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飽きたら明日にでも辞めます『STYLE from TOKYO』シトウレイが信じてきた生き方【インタビュー】

飽きたら明日にでも辞めます『STYLE from TOKYO』シトウレイが信じてきた生き方【インタビュー】

目次


シトウレイ
日本を代表するストリートファッションフォトグラファー、ブロガー。東京のストリートファッションを海外に発信するウェブサイト『STYLE from TOKYO』を主宰。毎シーズン、世界各国のコレクション取材を行い、独自の審美眼で綴られる言葉と写真が人気を博している。雑誌や新聞ウェブ等様々なメディアで活躍中。
ストリートファッション・フォトグラガーの権威、Sartolialistの著書に特集を組まれるなど、ファッションアイコンとしても注目されている。InstagramとTwitterのフォロワーは2万人を超える。

世界中のファッショニスタが注目するブログ、『STYLE from TOKYO』

日本人女性フォトグラファーであり人気ブロガーであるシトウレイさんは、東京・原宿を拠点にストリートでファッションスナップを撮り続けています。

ファッションショーのランウェイだけでなく、ストリートからファッションをハンティングするそのセンスは国内外から高く支持され、『STYLE from TOKYO』はNYを拠点に人気を集めるアートメディア『BLOUIN ARTINFO』の「注目すべき日本のファッションブログトップ10」に選出。彼女自身も、AERAの「21世紀を作るニッポン人名鑑」に選ばれています。

今回はそんなシトウレイさんに、「写真とファッションの世界に飛び込んだキッカケとは?」「『STYLE from TOKYO』が目指すものとは?」、そして「世界を舞台に活躍する理由とこれからのチャレンジ」について伺いました。

初めて撮ったのは、表参道のちっちゃいオジサンでした

シトウさんが写真を撮り始めたキッカケを教えてください。

大学時代、洋服が好きな友達が多くてよく原宿へ遊びに行っていました。その頃に、『FRUiTS』という雑誌の編集長にスナップを撮られたのが全ての始まりですね。
ある日、その編集長に事務所に呼ばれて。そしていきなり「カメラマンやって」って言われたんです。

当時の私はカメラに興味はないし、何よりビデオの録画すらできないほどの機械オンチだったので、誰かと勘違いしているのでは、と考えたほどです。
「それ、私じゃないですよ」と伝えたら、「いやいや、レイちゃんにやってほしいんだよ」と。

その場で紙とペンを渡され、カメラのダイヤルやボタンの説明、それからフィルムの巻き方なんかを一気に教えられました。そして「はい、それじゃあ街で気になる人を撮ってきて!」って(笑)

それが、私が写真を撮り始めたキッカケですね。

編集長はなぜシトウさんに依頼したのでしょう?

なぜでしょうね。私も聞きたいくらいです(笑)
その頃同時に何人かに声を掛けていたみたいで、おそらく最初の1本は適正を見るためのトライアルだったんじゃないかと思います。

そこでシトウさんは何を撮影したんですか?

表参道に並木などの絵を描いているちっちゃいオッチャンがいたんです。ベレー帽をかぶっていて、とてもかわいかったので彼を撮らせてもらいました。

あまりおしゃれスナップじゃないものを撮ってきたから、ちょっとおもしろがってくれたのかな、と今になっては思いますね。

そこでスナップの魅力にハマった、と?

いや、言われたから始めただけで、最初は全く能動的ではありませんでした。でも、1,000人くらい撮ったあたりから徐々に楽しくなってきて。

自分が「この人、いいな」と思う人に声をかけて話していると、服だったりプライベートなことだったり、いっぱい話をしてくれるんです。そういう話を聞くことが、すごく楽しくて楽しくて。
特にファッションについて熱く語られると、その人の意外な側面やこだわりを知ることができて、「これは面白い!」と思ったんです。

そうなると、カメラもファッションも楽しくなってきて。気がついたらもう4,653人(2015.4.11 時点)も撮影していました。

 

「原宿だったら帽子を3つ被ってもいい」

ファッションに対する興味はどのように生まれたのでしょうか?

本格的にのめり込んでいったのは、スナップを始めてからですね。それまではファッションを仕事にするっていう考えは全くありませんでした。
スナップをしながら、ファッションの奥深さに気づいていった感じです。

シトウレイさんが見る「原宿」とは?

エネルギッシュな人が多くて、チャレンジしても白い目で見られない場所だと思いますね。たとえば帽子を3つかぶっていても、周りは「まあそういう人もいるか」とほっといてくれる。

他の街だったら「これはやめておこうかな……」と思うようなファッションでも、原宿なら「やってみたいならやってみよう!」「自分でイケてると思うならやってみよう!」ってチャレンジできるんです。原宿はまるで実験場みたいなところですね。

そのような街は、世界的にも珍しいのでしょうか?

海外では「ええ! それ何!?」って怪訝な顔でジッと見られたり、「あなた、それ変よ」などとダイレクトに言われたりします。よっぽど心が太かったら「それでも私はこれが良いから」とドンと構えられるかもしれないけれど、大抵はヘコみますよね。

原宿は、良い意味で “無関心でいてくれる” という感じ。だから、私はこの原宿が大好きなんです。

 

目標は持たない。好きなものしか撮らない。飽きたら明日にでも辞めますね。

シトウさんが手がける『STYLE from TOKYO』は、どんな目標を掲げているのですか? 撮影人数など?

私は、目標は持たないようにしています。
というのも、達成することが目的になってしまったり、達成したときに次の目標を持てなくなったりしてしまうと思うんです。今、興味があることを素直に掘り深めていく。その結果として、撮影した人の数も増えていくんだろうと思っています。

目の前のことに集中する。そっちの方が、私は大切にしたいですね。

『STYLE from TOKYO』は、読者のニーズを意識して発信しているのですか?

