DMM英会話 ブログ 英語でつながる インタビュー

世界最大のエコビレッジ、オーロヴィルで活動する看護師 小川美農里さん

世界最大のエコビレッジ、オーロヴィルで活動する看護師 小川美農里さん

小川美農里
1984年生まれ。福島県出身。学生時代に世界一周し、世界のNGOや孤児院等を訪ねつつ、各地でボランティア活動に従事。大学卒業後、看護師として働く傍ら、学生向けのスタディーツアーや世界とのつながり、命の大切さに関しての講演等を精力的に行う。現在世界最大のエコビレッジと称される「オーロヴィル」にて、農業や統合医療などを学びながら、ヘルスセンター等で医療活動を行っている。
オルタナSにて連載中
http://alternas.jp/work/ethical_work/53464

    まっつんです。現在インドにおります。
    世界最大のエコビレッジと称される「オーロヴィル」にて、農業や統合医療などの勉強をされながら、ヘルス&ヒーリングセンターで医療活動を行われている小川美農里さんにお話をお聞きしてきました。

    ユネスコも注目するオーロヴィルとは?

    オーロヴィルに関して教えてください

    インド南東部の都市チェンナイの南方にあり、あらゆる信念や政治、宗教などを乗り越えて
    平和と調和の下に住むことのできる持続可能なユニバーサルタウンを目指したコミニュティです。

    環境実験都市としても知られ、インド政府やユネスコなども支援をしています。
    元々何もない荒れ地だったようなのですが、植林を地道に行い、現在は辺り一帯綺麗な森林地帯になっています。

    発足は1968年で、現在世界40ヶ国以上から約2,300名もの人々と私のようなボランティアがこの街に暮らしています。特徴としては、多くの仕事がボランティアで行われ、金銭のやりとりを最小限にして行われています。

    「オーロヴィリアン」と呼ばれる住人は教育や医療、食事など多くのサービスが無料、もしくはアクセスしやすい価格で享受することが出来ます。

    オーロヴィリアンになるにはどうしたらいいのでしょうか?

    オーロヴィリアンになるには、オーロヴィルの概念を理解した上で申請をし、ボランティアとして、約1年滞在することが条件です。実際にここでの暮らしを体験した上で、住民になるための申請手続きが出来ます。

    ただ、オーロヴィリアンになるためには様々な審査があるようで、平均で1年〜3年ほどかかるようです。本来お金の交換をさせないことを目指しているここオーロヴィルですが、実際にはオーロヴィルに家を建てるための費用などが必要なため、ある程度の貯蓄は必要なようです。

    創始者であるフランス人のミラ・アルファサことマザーは、オーロヴィルの住民を5万人にすることを目指していたようですが、住宅の不足や安全性の確保などの点から、審査は慎重な対応になっているようです。

    オーロビルのシンボル、マトリマンディ
    オーロヴィルのシンボル「マトリマンディル」

    小川さんのオーロヴィルでの活動に関して教えてください

    主に3点ですね。
    1点目は近隣のヘルスエディケーション&ヒーリングセンターでの活動です。

    周辺の村の方々を対象にし、エクササイズの指導や体が痛む方には指圧やマッサージを行っています。予防医療に注目しており、病気になることを未然に防ぐことが出来るように食事や運動の指導をしたり、骨折などをした後に悪化しないようなリハビリもサポートしています。

    2点目は、教育的な活動です。センターではイブニングスクールというのがあり、センターの位置する村の子供たちの学びの場となっていますが、私もそこで子どもたちの宿題を見たり、簡単な勉強を教えてたりしています。

    子どもたちが出来るだけ視野を広げることができ、健康や環境問題、内面的な成長について考えたり感じたり出来るような機会を持てるように工夫しています。
    この前は「インドの自死の現状」を題材にして話しました。インドは楽しく暮らしている人が多い印象があるかもしれませんが、実際は1年間に5万人から8万人が自死で亡くなっています。若者の自死も多いです。つらい時は自分の中に溜め込まず、他の人に悩みを打ち明けていいこと、自分のことを好きでいいことなどを伝え、ストレス発散方法などを一緒に考えました。いろいろなストレス、暴力にさらされている村の子どもたちの心に、少しでも残るメッセージを伝えていきたいと思っています。

    3点目は、農場での活動です。
    オーロヴィルには20数ヶ所の農場があるのですが、そのうちの一つの「ブッダ・ガーデン」という場所で、えんどう豆、バジル、ほうれん草、かぼちゃ、フルーツなどを有機無農薬農業で育てています。私も含め、常時数名〜15名程度のボランティアが滞在しながら、農作業を手伝っています。

    高校で農業、短大で園芸、大学では看護や医療を勉強し、卒業後は看護師として働いてきました。今はここオーロヴィルで、「幸福」「農業」「統合医療」といったキーワードを軸に勉強しながら活動している感じですね。

    小川美農里さんの育ててる野菜
    小川さんが作られている野菜

    初めての海外はパラグアイ?英語の習得方法は?

    どうやって英語は身に付けたのですか?

