新井 リオ
(更新)
『Q&ABC』は、「英語日記BOY」の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
第14回のテーマは、「中学生の子どもに、どうやって英語を勉強させればいい?」です。
ご相談したいことは、もうすぐ中学生になる子供のことです。私自身、中学~大学まで英語を学んでいてもまったく話せるようにならなかったので、できればリオさんが本に書かれているやり方で英語を学習してほしいと思っています。(もちろん本人のやりたいという意思を尊重します)
中学生が英語を話したいと思ったときにも、大人と同じようにオンラインレッスンや英語日記などを続けていくやり方で良いでしょうか?
ちなみに小学校や通信教材についてくる英語には取り組んでいますので、簡単な表現や単語はわかるレベルです。
また、オンラインレッスンは中学生向けのものを選んだ方がいいですか? どうか教えてください!
ご質問をありがとうございます。本も気に入ってくださって大変嬉しいです。
中学生にとっての理想の勉強法ですね…なるほど。
「オンラインレッスン&英語日記」は、中学生からでも是非取り入れて欲しい勉強法です。
現状、日本に住みながらスピーキングを上達させたい全ての人にとって、これが一番効率的で習得しやすい方法なのではないかと身をもって体感しています。
ですので、勉強法としては、学校の基礎的な勉強に加えて「オンラインレッスン&英語日記」が日常的にできたらかなり良いと思います。
ただ、勉強法よりも大事なのが、本人に「英語が話せるようになりたい」という意思があるかどうかです。
これは英語に限りませんが、何かが上手くなるときに欠かせない要素の一つに、「自分自身がその対象を好きになっていて、能動的に向上したい気持ちがある」という大前提があります。
「上手くなりたいという能動的な意思」が芽生える
↓
「効果のある勉強法」で努力を続ける
基本的にスキル上達は、この順序で成り立つと考えています。(特に子ども時代は)
質問をしていただいたみつままさんは、「もちろん本人の意思を尊重させます」とおっしゃっているので、強制的に勉強させることは決してない方なのだと思っております! むしろ、お子さんのためにここで質問までしてくださって、本当に素晴らしい親御さんだと思います。
ただ、今回僕が「効果のある勉強法」の部分だけを事細かに共有すると、僕とみつままさんの二人の間だけで盛り上がってしまう可能性があるかと思い、ちょっとだけ心配になりました。
僕とみつままさんが「中学生に効果のある英語勉強法」の理解度をいくら高めても、お子さん自身が「英語を勉強したいという意思を持つ」ことには繋がりません。
ここにはまた別のアプローチが必要だと思うのですね。
また、親が個人的な熱をあまりに持ち過ぎてしまうと、子どもはむしろその対象を嫌いになりかねません。
「子どもにこうなってほしい」というイメージが具体的になるほど、親は子どもが楽しんでいるかどうかよりも、そのラインをクリアしているか否かに注目してしまう可能性があると思うからです。これは子どもにとって喜ばしい状況ではないなと思います。
かといってあまりに放任していても、子どもが自分自身で広げられる興味の範囲には限りがあるので、勝手にさまざまな知見を学び…ということにもなりにくいと思います。
とにかく、子どもに上手くなってほしい何かがあるとき、親がその対象をどうやって子どもに導入させてあげるかって、想像以上に繊細なトピックだと思うんですね。
そこで今回は、具体的な勉強法よりも、先ほど言った「別のアプローチ」=お子さん自身の「上手くなりたいという能動的な意思」を助長させるには親に何ができるか?、ということをメインテーマに話していければと思います。
(それに勉強法としては、中学生だとしても「英語日記BOY」に書いた内容+学校の勉強で十分だと思っていますので!)
