新井 リオ
(更新)
『Q&ABC』は、「英語日記BOY」の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
第20回は「英語を使って何をしたいのかが見つからない」というテーマについて。
興味があることから始めたらいいのか、それとも今までやってきたことに掛け合わせればいいのか、色々考えすぎてしまいます。
どうすれば見つけられると思いますか?
考えすぎてしまうのすごくわかります。
頑張る気概はあるけれど、せっかく頑張るなら正しい道で頑張りたいんですよね。今からおこなう努力が無駄になるかもしれないことが怖いんですよね。
やる気だけ肩に乗せながら、Y字の分かれ道をずっと眺めているんですが、実際にはまだ一歩も進んでいないことに気づいたとき、いつも情けなくなります。
自分自身いまだにその連続で、この選択が100%正しくて確実だ、という実感を持って動き出した経験はまだないかもしれません。
逆にいうと、確信が100%ではなくても動き出してしまった過去の経験たちが、今の生活を作っているんだということにも気づき始めています。
実際にまわりを見ていると、「ワクワク、緊張、不安、全て抱えながらも、自分の好奇心に引っ張られる形でひとまず始める→結果を見ながら修正していく」という流れで進めている人の方が、なんだか上手く行っているように見えます。あとなにより人生が楽しそうでいいなあと純粋に憧れます。
僕のこれまでの人生における、英語が絡んだ大きな決断でいうと、21歳のときにデザイナーとして生計を立てるために向かったカナダ生活ですかね。ずっと活動していたバンドを辞め、大学も結局2年間休学しました。
当時は日本でも、デザイナーとしてはお小遣い程度のお金しかいただいたことがなかったので、カナダで生計が立つかどうかはほとんど賭けのような感じでした。
そんな状態でなぜ踏み出せたかを改めて考えてみたんですが、やりたいことが明確にあったから、という理由以上に、とにかく海外に住みたかった・英語が上手くなりたかったという気持ちが大きかったことを思い出しました。
もちろんデザイナーとしても結果を出したかった。でも、それが優先順位の1位なら、日本で目指した方が絶対に楽なんです。それでもカナダに行ったのは、やはり「海外に行きたい・英語が上手くなりたい」が常に1位に君臨していて、「デザイナーの掛け算」は、あくまでそれを補助するような立ち位置にありました。周りの人に、海外に行くことを納得させる口実でもあったのかもしれません。
もちろん「英語に掛け合わせる対象」を別軸で持っていることは非常に重要で、これがあるかどうかが、長期的な勉強の継続には影響すると思います。
ただ、現時点でこれが自然と思い浮かんでこない人は、「これでいいのだろうか」と疑いながら無理に見つけてきた取り急ぎの対象を掛け合わせてしまうよりも、本当に純粋な気持ちである「英語が話せるようになりたい」を、まずは目標の頂点に置いてしまった方が、純度の高い努力ができると思います。
英語が上手くなりたいから勉強する。
話せたらかっこいいから勉強する。
これで本当は十分な気がするんです。
僕、「好きな人のタイプは?」という質問に答えるのが昔から苦手なんですね。
まだそんなに自分のことを理解できてない…! という気持ちもありますし、なにより、本当に人を好きになるときって、そんな、箇条書きのチェックリストに印をつけていって、「クリア!」みたいなものじゃないじゃないですか。
僕は優しい人が好きだと公言していた時代に、「私性格悪いよ」と言っている人を大好きになったことがありますね。
なので、むしろそうして待ち構えていたチェックリストが大風によって吹き飛んでしまうような衝撃的な経験こそが恋なんだなと思いました。
僕は、英語や海外にも恋をしているようなイメージが常にあります。とにかくずっと魅力的なんです。
「なんでそんなに英語が好きなの?」と聞かれれば、世界の人と繋がれる、仕事に活かせる、とかそれっぽい返答はいくらでもできるのですが、そんな実用的な理由で、そもそも英語を好きになったわけじゃないんです。
初めて見たときから、もう、とにかく英語がかっこよかった、これです。
で、人を好きになったとき、「相手が好きな音楽を自分も聴く」「料理を作ってあげたくなる」とか、好きが溢れてさまざまな行動が自発的に出てくると思うのですが、しいていうならこれが「掛け合わせ対象」なんですかね。掛け合わせることで、ただ「好きー!」と言っているよりも爆発力出ますもんね。
だから、英語における掛け合わせも、無理に見つけなくていいと思いますよ。
