masa osada
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「アメリカ英語とイギリス英語」の違い、いくつくらい思いつきますか?
日本の学校で習う英語や街中で見かける英語表記のほぼ全てはアメリカ英語。また、書店で売られている洋書の多くもアメリカ英語で書かれています。そのため日本人はイギリス英語に馴染みがなく、アメリカ英語とイギリス英語の違いを普段意識することはあまりないかもしれません。
ところが、ハリーポッターはもちろん、村上春樹の英語版など世界的に売られている小説の多くは「アメリカ英語版」「イギリス英語版」と別々で販売されるほど、この2つの英語には違いがあります。
そこで今回は、そんなアメリカ英語とイギリス英語の「綴り(スペル)の違い」「単語の違い」、そして「文法の違い」の3つに的を絞って解説します。
同じ英語なのにアメリカ英語とイギリス英語はなぜ違うのでしょう。これには諸説あり、なかでも有力で興味深いものに文化人類学の定説として次のようなものがあります。
つまりイギリスが発祥の地である英語はアメリカという遠隔地に渡り、そこで昔の英語が温存されました。そして、発祥の地であるイギリスではより進化した新しい英語が話されているのです。
イギリス人がアメリカに移住したのは1600年代前半です。もしこの考えが正しいなら当時のイギリス人は今のアメリカ人のような文法、単語を使い、さらには発音でしゃべっていたということですね。
それではさっそく綴り(スペル)の違いから見ていきましょう。
まず一番見た目で違いがわかりやすい「綴り(スペル)の違い」から見ていきましょう。
アメリカ英語圏は必ずアメリカ英語の綴り、イギリスではイギリス英語の綴りで書かなければいけないわけではありません。例えば、デザイン上で見た目を考えて敢えてアメリカでイギリス英語を使ったり、文字数が限られているときに短いほうの単語を使うこともあります。
以下で紹介する綴りの違いのパターンは、全ての単語に当てはまるわけではありません。ただ、知っておくと慣れないイギリス英語が出てきてもスムーズに読むことができます。
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
中央、センター | center | centre |
映画館・劇場 | theater | theatre |
リットル | liter | litre |
メートル | meter | metre |
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
準備する・構成する | organize | organise |
気がつく | realize | realise |
記憶する | memorize | memorise |
分析する | analyze | analyse |
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
色 | color | colour |
お気に入りの | favorite | favourite |
光栄・名誉 | honor | honour |
近所 | neighbor | neighbour |
これ以外にも細かい単語の違いはたくさんあります。
ただ、上の例を見ていただくとわかるとおり、 "u" の有無や "ze" と "se" の違いなど、もともとの単語の原型は残っていることが多いので、そんなに大きな戸惑いなく理解できるはずです。
アメリカ英語とイギリス英語の違いで一番混乱するのは、先に紹介した「綴りの違い」でもなく、このあと紹介する「文法の違い」でもなく、この「単語の意味の違い」ではないでしょうか。
有名なところでは「ガソリン」をアメリカ英語では "gas" と言い、イギリス英語では "petrol" と言います。また、「ゴミ」はアメリカ英語で "trash" や "garbage" 、イギリス英語では "rubbish" です。
ちなみに、アメリカで「ガソリン」を "petrol" と言っても、イギリスで「ゴミ」を "garbage" と言っても大抵の人は理解してくれるので、迷ったらとりあえず思いついた単語を言ってみるといいかもしれません。ただ、知っておくと便利なのは間違いないので、次の表でしっかり覚えてくださいね。
日本語 | アメリカ英語 | イギリス英語 |
市街地 | downtown | city centre |
紙幣 | bill | note |
伝票 | check | bill |
1階 | first floor | ground floor |
2階 | second floor | first floor |
エレベーター | elevator | lift |
駐車場 | parking lot | car park |
手荷物 | baggage | luggage |
薬局 | drug store | pharmacy |
テイクアウト | take out | take away |
サッカー | soccer | football |
ズボン | pants | trousers |
セーター | sweater | jumper |
フライドポテト | french fries | chips |
ポテトチップ | potato chips | crisps |
履歴書 | resume | CV (curriculum vitae) |
トイレ | restroom | toilet/lavatory |
休暇 | vacation | holiday |
タクシー | cab | taxi |
これ以外にも両者で意味は同じで単語の違う名詞はたくさんあります。これらを1つ1つ覚えるのはなかなか難しいですが、ゆっくり慣れていきましょう。
最後は、単語の選び方や時制の使い方です。具体例をいくつかご紹介します。
日本では、「シャワーを浴びる」を "take a shower" と習いましたね。ところがイギリス英語の場合、 "have a shower" と言います。このようにアメリカ英語では "take" を使って表現することをイギリス英語では "have" を使って表現します。
英:Why didn't you have a bath?
