ローマ教皇がアメリカにやって来た!78歳の教皇も「英語」でスピーチ

(アイキャッチ:©Julian Ortiz

9月22〜27日にかけて、“Pope Francis(ローマ教皇フランシスコ)” がアメリカを訪れました。

この間、全米がまさに “ポープ・フィーヴァー” とでも呼ぶべき、熱烈大歓迎ムードとなりました。アメリカのニュース専門TV「CNN」をはじめ、ニュースはどこもかしこも教皇報道一色。

「ポープは今、○○にいます。これから出立し、次の△△に向かいます。そこでは□□をおこないます。その次は◎◎︎に行き、そこでは……」といった具合です。

教皇フランシスコは78歳という高齢にもかかわらず、連日朝から夜までイベントを5つも6つも掛け持ちするエネルギッシュさ。気さくな人柄で知られ、沿道の人々ににこやかに手を振り、いっしょに写真も撮らせてくれるのです。赤ちゃんや子どもには特に優しく、ハグをして頭をなでたり、キスをしたり。

そんな教皇を一目見ようと、ミサがおこなわれたニューヨークのセントラルパークには数万人もの人がつめかけたのでした。

※ “Pope” の日本語訳として「ローマ法王」と「ローマ教皇」が共に使われていますが、日本のカトリック中央協議会は「ローマ教皇」の表記を推奨しています。

 

“ポープモービル” でパレード

22日の夕方にキューバを経てワシントンD.C.に到着した教皇は、オバマ大統領一家に出迎えられました。翌23日はホワイトハウスでのセレモニーにはじまり、パレード、教会でのミサと、まるでロックスターなみに多忙なスケジュール。

パレードの最中、その名も “Popemobile(ポープモービル)” と呼ばれる防弾ガラス張りの専用車から人々に手を振る教皇に、厳重なセキュリティをすり抜けて5歳の女の子が駆け寄るハプニングがありました。教皇はこの女の子、ソフィーを手招きし、祝福を与えました。

その時、ソフィーが教皇に渡した手紙には「わたしの両親を合法滞在者にしてもらえるよう、大統領と議会にお願いしてください」とスペイン語で書かれていたとのことです。

教皇フランシスコは熱心な移民擁護者として知られています。教皇の父親はイタリアからアルゼンチンへの移民であり、教皇は “移民の子”、つまりソフィーと同じ生い立ちだったのです。

 

米国議事堂で “グローバリゼーション” についてスピーチ

24日には、歴代教皇として初の米国議事堂でのスピーチを「英語」でおこないました。内容は移民・信仰の自由・環境問題・貧困・中絶・死刑廃止と多岐にわたりました。

カトリック教会は今も同性愛と中絶には反対の姿勢を貫いていますが、教皇フランシスコは子ども・貧者・移民といった社会的弱者を強く擁護するとともに、世界規模での環境破壊や格差問題に意見を唱え続けています。

特に今回のスピーチで印象的だったのが、「移民の受け入れや移民差別をなくすことが真の意味でのグローバリゼーションである」との主張でした。

アメリカでは次期大統領選がはじまっていますが、移民に非常に厳しい態度を見せる候補者がおり、教皇は少々クギを刺したのかもしれませんね。

 

世界に向けて「英語」で語ることの意味

さて、米国議事堂で「英語」によるスピーチをおこなった教皇フランシスコですが、出身国アルゼンチンの公用語であるスペイン語、バチカン市国の公用語ラテン語、父親の祖国のイタリア語、さらにポルトガル語を話すマルチリンガルながら、実は英語はそれほど得意ではありません。

そのため、アメリカでもほとんどのスピーチをスペイン語でおこないました。しかし、教皇は米国議事堂での演説はぜひともアメリカの第一言語である英語でおこないたいと考え、訪米前に相当な練習を積んだそうです。

その結果、原稿を見ながらのゆっくりとした話し方で、スペイン語のアクセントもありましたが、内容はアメリカ国民に十分に伝わったようです。素晴らしい努力ですね。

スピーチの際、教皇の背後に座っていたのはバイデン副大統領とベイナー元下院議長ですが、ともにカトリック教徒。2人ともスピーチに感銘を受け、特にベイナー元下院議長は何度もハンカチで涙をぬぐう様子が映像におさめられています。(以前より非常に苦しい政治的立場にあったベイナー元下院議長は、教皇の演説の翌日に引退を電撃表明しています。演説前に教皇と1対1での対話をおこなっており、その影響もあったのではないかと言われています)

演説や対話の内容が素晴らしいものであれば、聞き手は通訳を通してでも感銘を受けますが、やはり自身が解する言葉で直接聞くと伝わり方が異なります。教皇や各国の元首に限らず、世界を対象に活動する人が英語を話せると、こうした大きな利点があるのです。

 

マンハッタンが交通マヒ状態に!

