ショーン・ツジイ
(更新)
たくさん発音練習して子音や母音、リズムやリエゾン(音の連結)はマスターしたのに何かが足りない…日本人英語話者としては上手な発音だけど、ネイティブ英語話者と同等には聞こえない…
それはなぜでしょうか?そこにはあまり日本人には知られていない、あるポイントが関係しています。
こんにちは。
プロイングリッシュスピーカー育成ディレクターの、ショーン・ツジイ(Shawn Tsujii)です。
これまで2回に渡って日本人英語話者の発声タイプと、その矯正法をご紹介してきましたが、最終回である本コラムでは、よりネイティブの発音に近づけるためのフォーカルポイント(音の焦点)についてご紹介したいと思います。
フォーカルポイントとは「音の焦点」のこと。
英語方言学者のスターン教授によれば、英語の音の焦点は日本人が一般的に思っているよりも口のずっと前方にあり、さらに同じ英語でも標準的アメリカ英語の音の焦点は「口のど真ん中」で、イギリス英語の音の焦点は「唇の前(口の外側)」にあるとされています。
言語によって音を出すところ、もっと言えば同じ英語間でも音を出すところが違うなんて面白いですよね。
言葉を話すとき、声をその焦点に集中させるようにして発声・発音するのですが、
試しに唇より前(口の外側)に音の焦点を固定して"Harry Potter"と言ってみてください。
いかがですか?イギリスっぽくなりませんか?
また、口のど真ん中で"Harry Potter"と発音するとアメリカっぽく、
そして喉で発音すると日本っぽくなりませんか?
自分でわかりにくいときは、誰かに聞いてもらってその違いを検証してもらってくださいね。
【口の真ん中に音の焦点がある標準アメリカ英語の例】
"Do you like to play tennis?" (男性声)
音の焦点を「口のど真ん中(アメリカ英語)」や「唇の前(イギリス英語)」に持ってきてください。
発声に関わる筋肉群のコーディネーションが変化するので、皆さんの声の響きが大きく変わるはず。くっきりした明瞭な発音・発声を得られるようになるので、これによって今まで自分には無理だと思っていたような「英語の響き」を出せるようになる人も少なくありません。
あまりに自然に行われることですので、なかなか気付かれにくいことですが、日本語を話すときは、大抵の人にとっては、音の焦点を「口の奥」や「喉近く」に置くほうが話しやすいです。
何年も日本に住んでいる、日本語の上手なアメリカ人やイギリス人を観察してみてください。日本語を話すときに、無意識に音の焦点を喉の近くに切り替えている人が多く見られます。
帰国子女にも当てはまりますが、文化に適応していくうちに、本人も自覚せぬ間に「音の焦点」の切り替えを行っていることが多いのです。
文化の違いに関して、言語学的にも、昔から日本では「喉」と「発声」は密接に関わりあっていることが、非常に興味深いと筆者は感じています。
日本語の「のど自慢大会」が、アマチュアの歌のコンテストの意味であったり、あと少しで言いたいことが思い出せそうなとき、日本語では「喉まで出かかっている」と言いますが、英語では"on the tip of my tongue"(舌先まで出かかっている)と言います。
そのような言語感覚から見ても、やはり日本人は「喉」が声の出どころで、ネイティブ英語話者は「口の前方」が声の出どころなのでしょう。
文化や地域によって、発声の習慣は異なっています。どこの地域にも、その土地に根ざした話し方や身体動作というものがあり、筆者はその文化の多様性と影響力に感嘆せざるをえません。
DMM英会話では世界60カ国以上の英語話者に触れることができます。英語学習者の皆さんはぜひ積極的にいろいろな地域の英語に触れ、その発声法や話し方の特色を観察してみるのも面白いのではないでしょうか?
最後になりますが、最近北米で行われているストローエクササイズというものを紹介します。
もともとは喉を痛めた人向けに北米の病院で行われるリハビリの一環でしたが、喉を力ませるクセの強い日本人英語話者にとっても、役に立つエクササイズだと思います。
動画はセス・リグスの愛弟子スペンサー・ウェルチの愛弟子、コウ・ナカムラ(Ko Vocal Studio代表・筆者の元生徒)によるストローエクササイズのデモンストレーションです。
喉の調子が悪いときや、練習のウォームアップのために、参考にしてみてくださいね。
【動画】ハリウッド式!3分でわかる、歌う前にするとグンと声が出るウォームアップマジック!
「話しぶりは、精神の鏡である。話し方というものが、その人自身なのだ。」
by プブリリウス・シユルス(古代ローマの金言集の作者: 紀元前 100 -
良い英語発音、丁寧な話しぶりの入り口となるもの、それが呼吸と発声です。
呼吸と発声法を変えると、子音や母音、リズム、イントネーション、相手に与える印象が大きく向上します。また、リスニング時も、話者と呼吸を合わせるように聞くほうが、聞き取りがよくなります。ぜひ試してみてください。
喉を不要な力みから解放しましょう!腹から声を出しましょう!
多様な英語の音の世界を楽しみましょう!!
以上、全3回に渡ってお付き合いいただきありがとうございました。
英語発音コーチShawn Tsujii(ショーン・ツジイ)でした。