さな
(更新)
突然ですが、みなさんは「プライド月間」がどういうものなのかご存じですか?
毎年6月に、1ヶ月間行われる Pride Month(プライド・マンス)では、LGBTについて啓発するためにさまざまな活動やイベントが開催され、大規模なパレードなども行われます。
そして、そんなプライド・マンスの始まりは、ニューヨーク州・マンハッタンに位置する小さなゲイ・クラブで起こった暴動(のちに話すStonewall Inn事件)がキッカケです。
今回は、「プライド」という概念が生まれた背景からLGBTのシンボルである虹の意味、さらにプライドに関連する英語表現をご紹介していきます!
プライド月間は、LGBTのコミュニティの平等な正義や権利の追求の継続を記念し、LGBT個人の功績を称えるためにあります。Pride(プライド)は「誇り」を意味する英語です。
現代でも続く同性愛者の権利運動のきっかけとなったのは、1969年6月28日にニューヨーク・マンハッタンにあるStonewall Inn(ストーンウォール・イン)で起こった事件。
日々差別を受けていたLGBTのコミュニティが安心して集まれる場所として人気だったこの施設に、警察が突然踏み込み、バーの従業員や常連客たちを逮捕し始めました。LGBTであることを理由に無差別に逮捕をする警察に対し暴動が起こり、騒動は5日間ほど続きました。
この暴動はStonewall Riots(ストーンウォール・ライオッツ)またはStonewall Uprising(ストーンウォール・アップライジング)と呼ばれます。日本語では「ストーンウォールの反乱」と表記されることが多いです。
そんなストーンウォールでの出来事をきっかけに、ペンシルバニア州・フィラデルフィアに集まっていたアクティビスト(活動家)たちが march(マーチ・行進)のアイデアを提案したのがプライドマーチの始まりだと言われています。
そして、この事件の1年後に、Christopher Street Liberation Dayという名称で知られる初めての gay pride march がニューヨークで行われました。
それから50年後もプライドマーチは続き、6月になると世界中でパレードやイベントが開催されます。レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーなど、セクシュアル・マイノリティに当てはまる人々が、歴史に与えた影響を認識する機会でもあります。
LGBT関連で、よく虹を見ることがあるかと思います。なぜ虹なのか、疑問に思ったことはありませんか?
実は、虹色の旗が正式にLGBTの象徴となったのは1994年のこと。しかし、それよりも前に虹の旗はLGBTを象徴するものとして存在していました。
1978年に、ゲイでドラァグクイーン(*)でもあったGilbert Baker(ギルバート・ベイカー)というアーティストが、Harvey Milk(ハーヴェイ・ミルク)に依頼され、初めてレインボーフラッグをデザインしました。ハーヴェイ・ミルクは、ゲイであることを公表して当選した米カリフォルニア州初の市政執行委員です。
*英語では drag queen と書き、基本的には女装をした男性パフォーマーのことを指します。
ベイカー氏は、旗の作成についてインタビューでこのように話しています。
Our job as gay people was to come out, to be visible, to live in the truth, as I say, to get out of the lie. A flag really fit that mission, because that’s a way of proclaiming your visibility or saying, ‘This is who I am!’
「ゲイとしての我々の仕事は、カミングアウトすること、目に見えるようにすること、真実のなかに生きること、そして私が言うように、嘘から抜け出すことだった。旗はその使命にぴったりだった。なぜなら、旗は自分の可視性を宣言する、あるいは『これが私だ!』と言うための手段だからだ」
ベイカー氏は虹を空からの自然の象徴と考え、ストライプに8色を採用し、それぞれの色に以下のような意味を持たせました。
色 | 意味(英語) | 意味(日本語) |
hot pink(ホットピンク) | sex | 性 |
red(赤) | life | 生命 |
orange(オレンジ) | healing | 癒し |
yellow(黄色) | sunlight | 日光 |
green(緑) | nature | 自然 |
turquoise(ターコイズ) | art | 芸術 |
indigo(藍色) | harmony | 調和 |
purple(紫) | spirit | 精神 |
この8色の旗は、1978年6月25日に行われたカリフォルニア州・サンフランシスコのGay Freedom Day Parade(ゲイ・フリーダム・デー・パレード)で、最初のバージョンが掲揚されました。
ベイカー氏は、この8色の旗を当時ボランティアと一緒に手作業で作っていたそうです。しかし、大量生産をしようと試みたものの、生産上の問題からピンクとターコイズのストライプは削除され、藍色(インディゴ)はブルーに置き換えられ、現代の6ストライプ(赤、オレンジ、黄、緑、青、紫)の旗に変更されました。
現在、虹の旗のなかでもっとも一般的なのはこのタイプで、自然の虹のように赤いストライプが一番上にあります。このように、さまざまな色が、LGBTコミュニティの多様性と結束を表現しているのです。
また、LGBTのコミュニティにはさまざまな性自認や性的指向が存在しますが、それぞれを象徴する旗もあります。
それぞれの意味と詳細を説明している記事もあるので、ぜひあわせてお読みください!
