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世界を魅了し続ける芸術的プロ・フリークライマー 平山ユージ

世界を魅了し続ける芸術的プロ・フリークライマー 平山ユージ

©Eddie Gianelloni

スポーツクライミングがオリンピックの追加種目になった。」このニュースは、まだ記憶にも新しいのではないだろうか。
しかしそれ以前から、テレビや雑誌で「ボルダリング」という言葉を聞くようになり、クライミングは近年身近になってきているように感じる。
そんなクライミング界で、レジェンドと呼ばれる日本人がいるのはご存知だろうか。
不可能だと誰も挑戦してこなかったルートや記録に挑み、次々と歴史を塗り替えてきた、世界に誇る日本人プロ・フリークライマー、平山ユージさんだ。

今回は、平山さんがプロデュースをしているクライミングジムに伺い、インタビューをさせていただいた。
施設内へ一歩足を踏み入れると、そこは別世界。天井は高く、そびえ立つ壁にはカラフルで様々な形をしたホールド(登る際に掴む部分)が施され、登ることはおろか、しがみつくのさえ大変そうな印象だ。
しかしそれは同時に、クライミング経験のない私たちをもなぜかワクワクさせる、そんな不思議な空間であった。

プロになりたい、そう思い初めて一年半後にはアメリカにいた

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クライミングとの出会いは偶然であった。

「15歳の時、たまたま登山用品店で、『君、やりたそうだね。』と、声をかけられたんです。それは本当に偶然が重なっただけなんですけど、そういうチャンスをモノにするか、しないかで運命も大きく変わります。この出会いは偶然だったけど、必然だったのかなとも思います。」

こうして平山さんは偶然を必然に変え、クライミングの世界へ。始めてすぐにクライミングにのめり込み、めきめきと頭角を現す。
そしてクライマー仲間にも恵まれ、彼らと交流する中で、次第に海外を意識するようになる。

「クライマー仲間から『アメリカの岩場は白くて大きい、日本と規模が全然違うんだよ。』というような、夢を描かせてくれる話をよく聞かされました。そうしてクライミングを始めて一ヵ月後には海外へ行きたいと思い、世界一のクライマーになりたいという気持ちが芽生えていました。

17歳でアメリカに7ヶ月の武者修行へ。

そこに迷いなどはなく、世界一のクライマーになるという夢に向かいアクションを起こしていった。

「若かったっていうのもあるんでしょうね。正直怖いもの知らずで、夢だけが膨らんでいって、そう思い始めて一年半後にはアメリカにいました。」

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「クライミングはアメリカがトップと聞いていましたが、やっぱり日本で聞かされていることと、現実では乖離している部分も多くありました。実際にアメリカへ行ってみたらヨーロッパのクライマーの方が技術的にも能力的にも高かったんです。そこで、ヨーロッパに行かなきゃ自分のクライミング人生は止まってしまう、そう思った時にはもう、ヨーロッパに行こうという決意になっていました。

一度落ちたら失敗『オンサイト』での挑戦

※オンサイト (onsight)・・・ 初見。または初見で(テンション、フォールなしに)完登すること。(「最新クライミング用語集」CLIMBING-netより。)

国内外の様々な岩に挑み、世界を驚かせてきた平山さん。その中でも一番印象に残っている岩は何か聞いてみた。

「岩登りは大小関わらず、その都度おもしろさがあるんですけど、やっぱり97年のヨセミテ1100mの壁かな。2年越しのプロジェクトで、自分の思い入れがすごく強かったんですよ。いつもだったら落ちてしまうようなポイントでも、自分の潜在能力以上の力が出せました。サポートし、応援してくれた人、みんなが背後にいてくれるような感じがすごいあって、それを自分の中で初めて体験したんです。」

当時28歳の平山さんは、1100m のヨセミテ渓谷の岩壁をわずか2日で完登した。2年間という入念な準備期間を設けていたのは、オンサイトへのこだわりがあるからだという。

「自分の中で一度落ちたら失敗というチャレンジなんです。用意周到に、一つ一つリスクを潰していくトレーニングをしました。本来だったらこれくらいやればいい、というようなトレーニングをその5倍、10倍やっていくので無駄な部分もたくさんあるんです。でもそれって結局無駄じゃないんですよね。そういった経験があるから、今まで感じれなかったものが感じれるようになって、あのチャレンジは今でも記憶に残っているんですよね。

そして翌年には日本人初のワールドカップ総合優勝を成し遂げる。やはりヨセミテの完登は自信に繋がったのだろうか。

「そうですね。自信にもなりましたし、こういう能力が出せるんだとも思いました。実は総合優勝できるとは思っていなかったんですけど、当時は敵なしのような状態になってました。」

また平山さんと言えば、世界一美しいとも評される芸術的なクライミングスタイルも有名であるが、本人は特に意識をしていないのだと言う。数々の困難な岩山をクリアしてきた経験、そして効率性を求めながらもリズムや流れを意識した丁寧なクライミングスタイルが、見る者をそう感じさせるのだろうか。

©Eddie Gianelloni

100mも200mも変わらない、あとは上まで登りきるだけ。

クライミングは、マラソンや他のスポーツなどと違い、登り始めてしまったら途中棄権はできない。
そこで思わず聞きたくなってしまうのは、岩を登る際に恐怖心などはないのだろうか?

