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今さら聞けない《to不定詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.10】

今さら聞けない《to不定詞》のキホン【大人のやりなおし中学英文法 vol.10】

英語の注目度と必要性の高まりに呼応して学習者の方々の勉強熱も高まっています。

そんな中で、いきなりTOEIC対策問題集を解いてみたり、はじめから「実践」をうたったライティングやスピーキング教材に手を出してみたりと、英語の基礎基本を置き去りにした学習をしてしまっていませんか?

中学英語は、英語学習の根幹をなす最も重要な基礎基本を教えてくれるものです。中学英語を理解することなく、より高度な英語を理解したり技能として身に付けたりすることは不可能と言ってもいいでしょう。

それだけ重要な中学英語を基礎基本から徹底解説する連載【大人のやりなおし中学英文法】。今回は「to不定詞」についてご説明します。

はじめに

中学生時代、「to不定詞」に悩まされた経験はないですか?

形は一つなのにいろいろな用法や訳し方があって、「to不定詞」を境に英語が急に難しく感じたり、「to不定詞はちょっと・・・」と今でもトラウマのように苦い記憶として残ってしまっている方も少なくありません。

今日はそんなくせ者の「to不定詞」の基本をしっかりと理解していただき、中学時代に抱いた苦い記憶を払拭していただければ嬉しいです。
 

1. to不定詞の形を確認しよう

まずは形の確認から入りましょう。

「to不定詞」は、<to+動詞の原形>で表されます。

形としてはたったのこれだけです。“to play” “to study” “to go” など、"to" の後ろに動詞の原形を置くだけです。

とてもシンプルですね。まずはこの形をしっかりと頭に入れておきましょう。
 

2. 不定詞ってどういう意味?

次に「不定詞」という用語の意味についてです。

ふつう英語では動詞を使う際、たとえば過去形ではedが付いたり、三単現ではsが付いたり、という具合に、時制や主語の人称・数によって形が変わりますね。これを「時制や人称などに応じて形が定まる詞(ことば)」、ということで「定詞」と呼びます。

一方「不定詞」は、時制や人称などの影響を一切受けず、どんな場合でもいつも<動詞の原形>のまま使われます。過去形のedや三単現sのような変化を起こしません。

つまり「時制や人称などの影響で形が定められることのない詞(ことば)」、ということでこれを「不定詞」と呼びます。

形が変わらないわけですから、端的に言えば「不定詞」とは「動詞の原形」のこと、と理解しておくと分かりやすいと思います。

そしてこの「不定詞」がtoの後ろに置かれてワンセットになったもの「to不定詞」と呼んでいる、というわけです。

多くの参考書や解説を見聞きすると、「不定詞」=<to+動詞の原形>だというふうについ思い込んでしまいそうになりますが、「to不定詞」とか「to付き不定詞」と呼ぶ方がより正確ですから、そうした用語の使い方も合わせてぜひ知っておいてください。
 

3. to不定詞の3つの用法とはたらき

ではここから「to不定詞」の文法解説に入っていきましょう。

「to不定詞」には大きく分けて3つの用法があります。「名詞的用法」、「形容詞的用法」、そして「副詞的用法」です。

これらの文章中でのはたらきや代表的な意味をまとめると以下のようになります。

このようにいろいろな用法やはたらきがありますが、これらは全て同じ<to+動詞の原形>の形で表されます。

一人で何役もこなすことができるもの、それが「to不定詞」というわけです。
 

4. 名詞的用法

それぞれの用法についてもう少し詳しく触れていきましょう。まずは「名詞的用法」です。

動詞の原形を用いる「to不定詞」には、「~する」という動詞の意味が必ずついてきます。

そしてこれが名詞の役割をする「名詞的用法」では「こと(つまり名詞の意味)」を加えて「~すること」という意味になり、S・C・Oとして使うことができます。

例文を確認しましょう。

それぞれの文で、「to不定詞」のまとまりがS・C・Oとして使われていますね。

※「to不定詞」を主語として使うことについては、とても堅い印象を与えるため日常会話などでは実はほとんど用いられないのですが、ここでは分かりやすくするため上記のような例文を用いています。
 

5. 形容詞的用法

次に「形容詞的用法」です。

名詞を修飾(説明)するはたらきを持つものが形容詞です。

たとえば “a beautiful flower”「ある美しい花」の “beautiful”「美しい」や、“a tall man”「ある背が高い男」の “tall”「背が高い」などです。

形容詞は普通、“beautiful” や “tall” のように一語であれば名詞の前に置かれますが、「to不定詞」では名詞の直後に置くことがポイントです。

例文を確認しましょう。

【英文例】
“I need someone to help me.”
「私は手伝ってくれる誰かが必要です」
(誰か手伝ってくれる人が必要です)
“I want something to drink.”
「私は飲むための何かが欲しいです」
(私は何か飲み物が欲しいです)
“I have a lot of homework to hand in.”
「私には提出すべきたくさんの宿題があります」
※ hand in = 「提出する」