Demonstrate という動詞にはさまざまな意味合いがあり、「証明する」「実証する」から「示す」「実演する」「行進する」などがあります。名詞形は demonstration です。
日本語で使う「デモ」という言葉は、このデモンストレーションという英単語を省略したものです。
「ゲイの権利活動家とアライ(支持者)は、平等な権利を実現するために何年もデモを行ってきました」
「記念する」は英語で commemorate と言います。名詞形は commemoration です。
「プライド・マーチは、ストーンウォールの暴動を記念するために始まりました」
Rights という言葉は「権利」を指します。LGBT rights の他にも gay rights と聞くことが多いです。
「同性愛者の権利を守るために、活動家は絶えず戦っています」
「今に至るまで、世界中の人々はLGBTの権利のために戦い続けています」
Liberation は「解放」を意味します。
The Gay Liberation Movement(ゲイ解放運動)は、1960年代後半から1980年代半ばにかけて行われた社会的・政治的運動です。参加者は、LGBTの人々に過激な直接行動を促し、社会的恥辱に対抗するために「gay pride(ゲイの誇り)」をもって行動することを求め活動していました。
しかし現代では、gay liberation というと、LGBTに対する社会的・法的抑圧をなくすためのより広い運動を全般的に指すことが多いです。
「ストーンウォールの反乱は、アメリカのゲイ解放運動にとって重要な出来事だった」
Hate crime は、日本語の「憎悪犯罪(ぞうおはんざい)」に当たります。憎悪犯罪とは、人種、民族、宗教、性的指向など、特定の属性を持つ個人や集団に対する偏見や憎悪によって引き起こされる犯罪です。
英語では、hate crimes against 〇〇 や anti-〇〇 hate crimes のように表現します。
「LGBTの人々の多くは、セクシュアリティだけを理由に自分に対する憎悪犯罪を経験します」
「近年、トランスジェンダーの人に対する憎悪犯罪が増加しています」
これは、LGBTの人の権利を制限する法案のことを意味する英語です。bill は「法案」という意味で、law は「法律」を指します。
アメリカでは2022年に過去最高の238件(1日3件以上)の反LGBT法案が提案され、そのうち約半数は特にトランスジェンダーの人をターゲットにしています。
そして、反LGBT法のなかでもっとも有名なのは、2022年の1月にフロリダ州で制定された、幼稚園から3年生までの学校で性的指向や性自認について教えることを禁止した法律です。「Don’t Say Gay(ゲイと言うな)」という名称で知られています。
「米国の多くの州で、反LGBT法案が法制化されています」
転向療法は、個人の性的指向を同性愛や両性愛から異性愛に変えようとする偽科学的な行為です。現在、世界各国でこの行為を禁止させる運動が行われています。
「ブラジルは、転向療法を禁止した史上初の国です」
プライドパレードは世界各国で行われます。そして、セクシュアル・マイノリティに当てはまらない人でももちろん参加することができます。LGBTの平等な権利を支持する ally(アライ)と呼ばれる人が活躍する場でもあるのです。
ここでは、誰もが参加できる英語圏で行われるイベントを少しだけご紹介します!
プライドという概念が生まれた街といっても過言ではないニューヨーク。NYC Prideでは、さまざまなパフォーマンスやイベントが開催されます。6月にニューヨークにいることがあればぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
Pride Torontoは、カナダのトロントで行われるプライドパレード。NYCと同様、トロントでも6月中にさまざまなイベントが開催されます。
イギリスの首都・ロンドンでもパレードが開催されます。イギリスで初めてのプライドマーチが行われてから50年が経つ2022年のパレードは特に貴重とされています!
アイルランドのダブリンでも、6月中はLGBTQの多様性を祝っています。ダブリンで初めてのプライドマーチが行われたのは1974年です。
オーストラリア・シドニーのプライド月間では、LGBTQのアート、映画、トリビア、ディベート、スポーツ、募金活動、クラブイベントなど、さまざまなイベントが開催されます。
▶「Sydney Pride Festival」公式サイト
他の国でもプライドパレードは行われるので、上記で紹介したもの以外で探している方がいればぜひこちらのリストを参考にしてください。
プライドというのは、LGBTのコミュニティに所属する人々には欠かせない概念です。
マイノリティであっても、自分は自分。そんな自分を誇りに思うことが大事だということがわかりましたね。
6月中に海外へ行くことがあれば、プライドパレードやイベントに足を運んでみるのも面白いのではないでしょうか。LGBTのことをもっと知るいい機会になるかもしれません!