新井 リオ
(更新)
『Q&ABC』は、「英語日記BOY」の著者・新井リオが、「英語・海外生活」にまつわるみなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます)
あけましておめでとうございます!
2022年ですね。
この連載は今年で3年目に突入です。
いつも読んでくださる読者の方、編集を担当してくださるDMM英会話Blogの方に改めて感謝を申し上げます。(本当に色んな方のご尽力があってこの連載が成り立っています)
新年一発目、第21回のテーマは「英語学習における目標の立て方」についてです。
現在私は1年ほど英語学習を続け、少しずつ話せるようになってきたかと思います。
しかし英語をどこまで話せれば、自分の目標を達成できたと言えるのかはっきりしていません。
リオさんはどのように目標を立てていましたか?
「英語が話せる」って、やっぱりすごく憧れるし、目標としてもよく掲げられる文言ですが、これ自体を目標にするのって、実は難しいことでもあるんです。
TOEICだったら点数が出るし、受験は合否が出るから、目標を達成したかどうかがわかりやすいです。
でも「英語が話せる」というのは、「○月○日に達成した」みたいな明確なラインがありません。
実際には、グラデーション的に向上していく中で「そういえば前よりも上手くなっているのかもなあ」と、振り返って初めて少し気付ける程度のものなんです。
そういう意味で、言語習得って実は、勉強量の割には達成感が少ないものなのかもしれませんね。
いつまで勉強を続けても、誰かが合格印を押してくれるわけではないので。(絶対に上手くはなっているのに)
だから、自分でどれだけ今の英語力を認めてあげられるかの話になるんですが、「私は目標とする英語力を完全にゲットすることができました!」と本気で思えている人ってほとんどいない気がします。
なぜなら、大人になってから学び始めた第二言語を、ネイティブレベルで完璧に使いこなすのって、相当難しいことなんです。
英語圏での生活歴が、日本での生活歴を上回るくらい、英語を日常的に使用して、やっと、そのレベルに近づけるかどうか、って感じではないでしょうか。
だから、日本で出会える「英語がペラペラに見える人たち」のほとんどが、心では、「いやあ、まだまだなんだよなあ」って思っている気がします。
特に、勉強を継続できるような真面目な人たちは自分に厳しい場合が多いので、英語が話せるように見える輝かしい見た目とは裏腹に、内面では常に「まだ足りない」と感じていたりするんです。
上記のことを踏まえ、英語学習における目標設定で、僕が意識しているコツをいくつかお伝えします。
まずは、「次の行動が思い浮かびやすいものを目標にする」ということです。
どういうことか。
例えば、
「今年こそは絶対に英語が上手くなる」
「海外に行った時に不自由がないくらいのレベルにする」
これらの目標は曖昧で、設定した次の日から具体的に何をするべきか、すぐに思い浮かばないですよね。
そこで、こんな風にしてみるんです。
「オンラインレッスンで先生に趣味を聞かれたときに、好きなアイドルのことを詰まらずに英語で語れるようにする」
このくらい具体的にすると、
など、次の行動が思い浮かびやすいんです。
人は、曖昧なことについてはなかなか頑張れないけど、明確なことについてはけっこう頑張れます。
「私は今日、何をすればいいか」が事前にわかっていると、勉強が続くんです。
これは、休日に何も予定がないと結局だらだらしちゃう一方で、楽しみにしていたイベントがある日には、朝飛び起きて準備ができてしまうことと似ています。
「頑張るぞー!」という気合だけじゃ、永遠には頑張り切れないことをちゃんと理解する。
そして自分に熱があるうちに、迷った自分への指南書を書いてあげるような気持ちで目標を書き出してみるといいです。
次のコツとして、「英語を使って行う他の対象を目標にする」というものがあります。
僕のこれまでの経験で、英語力がグンと伸びたなあと感じられたときに掲げていた目標が、以下の2つです。
「ミュージシャンとしてカナダでライブをする際のMC(曲間の挨拶など)を英語で話す」
「カナダに住み、現地でフリーランスデザイナーとして生計を立てられるようになる」
ポイントは、英語に掛け合わさっている他の対象が具体的で、「英語が上手くなる」に比べて、達成したかどうかの判別がつきやすいものになっている点です。
どちらも、英語力自体に言及しているわけではないですが、ライブ中のMCも、デザイナーとして海外で生計を立てるということも、それに見合った英語力が伴っていないと叶わない出来事です。
なので、これらの目標が叶ったときには、同時に自分の英語力も着実に伸びているんだ、と思うようにしたんです。(実際に伸びていたなあと、今思います)
この方法で目標設定をする際のポイントは、考えるだけでワクワクしてくるような出来事を書くことです。
例えば、
「ずっと行きたかったアメリカの大学院の入試に合格する」
「以前から興味のあったデザインを海外のオンラインスクールで学び、きちんと卒業する」など。
ここには、受験の合否、卒業できたかどうかなど、明確な基準があります。
どちらも英語力そのものを目標にしているわけではないですが、今よりも英語力が上がっていないとそもそも成し得ないことなので、クリアできたときには英語力も上がったんだと思うことができます。
ここまで書いてきた目標設定のコツは、
などに向けた、英語と自分との距離をもっと縮めるためのやり方です。
まずは習慣づけて、勉強を継続することが大切なので。
ただ最終的には、「英語そのものを楽しむことができていて、目標が必要のない状態(=英語学習がライフワークになっている)」になれると理想的だと思っています。
極論、自分の口から英語が出てくる事実が楽しくて、毎日自然と勉強ができているなら、目標がなくとも上達すると思うんですね。
本当に好きなものって、「努力をするぞ」みたいなモチベーションを作らずとも自然とやっちゃうじゃないですか。
例えば僕はビートルズが大好きなんですが、ビートルズの知識は「頑張って増やすぞ」と思わずに、とにかく好きで、自然と増えていったんですね。(みなさんにもそういうものがありませんか?)