米国議事堂での演説を終えた教皇はニューヨークへ向けて発ち、JFK空港到着後、五番街にある聖パトリック教会に直行してミサを執りおこないました。

翌25日のニューヨーク・マンハッタン。この日も街は教皇一色。朝8時半から国連、続いて9.11メモリアル。午後はイーストハーレム(別名スパニッシュハーレム)にあるカトリック・スクールで子どもたちや、他国からの移民たちと語り合いました。

ヒスパニック(中南米系)の子どもたちは教皇にスペイン語で話しかけました。子どもたちは英語とのバイリンガルですが、教皇のためにスペイン語で話しかけたのでしょう。そこにはスペイン語話者同士の親近感が見てとれました。

教皇は中南米からの移民の男性たちとも話しました。なかには教皇同様、英語が得意ではない人もいたと思われます。建設作業員である男性たちは「私たちはこれでこの都市をつくっているのです」とスペイン語で言い、工事現場でかぶるヘルメットと道具を入れるベルトを教皇に手渡しました。

スパニッシュハーレムをあとにした教皇は、8万人が待つセントラルパークに向かい、その後はマディソン・スクエア・ガーデンで2万人を前にミサ。マンハッタンは前日からあちこちで大規模な交通規制がおこなわれましたが、セントラルパーク周辺は人で溢れていました。

ブロードウェイには教皇の肖像が描かれたTシャツを売る露店もたくさん出ており、Tシャツには “Love is Our Mission(愛は私たちの使命)” と書かれていました。

翌26日の朝には、教皇はヘリコプターでニューヨークからフィラデルフィアに。ここでも2日間ぎっしりの予定をこなし、27日の午後8時にアメリカに別れを告げ、バチカン市国へと帰っていきました。

ニューヨーカーの3人に1人がカトリック

教皇はキリスト教カトリックの最高位にある人物で、普段はバチカン市国に暮らしています。その教皇がなぜ、アメリカでこれほどまでに人気なのでしょうか。

日本人にとってはわかりにくい現象ですが、アメリカはやはり、とても信仰熱心な国なのです。

近年、アメリカでも特定の信仰も持たない人が増えていますが、それでも、全米人口の70%がキリスト教徒です。そのうち、教派別ではカトリックが最大の640万人で、全米人口の20%に当たります。キリスト教以外の信仰における信者の割合は、ユダヤ教・イスラム教・仏教・ヒンドゥー教などすべて合わせても6%ほどです。

多くの場合、宗教は人種・民族・出身国と強く結びついています。

筆者が住むニューヨークは世界中からの移民が暮らす都市ゆえに、キリスト教以外の教徒の割合が他のエリアと比べると高くなります。それでもキリスト教徒は市の人口の60%を占め、さらに教派別ではやはりカトリックが最大で、ニューヨーカーの3人に1人がカトリック教徒
ニューヨークにはイタリア系、アイルランド系、ヒスパニックが多く、彼らの大多数がカトリックなのです。


©US Papal Visit

また、歴代教皇がヨーロッパ出身であったのに対し、フランシスコ教皇は史上初の南米アルゼンチン出身でスペイン語話者。中南米系ニューヨーカーにはひときわ親しみの湧く存在です。

さらに、フランシスコ教皇はとても人間味に溢れた人物であり、リベラルな視野の広さを持つことから、カトリック教徒以外にもおおいに歓待されたのでした。

それとは別に、ヨーロッパ諸国のように国民に愛される存在であるロイヤルファミリーを持たないアメリカは、心のよりどころをローマ教皇に求めたのかもしれませんね。

 

“Oh My God!” は使わない?アメリカの宗教あるある

このように、アメリカは宗教とともにある国と言えます。アメリカを訪れる人は、アメリカの宗教事情について少し気をつけてみるといいかもしれません。アメリカ社会への理解が深まるはすです。

たとえば、このような事象も。

■ 驚いた時に思わず発する “Oh My God!” は多くのアメリカ人が使いますが、熱心な信仰者のなかには「神の名をみだりに使うべきではない」とこころよく思わない人もいます。そこで、言い換えの “Oh My Gosh!” を使う人も。

■ 十字架のアクセサリーをつけていると、当然、キリスト教徒と思われます。

■ クリスマスは連邦が定めた祝日ですが、本来はキリスト教の祭日なので他宗教の信者は祝いません。したがって、ユダヤ教徒やイスラム教徒に向かって “Merry Christmas!” とは言いません。

■ キリスト教以外の宗教にもそれぞれに祭日があり、職場や学校が休みにならなくとも礼拝の場や家庭で祝われています。

■ “In God We Trust(我々は神を信じる)” はアメリカ合衆国の公式な国家のモットーとして、貨幣や裁判所の壁などに刻まれています。

■ アメリカ歴代大統領44人は全員がキリスト教徒。うちカトリックはケネディ大統領のみです。

■ 有権者だけでなく政治家も多くが信仰を持ち、そのため中絶や同性婚などに関する政策討論は非常に複雑になり、大統領選の争点にもなります。

 

おわりに:宗教にまつわる英単語

アメリカは、日常生活の会話でも宗教にまつわる言葉が頻出します。最後に、宗教に関連する基本的なボキャブラリーをご紹介しましょう。

「宗教の話はタブー」とはよく言われますが、こうしたボキャブラリーも含め、正しい知識を得たい、きちんとした議論をおこないたいという気持ちであれば大丈夫。相手への敬意を忘れずに、お互いの宗教観について「英語で」言葉を交わしてみてくださいね。

宗教にまつわる主要ボキャブラリー

  • religion:宗教
  • faith:信仰
  • Christianity:キリスト教
  • Christian:キリスト教徒
  • Catholic:カトリック ※ “th” なので発音に注意
  • Mass:ミサ。カトリック用語
  • Protestant:プロテスタント(多数の教派に分かれる)
  • Service:礼拝。黒人ゴスペル教会も含め、プロテスタントは"Mass"を使いません
  • Judaism:ユダヤ教
  • Jew:ユダヤ教徒
  • synagogue:シナゴーグ。ユダヤ教の会堂、ユダヤ教会
  • Islam:イスラム教
  • Muslim:イスラム教徒
  • mosque:モスク。イスラム寺院