K. Inoue
(更新)
「~するために」という目的を表す英語表現に「in order to」があります。
この表現自体は聞いたことがあっても、その正しい使い方や言い換え表現などについては曖昧だという方は多いのではないでしょうか。
今回は、そんな in order to の使い方をしっかりと理解していただけるよう例文を交えてご紹介していきます。
さらに、in order to とほとんど同じ意味を表す「so as to」との違いについても詳しく解説しますのでぜひマスターしてください。
さっそく例文を使って in order to の使い方を見ていきましょう。
「彼は良い座席を確保するために早く着きました」
「我々は成功するために力を合わせるべきだ」
このように、in order to の後ろに動詞の原形を使うことで「~するために」を表すのが in order to の基本形です。
動詞の原形と聞いて、次の英文のような「to不定詞」の副詞的用法も「~するために」を表すことを思い出される方も多いのではないでしょうか。
「私は試験に向けて勉強するために図書館へ行きました」
実は in order to は、この副詞的用法の「to不定詞」に in order が加えられたもの。
「to不定詞」の副詞的用法では、「~するために」以外にも「~して」(感情の原因)、「~するとは」(判断の根拠)、「そして~した」(結果)といった複数の意味で用いられることがあり、文脈にかなり左右されます。
「お会いできて嬉しいです」
→感情の原因
「そんなに高価な車を所有しているとは彼は裕福に違いない」
→判断の根拠
「私は目覚めたらその部屋に誰もいないことに気が付いた」
→結果
そこで、in order を加えることで、これらの意味と区別し「~するために」という目的の意味を明確にしているのです。
ちなみに in order は「順序よく・きちんと・整然と」といった意味で、転じて「順序立てて物事を進める」→「きちんと目的に向かう」といった解釈で使われています。
発音は in の「n」と order の「o」が連結して「イノーダー」のようになります。
自然な言い方ができるようになるためにも、発音もしっかりと意識して練習しておきましょう。
in order to は、文中だけでなく文頭でも使うことができます。
「医者になるためには、医学校を出る必要があります」
in order to の意味上の主語が文の主語と異なる場合には、「in order for A to」のように to の直前に「for A」を置く形で表します。
意味上の主語とは、to 以下の動作を行う人のことです。
たとえば先ほどの He arrived early in order to get a good seat.「彼は良い座席を確保するために早く着きました」という文では、to get a good seat「良い座席を確保する」のは誰かというと、文の主語であるHe「彼」自身です。
このときのHe「彼」のことを in order to の意味上の主語と言い、このように文の主語と in order to の意味上の主語が一致する場合にはあえて for A を置く必要がありません。
しかし、文の主語と in order to の意味上の主語が違う場合には for A が必要となります。
「彼女は私が理解できるようにゆっくりと説明してくれた」
この文では、文の主語である She「彼女」は、誰が to understand「理解する」ために説明してくれたのかと言うと、me「私」です。
つまり、to understand の意味上の主語が文の主語と異なっているため、to understand の意味上の主語を「for me」の形で表しているわけです。
in order to という形だけを機械的に覚えておくのではなく、表したい意味によって意味上の主語 for A が必要になる場合があることをよく覚えておいてください。
「~しないために」のように否定の意味を表したい場合は、「not」を to の直前に置きます。
「彼は始発電車に乗り遅れないように早起きした」
in order to は、「in order that SV」のように「that節」に置き換えることもできます。
このとき、that節内では can や will のような助動詞を用います。
「午後に十分な時間を取れるように、午前中に出発すべきです」
これはフォーマルな形式で、会話ではあまり使われませんが覚えておいて損はないでしょう。
in order to とほぼ同じ意味を表すことができる表現が「so as to」です。
これは「成り行きや結果として必然的にそうなる」ニュアンスで、ややフォーマルな響きがあります。
「彼らはもっとスペースを作るために全ての本を片付けた」
(本をどかせば必然的にスペースが生まれる、というニュアンス)
※room=「スペース・空間」
「~しないために」と否定する場合は in order not to のときと同様、to の直前に「not」を置いて「so as not to」の語順で表します。
「彼女は授業に遅れないように急いだ」
in order to とほぼ同じ意味を表すと言っても、その使い方にはいくつか違いがあります。
so as to は文頭に置くことができません。
文中でしか使えないということに注意してください。
so as to は意味上の主語「for A」を置くことができません。
そのため、so as to の意味上の主語は文の主語と一致することになります。
「彼は英語力を向上させるためにアメリカへ行った」
to improve his English「英語力を向上させる」の意味上の主語は文の主語He「彼」と一致。
ちなみに、so as to に意味上の主語を置くことができないのは、as が接続詞だからです。
接続詞はSVを従えるため、もともとは He went to the U.S. so as (he was) to improve his English. のように「be to不定詞」が伴っていたものと考えられます。
be to不定詞は、主語がある行為に向かって行くことを表し、ここでの so as 以下の意味は「そうすれば彼が英語を向上させるように」となるのですが、ここに for A を入れ込んでも意味を成さないためにこれを置くことができないのです。
一方、in order to は in order が一つの副詞句としてまとまっているため、また別のまとまりである for A を to の前に置いても問題ありません。
in order、for A、to以下が個別のカタマリとしてそれぞれ独立できるからです。
意味は似ていても、こうした構造上の違いが大きいために、in order to と so as to を完全に相互互換的に使うことができないのです。
さらに、so as to は in order that SV のように「that SV」を用いて書き換えることもできません。
so as that SV という表現が存在しないのです。
ただし、「so that SV」はあります。
このときの so that はまとめて1つの接続詞として扱われ、「~するために・~するように」と目的の意味を表すことができます。
(これは so as that SV から as が脱落したものと考えられており、個人的にとても興味深いと思います)
また、in order that SV と同様に、that節内では can や will のような助動詞を用います。
「君は同じ過ちをまた犯さないためにもっと注意深く聞いておく必要があるよ」
いかがだったでしょうか。
in order to の基本から so as to を使う場合の注意点までご紹介してきました。
「どちらも同じ」と思い込んでいる人は少なくないのですが、実際にはニュアンスや使い方まで含めてたくさんの違いがあります。
学習の入り口としては「A=B」と覚えることも良いと思いますが、慣れとともに「A≠B」という意識を持ってどちらも正しく使うことができるように、学習レベルをステップアップしていってください。
この記事がその一助となれば嬉しいです。