新井 リオ
(更新)
Q&ABCは、『英語日記BOY』の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
第3回のテーマは英語の「センス」問題について。
これずっと話したかったんです。
「英語にセンスは必要か?」
よく訊かれる質問なので、ここでまとめて答えたいと思います。
メール、報告書の作成もGoogle翻訳を使うし、客先へ訪問する時も全てカンペを作っていき、それを読みます。質問が来たり、話しかけられたりしても、自分の言葉で何も返せないのが辛いです。
英語ができるようになりたいと思い、何度も勉強を始めてみたりしたのですが、続かないし、出来るようになりません。
私には英語の「センス」がなくて一生話せるようにはならないんじゃないかと本気で思います。
でもお客さんと自分の言葉で会話してみたいです。私はどうしたら良いのでしょうか、、、
結論から言ってしまうんですけど、英語に「センス」っていらないんです。
僕たち、「センス」で日本語を学んできたわけじゃないじゃないですか。
言語習得に必要なのって、センスじゃなくて「正しい勉強法」なんです。
言ってしまえば、英語は「だれでも努力でどうにかなるもの」だということです。
僕程度の人間がセンスを語るのもあれなので、個人的なストーリーとして聞いて欲しいんですけど、「センス」の解釈を説明するにあたり、ちょっと自分の本職の話をさせてください。
最近は英語関連の仕事も多いですが、一応僕の本職は「イラストレーター」「ミュージシャン」です。で、イラスト(デザイン)を6年、音楽は10年やっていますが、この2つの方がよっぽど「センス必要だな」って思うんです。
英語と比較して言うなら、この2つ、つまり「アート」は「だれでも努力でどうにかなるもの」ではないんですよ。
絵がうまかったらみんな売れっ子イラストレーターになれるわけじゃないし、いくら練習しても売れないバンドはたくさんいます。(現に僕は、けっこう頑張ったつもりでしたが、バンドマンとして”売れた”と言えるレベルにはなれませんでした。)
むしろ、特に音楽なんかは未熟さが魅力になることさえあります。
スキルがずば抜けているわけではないけれど、若くして売れているアーティストってたくさんいるじゃないですか。
「どうしたら売れるか」って、正直だれにもわからないんですよ。
もちろんスキルは上手い方がいいですし、最低限の技量ラインみたいなのは絶対にクリアしている必要がありますが、「タイミング」「運」「その時のブーム」とか、本当にいろんな要素が奇跡的に合致して初めて成し得ることなんです、アート分野で売れるって。
で、この「売れる(人気を得られる)」能力のことを僕は「センス」だと思います。
あるいは、これを後天的に身につけることもできると思います。『センスは知識から始まる(水野学 著)』という本があるように(大好きな本です)、センスとは「知識の蓄積」と「客観視」による一種の未来予知能力によって、その精度をかなり上げることができます。
それでもやっぱり、センスのある人が絶対にみんな成功するわけではないのがアートの分野なのかなと思います。
これは楽しくもあり残酷なことでもあります。
いくら頑張っても報われない、ってことが起こるんです。そういう世界なんです。
僕自身、このことで結構ちゃんと悩んでいましたし、今も普通に悩んでいます。
そんな中、出会ったのが英語でした。
5年前、初めて英語にのめり込んだ1年間のことを非常によく覚えています。
衝撃でした。
「なんだこれ、やればやるほど報われるじゃん」って。
英語って、「売れる」必要ないんです。(当たり前ですけど。)
「英語が話せる」というのは、正しい方法で知識と経験を積めばだれでも叶う夢なんです。
筋トレとかも、これに近いのかもしれません。
とにかく僕はこの英語の「確実性」に惹かれ、ここまできました。
音楽・絵という「不確実性」の高い分野を2つやっているからこそ、「確実性」のある英語は、僕の救いになったんです。
英語がなかったら、もっと辛い日々になっていたと思います。いくら努力しても「報われるかわからないもの」を二つも抱えるのは辛かった。この生活に英語を入れ込むことで、僕はバランスを保って生きてきたんだと思います。
質問してくださったことみさんの相談に話を戻すと、まず伝えたいのが「英語にセンスは必要ない」ということ。
代わりに必要なのは「正しい勉強法」です。
いただいた文章をもう一度拝見すると、
メール、報告書の作成もGoogle翻訳を使うし、客先へ訪問する時も全てカンペを作っていき、それを読みます。質問が来たり、話しかけられたりしても、自分の言葉で何も返せないのが辛いです。
と書いてありましたが、「…ん、方法、それで合ってる!」と思いました。