英:Can I have a break for 30 mins?
英:Please have a seat.
他にも "take/have lunch(お昼を食べる)" 、 "take/have a nap(昼寝をする)" などアメリカ英語で "take a 名詞" で表現できるものはほとんど "have a 名詞" に置き換えることができます。
現在完了形とは「過去に起こった出来事が現在も続いている状態」を表した文法です。「現在完了形(have+過去分詞)」を中学校で習ったとき、過去形や現在/過去進行形と比べてわかりにくく感じた方も多いのでは?
「現在完了形」と「過去形」の違いを比べてみると、以下のようになります。
「サングラスをなくしました」
この場合、過去にサングラスをなくし、今現在もサングラスは見つかっていないことがわかります。
「サングラスをなくしました」
過去形の場合、過去にサングラスをなくし、今そのサングラスが見つかったか見つかっていないかについては触れていません。
上の「サングラスをなくしました」という例文を実際のシチュエーションに当てはめてアメリカ英語とイギリス英語の違いを比べてみましょう。
このシチュエーションの場合、アメリカ英語もイギリス英語も同じ言い方をします。ところがもう1つのシチュエーションの場合、アメリカ英語とイギリス英語で言い方が違ってきます。
アメリカ英語はシチュエーション1と2で同じ言い方をするため、"I found them last week(先週見つけました)"や"I haven't found them yet(まだ見つけていません)"など一言付け加えないと聞き手はサングラスが見つかったのか、未だに見つかっていないのかわかりません。
ところがイギリス英語の場合は過去形と現在完了形を使い分けているため、一言付け加える必要がありません。
では、アメリカで現在完了形を使わないか? というとそんなことはありません。アメリカ英語は現在完了形より過去形が好んで使われるのに対して、イギリス英語は逆に現在完了形が好んで使われる程度です。
「〜したばかり」という意味で使う "just" や、「すでに〜しました」の "already" 、そして「まだ〜していません」の "yet" を使って表現したいとき、アメリカ英語とイギリス英語では時制が変わってきます。それぞれの例文をまずは見てみましょう。
英:I have just had lunch.
英:I have already finished the homework.
英:He hasn't bought an air ticket yet.
両者の違い、わかりましたか? 本来、現在完了形と一緒に使わなければならない "just" や "already" 、 "yet" をアメリカ英語の場合は、「過去形」と組み合わせて使っていますね。これも「現在完了」の解釈の違いから生まれるものです。
時間を表現するとき、日本人は「4時15分」のことを "It's four fifteen" と言いますね。
これはアメリカ英語の言い方で、イギリス英語の人たちは "It's a quarter past four" と表現します。
他の時間の表現もいきましょう。
直訳すると「1/4時間が2時から過ぎた」という意味なので、「2時15分過ぎ」となります。
「1/2時間が3時から過ぎた」という意味です。つまり3時半ですね。
「6時まで1/4時間」。つまり「5時45分」という意味です。
相手に「ペンを持っていますか?」と聞きたいとき、多くの日本人はおそらく "Do you have a pen?" と訊ねると思います。これはアメリカ英語の聞き方です。
では、イギリス英語ではどう表現するかというと "have got" を使い、 ”Have you got a pen?” となります。どうしてそうなるかは「習慣だから」としか言いようがありませんが、こういった違いもおもしろいですね。
他にもアメリカ英語とイギリス英語の違いを見てみましょう。
英:Have you got some free time right now?
英:We have got enough time to organize the party.
ちなみに "have got" ではなく「have+過去分詞」なら "have gotten" じゃないの? と思われるかもしれませんが、イギリス英語では多くの場合、 "get" の過去分詞は ”got" が使われます。そのためhave構文も "have got" と表現します。
アメリカ英語とイギリス英語の違いを、「綴りの違い」「単語の違い」、そして「文法の違い」の3つに分けて紹介しました。
これ以外にも、アメリカ英語では頻繁に使われる "want to" を短くした "wanna" や、 "going to" を短くした "gonna" はイギリス英語ではほとんど耳にすることがないなど、細かい違いはたくさんあります。
ただ、同じイギリス英語圏の国、オーストラリアやニュージーランドでは、アメリカ英語の単語の使い方や文法などが混在していることも多いです。なので、これからイギリス英語圏の国に旅行に行く方も、焦って覚えなくても大丈夫ですよ!
日本人にとって、同じ英語でありながら国によって違いがあるというのはなかなか興味深いですよね。言語にまつわる歴史の流れや文化の違いを感じながら、ゆっくり着実に覚えていきましょう。