新井 リオ
(更新)
Q&ABC は、『英語日記BOY』の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
第11回のテーマは、「結局、文法の勉強ってどうすればいいの?」です。
コロナ禍でテレワークが増え、通勤時間がなくなった分、自分のための時間を作りたいと思ったのがきっかけです。
英語は嫌いではなく、大学まではTOEICを毎年受け短期留学の経験もありますが、インプットばかりでアウトプットをしてこなかったせいか、話す書くが苦手です。
更に社会人になって英語を使う機会が減り、益々英語が出て来なくなり、オンラインレッスンでは何も返せない自分にショックを受けました。
講師にも「文法の勉強が必要」と言われ、自分でもよく分かっているつもりですが、何から手をつけたら良いのか分からなくなっています。
・オンラインレッスンを使って、文法の勉強は出来ますか?
・それとも文法をマスターしてからオンラインレッスンを始めるべきでしょうか?
オンラインレッスンを活用した文法の勉強法があれば教えてください。
文法、めちゃくちゃ大事ですよね。
文法を使いこなせるか否かで、ライティングとスピーキング能力の伸びは確実に変わってくると思います。
で、僕が文法について思うことを先にスバっと言ってしまうと、「文法は、永遠に勉強し続けるような対象ではない」ということです。
どういうことか?
そもそも文法って、単語のように無限にあるわけではありません。
冷静に見てみると、覚えることって結構少ないんです。
例えば「時制」に限って言うと、実は以下の12種類しかありません。
・現在形
・過去形
・未来形
・現在進行形
・過去進行形
・未来進行形
・現在完了形
・過去完了形
・未来完了形
・現在完了進行形
・過去完了進行形
・未来完了進行形
また、「関係代名詞」…「前置詞」…みたいな大まかな単元も、おそらく「10~20テーマ」くらいで網羅できるんです。
考えてみれば、高校生の頃の英語の教科書に「英文法 第873章」とかなかったですよね。
どんな教科書で学んでも、多くて「20数章」とかで終わってしまうのが「文法」なんです。
一方で「英単語」って、現在100万単語以上あるらしいですよ。たしかに高校の頃使ってた英単語帳の時点で、既に2000単語以上はありましたよね。もちろん生活で使うものは限られてきますが、単語の方が、よっぽど覚えるのが大変なんです。
英単語の習得に終わりはない一方で、
「文法は、単語の様に永遠に学び続ける対象ではないんだ(=ゴールは近い)」
というイメージをまずは持っていただければと思います。
で、もう一つ付け加えたいのが、
多くの日本人は「既に英文法を知っているけど、すぐに出てこないだけ」なんじゃないか? ということです。
いやいや〜と思うかもしれませんが、例えば「アラビア語で自己紹介してください」と言われたら、僕、一文字も言葉が思い浮かびません。たぶん多くの方がそうだと思います。
でも英語だったら、どれだけ苦手意識がある人でも、なんとなく「I am 〇〇」といえば名前を伝えられるよな、くらいはわかるじゃないですか。
あとは、「play」を「played」にしたら過去形だな〜とか、これもなぜか知っているじゃないですか。
他の言語と比べてみたら、英語に関しては、みんな意外と知識があるんですよ、既に!
