則岡麻里絵
(更新)
学校の授業は、興味がなかったり、苦手意識のある内容だとつい敬遠してしまいますよね。
しかし、そんな授業も実生活に強く結びついていたり、好きな物・興味のある物に関連していたら、ハードルが下がって取り組みやすくなるのではないでしょうか。
アメリカの学校(小学校~大学)でも、学生が興味を持てるよう工夫された授業が行われているのですが、その中身は意外なテーマを持つものから時代の流れを反映したものまで実にさまざまです。
この記事では、そんなユニークな授業をまとめてご紹介したいと思います。
“Drug Abuse Resistance Education” の頭文字をとって D.A.R.E. と呼ばれる薬物乱用予防教育プログラムは、1983年にロサンゼルスの市警と統一学区が協力して開始したもので、薬物やアルコールの乱用、暴力やいじめ、その他の危険行為の予防を目的としています。
現在、全米の約75%の学校で、主に4~8年生を対象として実施されており、専門のトレーニングを受けた警察官が実際に学校を訪れて、薬物の危険性や自尊心を培うことの大切さ、 ”peer pressure” (仲間からの圧力)に打ち勝つ方法などを教えています。
アメリカの一部の中学・高校では、まるで本物のようにプログラムされた赤ちゃんのロボットを使用して、子育てを疑似体験できる授業が行われています。
授乳、オムツ替え、抱っこ、体温、泣いている時間の長さなどが細かく設定・記録されるようになっており、適切な対応が求められます。最初は楽しんでお世話をし始める生徒も、家に連れて帰って夜泣きに対応することになると困ってしまうのだとか。
この授業は、ケアの方法を教えるだけでなく、虐待や10代に多い望まない妊娠の予防も目的としています。ロボットの見た目もさまざまな人種に似せて作られていてとてもリアルです。
インターネットが普及し、たくさんの情報が溢れていますが、その情報は証拠に基づいた正しいものだけではありません。
信ぴょう性の高い情報であるかのように見せかけた情報がSNSで拡散されることも多く見受けられます。そのため、見聞きする情報に踊らされず、自ら情報を分析できる能力は非常に重要なものとなってきています。
ワシントン州では教育者と議員が協力してこの問題に取り組んできており、同州のバーチ小学校では、新聞記事で使用されている言葉を分析することによって、その信ぴょう性について考える授業が行われているとのこと。
またエドモンズ・ウッドウェイ高校では、フェイクニュースを作成してみることを通して、情報を分析することの重要性が教えられているのだそうです。メディアリテラシーに関する授業は、その重要性から他の州にも広がりを見せていると聞きます。
ペンシルバニア大学には、3時間インターネットで暇潰しをするとうたっている授業があります。
英語科の ”creative writing”(創作的作文)の授業の一つで、授業中にするネットサーフィンで得た資料を元に文学的な作品の執筆に挑戦するとのこと。Facebookの情報を元に自叙伝を書いたり、Twitterフィードの情報を使って小説を書いたりするのだそうです。
学習内容の説明には、 ”Distraction, multi-tasking, and aimless drifting is mandatory.”(注意散漫、マルチタスク、あてどなくさまようことが必須です)と書かれています。
アイオワ州立大学で受講できるホスピタリティマネジメントの授業の一つで、その名の通りお酒に関する授業。
ワイン、ビール、蒸留酒などの歴史、生産方法、サービステクニック、販売などについて学ぶことができます。実験室での授業もあり、試飲をして見た目や匂い、味などを分析することも授業の一環だそうです。
お酒好きの人には最高の授業かもしれませんね。この授業を取るためには合法的に飲酒できる21歳以上でなければなりません。
「街中でのケンカに使える数学」という不思議なタイトルを持つ授業です。
マサチューセッツ工科大学で教えられている数学の授業ですが、結果を推測し、証明や正確な計算をせずに問題を解決する技術を習得できるのだとか。街中でケンカを吹っかけられたときに役立つかも(?)しれません。
日本では一般にタブー視されるタトゥーですが、カリフォルニア州にあるピッツァー大学では授業のテーマになっています。
大衆文化におけるタトゥーの描写や、タトゥーに人種、階級、性別などの違いがどのように表れているかを学ぶコースだそうです。
同大学には ”Tattoos, Piercing, and Body Adornment”(タトゥー、ピアス、ボディ装飾)という授業もあり、こちらではアメリカだけでなくアジアや太平洋地域で身に付けられている装飾品と、アイデンティティやコミュニティの形成、権力、社会統制、植民地主義などとの関連についても学べるのだとか。
南カリフォルニア大学では自撮りの授業が行われているのだそうです。
とは言っても、どうすればきれいに自撮りができるかが教えられているわけでありません。
正式名称は ”Writing 150: Writing and Critical Reasoning: Identity and Diversity”(ライティング150:ライティングと論理的思考力:アイデンティティと多様性)といい、自撮りという現象が個人や社会をどのように表しているのかについて考える授業だそうです。
これは小学校の体育の授業ではなく、なんとアイビーリーグと呼ばれる名門私立大学の一つであるコーネル大学で行われている授業です。
木の登り方だけでなく、地面に下りずに木から木へと移動する方法や、ロープやギアの使い方を教えてもらえるのだとか。ちなみに経験は不要だそうです。
ケンタッキー州のセンターカレッジには「散歩」の授業があります。
すでに10年以上も行われてきているコースで、留学プログラムの一環として、イギリス、フランス、ドイツでも開講されてきたそうです。
散歩を通して、自然界の美しさを探究したり、自身の存在について考えたりするとのこと。他に類を見ない授業ですね。
主に社会学、女性学、ジェンダー研究といった分野では、以下のようなセレブリティを題材にした授業が複数の大学で行われています。
いずれも音楽や文化研究ではなく、各セレブの例を通してビジネス、マーケティング、法律、メディア、宗教、政治、名声、アイデンティティ、人種、ジェンダーなどについて学ぶ授業ですが、一般的な授業よりも学生が興味を持ちやすい内容になっていそうですね。
Lady Gaga and the Sociology of the Fame
「レディー・ガガと名声の社会学」
ーサウスカロライナ大学
Politicizing Beyoncé
「政治的にみるビヨンセ」
ーラトガース大学
The Sociology of Miley Cyrus: Race, Class, Gender and Media
「マイリー・サイラスの社会学:人種・階級・ジェンダー・メディア」
ースキッドモア大学
Hip Hop: Urban Theodicy Jay-Z
「ヒップホップ:都会の神義論Jay-Z」
ージョージタウン大学
受けてみたいと思える授業はありましたか?
ここでご紹介した授業を見る限りでも、学生が興味を持って学べるよう、さまざまな角度からプログラムが作られていることが見て取れるかと思います。一般的な内容の講義も、少し視点をずらしてみることで、たくさんの人が興味を持てる内容へと変わるんですね。
このことは、個人レベルの学習にも応用できるのではないでしょうか。あまり興味がないことや苦手なことも、工夫次第で楽しく学ぶことができたらいいですよね。
そうすれば、学習が楽しくなって内容がどんどん身に付くかもしれません。
【参考】
https://www.english.upenn.edu/courses/undergraduate/2015/spring/engl111.301