「自分の力量次第なんですよね。岩には難易度が表記されているので、それである程度計算できます。大半は流して登っていくんですけど、いくつか難しいセクションがあって、そういうところでは緊張感や恐怖感はあります。でも、100m、200mと登っていくともう変わらないんですよ。一緒に登るパートナーとは登る前に、『あそこを抜けたら、もう降りれないな。』というような話はするんだけど、登り始めると必死なんで、周りの風景なんかも気にしなくなりますね。」

身体的能力もさることながら、選ぶルートやリズムも重要となる。普段の生活や旅行先で岩を見ると、「どういうルートで登ろうか」などと考えてしまうこともあるのだろうか。

「もう、しょっちゅうですよ(笑)。靴とチョークバッグがあればなんとかなるんで、いつも持っていくようにしています。最近沖縄に行ったんですけど、結構いい岩があるんですよ。難しさを求めてとかじゃなく、これいいね、面白そう、という楽しんで登る感じですね。」

海外でサバイバル!商品を指し、店の人と見つめ合う(笑)

遠征も含めると数多くの国へ訪れている平山さんだが、海外で何か困った経験はあるか聞いてみた。

ロシアは何も通じず困りました。フランス語がわかるとイタリア語やスペイン語が段々分かってくるんですけど、そのノリでいっても全然通じないし、書いてある文字も全然分からない。だからちょっとパンを買いたいときでも、店の人と見つめ合って、商品を指さしている感じ(笑)。下手に話すと10倍くらいの値段を言われてしまったりするんです。その時家をシェアしてたスイス人のクライマーは、自分の10分の1の値段で買ってくるので、一体どうやって買ったの?みたいな。彼に、『ユージ、言葉を話しちゃだめだよ。』とアドバイスをもらいました。余計なことを言わないことと、一番安い紙幣を出しておつりを受け取る、っていうのがいいみたいです(笑)。」

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そんなサバイバル体験もしつつ、生活していく中で語学を身に付けてきた平山さん。
語学学習のツールとして、DMM英会話のようなオンラインサービスについて聞いてみた。

「今まで『勉強』っていう形で英語を学んできたわけではないので、DMM英会話も試してみたいですね。事あるごとに、もっと英語を話したいと思うし、話していないと、どんどん衰えていくので。海外から友達が来ても最初の1、2日はぎこちないんですよ(笑)。やっぱ常に英語に触れてたいなぁと思うし、彼らのアイディアとか考え方って新鮮なので知りたいって思うんですよ。

こう話してくれるも、インタビューに同席していた関係者からは、「随分謙遜していますけど、相当な英語力ですよ。アメリカ人のクライマー仲間が来日して、イベントを開催した時に、通訳もいたんだけど、全然必要なかったんですよ。」とツッコミが入る一面もあった。
実際に、2009年には TED の精神を受け継いだ独立イベント、TEDxTokyo にて英語で講演経験もあるのだ。

「英語で講演をするのは緊張しましたけど、すごく良かったのは、自分の一言に皆反応してくれるんですよ。基本笑いだったんですけど(笑)。いざ出て見たら、皆優しくて楽しめました。」

終わらぬ挑戦「人生の宿題をやりきる」

今回のインタビューでもお伺いした、クライミングジム「Climb Park Base Camp」は、2015年12月に東京都板橋区(最寄駅:東京メトロ小竹向原)に2号店もオープンしており、現在も人気のスポットとなっている。

「20代後半くらいから、第二の人生をどこでスタートさせるのかっていうのは考えていました。最初は指導をメインっていうのは考えてなかったんですが、実際にこのクライミングジムをやってみて、スタッフや生徒の色々な声を聞くことができました。そういった中で、生徒たちが日本のクライミング界を背負っていく過程をサポートし、できるだけ実現してあげたいと思いました。

最近では、瑞牆山(みずがき山)のボルダー・ミネルバを完登し、自身のボルダー最高グレードを更新し、今も精力的に活躍している。そんな平山さんに今後の目標や展望を聞いてみた。
※ボルダー・・・フリークライミングでいう、大きな岩のこと。

「もう秒読みで50代がやってくるんですけど、やっぱり、人生の宿題を終わらせることですね。具体的には、ラ・ランブラというスペインの岩を完登する目標があって、実は今、それを題材にしたドキュメンタリーを撮っています。暫く競技から離れていたので、そういうガツガツした登りはやってなかったんですが、プロとして活動していくには限りがあると思うんですよ。だから今できる時にチャレンジしなければ、と思ってます。

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最後に、世界で活躍するためにどんなことが重要なのかメッセージをもらった。

「世界で戦っていくには、精神的な強さだったり、状況判断も大切ですけど、何より周りの人たちとのコミュニケーションがすごく重要。例えば、僕の能力が高かったとしても、パートナーにどういうルートでどのように登るのか、という意思が通じなかったら、どうしようもないですよね。結局勝っていくためには、英語やフランス語の能力がすごく重要でした。僕は話せることで、チャンピオンに10歩も100歩も近づけたような気がしてます。あとは友達になれるチャンスも広がる、やっぱり色々な人たちと繋がれるのは楽しいので、世界を目指す人たちにはその楽しみ、醍醐味を味わってほしい。そしてもちろん世界で活躍する喜びも味わってほしいです。

川島永嗣選手 - DMM英会話 x グローバルアスリートプロジェクト