子どもの「上手くなりたいという能動的な意思」を育むために親ができることがあるとするなら、それは以下の3つに集約されるのではないかと考えます。
ちなみに自分はまだ結婚しておらず子どももいませんが、10歳離れた弟がいます。このくらい離れていると、兄弟というより子どものように育ててきた感覚があります。
彼はいっとき英語にすごく興味をもってくれたのですが、そのときの体験談を踏まえて話していきます。
まず何よりも大事なのが、英語は「楽しいものなんだ」と思わせてあげることです。
ただ、これは「英語って楽しいんだよ」と毎日言い続けるのではなく、「英語を楽しんでいる姿を目の前で見せてあげる」ことで初めて叶えられるものなんだと信じています。
弟が13歳(中学1年生)だったとき、僕は23歳で、ちょうどカナダでの1年半の生活から帰ってきたタイミングでした。
カナダでデザイナーとして働いた経験を弟に話したこともありますし、僕が部屋で洋楽をかけながら歌っていたのを彼はよく見ていました。僕のライブもよく観に来てくれました。
また、レッスン中に、彼を先生に紹介したこともあります。
「Hi! I’m 〇〇.」と名前を言っただけですが、彼は英語で先生とつながったことに興奮しているようでした。
すると当時の彼は、「将来はバンドとデザインをしたい! カナダにも行きたい!」と言い出しました。
(今考えるとめちゃくちゃ可愛いです!)
僕から何かを勧めたことはないですが、僕がハマっている姿を見てこう思ってくれたのが嬉しかったのと同時に、「人が何かに興味を持つ仕組み」を垣間見たような感覚になりました。
そうか、「これをやってみなよ」と言うのではなく、まずは「これが楽しいものなんだ」ということを感覚的に伝えて、「自らやってみたい」を引き出してあげることが大事なんだ! と。
考えてみれば、「親が俳優のお子さんが二世代で俳優になる」ことってよくあるじゃないですか。あれはきっと、「親がやっている俳優という職業がとにかく楽しそうに見えた幼少期の体験」が最初の動機だったと思うんですね。
あとは、「親がビートルズ大好きだったから私も小学生ながらにハマって…」みたいな話もよく聞きます。人が何かに楽しみながら没頭している姿って本当に魅力的に写るから、真似したくなるんでしょうね。
なので、子どもに英語の興味を持ってほしかったら、まずは親である自分が「英語を楽しみながら勉強している姿」を間近で見せてあげるのが一番効果的なんだと思います。
もしどうしてもそれが難しければ、英会話教室に通わせるよりも先に、英語の映画を見て一緒に楽しむとか、英語を使って海外で活躍している人にはこんな人がいるらしいよと知らせてあげるとか。
とにかく、ただ「やってみなよ」と声をかけるのではなく、「自らのやりたいを引き出す」のがキーになりそうです。
ただ、「楽しそうだな」がモチベーションになるのは最初の数ヶ月だけ、という場合も往々にしてあります。実際にやってみて、「思ったよりも難しい」「自分にはできない」というネガティブな感情が続くと、おそらく継続できません。
そこで、子どもに「自分はこれが得意なんだ」と思わせてあげる経験を、意図的にでもいいので与えてあげることが大事になると考えます。
僕が中1の弟にしたのは、「褒めまくり家庭教師」です。
ある時期、弟が英語の宿題に苦戦している様子だったので、家庭教師的に見てあげることにしました。(ちなみに弟は、一般的に考えるとあまり勉強ができる方ではありませんでした)
その宿題は、内容としてはかなり簡単でしたが、それでも「こんなの簡単だよ」とは決して言わず、「わかるー、これ難しいよね!」と言ってミスに共感しました。
そしてかなり丁寧に問題を解説し、これなら誰でもわかる! という状態にしたところでもう一度答えを聞きました。
そこまでやると正解してくれるわけですが、僕はそこで「すごいじゃん!」「さすが!!」「英語得意なんだね!」とか言ってめちゃくちゃ褒めました。本気で。
すると彼は「え、やったー!」と言って喜ぶんですね。
子どもって常に、「間違えたらだめだ」とビクビクしながら勉強しているような気がするんです。特に幼少期は、正解して褒められることよりも間違えて怒られる方が機会としては多いように思います。
なので、子どもが英語の問題に正解したときは、そんな常識を覆しちゃうくらい褒めるんです。正解して褒められることの嬉しさと、間違えても別にいいんだという安心感を同時に味わわせてあげるというか。
僕が弟に教えてあげられたのが英語だけだった、ということもありますが、とにかく英語に関しては、間違えても絶対に責めず、正解はとにかく褒める、を繰り返していたら、中1が終わる頃には「一番得意な教科は英語かな」と言い出したんです。
実際、それでも学校の中で比べたら平均点にギリギリいかないくらいでしたが、彼は個人的体感として「僕は英語が得意なんだ」と本気で感じていたと思います。
「楽しい」に加えて「得意だ」という感情が重なると、人ってかなり能動的に頑張れると思うんですね。
なので、とにかく褒めて「得意だ」と思わせてあげる、ということを、具体的な勉強法を伝えるよりも先にやってあげると良いと思います。
最後はちょっと違う視点からの意見なのですが、「勉強以外のことを心配しなくて良い環境を作ってあげる」のもとても大事だと思います。
どういうことか?