いえ、自分が好きなものを出すことが一番大事だと思っているので、私が良いと感じたものしか撮っていません。だから、撮影に出かけても1枚も撮れないときだってあります。「好きなものを届ける」という軸は、これまでずっとブレていないですね。

ただ、生活しているうちに好きなものって変わっていきますよね。それには正しく反応していきたいと思っています。
好きではないことをしてみても、それは写真や文章に現れるし、読者にも伝わると思うんです。

『STYLE from TOKYO』のアクセス数はどれくらいですか?

昔はPV(ページビュー)も気にしていたんですが、今はもう見なくなっちゃった。PVよりも、FacebookやInstagramのようなSNSの方がダイレクトな反応があるなと感じています。

「いいね」をしてくれた人をたどると、例えばインドネシアの◯◯さんというところまでわかるし、SNSから彼らの好きなものが見えてきたりして、面白いなと。誰だかわからない100PVより、その人の好みや背景が見える1シェアの方が私にとっては嬉しいんです。

今や世界中から見られているブログですが、プレッシャーや責任感を感じることはありますか?

それは全くないですね(笑)
飽きたら明日にでも辞めるくらいのスタンスでいたいなと思っています。周りからどう見られているかを考えることや、ブログを続けること自体が目的になってしまうと、それは本質からズレていってしまう。

毎日常に辞めることを意識しながらやっていく方が、一回一回に注力できて、私に合っていると思いますね。

 

世界を知った上で「東京が一番かっこいい」と言いたい

仕事で海外へ行く機会も多いと思いますが、もともと英語は話せたのですか?

初めて海外に行った頃は全く喋れませんでした。飛行機を降りてもどうしたらいいのかわからなくて、とりあえず人の流れについていく……みたいな感じでしたね(笑)

それでもどちらかというと、言葉の不安よりも「ちゃんと撮影できるのか?」という不安の方が大きかったですね。一人で行って、一人で撮って、一人で帰ってくるというパターンだったから。

もし撮れていなかったら、もしフィルムを落としてしまったら……そう考えると、怖くて怖くて。そっちのプレッシャーが強すぎて、英語はあまり気にしていませんでしたね。

実際に、海外の撮影でトラブルに遭ったことは?

パリで一度、仕事の直前にカメラが壊れたことがありました。現地のカメラ屋さんに行ってもアナログの古いカメラだからわからないと言われ、修理してもらえず……。

この時は本当に焦りましたね。結局、パリに住んでいる友だちに貸しカメラ屋さんを教えてもらったのですが、初めての(しかも古い)カメラを使ってピントの合わせ方すらわからない中で撮影することになりまして……。
なんとか撮り終えることができたのですが、今はもう思い出したくもない。あの時は本当に怖かったー!(笑)

海外でも撮影したいというモチベーションは、シトウさんの場合どこから生まれるのでしょうか?

東京しか見ていないのに「東京のファッションが一番かっこいい」なんて言うのは、フェアじゃないと思うんです。世界の目線を知った上でないと独り相撲しているようなものだし、説得力にも欠けますよね。

実際に、私は世界を見続けているからこそ、東京の良さを強く感じるようになったと思います。

 

「チャンスを逃したくない」からズバズバと動きます

海外へ活動の幅を広げたことで、変わった部分はありますか?

物事をズバズバと言うようになりましたね。
日本だと「言わなくてもわかるよね」という面もあるけれど、海外でそれは本当に伝わらない。別にケンカするわけではなくて、自分の意見や立場をお互いがダイレクトに言い合わないとうまくいかない。良い意味で空気を読まなくなりましたね。

「これ言ってもいいのかな……」と考えているよりも、「とりあえず言ってから考えよう」みたいな(笑)
もし相手が怒ってしまったら「ごめんね」って言えばいいし、ハッピーだったらそれでいいし。

バシっと言ってバシっと返された方が、ちゃんとコミュニケーションをとれている気がしますね。空気を読みすぎると、言わなきゃいけなかったことが疎かになることもあると思っていて。

それは写真の撮り方にも影響しましたか?

直接的ではないですが、「チャンスは逃さないようにしよう」と思うようになりましたね。
以前だったら、「今日は疲れたし帰ろう」と思ったときは、目の前にオシャレな人がいても撮らないことがありました。けど今は「次はない! 今を逃したらもう会えないかもしれない!」と力を振り絞って撮りに行きますね。
行動もズバズバいくようになったというか(笑)

 

「オシャレしたい!」と心から “渇望する” ような写真を撮りたい

最後に、シトウさんがこれから新しくチャレンジしたいことを教えてください。

うーん、たくさんあるんですよね。野心家なので(笑)

この前、原宿のラフォーレへ「RETURN OF THE RUDEBOY展」を見に行ったときに、写真をもっと撮りたいなと思ったんです。
ルードボーイ(*)をカメラマンがロンドンで撮り下ろしているのですが、「ファッション超かっこいい! 私もオシャレしたい!」ってすっごく感じて。
サングラスをかけてハットをかぶった黒人さんだったり、オシャレなおじいちゃんが葉巻を吸っていたりする姿に、女性の私もオシャレしたいと心から思ったんです。

こういう「人に “渇望感” を与えることができる写真」を撮りたいなって、改めて思いました。見ているだけで「こういう着方したい!」「オシャレして外に出たい!」という気持ちになるものを出せたらいいなと。

『STYLE from TOKYO』を見てそう言ってくれる人もいるけれど、もっと「すっごくオシャレしたい! したい! したい! したーい!!!」というくらい相手を渇望させる写真と文章を、これから頑張ってつくっていきたいですね。

これからもシトウさんの写真が楽しみです。本日は本当にありがとうございました。