でも、英語に対しては、最初はもちろん「好きすぎて自然と…」なんて思えるわけもなくて、だからこそ、「目標」を利用して距離を縮めていきました。
このように目標って、上手くなりたいものを好きになるための初期段階で使える効果的な手段という一面があるんです。
で、この目標設定が功を奏して習慣化すると、「できること」が増えていきます。
英語の場合、だんだんと話せることが増え、会話が通じるようになってくるんです。
ここでついに、「英語そのものが楽しい」という状態になってきます。
そうすればもう、「目標」からは卒業して良い気がするんですね。
事実、最近の僕は、(英語を使って海外で叶えたい夢はありますが、)どのくらい話せるかといった「英語力」にフォーカスした具体的な目標はもうあまりないです。
ビートルズに並ぶくらい英語が好きになって、ほぼ毎日勉強できています。
仕事が忙しくて勉強が疎かになるタイミングもたまにはありますが、根底として、英語が好きで楽しい状態になれているので、いつでも英語学習に戻って来られる安心感があります。
人によって時期は違いますが、長期的な勉強を続ければきっとみなさんにもこのような瞬間が訪れます。
結局、「好き」が最強なんです。
本当に好きになってしまえば、かつての「悩みの対象」がただの「伸び代」に見えてきます。
どれだけ正当な理論を詰めても、「好き」には敵わないんです。
みなさんにも英語が大好きになるポテンシャルがあります。
このブログ記事にたどり着いている時点で、周りに比べてかなり、英語に対しての熱量がある人なんです。
(ご兄弟とか、親御さんとか、きっとこの記事までたどり着かないでしょう? でもみなさんはたどり着いているんです。英語への熱があるから)
だから、「いつか私も、英語が大好きでたまらない人になれるんだ」とまずは信じる。
そして、大好きになっていくプロセスの補助として、オリジナルの目標を利用する。
で、上達する過程でできることが増えてくると、英語自体が楽しい! と思えてきます。
「目標は、その対象を好きになるための補助」なんだ。
この意識です。
目標設定はいいんだけど、それが達成できなかったときはどうするの? と思うかもしれません。
でも、それはそれで良いんじゃないかと思います。
叶う叶わないではなく、目標を持った瞬間に始まる日々の艶のようなものに意味があるんです。
そもそも夢や目標を持つことは、同時に、試行錯誤して悩んでいく時間が生まれることを指します。
ここまでの英語学習を振り返って、(最初の頃は特に)全てが楽しいで埋め尽くされているわけではなかったですが、こういった葛藤の時間こそが自分を魅力的な人間にしてくれる一要素だったと感じるんです。
何も悩まずここまで生きていたら、それはそれで不安を感じていたような気がします。
人生で一度は経験するといいかもしれない「何かを乗り越える」という経験を、僕は英語を通して、割と早い段階に経験させてもらいました。だから当時の悩みに感謝すらしています。
僕、お笑い大好きなんですが、夢や目標について考えるときはいつも、M-1優勝を目指す芸人さんたちを思い浮かべます。
彼らが面白いのは、「面白くなるぞー!」という気持ちで毎日を過ごしているから、ではなくて、「M-1で優勝したい」という絶対的な目標がある結果、今やるべきことが明確になり、日々に艶が生まれ、努力をしやすくなっているから、だと思うんです。
その結果優勝できたらもちろん素晴らしいですが、できなくても、これを目指す過程で培った技量や魅力を武器に、活躍している芸人さんってたくさんいますよね。
多分彼らにインタビューしたら、「優勝はできなかったけど、それを目指した毎日は輝いていて、無意味ではなかった」と答えてくれるような気がします。
年末に彼らをテレビで見た後、僕はいつも「おれにとってのM-1ってなんだろうな」って思います。
ここで一番に思いつくオリジナルの何かが、他の何よりも優先して目指すべき夢や目標となるんだろうなと感じます。
質問も引き続きお待ちしています!
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