これは、基本的な文法は、中学校の授業で既に網羅しているからなんです。
で、高校で習う英文法はその肉付けのようなものです。
さらに、質問をくださったココアさんは、「以前はTOEICを毎年受験し、短期留学も経験している」とのことなので、きっと、ほとんどの文法を既に勉強したことがあるのです。
つまり大人になってから英語を学ぶ多くの人にとって、英文法は「ゼロから学ぶ」よりも「思い出して確認する」作業に近くなってきます。
もちろん「勉強していないも同然」といえるほどに忘れてしまった文法もあるかとは思いますが、そもそも文法の勉強において覚えなければならないことの総量が、みなさんが心配しているよりもはるかに少ないんです。
なので俯瞰してみれば、「昔完成させたパズルのピースがいくつか欠けてしまっている」くらいの感じですので、焦らずにいきましょう。
今から、欠けたピースの埋め方をお伝えします。
上記の考え方に則り、7年前に「本格的に英語を学ぼう」と決めてから、僕は文法書のようなものを全く使っていません。
「実践」→「思い出して確認」
というプロセスのみで、文法をマスターしてきました。
ちなみに当時は大学1年生でしたが、入学時のTOEICの点数はたしか450点くらいで、大学のレベル別英語クラスもちょうど平均くらいのクラスに配属されました。
という、おそらく多くの読者のみなさんと限りなく近い境遇にいました。
そんなBOYに、ある事件が起こります。
19歳で、アメリカから来日した憧れのバンドと対面したとき、
「高校生の頃からずっと聴いています!」
と言おうと思ったのですがうまく言葉が出てこず、すごく悔しい思いをしました。
家に帰って調べてみると、以下のように言えばいいことを知りました。
「高校生の頃から、あなたの音楽をずっと聴いています」
このとき僕は、「全く新しい知識に触れた」のではなく「既にやったことを思い出して確認」したんですね。
「わあ、高校で習った“現在完了進行形(have been doing)”ってこんな感じだったかも…」みたいに。
同時に、こんなことを考えます。
「なぜ既に勉強したのに、自分のものになっていないんだろう?」
そして至った結論は以下です。
「詰まるところ僕たちは、教科書例文をなぞるような勉強で何かを“完全に習得”をすることは難しいのかもしれない。早い段階できちんと実践に移し、そこに付随する“ドラマ”とともに覚えなければ、“身についた”とは言えないのだ」
実際、このときの“悔しさ”と、正解が分かったときの“感動”が「個人的なドラマ」となり、以降僕は、“現在完了進行形(have been doing)”を会話の中で積極的に使えるようになりました。
よく、「野球がうまくなりたいなら、ルールブックを読むのではなくバッターボックスに立て」みたいなことを言いますが、英語も完全にコレなんですね。というか全てのスキル習得がそうなんです。
だからこそ、「座学で完全に習得してから実践に移ろう」というのはそもそも幻想にすぎないのかもしれません、多くの場合。
「内的な学び」⇄「外的な実践」を縦横無尽に行き来するのが大事なんですね。
お待たせしました。ココアさんは冒頭で
という二つの質問をしてくださいましたが、ここまで話してきた通り、
「文法をマスター」→「オンラインレッスンを始める」
というのは、そもそも難しいと思います。
なぜなら、「文法をマスター」の過程に、「オンラインレッスン」のような実践経験から得られる“ドラマ”が必要だからです。
そこで、オンラインレッスンを使った文法の勉強法について、具体的には以下の手順を繰り返します。
《オンラインレッスンを使った文法勉強法》
これが、「思い出し」と「確認」を一番効率よくおこなえる方法だと思います。
題材となる文章は自分で作った英文ですので、ドラマも加わり定着率が上がります。
従来の方法が、「文法を学ぶ→教科書例文を暗記する」だとしたら、
これは、「自分が言いたい英文を明らかにする→そこに使われている文法を学ぶ」という、ゴールから逆算する方法になります。
つまり、みなさんが想像するような「オンラインレッスンで文法のレッスンを受ける」のではなく、「教材を自分で持ち込んで、先生に訊く」のが、レッスンをつかった僕の文法勉強法です
また、「4.そこに使われている文法を確認する」方法として、個人的にはインターネットで検索することをおすすめしています。
もちろんここで文法書の索引などを使ってもいいのですが、時間がかかってしまいますし、そのとき知りたい情報がピンポイントで“その本”に載っているかもわかりません。
世界でも珍しい言語を学ぶとなればいまだに「教科書」は必要だと思いますが、今、「英語」に限って言えば、ほぼ全ての知識と情報がインターネットでわかりやすく解説されています。
むしろ検索窓にテキトーに打ち込んでも、かなり的確な情報を表示してくれるインターネットには頭が上がりません。
上記の例の場合、「ing have been ing 違い」のように検索するだけで、何千件ものわかりやすい解説サイトが瞬時に出てきます。
(ただ、ちゃんとした知識がないままに解説しているサイトもたまに存在しますので、解説者のプロフィールを読んだり、ネイティブの監修が入っているかなどを確認してから閲覧することをおすすめします)
こうして「なるほど、この場合は“現在完了進行形”を使うんだな」と理解できたら、自分にとっての「現在完了進行形」という章をクリアしたことになります。
その後は、スマホ・パソコンのメモアプリなどに、以下のような《文法まとめスレッド》を作ってみてください。
このメモが、「オリジナル文法書」になるんです!!
