ササキ ノノカ
(更新)
海外に行ったとき、日常会話はある程度話せる人でも、ふとしたときに「あれ? これって英語でなんて言うんだっけ?」と思う瞬間があるかと思います。
私も留学中、食事を食べ終えたときに「ごちそうさま」の英語の言い回しが思い浮かばず、唖然としたことがありました。
このように、日本語を英語に直訳できないことは多くあります。今回は、そんな「日本語にあるけど英語にはない表現」を集めてみました。
食事後の「ごちそうさま」をはじめとした “ダイレクトに英語にできない表現” は、代替できそうな言い回しをご紹介したいと思います。
有名な話ではありますが、英語圏をはじめとした欧米の多くの国には「いただきます」に当たる言葉がありません。食事をする前に “Let's eat.(さあ食べましょう)” と言うことはありますが、「いただきます」のような感謝の意は込められていない点が絶対的な違いですね。
ただ、作ってくれた人へのマナーとして、
The food looks delicious.
「美味しそうだね」I would like to know the recipe.
「レシピがぜひ知りたいのですが」
などと言った言葉を伝えることはあります。相手を気遣う心を表現して、そっとねぎらいたいものですね。
「いただきます」と同じように、「ごちそうさま」も英語には無い表現です。食べ終わった後には、次のような言い回しが使われますが、こちらも「いただきます」同様、料理を作ってくれた人への感謝の気持ちにやや欠ける部分があります。
I'm done.
「食べ終わりました」I'm satisfied.
「満足です」I'm full.
「満腹です」
こなれ感はなくなりますが、感謝の気持ちを表現したいときには “These dishes were great.(料理が素晴らしかったです)” などと心遣いを示すと良いかもしれません。
日本では挨拶のように多用される「おつかれさま」。実際に「労う」という意味合いももちろんありますが、あまり深い意味もなく使われていることも多くありますよね。
労う意味では、次のような表現が使われます。
Good job.
「やったね」Well done.
「よくやった」
挨拶の意味合いが強い「おつかれさま」に関しては、
Have a good day.
「良い1日を」
などと言うのがちょうど良いかもしれませんね。
英語では日常的に「おかえりなさい」という声かけをする習慣がありません。
“Welcome home.(おかえりなさい)” という言葉がありますが、これはあくまで長期で家を空けていた人に対する言い回し。
声かけが何もないのも寂しいので、ニュアンスは全く異なりますが、帰ってきた人には 、
How was the day?
「今日はどうだった?」
と聞いてあげるのはいかがでしょうか?
「思い通りにならずソワソワする」という意味の日本語、「もどかしい」。これを英語に直訳することはできないのですが、辞書を引くと、“irritating(イライラする)” や “be impatient(我慢できない)” など、「イライラする」といったニュアンスの言葉が出てきます。
ただし、「もどかしい」は必ずしも怒りやイライラに近い感情とも限らないので、シチュエーションをしっかりと見極めて使うようにしましょう。
「寂しい」は2種類に分けて考えてみます。「特定の相手がいないことの寂しさ」と「漠然と感じる寂しさ」です。
家族や恋人など、特定の相手がいないことの寂しさは “miss” を使うことで似たニュアンスを表現できます。
I miss you.
「あなたが恋しい」
ただし上記では、「寂しいな……」とポツリ、漠然と感じる寂しさを表すのは難しいかもしれません。“I feel lonely.(寂しい)” という言葉がありますが、やや大げさな印象を与えてしまうかもしれません。
この手の寂しさを表したいときは、少しニュアンスは異なりますが、
I feel kind of lonely.
「寂しい感じがする」
と伝えてみるのはいかがでしょうか?
誰かに何かを手伝ってもらったとき、「助かったよ」と伝えるにはどのように言えば良いでしょうか? 実は、英語にはそんな言い回しがありません。
感謝の度合いにもよりますが、端的に
Thank you.