    英語ですが、元々海外に興味があって、座学の勉強はしていたのですが、本格的に勉強を始めたのは、アメリカに短期留学に行ってからですね。3週間だけだったので会話に慣れる程度でしたが、モチベーションを高める良い機会になりました。

    あとはそうですね、カナダでのWWOOF(※)での経験が、英語力向上に役立ちました。
    これは、農家でボランティア活動をする代わりに食事と宿が提供されるものなのですが、
    英語圏の国で利用していたので、働きながら英語の勉強になりました。
    やっぱり実際に使いながら覚えるのが一番ですよね。

    それと大学生の時に、国際医学生連盟というNGOに所属していたのですが、インドネシアで
    災害医療について国連関係者から英語で学んだり、自分たちで主催した国内での会議では
    英語でプレゼンを行ったりもしていました。これも非常にいい機会になりました。自分が関心のある分野を中心に、使う機会を自ら作っていくことが大事ではないでしょうか。

    ちなみに今はタミル語を勉強しています。文字数がなんと247くらいあるんですよね(笑)
    なかなか覚えるのが大変なんですが、日本語も常用漢字で数千とありますし、そう考えると
    楽な気がします。やっぱり書くのは難しいんで、まずは話す、聞く、を何とかマスターしたいですね。これもたくさん話して、どんどん使っていくしか道はないかなと思います。

    ※WWOOFとは、World Wide Opportunities on Organic Farmsの略称で、オーガニック農場などで労働力や知識を提供する代わりに食事・宿泊の提供が受けられるサービスです。

    元々海外には興味があったのでしょうか?

    そうですね。元々早いうちから海外に出たいという気持ちはありました。
    中学校の卒業文章にも「海外進出するぞ」って書いてましたしね(笑)

    兄がいるのですが、青年海外協力隊の活動で以前パラグアイに行ってたんですよ。
    それで17歳の時に姉と2人で兄を訪ねたのが、初めての海外。

    その時に衝撃を受けたことがありまして。パラグアイ大統領官邸の目の前がスラム街なんですよ。大統領は優雅な暮らしをしているのに、なんでこんなところにスラム街がと。当時はものすごく驚いた記憶があります。

    そのこともきっかけで、大学生の時に国際政治や社会問題を勉強していたのですが、実際に現地の人はどう思っているのか直接聞いてみたくなり、世界一周をしました。アフリカの孤児院やHIV患者さんをサポートするクリニックでボランティアをしたり、これは世界一周後ですが、ヨルダンのパレスチナ難民キャンプでボランティアを行ったりしていました。

    小川美農里さんインタビュー

    今後の活動に関して教えてください

    もうしばらくはここオーロヴィルでいろいろと勉強しながら活動する予定です。
    オーロヴィルに来た理由として、農業や医療に関しての勉強はもちろんなんですが、コミュニティ作りに興味があったことも理由の一つです。

    高校生の時に大阪の釜ヶ崎(大阪市西成区の一部の総称)で、夜回りや炊き出しのお手伝いをする機会があったのですが、そこで衝撃を受けました。ある冬の日に夜回りでホームレスの方に毛布を配っていたのですが、その時に「寒くないですか?」と聞いたら、「寒くないわけないやろ」と言われました。まあ当たり前なんですけどね。路上で寝てて寒くないわけないですよね。日本もパラグアイと変わらないよなと。むしろホームレスの方々などが目立たない場所に追いやられている現状に疑問を持ちました。

    社会人になってからも釜ヶ崎での関わりは細々と続けており、訪問看護ステーションのお手伝いもしていました。ホームレスの方々って家がないだけではなくて、帰る場所というか、居場所がない場合が多いんですね。でも実は、路上で暮らすホームレスの方々だけではなく、私たちも含めた若者も同様です。ここ数年で特に感じるのは、「自分が生きていいんだ」と思える、いわゆる自己肯定感を高められるような居場所づくりが必要だなと。そこからコミュニティ作りにも興味を持ちました。

    農業と医療、それからコミュニティ。

    一見バラバラなように見えますが、すべて「いのち」というキーワードでつながっています。全方位的なアプローチが出来る環境を作っていきたいですね。

    活動を展開する場所はまだ未定です。
    インドで暮らしてみて、大自然の良さを改めて知ってしまったので、またどこか海外になるかもしれないですが、今は日本をベースにすることを考えています。

    環境も医療も、世界をより良い方向に変えていくには、まずは開発先進国が変わっていくことが鍵だと思います。そして何より、私自身が変化であり続けていきたいです。

    丁寧に蒔かれた種は、必ず芽を出します。私も種を蒔き続けていきたいです。世界中でつらい出来事もありますが、希望は常に持っていて、いつもわくわくしています。

    小川美農里さん正面2ショット

    松本の感想

    小川さんが幼少期にお父さんにかけられた言葉が印象的でした。
    「人に迷惑をかけてもいい。その代わりそれ以上のことを成し遂げなさい」とのこと。普通の家庭では逆のことを教わりますよね。小川さんの行動力やパワフルさの原点が垣間見えた気がしました。ちなみにオーロヴィルは誰でも見学、滞在が出来ます。
    今まで訪れた他のインド都市の喧騒とは無縁で、全くの別世界でした。写真で紹介したシンボルのマトリマンディルも事前予約が必要ですが、中に入ることが出来ます。中の写真は禁止されているためお見せできませんが、大変神秘的な空間が広がっており、おすすめです。インドに行かれる方はぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。