あったらもちろんいいんだけど、もっと大事なのは「英語が好きだ」と心から思えているかどうかじゃないですか。この気持ちさえ大切に守り続ければ、いつか「これを掛け合わせたい!」という自発的な思いが生まれるはずです。
現時点での英語力にかかわらず、質問をしてくださったじょうさんのように「英語を勉強して話せるようになりたい」と思えている時点で、僕たちには計り知れない伸び代があるんです。
意外と全ての日本人が「英語を話せるようになりたい!」と心から願っているわけじゃないですからね。
こう思えていること自体が既に、英語学習におけるわたしたちの才能なんだと思います。
あるいは、掛け合わせたい対象がありすぎて、どれを選べばいいか定まらない、という方も多いと思います。
そういう方には、「どれを選んでもおそらく正しいんだ」という視点をプレゼントしたいです。
自分は、いくつかある選択肢で迷い、例えば1ヶ月以上経ってもまだ悩んでいるようなものに対しては、「こんなに全力で悩んでまだ決着がつかないということは、どれを選んでもいいんだな」と思うようにしています。
判断基準を、選択肢ではなく「全力で悩んだかどうか」にもってくるイメージです。
と言いつつ、自分もついこの前まで、何かを選ぶ際には絶対に正しい1つの選択肢があって、それを選べるかどうかの勝負をしているんだ、という感覚がありました。
ただ、それが覆った経験があります。
自分は2020年3月の時点で、翌月からドイツに移住する予定でした。イラストレーターとして、ヨーロッパでチャレンジしたかったんですね。
ただ、みなさんご存知の通り、新型コロナウイルスが蔓延し、瞬く間に海外渡航できるような状況ではなくなりました。
既に日本の家の解約連絡も入れてしまっていたし、家具も売り始めていた自分は焦りました。このために数年間頑張ってきたので、かなり落胆しました。
ただ、急遽日本で時間ができたので、開き直って、絵の学校に通うことにしたんです。
これが本当に良かったんですね。自分の技量がいかに足りていなかったかを痛感しました。
学校に通うにつれ、「あの時点のイラストのレベルでドイツに行っていても、まったく歯が立たなかっただろうな」と思えてきたんです。
僕たちはつい、早く成功したいと思ってしまうのですが、成功できるだけの技量が追いついてない段階でチャンスだけが回ってきてしまうのは、実はすごく辛い出来事かもしれないんです。
もちろん、実践でしか学べないこともありますし、逆境こそが燃えるぜ、という人もいます。
ただ僕はそんなにタフじゃないんです。めっちゃ慎重なんです。
その瞬間の自分の実力の無さが原因でチャンスを掴めなかったら、余裕で心が折れると思います。こういう方って多いんじゃないでしょうか。
そんな弱い自分の味方が、勉強なんですね。
勉強をし、できることが増えることで、精神が安定していくのを感じます。
話を戻しますが、(コロナの影響で仕方がなかったとはいえ)、Y字路の選択肢で「日本に残る」を選んだことに、僕は今満足しています。
そう思えるのは、これが適当に選んだ道じゃないからかな。
判断基準を、選択肢ではなく「全力で悩んだかどうか」にする。
「こんなに悩んだから、もうどっちでも良いんじゃない?」と自分に言ってあげる。
僕が大切にしていることです。
さいごに、英語に向き合う全ての方へ。
英語学習が無駄な経験になる可能性は、どう転んでもあり得ない、というのが僕の見解です。
英語って万能すぎる調味料のような感じで、何に合わせても美味しくなります。
例えば〇〇資格を取得するための勉強などは、その分野以外ではあまり価値を持たなくなることがあります。
一方で英語は、分野の縛りがありません。海外で仕事ができる、日本にいる外国人の方とコミュニケーションが取れるというメリットは、どんな業界でも強みになります。
また、英語の情報を仕入れたり、コンテンツが楽しめるようになることは、生活の充実度にも直結します。
「英語の勉強なんてしなければ良かった」という未来は絶対に来ないんです。
これだけでも、今、英語に真剣に取り組んでおく大きな理由になるかと思います。
英語をマスターした先の未来が今は見えなくても、興味があればそれだけで勉強していい。
すると、続けるうちに見える世界が変わってきます。
そこに自然と生まれるオリジナルの景色が、みなさんが「英語を使って本当にやりたいこと」だと思います。
質問も引き続きお待ちしています!
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