Erik
(更新)
将棋の藤井聡太四段が公式戦29連勝で歴代新記録を樹立し、日本中が将棋ブームとなっています(2017年6月時点)。
現在中学3年生、14歳の藤井四段。プロ騎士デビュー最年少記録を62年ぶりに更新してから、プロ初戦で以前の記録保持者であった加藤一二三九段に勝利し、そのまま公式戦無敗で歴代最多の29連勝を達成した、疑うことなき天才。
そんな彼の強さの原点はどこにあるのでしょうか?
彼の昼食までもがニュースになる昨今ですが、今回注目したいのは彼が幼少期に受けていたという「モンテッソーリ教育」です。
本記事では多くの「天才」と呼ばれる著名人を輩出してきたモンテッソーリ教育について紹介していきたいと思います。子供にどのような教育を受けさせようかと悩んでいる方も、ぜひ参考にしてみてください。
Photo: Olga Popova / Shutterstock.com
モンテッソーリ教育法の生みの親はイタリアの女性医学博士、マリア・モンテッソーリ。
イタリア最初の女性医学博士のうちの一人だったにも関わらず、女性差別の残る時代に彼女はなかなか職を見つけることができずにいました。ようやく就職した精神病院では、知的障害があるとされていた幼児を注意深く観察し、治療教育を施します。
感覚を刺激する教育によって知能の向上が見られることを発見したマリアが彼らに知能テストを受けさせると、当時の健常児の知能を上回る結果が出たのだそう。これがモンテッソーリ教育の始まりだと言われています。
イタリアの医学界や教育界に衝撃を与えたマリアはその後、先の教育法を健常児にも応用し、研究し、教育法を確立しました。1907年に初のモンテッソーリ教育専門の保育施設「子どもの家」を設立。
教育法が考案されて以来、多くの注目を集め、世界中に広まりました。
モンテッソーリ教育の基本は、「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる。 大人(親や教師)は、その要求を汲み取り、自由を保障し、子どもたちの自発的な活動を援助する存在に徹しなければならない」という考え方にあります。
モンテッソーリ教育の目的はそれぞれの発達段階にある子どもを援助し、「自立していて、有能で、責任感と他人への思いやりがあり、生涯学びつづける姿勢を持った人間に育てる」ことです。
ここではモンテッソーリ教育の主な特徴についてみていきましょう。
感覚を洗練させ、ものの考え方を身につけさせ、子どもの自己成長の手助けをすることを目的とする感覚教育。
精神病院で働いていた時から児童の観察を続けていたマリアは、特に感覚刺激に敏感な2〜4歳時に感覚教育は必要なのだと説きました。
子どもたちはモンテッソーリが考案したカラフルで独特な教具に触れ、ものを比較したり、大きい順に並べたり、特徴ごとに分けてみたりすることで感覚が洗練されていきます。
以下の画像はモンテッソーリ教具の一例です。
モンテッソーリの施設は「子どもの家」と呼ばれているように、子どもたちが遊びながら自発的に成長していくことができる環境が整っています。
大人たちも多くの場合「教える」のではなく、子どもたちを「援助する」役割を持ちます。普通の学校のように先生に指示をされるわけでもなく、子どもたちは自分たちで勉強する教具を選んで学習するのです。多種多様な教具からそれぞれの子どもの発達段階に合ったものが選べるのもポイント。
モンテッソーリは幼児教育と思われがちですが、欧米では中学校や高校までこのメソッドを取り入れている学校もあります。
また、子どもたちが自由に活動できる環境の中で、自ら選んだ教具は大切に扱い、もとあった場所に戻す、などの規律性も求められます。
「自由」と「規律」に関して、マリア・モンテッソーリは次のような言葉を残しています。
Freedom and discipline are two faces of the same medal.
「自由と規律はコインの裏表」
モンテッソーリ教育における「自由」とは、制限やルールなくやりたい放題、ということではありません。「秩序ある自由」です。例えば自分が使いたい教具を他の子どもが使っていたとしたら、その子が使い終わるまで待たなければなりません。
規律の範囲内で行動することを同時に学ばせ、お互いの自由を守るためにも、自由と規律は切り離すことができないもの、という意味でコインの裏表に例えています。
モンテッソーリでは、3歳の幅の中で(0〜3歳、4〜6歳など)一つのクラスに年齢の異なる子どもたちが一緒に学びます。
子どもの社会性や協調性を促すと同時に、学年や年齢に縛られないことで、自分の発達段階に合った活動をすることが可能になるのです。
日本でも多くの幼稚園などで取り入れられているモンテッソーリ教育。
その注目度は世界的に見てもとても高く、多くの「天才」と呼ばれる人たちがモンテッソーリ出身であることもあり、非常に人気がある教育法となっています。
ここではモンテッソーリ教育を受けて育った著名人を何人か紹介していきます。
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他にも「マネジメントの父」と呼ばれるピーター・ドラッカー、アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、英国王室のウィリアム王子とハリー王子、「アンネの日記」著者のアンネ・フランク、ノーベル文学賞受賞者のガブリエル・ガルシア・マルケス、俳優のジョージ・クルーニー、歌手のビヨンセなど、名前を挙げ始めると枚挙にいとまがありません。
いかがでしたか?
モンテッソーリのような従来とは異なる教育方法は「オルタナティブ教育」(alternative education)と呼ばれ、近年注目を集めています。特にアメリカでは2度のモンテッソーリ・ブームがあり、アメリカ全土で広く知られています。
実際に筆者もアメリカでプリスクールから小学4年までモンテッソーリに通っていました。個人的には「勉強をした」というより「遊んでいて楽しかった」という印象があります。
今回、藤井四段の大活躍で注目を集めているモンテッソーリ教育。
今後さらにその認知度は上がっていくのではないでしょうか。