RIEKO
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日本語にはたくさんの種類の敬語があります。尊敬語、謙譲語、丁寧語などなど。
ビジネスの世界では特に、正しい敬語の用い方が重要視されます。英語には日本語ほど細かい敬語はありませんが、敬語に相当する言い回しは存在します。
でも、日本の感覚とはずいぶん異なるので注意が必要です。上司、同僚、部下、外部取引先など相手の立場や関係に合わせて、正しい英語表現を使いたいですよね。
今回は、どんな状況でどんな言い方や単語を使用すべきなのか、具体的なビジネスシーン例を交えながらお伝えしたいと思います。
日本では、上司に敬語を使うのは当たり前。先輩にだってそうです。
が、欧米社会では日本ほど上下関係を気にしません。むしろ、円滑なチームワークの為には、フレンドリーな関係が不可欠。
先輩も後輩も意識しないので、同僚は初日からフレンドリーで問題ありません。
例えば、初めて会った時の自己紹介で、
Hi, I'm Mike
「やあ!マイクです」
といった具合にファーストネームで挨拶してくる人は多いです。
その人が先輩であろうと、自分より立場が上の役職についていようと、相手がファーストネームで自己紹介してくれば、今後はファーストネームでOK。
直属の上司や外部の取引先相手に対して、自己紹介をする前や、以前の自己紹介で特別ファーストネームで呼ぶよう言われなかった場合は、はじめはMr./Ms.○○と呼びましょう。
相手が女性の場合、Miss. Mrs.ではなく既婚未婚問わず使えるMs.がビジネスシーンでは一般的です。
上司の場合、ここは大抵気を使ってくれるはずです。
早い段階で
Call me John.
「ジョンと呼んでくれ」
など、名前で呼んでくれるよう頼んでくると思います。
ここからフレンドリーモード突入です。採用面接の時点でそういってくる上司もいるくらいです。
たまにファーストネームで呼ぶように言って来ない上司もいます。
その場合は、同僚の様子をみましょう。大抵その上司に対してファーストネームで呼んでいるはずなので、その場合には早い段階で仕事の相談や連絡事項をする際に、さりげなくファーストネームで呼んでください。
きっと、ファーストネームで呼ばれることに慣れているので、単に「ファーストネームで呼ぶように」という声かけをしないだけなのかもしれません。
日本にある外資系企業では、日本人が上司を名前で呼ばない習慣を考慮して「スミスさん」とか「ジョンさん」と、「さん」付けするところも多いですね。少なくとも、「課長」、「部長」と役職で呼ぶことはありません。
直接働いていない役職付の相手で、あまり交流もないのであればMr./Ms.○○で大丈夫です。相手が「社長」であっても同様です。
例えば「社長」は英語で "President" ですが、“Mr./Ms. President(ミスター/ミズ・プレジデント)" とは呼びません。英語で "Mr./Ms. President" という表現が使われるのは「大統領」だけです。
日本では相手の名前を連呼することはないですが、英語圏では【名前で呼ぶ=良い関係を築く】という認識があります。
なので、朝の挨拶でも “Good morning(おはよう)" だけでなく、是非 “Good morning, John(おはよう、ジョン)" のように名前をつけましょう。
ぐっと距離感が縮んで仕事がしやすくなりますよ。挨拶の仕方は上司、同僚に関わりなく同じ感じでOK。
上司も同僚も関わりなくフレンドリーに接するとご紹介しましたが、ではいつでも友達のように話したりメールを送ればいいかといえばそうはいきません。親しき仲にも礼儀が必要なのがビジネスマナーです。
英語での敬語その1は、文章です。英語は長ければ長いほど敬語になることが多いです。特にお願いする時などは、命令調に聞こえない為にも長い文章にしておきましょう。
「そのレポートを持ってきてほしい」という事をお願いする例文を見てみましょう。
Bring the report.
「そのレポートを持ってこい」Please bring the report.
「そのレポートを持ってきて」Can you bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれる?」Could you please bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれますか?」Would you please bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれますか?」I wonder if you could bring the report.
「そのレポートを持ってきてもらえるでしょうか?」Would you mind if I asked you to bring the report?
「そのレポートを持ってくることをお願いしても構いませんか?」I would appreciate it if you could bring the report.