「ありがとう」
と言うのがベストかもしれません。
例えば、“It was very helpful of you to come here.(ここに来てくれて助かりました)” のように一文にして表現することはできるのですが、日本語の「助かったよ」のように一言で表す言葉は英語にはないようです。
日本語特有の表現、「おかげさまで」。
具体的に特定の誰かのおかげで成功できた場合の「おかげさまで」という意味合いはもちろんですが、日本で使う多くは
A:「病気が治ってよかったね」
B:「ええ、おかげさまで」
などのように、「特定の誰かのおかげではないけれども、不特定多数の人や神々によって支えられている」というニュアンスを含みますよね。
英和辞書で「おかげさまで」と引くと、次のような表現が出てきます。
・Luckily
「ラッキーなことに」・Fortunately
「幸運なことに」
「たまたまラッキーだった」という意味合いが強くなる上、それ一語では完結しませんが、他に表現しようもないのでこのあたりの単語を使うのがベターと言えそうです。
日本語の「おすそ分け」という言葉は、「着物の裾を分ける」というところから転じた丁寧語です。そんな「おすそ分け」を一言で言えるような名詞は、残念ながら英語にはありません。
「誰かとものを分け合う」という意味では、“something to share with you” でもいいようなものですが、「おすそ分け」よりもかなりフランクな意味になってしまいます。
とはいえ、残念ながら “share” 以外に「おすそ分け」を表すうまい言い回しが無いのが事実。英語で表現するのがかなり難しい日本語のひとつと言えそうです。
「つまらないものですが」も日本語独特のへりくだった表現ですね。こう伝えたいときは、意味が異なりますが思い切って次のように言ってみてはいかがでしょうか?
I’m glad you like it.
「気にいってくれたら嬉しいな」I hope you like it.
「気に入ってくれるといいんだけど」
「喜んでもらえたら嬉しいです」のようなポジティブな意味で伝えると、あまりニュアンスを崩さずに自然な英語にできるはずです。
「お邪魔します」という謙譲語的な表現は英語には存在しません。「つまらないものですが」と同じように、ポジティブな表現で気持ちを示すのが得策でしょう。
Thank you for inviting me.
「招いてくれてありがとう」Thank you for having me.
「呼んでくれてありがとう」
このように、感謝の気持ちを示す表現をするのが良いかもしれません。
ただし、日本語の「お邪魔します」よりはやや重い印象になってしまうのは事実。感謝を伝えること自体は良いことですが、挨拶のように使える「お邪魔します」の便利さが身に沁みますね。
日本語で言うところの「お互い様」には、「両方悪いから、お互い様だよ」と「お互い様だから気にしないでね」という2つの意味合いがありますが、どちらも一言で言い表せる英語はありません。
前者の意味では、“so are you” や “be both” を用いた下記のような使い方ができます。
《例》
If I’m a liar, so are you.
「うそつきだというならお互い様だ」We are both to blame〔at fault〕.
「悪いのはお互い様だ」
「お互い様だから気にしないでね」という意味では、
You would do the same for me if I were in trouble.
「困ったときはお互い様だよ」
などと伝えることができます。その時々のシチュエーションに合わせて言いかえるのが良さそうです。
「仕方ない」とは、「どうすることもできない」という意味ですよね。英語の表現としては、
We have(had)no choice.
「他に選択肢が無い」There was no help for it.
「手の施しようが無い」
と言うことができます。ただし、もう少し短く言い表せると良いですよね。
そんなときは、こんな表現を使ってみてください。
That's life.
「それが人生だ」
「人生」と言うと壮大で悲観的なように聞こえますが、「これが人生だ。(だから明るくいこうよ)」という意味合いなので、落ち込んだときに呟いてみると案外元気が出てくるかもしれませんよ。
日本語で当たり前に使っている言葉でも、英語にはダイレクトに表せないことがたくさんあるんですね。
ちょっと間違うと、思わぬ誤解に繋がりかねない言い換え表現。その都度シチュエーションに合わせつつ、齟齬のない言い回しバリエーションを増やしていけたらいいですね。