新井 リオ
(更新)
Q&ABCは、『英語日記BOY』の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます。)
第7回のテーマは「子育ての英語」についてです。
まず、子供が英語を習得するために一番効果があるのが、「完全英語の生活環境を作ってあげること」だと思います。
週1回1時間の英会話スクール…では、正直、絶対に足りません。
なので、
が最強です。
ただ、インターナショナルスクールに通うにはかなりの額のお金が必要だし、海外移住をするには親である自分自身の仕事・生活を根本から変える必要があります。
これは子供がどうこうできる話ではなく、親がどうにかする問題です。
つまり「子供の英語習得」って、実は「親自身の覚悟の大きさ」の話なんです。
覚悟を決めて上記二つ(インターナショナルスクール or 海外移住)ができれば、「英語の生活環境」としては完璧なので、お子さんは自然と英語を身に付けてくれると思います。
しかしそれができず、「日本で習得させよう…」ということなら、「日本で一緒にめちゃくちゃ勉強する」しか方法はないと思います。
ラクなことではないですが、インター通いや海外移住をしない分、それと同じくらい衝撃的な「英語経験」を、親自身が覚悟をもって提供してあげる必要があります。
ちょっと強気な発言をしてしまいましたが、僕自身、反省すべき思い出があります。
僕はまだ結婚しておらず子供もいませんが、代わりに10歳下の弟がいて、彼を息子のように可愛がって(育てて)きました。
弟が8歳くらいのとき、試しにネイティブが発音した「Hello, how are you?」という音声を聞かせ、「これ言ってみて?」と頼んでみたんです。すると、弟の英語はめちゃくちゃ発音が良くてびっくりしました。
幼少期に英語を覚えさせることは、やはり大事なんだと自覚した瞬間でした。
「これを機に弟に英語を覚えさせよう…」と考えたのですが、その夢が叶うことはありませんでした。
なぜか。
それは、当時の僕自身がまだ、「英語の素晴らしさを伝えられるほどハマっていなかった」ことと、「勉強がどれほど大事かを姿勢で示してあげることができていなかった」ことに起因すると考えています。
それなのに、「弟には英語を習得してほしい」と思っていた。頑張るのは弟で、僕はラクをしようとしていたんです。
よく「自分が英語を話せなくて悔しい思いをしたから、子供には絶対…」というような話を聞きます。めちゃくちゃわかります。
しかし、これはあくまで「親の願望」であり、「子供の願望」ではないんです。
幼少期、「親から言われて嫌々何かをやった経験」がある人は多いと思いますが、このままでは、自分もそんな行動を、子供にとってしまうかもしれないんです。
子供のため…と思って、「週1回英会話スクールに通わせる」などはよくあることかも知れませんが、子供にも意志があります。
やりたいことはやりたいし、やりたくないことはやりたくないんです。
だからこそ僕たちがやるべきなのは、「ここで毎週勉強してきてね」と努力を子供任せにするのではなく、「勉強とはどれほど素晴らしい行為であるかを“姿勢”で見せ、自然発生的に英語に興味を持ってもらうこと、英語を好きになってもらうこと」だと思うんです。
これ、考えようによってはチャンスじゃないですか?
本当に英語を話したかったのは「ご自身」だと思うんです。
だったら、今から勉強して話せるようになればいいんです!
