新井 リオ
(更新)
Q&ABCは、『英語日記BOY』著者の新井リオが、「英語・海外生活」にまつわる、みなさんからの質問に答えていく連載です。
(質問はこちらからできます。)
第24回のテーマは「英語を話すときの緊張と、発音への影響」についてです。
発音につまずいた単語を後から調べると、よく知っている言い回しや、思っていたより簡単な発音だったことが多く、緊張が原因なのかなと自分では考えています。
リオさんは、実際に英語で話をする時に緊張することはありますか?
もう7〜8年間英語を勉強していますが、今でも緊張することはあります。
特に仕事の緊迫した場面で英語を話すときは、うまく言葉が出てこなくなることが未だにあって、頭を抱えます。
この前、世界中からオンラインで集まった7人ほどのグループで進める仕事があり、唯一の英語非ネイティブだった僕は、もはやみんなにあやされる赤ん坊のようでした。
情けなかったです。ミーティングが終わると、「何年英語勉強してんのよ」と自分につっこんでいました。
英語を話すうえでの緊張は、スポーツで捉えるとわかりやすいのではないかと思います。
みなさんは、長く続けていた(続けている)スポーツがありますか?
僕は学生時代にサッカーを9年間ほどやっていました。
結構真面目に練習していて、歴が長くなるに連れ着実に上手くはなっていたのですが、それでも公式戦のときは毎回緊張していました。
英語を話すときの緊張も、これと同じなんじゃないか?と思うんです。
僕にとって、先述のオンラインミーティングは、確実に公式戦でした。世界大会の決勝トーナメント第1回戦。
一方で、オンラインレッスンは、もう、緊張することがほとんどありません。
これは、7年以上続けた結果、僕にとってのレッスンが、公式戦ほどの緊迫した存在ではなくなったからだと思います。
昔は緊張していました。レッスンを受ける直前はいつも、一杯の水を飲んで精神統一してから受けるくらいでした。
それが今では、(公式戦と比較するなら)友達と近所の公園でボールを蹴って楽しむ遊び、くらいの感覚でレッスンを受けています。
ひとえに、慣れたんでしょうね。
なので今、まだオンラインレッスンが「公式戦」くらい緊張してしまう方がいたら、「回数を重ねることで確実に慣れていき、緊張は薄れていくので安心してください」とお伝えしておきます。
次に、ゆうきさんが悩んでいる「せっかく練習した発音が、実際の英会話でおろそかになってしまうのは、緊張が原因か?」という点について。
非常に面白い視点で、僕なりに結構考えてみたのですが…答えはノーかな、と思いました。
もちろん緊張も影響すると思うのですが、それ以上に注目するべき点があることに気がつきました。
僕には、もう7年近くの仲で、カナダと日本でそれぞれ1年ずつ一緒に住んだ経験もあるカナダ人の親友がいます。
彼と話すときは全く緊張しないのですが、だからと言って、自分にとっての最上級の発音で話せているかというと、正直、そうではありません。
彼と話すときは完全にリラックスしており、良い発音で英語を話すぞ、みたいな気持ちがあまりないんですね。
結果、彼と話すときは、これまで練習によって培ってきた英語発音の中で、1番自然に出るものが、ただ出ている、という感じなんです。
これを、仮に「無意識発音」と呼んでみます。
では、オンラインレッスンのときはどうだろう? と思い、先日、レッスンを録音して聞いてみました。
すると、前半と後半で発音が若干変わっていることに気がつきました。
僕は去年から、イギリス英語を集中して練習しているんです。
そのため最近のレッスンでは、練習の成果を出したいと思い、意識してイギリス英語を話します。
結果、レッスンの前半では、比較的綺麗なイギリス英語のアクセント(=これを「意識発音」と呼んでみます)が出てきます。
しかし後半の方になってきて、さらに議題が難しくなったりすると、もう発音どころじゃないといいますか、「自分の言いたいこの感情はどう言えばいいだろうか?」ということに気を取られて、いわゆる「無意識発音」で話していたんです。
ちなみに、僕の「無意識発音」はどんな発音かと言いますと、「長年勉強してきたアメリカ英語に、近年意識し出したイギリスアクセントが混ざりながら、たまに母国語である日本語のエッセンスが垣間見える発音」とでもいうんですかね。
そしてこれが、僕の英語発音における、現在の本当の実力なんだと思います。
つまり、レッスン時、あれだけ練習したはずの発音が次第におろそかになってしまうのは、緊張が原因というよりも、他に意識を向けるべき部分が出てきた結果、「無意識発音」で話すしかなくなってしまったからだ、と言えます。
ならば、会話中の発音を「意識発音」で話してみるのはどうか?と思うかもしれません。
実際、ゆうきさんなら1人での練習中、僕ならレッスンの前半は「意識発音」を口から出すことができていますよね。
ただ、これはあまり実用的な対処法ではないかもしれない、と思います。
なぜなら、「意識発音」で話すには、その名の通り、会話中も常に発音に意識を集中させている必要があります。
これだと「人とのコミュニケーション」において1番に重要な、「自分が相手に伝えたいことを、そのときに適した表現で伝える」ということがおざなりになってしまうんです。
例えば、英語で話している相手が傷ついていて慰めたいとき、意識を向けるべきは「自分の発音の上手さ」よりも「いま相手を想いながらかけるべき言葉として1番適切なものはなんだろうか」という点になると思います。
後者の重要性に比べれば、自分の発音が上手いかどうかは、このシチュエーションにおいては本当に小さなことだなと思うんです。
そういう意味で、実際の会話中は、(最大限に発音は頑張りつつも、)一番に意識を向けるべきは「何を考え、何を言うか」という部分になると僕は考えます。
勉強で頭がいっぱいになっていると、会話の機会が訪れたとき、「これまで自分が憶えてきた英文の披露会」みたいになりがちなんです。
では、今回の議題にはどう対処すればいいのか?
それは、自分の無意識発音を底上げするしかない、ということになるだろうと思います。
無意識で話している発音が、「既にそれなりにうまい発音だ」と言えるレベルになっていることが1番の理想なんです。
そのためにおすすめなのは、スマホを使った自主練ですかね。
自分はiPhoneの言語設定を英語に変え、発音矯正ツールとしてSiriを使っています。
例えば、日本人にとって特に難しいと言われている girl と world という単語を、Siriに向かって何度も話しかけてみます。
慣れていないと、 girl が call になってしまったり、world が wall になってしまったりします。
百発百中で認識してくれるまで、僕の場合は毎日練習して1ヶ月ほどかかりました。でもこの練習のおかげで「英語を話すときに必要な筋力」のようなものがつき、他の発音も上手くなり始めました。
今ではYouTubeなどにも有益な発音向上動画があるので、積極的に真似してみるといいと思います。
英語学習を続ければ、流暢性も上がるし、リスニング力もついていきます。
しかし、英会話レッスンを続けることは、発音を上達させることとイコールではないんです。
発音は、基本的には個人的な研究と鍛錬によって上手くなっていくものだと思っています。
こうして一人で努力した成果が、実際の会話の場面で「無意識」に出てくるようになるのが理想の流れですね。
書きながら思ったのですが、「無意識こそが本当の実力」というのは、もはやすべてのことに言えるのかもしれませんね。
思えば、日本語を話しているときなんて、無意識の集大成みたいなものですもんね。
そう思うと、勉強って「無意識の土台」の底上げをする行為なのかな。
いつか「何も意識してなかったら勝手に英語で話してました」みたいな感じになりたいけど、道は長い…
質問も引き続きお待ちしています!
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