NYタイムズスクエア騒然!女性のトップレスも合衆国憲法で保障される!?

この夏、ニューヨーク旅行でタイムズスクエアを訪れた人は、トップレスで佇む女性たちに驚いたのではないでしょうか。

下記のリンクをご覧ください。観光客でにぎわう昼日中のタイムズスクエアに立つ女性たち、身に着けているのはなんとTバックだけ。あとは見事にハダカです。

▷ Topless performers take over Times Square

胸には星条旗カラーのボディペイントをほどこしているため、遠目にはブラジャーでも着けているように見えますが、近づいて目を凝らすとヌードであることがわかります。さらに画像を見ていくと、Tバックからはみ出した左のヒップには大きな「N」、右のヒップには「Y」で「NY」と書かれています。

いつの間にやら、スペイン語で “Desnuda(デスヌーダ:裸、naked)” と呼ばれるようになった女性たちは、観光客と写真撮影をしてはチップを稼いでいます。男性はまさにウハウハ状態ですが、女性や家族連れも楽しそうにツーショット・セルフィーを撮っています。

中には、お父さんデレデレ、その背後で子供たちが「ダディ、何やってるの?」という顔付きの家族も。もちろん、顔をしかめる人もいれば、親が慌てて子供の目を手で覆うイスラム教徒の家族もいます。

いずれにせよ、これもまた “Only in New York!(こんなコトが起こるのはニューヨークだけ!)” 現象であることは間違いありません。

市長、激怒!

この事態を大いに憂えているのがデ・ブラシオNY市長です。

今では想像もできませんが、かつてのタイムズスクエアはポルノ街でした。アダルトビデオ専門店や、コインを入れると窓が開いて中のセミヌード女性のダンスが見られる “のぞき小屋” が建ち並び、家族連れや若い女性が一人で歩ける場所ではなかったのです。

▼ 昔のタイムズスクエアと42丁目(42nd Street)の様子

そんなタイムズスクエアが1990年代に大変身を遂げます。当時の市長がポルノ店を一掃し、代わりにディズニーなどを誘致して、現在のようなファミリー向け観光地としたのです。

そんな歴史と背景のあるタイムズスクエアに突如、大量のトップレス女性が現れたわけです。これについて現市長は “I don't like it.(好きじゃない)” と、驚くほどの直球フレーズで不快感を表しました。

ところが「女性がトップレスになる権利」は、アメリカ合衆国憲法とニューヨーク州法によって守られているのです! まさに「権利の国、アメリカ」ですね。

“Tバック” は和製英語?

アメリカ人がこよなく愛し、誇りとする合衆国憲法についてご紹介する前に、セクシー系の単語をいくつか覚えてみましょう。

TPOをわきまえて使うべき言葉も含まれていますが、知っておかないとアメリカ人の会話についていけなかったり、映画やドラマが理解できなかったりするほど浸透している言葉ばかりです。

《裸》

naked(形)
nudity(名)
half naked上半身裸
topless上半身裸(女性のみ)

《胸/乳房》

chest胸部。男性に対しても使う
bust主に女性の着衣の胸囲サイズに使う
breasts乳房。乳房は2つあることから通常は複数形
ー breast feeding(母乳授乳)
ー breast cancer(乳ガン)
chest胸部。男性に対しても使う
tits, boobs乳房のスラング。こちらも複数形
nipple乳首

※ 乳房を指すスラングは他にも多数あり

《尻/臀部》

hipお尻
buttocks臀部
butt尻のスラング。日常会話でよく使われる
ass尻のスラング。かなり下品
cheekお尻のほっぺた。
(左右両方を指す場合は複数形)

※ 尻を指すスラングは他にも多数あり

《下着》

thongTバック
braブラジャー

※ 女性のパンティは全種類含めて “panty" と言い、形によって “bikini” “ thong”  “hiphugger” などと細分化されます。下記のサイトに詳しい形と名称が載っていますので合わせてご確認ください。

▷ Victoria's Secret

女性にもトップレスの権利を!

女性が公共の場でトップレスになることは、実は憲法以前にニューヨーク州法でOKとされています。実際、ごく稀にですがトップレスで歩く女性がいます。筆者もニューヨークの夏の恒例イベント、マーメイド・パレード帰りに人魚の仮装をしたまま地下鉄に乗っている女性を見掛けたことがあります。その女性、貝ガラのブラジャーはしておらず、乳首シールを貼っていただけでした。

また、毎年8月には “女性の乳首解放” を訴えて女性たちがトップレスでマンハッタンを練り歩く “Nipple Pride Parade(乳首プライド・パレード)” があり、今年も約300人が参加しました。

主宰者によると、法律では男女共に上半身裸で公共の場に出ることが許されているにもかかわらず、社会規範により女性は実行不可能であり、男女平等の権利が損なわれているとのこと。当日の様子を収めたビデオを見ると、胸に黄色いペイントで大きく “Equal Right(平等な権利を)” と書いている女性がいます。

“ピンプ” が語る米国憲法とは?