たしかに習得スピードの差はあれど、「何歳からでもできる」のが語学習得の魅力です。
(例えばアスリートを目指すなら年齢の壁があるかもしれないですが、言語習得にはそれがないんです)
では、具体的にどうすればいいか。
自分がもし日本に住みながら子育てをすることになった際に何をするか、考えてみました。
僕だったら、家を英語圏(のように)します。
日本に生きている限り、一度外に出たら日本語での会話が始まってしまうので、家庭内での第一言語を「英語」にするような努力をします。
パートナーがいる方は、お相手の意思などもあるので完璧に…とはいきませんが、子供への会話に積極的に英語を混ぜてみたり、英語で書かれた本やアニメ、映画などをとにかくたくさん見せてあげます。
特に言語は「音声」から習得するとも言われているので、アニメや映画をずーっと英語で流しておく、などは効果があると思います。
もちろんこれだけで習得することはありませんが、「日常で英語が聞こえてくることに抵抗がない状態」を作ってあげることは十分にできるはずです。これが大事なんです。
これは英語習得だけでなく、「異文化」を教えるという意味で価値がある行為だと思います。
極端な話、「あなたが今生きているのはたまたま“日本”なだけで、本当は世界はもっと広いんだよ。自分の思うように生きることができるんだよ」と教えてあげるのが、幼少期における教育の肝だと個人的には考えます。
世の中にはさまざまな言語を話す、さまざまな人種の人がいて、全ての人が平等であり、自分もその「全ての人」の一部であるんだ、と感覚的にわからせてあげるんです。
また、もう一つできることがあります。
それは、繰り返すように「親である自分自身が勉強すること」です。
親であるみなさんが毎日こまめに勉強し、徐々に英語が上手くなっていく姿を見せることができたなら、それは「勉強しなさい」という言葉よりはるかにパワーを持った行動のタネになると思うんです。
よく、「親がビートルズの大ファンで、私も好きになりました」という話を聴きますが、「誰かが何かを本当に好きでやっている様子」ってやっぱり魅力的にうつるんだな、と思うんです。
自分も“真似したい”と思わせるほどに。
質問者のおもちさんが「学びに向き合ううえでご両親から受けた影響や、こうして欲しかったなどのお話があれば…」と質問してくださったのですが、
正直に言うと、僕が親から受けた影響はありません。
海外志向ゼロの、車の洗車業を営む父と介護職の母のもとに生まれたのですが、特に父は「勉強がきらいだ!」と公言してしまうような人でした。
それでも素敵だと思ったのが、「だからこそお前は勉強しろ」ではなく、「だからお前も、別に勉強はしなくてもいいんだ。好きなことをやれ」という教えのもとで育ててくれたことです。
その「好きなこと」が、回り回って「英語の勉強」になってしまうのだから、本当に育児とはコントロールの効かない出来事なんだなと思います。
ちなみに僕の本職である「音楽」も「イラスト」も、親からの影響はまったく受けていません。勝手にハマりました。うちは言ってしまったら放任主義でしたが、すごく良く捉えると、「自分の意志で何かにハマる余地を常に残してくれていた」んです。
親にやって欲しかったことは…これも、今となってはないかな。
いや、英語学習をはじめた当初は、「自分を帰国子女のような環境で育ててくれれば…」と思ったし、20歳を超えて絵を習い始めてからは、「幼少期に絵画教室にでも通わせてくれていれば…」と思わなかったこともないのですが、例えば小学生のときに「これをやりな」というアプローチで勧められていたら、僕はハマっていたかどうかわからないんです。
僕は、「音楽」も「イラスト」も「英語」も、自分の意志で見つけたことが最高に嬉しかったんです。
大人になってからハマることができて、しかもそれを勉強するチャンスがある今に感謝しています。これからも自分の努力で勉強を続けます。
人間の性格は、生まれた時点で半分決まっていると聞いたことがあります。
だから、とにかく「強要」しない。
もし子供に興味を持って欲しいと思う対象があるなら、まずは自分が楽しんでいる姿を見せ、自然と好きになってくれるかを見る。
それでも好きになってくれなかったら、もう、仕方ないんだと思います。
僕もいつか子供ができたら英語を話せるようになって欲しいけど、それ以前に人間として尊重したいので、「どうしてもやりたくない!」と言われたら無理にやらせないつもりです。
その代わり、国内外問わずいろいろな場所に連れて行き、世界が広いこと・文化が多様であることを感覚的に教えてあげ、子供が自発的に何かを好きになるまで、常に選択肢をたくさん広げながら、待ってあげようと思います。
で、ついに見つけた没頭できる対象が「英語」じゃなくても、まあいいじゃん!くらいの気持ちで。
常に本人の意志を尊重し、全力で愛してあげたら、それだけでお子さんは幸せなんじゃないかな。
この連載のフォームに質問を投げかけてまで、真剣に育児に向き合うおもちさんのお子さんは、すごく幸せだと思います。
なんか英語のQ&Aとは思えないような締めになりました。
やっぱり愛が大事だね。
英語学習・海外生活の悩みを、ぜひ相談してください。
人に話すと楽になると思います。
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