毎日英文を作り、レッスンで添削してもらい、そこに使われている文法をインターネットで解明する。
そして、手に入れたオリジナル例文を次からのレッスン中にガンガン使うことで、徐々に自分のモノとして身についていきます。
高校レベルの英文法がなんとなくわかる人であれば、上記の進め方で十分だと思います。(TOEICでいうと400点台くらいの方)
しかし、
という方は、教科書や教材からスタートしてもいいと思います。
そして、わざわざ教科書を買わなくても、DMM英会話をはじめとするオンラインレッスンサービス各社には、無料で使える「文法教材」が用意されています。
▲DMM英会話「文法教材」これは本来、レッスン中に先生と一緒におこなう教材として作られていますが、せっかく最高の実践の場であるレッスンで「座学」的なことをやるのは、個人的にはもったいないと思っています。
そこで、「レッスン以外の時間に1人で教材をやり、質問があればレッスン時に先生に訊く」のが一番効率的なやり方だと思います。
または、文法書を1冊買うのももちろんいいと思います。
ただ先述のように、僕自身は高校生以来教科書を使っていないので、経験していないことを曖昧な予測によって評価するのは避けた方がいいかと思い、おすすめ本紹介などは控えますが、ある程度ネットで評判を確認した上でご自身で書店に出向き、複数の本をパラパラとめくってみて、直感で惹かれる本で大丈夫だと思います。
自分で選んだお気に入りの服って、何度も着たくなるじゃないですか、
それと同じで、「個人的に惹かれている」って、物事を継続する上で大事だと思うんですよね。なので、自分を信じた本選びを是非してみて下さい。
ただ、最後にひとつ付け加えたいのは、
「学生時代に習ったはずなのにまったく使いこなせない」ということが起こるように、「教科書に頼りすぎた勉強法」ではあまりうまくいきません。
あくまで、「学び」⇄「実践」の縦横無尽な行き来が大事だということを肝に銘じて、オンラインレッスンも同時に始めてみてください。
文法はすごく大事です。
継続した学びがきっと、みなさんのスピーキング力・ライティング力を底上げしてくれると思います。
しかし、実際にネイティブスピーカーと話すときに僕が感じるのは、
「この人たちは、僕の英語の正確性を想像以上に気にしていない。それよりも、何を伝えたいか、何を考えているのか、そして僕がどんな人間なのかを知りたいのだ」
ということです。
逆の立場になって考えてみたら分かりますよね。
みなさんが、日本のどこかの道端で外国の方に「日本語で」道を訊かれたとして、彼らの「文法の正確性」よりも、彼らが「どこに行きたいか」を、より注意深く聞くと思いませんか。
なんなら日本語が全然でも、とにかく人柄が良かったら、どうにかしてでも助けたい…と思いますよね。
文法も大事ですがそれ以前に、「今、英語を通して人と人同士が繋がっているんだ」という意識があれば、そこまでミスを気にしすぎず、次第に話せるようになっていくと思います。
質問も引き続きお待ちしていますね。
人に話すと楽になると思います。
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