて、ピアノ、バレー、ヒップホップダンス、野球、など、普段、現地校で抱えるストレスを発散できる憩いの場にもなっているようです。
東海岸のニューヨークエリアより、日本人人口が最も高いとされる西海岸のロサンゼルス、常に「住みたいところランキング」上位に入るポートランドにも、幅広い日系コミュニティーが存在します。
都心を離れると、日系企業が少ない或いは無いため、どうしても規模は小さくなりますが、日本人が数名集まる場所には、自然と日本人サポートグループが出来る傾向があります。
異国の地で似たような境遇を分かち合う日本人同士がお互いに「助け合う」サブカルチャーは、異国の地ならではの大きな心の支えです。同じ時期に、同じコミュニティーを共有する日本人同士は、運命共同体とも言えるかもしれませんね。
規模に関わらず、同じコミュニティーに住む日本人同士の間で情報交換ができることは大きなメリットです。
日本にいたら出会うことがなかったかもれしない人との出会いがあるのも魅力的ですね。日本人コミュニティーは、様々な出身地から集まった人々で形成されています。また、異業種の人が同じ場所に集まっていることも日本人コミュニティーならではのプラス要素ではないでしょうか。
大企業、中小企業、自営業の人達が交流できる場は、日本では滅多にない機会であり、ネットワーキングの観点からも、最強の情報網と言っても過言ではないでしょう。
日本人コミュニティーの最大のメリットは、サポートシステムとして成り立っているところかもしれません。アメリカに来たばかりの頃は、日本語が通じる場所があるだけでも心強い。現地に馴れることも大事ですが、それ以前に、先ずは「居心地が良い場所」を見付けることが先決です。
大規模な日本人コミュニティーに限りますが、英語に対する苦手意識が強い人や英語を学ぶことに関心がない人でも、殆ど英語を話さなくても困らない程度に生活が送れる、というのもメリットかもしれません。もちろん、現地校に通う子供達のため、自分のために英語を学ぶお母さん達も大勢います。
お子さんがいらっしゃる日本人家庭なら、いつ日本へ帰国しても良いように日本語を維持するための日本語環境が整っていることであったり、日本の中学・高校・大学受験を控えているお子さんが日本の教育レベルと同じレベルの受験勉強ができることなどのアカデミック的なメリットもあります。
逆に、意外と「狭い日本人コミュニティー」という側面もあります。規模が小さければ小さい程、日本人コミュニティー内の日本人は限定されているため、付き合う人を「選べない」という見方もあります。
特に、人付き合いが苦手な人にとっては、煩わしい存在になることもあるようです。人間組織にありがちな派閥も無きにしも非ず。付かず離れずの距離間を保つ人、全く関わらない人、「居心地の良さ」は人それぞれです。
インターネットを上手に活用し、ウェブサイトなどを通して移住先の日本人コミュニティーの連絡先(メールアドレスまたは電話番号)を調べたり、また、その地域に住んでいる日本人ブロガーのブログを参考に、現地情報を収集するといいでしょう。
また、既に現地に住んでいる日本人の知り合いがいれば、その人に相談して情報共有してもらうのも名案ですね。経験者の体験談は、貴重な参考になります。メールでのやり取りは時間が掛かることがあるので、急いでいる場合は、日系組織に直接電話で問い合わせすることも可能です。
"Rome wasn’t built in a day"(ローマは一日にして成らず)と言うように、新しい生活が軌道に乗るまでは、適応能力が高い人であっても、ある程度の時間は掛かります。
しかも、新境地が異文化であれば尚更です。国内でも国外でも新しい土地に移住し慣れるまでには、恋愛関係のようなプロセスを経ます。
初めは、淡い期待と緊張感があり、何もかもが新鮮。暫くすると、現実との理想のギャップが見えて来る。ギャップを乗り越えた先には受容があり、やがて安定期に入る、というパターンです。
期待し過ぎると現実とのギャップに落胆してしまうし、疑い深いと疑心暗鬼になり、上手く行くものも行かなくなる、なんてことも。
移住前に出来る限り情報を集め、大体把握しておくと不安材料が減ります。何事も人それぞれなので、ネットで得た情報と実際に経験することに多少の温度差を感じるかもしれませんが、住めば都、何とかなるものです。
"Bring it on!"(かかってこい!)の覚悟があれば、怖いものなしです!