Yuki Toy
(更新)
タイムマシーンに乗って、未来の自分に会いにいく。誰もが一度は思い描いたことのある超現実の世界が、本当に存在していたら?
科学、物理、または宇宙空間をテーマに基づく「サイエンス・フィクション」。英語では 、サイファイ(Sci-Fi)と略し使われることがよくあります。この、SF世界の一角であるパラレルワールドが実際に存在し、タイムトラベラーが頻繁に立ち寄ると噂されるコンビニがここロサンゼルス市内にあると話題になっています。
「時空移動中の人がちょっと立ち寄ることのできるコンビニ」というユニークな謳い文句で、ロサンゼルス市民の興味をかき立てているSFコンビニエンスストア「タイムトラベルマート」。
まさに普通のコンビニのごとく、店内には一見何の変哲も無い生活必需品や食料品が棚に並んでいます。ですが、どこか少し“超現実的”な違和感を感じるはず…?
「タイムトラベル時の酔い止め」と書かれた錠剤。やはり、時空移動中に発生する圧力は、人々の気分を悪くしてしまうのでしょうか?
こちらは冷蔵庫の中。卵の様子が“ジュラシックパーク”です。
そして、こちらはマンモスの肉の缶詰。缶詰は腐らないので、氷河期のものでも安心ですね。
「What Time Is It?」「NOW!」
“汚染物質(Pollution)”の販売 。その使用目的は一体……?
メッセージボトル。歴史上の人物や次世紀の子孫へ手紙を出すときに便利そうです。
男性には「髭の歴史早見表」。これでどの時代に行っても流行に乗り遅れることはありません。
何十年後もスケジュールがびっしりな方は「50年カレンダー」で予定管理。
……こういった形で「タイムトラベルマート」には、SF好きにはたまらない小粋なジョークの効いたグッズが店内を埋め尽くしています。
その他にも、洗剤、文房具、お菓子など、私たちが普段コンビニで目にするような品の数々が“異次元バージョン”で販売されているのです。おもしろくてアイデア満載のギフト商品を見つけるのにも「タイムトラベルマート」はオススメですよ。
しかし、なぜこのような一風変わった、タイムトラベルをテーマとしたお店がオープンしたのでしょうか。
アメリカには "McSweeneys" と呼ばれる、日本でいう「小学館」のような子供向けの図書を出版する会社があります。 "McSweeneys" で勤務していた作家のデイブ・エガーズさんは、子供達のためにライティングを学ぶための施設「826 National」を開校することを決意。ニューヨーク、ワシントンDC、ミシガン、シカゴ、ボストン、シアトル、サンフランシスコ、そしてロサンゼルスに支部を設立しました。
それぞれの施設では、アフタースクールプログラムの一環として、6歳〜18歳までのティーンが創作文を勉強しています。クラスでは、ファンタジー、推理小説、SF、絵本など、子供達の個性に合わせてたくさんの文書活動が行われており、英語やジャーナリズムを専攻する大学生や、プロのライターによるボランティアチームが彼らのライティング教育をサポートします。
子供達の独自性、クリエイティビティ、自尊心を発展させるために、書かれた文章は印刷し、施設のフロントで本として出版。そして、それらが実際に売られているお店が「タイムトラベルマート」、つまりこのコンビニは子供の作文教室の表玄関だったというわけです。
子供達の創造性をかき立てるため、そして彼らの想像力が無限に広がるようにという意味を込めて、このような宇宙的なコンビニが施設の表の顔として設置されました。
ちなみに、ロサンゼルスの支部は「タイムトラベル」をテーマとしていますが、ニューヨークでは「スーパーヒーロー」、シカゴでは「シークレット・エージェント」、ボストンでは「ビッグフット研究所」など、各地域がこれまた子供心をくすぐるテーマの数々をかかげながら、今日まで作文教育を支援しています。
私も「この世界の向こう側には一体何があるんだろう?」と、一端に異次元について白昼夢に浸ることがあります。その昔は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』 の "Flux Capacitor" (次元移転装置)を自作(しようと)してみたり、UFOが迎えに来ないかと空を見上げながら道を歩いたりと、未知との遭遇に夢を抱いた時期がありました。
自分の知らない何かがそこにあるかもしれないと考えたときに、「知りたい」「探りたい」と思う気持ちは、人間の本能として世界共通のようです。
ロサンゼルスを訪問した際には、ぜひ「タイムトラベルマート」で海外旅行ならぬ「次元旅行」を楽しんでみてはいかがでしょうか。