このように、NY州法では女性がトップレスになっても問題はないのですが、「商用で行ってはならない」とされています。

とすると、観光客と写真を撮ってチップを稼いでいる女性たちは州法違反を犯しているように思えます。ところが、女性たちをまとめている自称マネージャーの男性たちは法律をちゃんと学んでおり、「撮影の料金設定をしない」「任意の額のチップだけを受け取る」ことにより、商用ではないと主張しているのです。

さらにアメリカ合衆国憲法の権利章典(修正第1条)が “the freedom of speech(言論の自由)” を保障しています。マネージャーは、女性たちはストリート・パフォーマーでその行為はアートであり、憲法で保障された言論の自由があるとも言っています。

このように、アメリカではことあるごとに憲法が持ち出され、特に「言論の自由」の修正第1条と、「銃の保持」を保障する第2条が頻繁に引用されます。
これは、アメリカの風土やアメリカ人の精神性を知る上で、非常に重要なポイントなのです。

First Amendment to the United States Constitution: The Bill of Rights
Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.

アメリカ合衆国憲法 権利章典(修正第1条)
合衆国議会は、国教を樹立、または宗教上の行為を自由に行なうことを禁止する法律、言論または報道の自由を制限する法律、ならびに、市民が平穏に集会しまた苦情の処理を求めて政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。(Wikipedia)

この自称マネージャーたちは、女性たちと共にタイムズスクエアに出かけ、まずは衆人環視の中で女性の身体にボディペイントをほどこします。それが終わると女性たちは観光客に声をかけて写真撮影を行い、チップを稼ぎます。マネージャーは女性たちの服やバッグを預かり、同時に女性の身体に触れようとする不届き者がいないかを監視します。

一日の終わりにチップを数え、マネージャーは30~40%を受け取ります。女性1人の稼ぎは1日150~300ドル程度とのことで、マネージャーは抱える女性の数が多いほど身入りが増えるシステムなことから、マネージャーを “ピンプ(pimp、ポン引き)” と呼ぶメディアも出てきました。

“ネイキッド・カウボーイ” はどうなる?

彼らの行動は「アートの自由な表現」なのか、「ピンプと半裸の女性によるセックス産業」なのか。

もし後者とするならば、タイムズスクエアの主(ぬし)的存在である “ネイキッド・カウボーイ” はどうなのでしょう。男性なら白いブリーフ一丁でギターを弾き語っても許されるのでしょうか。

▼ タイムズスクエアを拠点とするパフォーマンスアーティスト「ネイキッド・カウボーイ」

こうした州法と憲法の解釈については法律家の間でも意見が分かれるところなのですが、刑法にひっかからない以上、市長はマネージャーと女性たちを逮捕できません。

そこで市長は一計を案じました。トップレス女性たちが活動しているのはタイムズスクエアのど真ん中、車道を仕切ってテーブルとイスを並べた “Pedestrian Plaza (歩行者広場)” です。人気の観光スポットですが、このプラザ自体を閉鎖してしまおうと言うのです。

これには「やり過ぎだ」の声が出ていますが、市長はトップレス女性の出現以前から、タイムズスクエアに出没するアニメ&コミック・キャラクターに辟易していました。

数年前からエルモ、ミッキーマウス、バットマン、マリオ、ハローキティ、昨年からは「アナと雪の女王」のエルサ、今年はミニオンズまで、無数のキャラクターの着ぐるみが観光客と写真を撮ってはチップを稼いでいます。

この着ぐるみ、よくできたものもあれば、まるで似ていないお粗末なものもあって笑えるのですが、チップを強引に求める・女性の身体に触る・通行人と殴り合いのケンカをするなど、数々のトラブルを起こしています。

▼クッキーモンスターとエルモの着ぐるみで通行人に声をかけている様子

市長はこれらのキャラクターを一掃するために、ディズニー社とマーベル社に肖像権違反で着ぐるみ行為者たちを訴えるよう依頼しましたが、2社ともこれを拒否しました。「細々とチップを稼ぐ一般人など、放っておけ」ということでしょうか。万策尽きた市長は、プラザの閉鎖しか思いつかなかったのでしょう。

いずれにせよ、トップレスの女性たちは、秋にはタイムズスクエアから姿を消すはずです。気温が下がれば、アートであれ、ビジネスであれ、裸ではいられません。

なにせ昨冬のニューヨークの最低気温は、マイナス17度まで下がったのですから。