名詞に続けて、それぞれの名詞がどのようなものなのかを「to不定詞」のまとまりが後ろで説明しています。

日本語訳とは逆の流れですから、以下のような意味の流れに沿うことで英語らしい語順をつかむようにしてください。

 

6. 副詞的用法

最後に「副詞的用法」です。

副詞は、名詞以外の品詞や文章全体等を修飾することのできるものです。

使用範囲がとても広いため、日本語としても実に多様に訳されます。

ですが「to不定詞」の副詞的用法の場合は、特に「~するために」(目的)「~して」(原因)という2つの意味をまず押さえることが基本となります。

例文を確認しましょう。

【英文例】
“I’m going to go to the library to finish my report.”
「レポートを終わらせるために図書館に行くつもりです」
“I was so surprised to hear that news.”
「私はその知らせを聞いてとても驚きました」

それぞれの述部「図書館に行くつもり」とか「とても驚いた」が述べられた後に「to不定詞」が添えられ、「~するために」(目的)や「~して」(原因)を表す意味を持って修飾しています。

目的や原因など、どのような解釈をすればよいかというのは、単純な見た目では分からないことが多く、その文の内容や文脈によって個別に判断する必要があります。

ついでながら、副詞的用法の持つもう一つ大きな意味をご紹介しておきます。

それは「その結果~する」という意味ですが、一般にこれは高校で学習するものになります。

【英文例】
“He woke up to find himself in hospital.”
「彼は目が覚めた結果自分が病院にいると気が付いた」
(彼は目が覚めると病院にいた)

これを「彼は自分が病院にいると気が付くために目が覚めた」と訳してしまうと不自然ですね。

【英文例】
“My grandfather lived to be ninety years old.”
「私の祖父は生きた結果90歳になった」
(祖父は90歳まで生きた)

これについても「祖父は90歳になるために生きた」と訳すのは不自然です。

やはり文の内容によって適切な解釈を考えることが必要となります。
 

7. toの解釈

補足ですが、“to” の意味について少し考えてみたいと思います。

「~すること」「~するための」「~するために」など、日本語としてはいくつもの訳を生んでしまう「to不定詞」ですが、英語ではどの場合でも常に<to+動詞の原形>でしかありません。

英語ネイティブの人たちは、<to+動詞の原形>というたった一つの形でもっていくつもの用法や意味を自在に操っているのです(用法や意味を区別している認識があるかどうかは別としても)。

ということは、「to不定詞」にはそれ特有の感覚がきっとあるはずです。いずれの用法やはたらきにも共通する感覚がなければ、あんなにも幅広く使いこなすことなどできないでしょう。

そこで「to不定詞」の感覚を理解するために重大な意味を担っているのが、前置詞 “to” の存在です。オマケのように軽視されがちな “to” ですが、ここにこそ実は大切な意味が隠されています。

それは、「(行為に)向き合う」ということ。

『直訳禁止!空間イメージで掴む前置詞の意味と使い方②【 to / with / of / around / about 編 】』という記事も参考にしてみてください。

“To learn English is fun.” は「英語学習と向き合うこと」が面白いのです。

“I need someone to help me.” は「自分を手伝う行為に向き合ってくれるような」人が必要なのです。

“I’m going to go to the library to finish my report.” は「レポートの完成に向き合うために」図書館に行くわけです。

“He woke up to find himself in hospital.” では、彼は目が覚めたときに「病院にいるという現実に向き合った」のです。

こうした「(行為に)向き合う」というイメージを当てはめてみれば、用法に関係なく全て同じ解釈が見えてきます。

少し荒っぽいので慣れるまではきちんと用法も意識していただきたいのですが、その裏で “to” が果たす役割の大きさもまた実感していただければと思います。
 

まとめ

いかがだったでしょうか。

「to不定詞」にはいろいろな用法や役割があります。そしてその役割の多さゆえに、学習する側としては「こんなにあっては覚えられない」「どんなはたらきをしているのか見分けられない」と苦しむことになってしまいがちです。

当連載の設定上、中学での学習範囲を中心とした解説に留めていますが、高校英語ともなると同じ「to不定詞」でもまだまだたくさんの表現や覚えたい文法が登場します。そうなるといよいよ英語は嫌いだという意識が確固たるものとなってしまいかねません。

ですが、それは「たくさんの用法や訳し方などを暗記するのではなく、英文として身に付けること」で解決できます。

いつも主張していることですが、英語を身に付けるために必要なのは、多様な例文を何度も見たり聞いたり、そして声に出して読んだりする中で、文法的な用法やはたらき、意味を実感できるようになるまで繰り返すことです。すると、部分的な知識だけ暗記するよりもはるかに効率よく身に付けていくことができるはずです。

今回の内容を参考に「to不定詞」を正しく理解し、苦手意識を払拭していただければ幸いです。