子どもって上達が早いと言うじゃないですか。これは脳の発達の関係ももちろんあるはずですが、子供の生活環境も大きな要因になっていると考えます。
「自分で稼ぐ、自炊する、などしなくても、基本的には最低限の生活が保証されている状態」が子どもの生活環境だと思います。(もちろんたくさんの例外はあると思うのですが、多くの場合は、ということであります)
これに気づいたのは、僕が大人になってから新しい勉強を始めようとしたときです。
昨年からデッサン(絵)の勉強を始めたのですが、これがなかなか、中高時代にギターの練習をしていたときのような、莫大な時間の割き方ができないことに気づいたんですね。
それもそのはずで、もう大人になって一人暮らしをしている今の自分は、来月の家賃支払いのこと、今日のご飯のことなど、生きるために最低限必要なことを常に考えながら生活しなければなりません。実際に、物理的に、1日の多くの時間をそれらに使っています。
このような状況下では、「いまこんなに頑張って勉強しているけれど、これって本当にいつか報われるのかな?」と不安になることがたまにあります。
で、この不安って勉強の天敵だな〜と思うんです。
思えば中高時代、こんなことは全く考えませんでした。ギターだって、仕事にするとしたらかなり茨の道になるわけですが、「今ギターを弾いているこの時間が最高に楽しい」ということしか考えていなかったです。
また、うちは決して裕福ではなかったですが、部屋もご飯も両親が用意してくれる生活環境にはあったので、今みたいな「すべて自分で賄わないと」という心配もなく、中高時代は生きているすべての時間をギターに捧げられた感覚がありました。
結果、このときが一番上手くなったんですね(中3~高1くらい)。
本当、1年で信じられないくらい弾けるようになりました。
この経験を思い出すたびに、「勉強以外のことを心配しなくて良い環境づくり」が、勉強の継続にはすごく大事なんだなと実感するんです。
「明日どうやって生き凌いでいくか」を心配しなくて良い生活って、すごいことだったんだなと。
これを今回のトピックに応用するなら、まずはお子さんに(英語の勉強における)お金の心配をさせない、そして好きなことには好きなだけハマっていいんだよ、という家庭内での雰囲気を作ってあげることが大事になってくるかと思います。
具体的な「効果のある勉強法」を教え、実践してもらうのは、今回書いてきた親御さんの働きかけによって、お子さんが「英語が上手くなりたい」と自ら思ったときでいいのではないかな? と思います。
やはり、本人の意思が伴わないと物事は上手くなりません。
また、そのときに伝える勉強法は、学校で行う基本的な文法と単語の勉強に加えて、「オンラインレッスン&英語日記」で大丈夫です!
オンラインレッスンは、中学生向けのものがあるならそれでもいいですが、マンツーマンであればどんなオンラインレッスンでも生徒さんのレベルに合わせたレッスンを提供してくれるので、そこまで気にしなくて良いと思います。
みつままさんが想像していたのとは少し違う視点からのアンサーになってしまったかもしれませんが、僕自身が弟との経験から学んだことがたくさんあったので書かせていただきました。
〜後日談〜
ちなみに、弟が中2になったときに僕が実家を出てしまい「褒めまくり家庭教師」が不在となったので、彼は英語の勉強をやめてしまいました。はは〜
ただ、(そのときに何かにハマることの楽しさを感じてくれたからだ! と信じているのですが)高校生となった今、彼はパソコンゲームにめちゃくちゃ没頭しており、自作PC(自分でパーツを買ってきて作るパソコン)まで持っているみたいです…。
既にこのまま仕事にできそうなくらい詳しいので、対象がなんであれハマるって良いことだなと思いました。
質問も引き続きお待ちしています!
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