というのも、英語が話せるって何を指すかというと、僕の定義では「いま言いたい英語フレーズが瞬時に出てくる能力」なんです。これが叶っている時、みなさんは「英語が話せる人」になれています。
「英語が話せる」というと、どんな難解なシーンにも対応できる英語力を保持していないといけない印象があるかもしれませんが、そんなことはありません。
例えばアメリカの小学生って「英語が話せる人」ですよね。
でも「政治」や「環境問題」の質問を投げかけたら、たぶん上手く答えられないと思うんです。それでも「英語が話せる人」ではある。
これはどういうことかと言うと、「いまの自分に必要な分野の英語がある程度話せる」なら、その人は「英語が話せる人」だといっていいんですね。
これは日本人の僕たちにも応用できます。「自分が生活で実際に言いそうな英語」から先に覚えてしまえばいいんです。
だから、真の英語学習とは、売れている参考書を買うことでも、とりあえずお金をためて留学することでもなく、「自分は英語で何を言いたいのか」を探し当てるところからスタートします。
だとすると、そのカンペの内容こそまさに、ことみさんが「言いたい英語フレーズ」ですよね。それを事前にたくさん練習して覚えて、瞬時に言えるようにしちゃえばいいんです。
そして「自分の言葉で返せない」経験をした、と書いてありますが、練習していないのにいきなり話せるわけもないので、それは仕方ないです!というか、愚直に英語を勉強する誰もが通るべき正しい道です。だから大丈夫。
悔しい思いをする代わりに、そのとき「言いたいのに言えなかった…」と思ったフレーズをスマホにメモしておいて、家に帰ってから調べればいいんです。で、次こそは英語で言えるように、何回も口に出して覚える。
この一連のプロセスが、「正しい勉強法」なんです。実践から学ぶんです。
この習慣を繰り返すと「マイオリジナルボキャブラリー」みたいなのが増えていくので、「自分が言いたいことなら話せる」という状況が次第に出来上がってきます。
だから、僕から見ると、ことみさんはいま正しいプロセスの「STEP1」にいるだけのような気がしています。(ゴールはSTEP10とかかな。)
選んだ道は正しいのだけど、単純に技量と経験値が伴っていないので「不安」の方が勝ってしまう状態。
で、こんなときに必要なのが、「それで合ってるから大丈夫」と言ってくれる先輩的存在かなと。だから、自分でいうのも恥ずかしいですけど、僕が先輩になりますよ。そして言います。
「それで合ってるから大丈夫!!!」
僕がスピーキング力向上のためにやってきたのは、基本的に「英語日記」と「オンラインレッスン」だけなんです。語学留学も、英会話スクール通いもしていません。
毎日英語日記を書くことで「自分が本当に使うフレーズ」を知り、オンラインでそれを添削してもらう。で、「口がそのフレーズを覚えた」といえる状態になるまで何度も言う。
シンプルにいうとこれだけです。僕はこれを約5年半、ほぼ毎日やっているので、すっごい単純計算ですけど、約2000個のオリジナル英語フレーズを覚えたことになります。
だから言ってしまえば僕は、「英語が話せる人」というより「オリジナル英語フレーズを2000個知っている人」なんです!
2000個もオリジナル例文があると、ほぼどんな場面にも対応できます。慣れるとフレーズ同士を組み合わせて瞬時に新しい表現を作ることもできるので、けっこう無限です。
ただ、2000はハードルが高いと思います。
僕が「かなり話せるようになったなあ」と実感したのは、「英語日記」と「オンラインレッスン」を1年間続けたあたりでした。この時カナダ人の友人に、「リオはもう、1年間留学をした人以上に話せているよ」と言ってもらい、すごく自信がつきました。
なので、「1年間」をひとまずのゴールにしてみましょうか。
たまにサボっちゃうとしても、瞬時に言えるオリジナルフレーズが例えば「300個」もあれば、「自己紹介」「趣味」「仕事の時に言いそうなフレーズ」だったらほぼパーフェクトに言えるようになると思います。
これがわかれば、あとは「やる」だけです。
本当に、センスはいらないんです。
この文章を通して、僕は「英語にセンスはいらない」と言ってきました。
本当にそう思います。
でも強いて言うなら「努力」は必要なんです。
まあこれは全てのことに言えますよね。
努力をしないで叶うものなんてひとつもないと思います。
頑張るからこそ、叶った時に青春を感じるんですよ。
勉強っていつでもできる青春なんです。
僕、いまだに自分の口から英語が出てくる事実に感動することがあります。
この感動をもっと味わいたくて、いまも毎日勉強しています。
僕ももっと頑張るので、一緒に頑張りましょう!
新井リオへの質問はこちらから。
次回の連載更新は7月上旬予定です。
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