「そのレポートを持ってきていただけたら大変ありがたいのですが」
これらすべて「そのレポートを持ってきて」ですが、上から下へ行くほど丁寧になります。下に行けば行くほど長いですね。
ビジネスシーンにおいて、一番上の言い方をすることはほとんどありません。
近しい同僚であれば、
Please bring the report.
「そのレポートを持ってきて」Can you bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれる?」
で問題ありません。
後は上司、外部の取引先等、相手との距離感に合わせて文章を長くしていきましょう。上司であれば
Could you please bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれますか?」Would you please bring the report?
「そのレポートを持ってきてくれますか?」
あたりが無難かもしれませんね。
フレンドリーな距離を保っている上司にあまりにも長い敬語文章を使うと、不自然になってしまいます。
だからといって、同僚のような感じでお願いしてしまうのは近すぎてしまいます。さじ加減が大切です。
英語式敬語は文章だけではありません。
ビジネスの世界でもよく使う「分かりました」「了解しました」で見てみましょう。
同僚や近しい人に対する返事はカジュアルなものが多いです。
例えば言われた内容が分かった時は−
All right.
OK.
頼みごとを引き受ける時は−
No problem.
Got it!
Will do.
Fine with me.
対して、上司や取引先への返事は少し丁寧な言い回しをします。
言われた内容が分かった時は−
Understood.
I understand.
頼みごとを引き受ける時は−
Sure.
Certainly.
My pleasure.
I would be happy to.
上記以外にも、いくつかカジュアルな単語とビジネス敬語単語を一覧表にしてご紹介します。
どれもビジネスではよく使われる単語です。
カジュアル | 敬語 | 意味 |
Thank you | I appreciate 〜 | 感謝する |
tell | inform | 伝える |
buy | purchase | 購入 |
pay | remuneration | 報酬 |
about 〜 | regarding 〜 | 〜に関しては |
for 〜 | due to 〜 | 〜の為 |
so | therefore | それゆえ |
敬語にする為のもうひとつの方法が、主語を非人称(人物ではなく物)にして文章構成を受動態にすること。これにより、日本語訳は多少不自然になりますが、柔らかな表現になります。
例で見てみましょう。
Did you bring the report?
「レポート持ってきた?」
日本語ではこう言ってもキツい表現には感じません。
が、英語ではちょっと上から目線に感じられて不快に思う人もいるでしょう。それで、「あなたが持ってきたか」を聞くのではなく「そのレポートが持ってこられたか」を聞きましょう。
The report was brought?
「レポートは持ってこられた?」
非人称名詞(代名詞)+受動態なら、相手の答えがNoでも直接的に相手を非難する形にはなりません。これは仕事を依頼する時にも使えます。
Please finish this job by tomorrow.
「この仕事を明日までに終わらせてください」
“Please” がついていても、少し命令調に感じられます。
This job is expected to be finished by tomorrow.
「仕事を明日までに終わらせる事が期待されています」
と言うことで、上から目線ではなく依頼ができます。
上記のようなお願いは大抵上司がするものですよね。それでも是非、非人称名詞(代名詞)+受動態で部下にお願いしてください。
「え?上司なのに命令口調はだめなの?」と思われる方もいると思います。
欧米社会では軍隊で上官が部下に命令をするケースではないかぎり、上司が部下に命令することはあまりありません。
上司はチームのリーダーではありますが、チームメイトを尊重する立場であるべきと考えます。
それで、非人称名詞(代名詞)+受動態を使うことによって譲歩するようにしましょう。
実際に耳にした例です。ある日本人上司が外国人部下に非人称名詞(代名詞)+受動態をしようせずにいつも業務依頼を出していました。
ある日その外国人部下は、「それはorder(命令)ですか?それともrequest(依頼)ですか?」と聞いてきたそうです。きっと日本人上司の英語が命令調に感じて不快だったのでしょう。
上司も部下に対して敬語を使う。これは日本のビジネスシーンにはない点ですね。
いかがだったでしょうか?
英語でのビジネス敬語をまとめてみると
• 上司、先輩、同僚に関わらずフレンドリーに!
• 文章は長ければ長いほど敬語になる。
• 適切な単語を使ってビジネス敬語に。
• 非人称名詞+受動態でやわらかくお願いする。
• 上司が部下に敬語を使うのもビジネスマナー。
英語には日本語とは違ったビジネス敬語が存在します。
上手に活用して外国人のビジネスパートナーと円滑なコミュニケーションができると、きっとビジネスの幅が広がることと思います。
Good luck!