堂本 かおる
(更新)
101(ワン・オー・ワン)とはものごとの基礎、基本、または入門講座のこと。このコラムでは毎回、多彩で雑多でホットでクールでクレイジーで奥の深い魅力に溢れたニューヨークのベーシックを、英語のワンフレーズ紹介と共にお伝えしていきます。
長く寒かった冬がようやく終わり、ついに遅い春が訪れたニューヨーク。中学校で習った"Spring has come"のフレーズがしみじみと実感されます。
それは生粋のニューヨーカーたちも同じようで、みな一斉に公園に出掛け始めています。コンクリート・ジャングルなどと呼ばれ、摩天楼のイメージが強いニューヨークですが、実は市内あちらこちらに公園がたくさんある緑豊かな都市でもあるのです。
中でも最もよく知られるのは、やはりセントラルパーク。マンハッタンの真ん中にどーんと横たわっています。南北は59丁目(Fifty Ninth Street)から110丁目(One Hundred and Tenth Street*)まで4km、東西は5番街(Fifth Avenue)から8番街(Eighth Avenue)まで0.8kmもある大きな長方形です。ちなみに110丁目から北がハーレムなのでセントラルパークの北端はハーレムに接しているのですが、これは意外に知られていません。
*3桁になると110=One Ten、125=One Tweny Fiveなどと略すこともあります。
(何丁目に行くの?)
乗客:"One Ten, please."
(110丁目にお願いします)
セントラルパークの外周に建つマンション(condo, condominium)は、都会のまっただ中にありながら眼下に広大な公園の眺めが広がるため、価格は10,000,000ドル(約12億円)を超えるものすらあります。
こんなマンションを購入できる大富豪がニューヨークにはたくさんいるのです。ゆえにセントラルパークを切り売りして高層ビルを建てればビリオン単位のお金が動くはずですが、ビジネスにシビアなニューヨーカーもそれだけは許しません。セントラルパークはニューヨーカーにとって、それほど無くてはならない存在なのです。
都会のオアシス、セントラルパーク。のんびり散策すれば緑の木々や芝生、水辺の美しさが日常の喧噪を忘れさせてくれますが、アクティブな魅力もあります。
野外劇場、ミニ動物園、野球場、テニスコート、ブランコや砂場のある子ども公園、ジョン・レノンゆかりのストロベリー・フィールズ、春から秋にはメリーゴーランド、冬にはアイススケート場。コンサートや自然探索などのアトラクションが常に行われています。
(c)Durst Breneiser
特に夏は"SummerStage"と冠したコンサート・シリーズがあり、世界的な大物アーティストからニューヨークの地元アーティストまで目白押し、しかもほとんどが無料なため、大勢のニューヨーカーが集まります。
またセントラルパーク内でロマンチックな結婚式を挙げることも出来ます。パッケージ料金は2,950ドル(2015年4月現在)、「同性婚ウェディングも大歓迎」とあるのは、まさにリベラル都市ニューヨークならではでしょう。
広い公園内は自転車をレンタルして走ることもできれば、人力タクシー(pedicab)もあります。ちなみに有名な馬車は昨年、廃止論が巻き起こりました。理由は安全確保と動物虐待防止。セントラルパーク外周は車も人も忙(せわ)しなく行き交うため、厩舎からセントラルパークに“通勤”する馬が時々事故を起こしてしまうのです。
ニューヨーカーのみならず、世界中からの観光客を惹き付けて止まないセントラルパーク。公式ウェブサイトはなんと91言語に対応しています。もちろん日本語に切り替えることもでき、とてもありがたい反面、自動翻訳による摩訶不思議な直訳表記が出て来ます。
たとえば観光名所セクションにある「グリーン上の居酒屋」とは、有名なレストラン"Tavern on the Green"のことです。そのレストランがある「羊メドゥ」。もちろんこちらも中途半端な直訳表記で、本当は"Sheep Meadow"、セントラルパークでは広々とした芝生のスペースのことです。さらに笑えるのは「それでもハント」。一体何かと思えば "Still Hunt" と名付けられたヒョウの銅像です。
他の言語でもきっと同様の珍直訳が行われているのかと思えば愉快ですが、これも英語を学ぶ動機のひとつになりますね。
参考:セントラルパーク公式サイト
http://www.centralparknyc.org/
セントラルパークは四季折々の風景が美しいことに加え、“ニューヨーク感”をこれでもかと盛り上げてくれることから無数の映画の舞台にもなっています。
「ティファニーで朝食を」(Breakfast at Tiffany’s)、「恋人たちの予感」(When Harry Met Sally)、「セレンディピティ」(Serendipity)、「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada)から「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」(Extremely Loud and Incredibly Close)などなど枚挙にいとまがありません。
ちなみにアメリカ人は無類の映画好き。日頃の会話でも映画の話がよく出ます。その際、原題を知らないと「???」になることも。映画を観る時には原題チェックを習慣付けておくと、後々必ず役に立ちますよ。
See, Central Park always steals movies!
(ほらね、映画の中のセントラルパークはいつも主役を喰ってしまうのよ!)