Hiroe H
(更新)
日本語の敬語表現には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3つがあり、これらの敬語表現を苦手とする日本人は少なくないと思います。
それに比べ、「英語には敬語がないから楽でいいよね」「敬語のない英語はビジネスでも楽だよね」などと思っている人はいませんか?
英会話教室などでビジネス会話のレッスンを受けたことがある人はご存知かと思いますが、実は英語にも敬語表現があり、特にビジネスシーンなどではよく使われているんです。
今日は、そんなビジネスで役立つ丁寧な英語表現や言い回しを紹介したいと思います!
英語の敬語表現は、日本語のように相手を立てたり、自分をへりくだったりしませんが、英語にも日本語のように丁寧な言い回しや表現が存在します。
日本語の敬語は、相手を持ち上げるのか、自分がへり下るのか、丁寧な言い回しにするのかを見極め動詞を変換させますね。
たとえば、「帰る」という動詞の尊敬語は「お帰りになる」、謙譲語は「おいとまする・失礼する」、丁寧語は「帰ります」のように変換します。
それに対し英語の敬語は、どの単語や言い回しを使うかで丁寧さを表現します。
言い換えると、どのくらい相手への心遣いを表したいかで、丁寧さのレベルを調整できるというわけです。
下に英語の丁寧な言い回しの例をリストアップしてみました。
1は命令文で、2から徐々に丁寧さが増していきます。伝えたい内容はどれも同じですが、ざっとあげただけでも12通りの丁寧さを表すことができます。
「私の提案書を読んで」
「私の提案書を読んでください」
「私の提案書を読んでくれる?」
「私の提案書を読んでくれますよね?」
「私の提案書を読んでいただけませんか?」
「私の提案書を読んでもらってもいいですか?」
「差し支えなければ私の提案書を読んでもらえませんか?」
「できましたら、私の提案書を読んでいただけませんか?」
「私の提案書を読んでいただくことはできますか?」
「私の提案書を読んでいただけないでしょうか?」
「私の提案書を読んでもらうことは可能でしょうか?」
「私の提案書をご一読いただくようお願いしてもよろしいですか?」
上の例文を見て何か気がつかれたことはありますか? 下に行けば行くほど、例文が「長く」なっていますね。
英語の敬語の特徴は、丁寧になればなるほど文が長くなり、丁寧さと文の長さが比例しているという点です。
英語の敬語表現も日本語と同じように、フォーマルな場で使うのが一般的です。
代表的なのが、会社を始めとするビジネスシーンや、権威や権限を持つ相手に対してです。
ですが、たとえば会社の上司や取引先との商談で誰にでも同じ敬語表現を使うのかというと、そうとも言い切れません。
英語の敬語表現や丁寧な表現は、自分をどのように相手に見せるかという自己表現でもあります。
そのため、場面場面で臨機応変に英語表現を変えていく柔軟性が必要です。
前項であげた丁寧な言い回しの例も、「同じ上司でも、この人に対しては○番の言い方をするけど、あの人には○番を使う」、「この状況だと○番を使って言った方がいいな」のように、使い分ける必要があります。
これを見極めるには場数を踏むのと、状況や相手との関係をしっかり理解することが重要です。
日本では職場の先輩や上司に対して敬語を使うのは当たり前のことですが、海外では必ずしもそうとは限りません。先輩が打ち解けてくれているのに、いつまでも堅苦しい英語表現を使っていたら逆にマイナスなイメージを与えてしまいます。
また、英語には敬語がないと勘違いして、友達感覚で上司に話すのも常識のない奴だと思われてしまいます。
ビジネスシーンでなくても、極端な話、親が子供をしつけるときに丁寧な言い方をしたり、子供に謝るときに丁寧な言い方で謝罪したりもします。
このように誰に対してかだけでなく、誰が誰に対してどのような状況で話しているかを常に頭に置いておくと良いでしょう。
ビジネスシーンでは、日常会話とは異なる単語や英語表現を好んで使うことがあります。そうすることで丁寧さが増し、またビジネスに適した言い回しができます。
実際にビジネスで好まれる言い回しや英語フレーズをシーン別に見てみましょう。
日常会話で謝るときは sorry を使うのが一般的ですが、丁寧に謝罪したいときは「apologize」や「my sincere apologies」を使って言います。
「返信が遅くなり申し訳ありません」
「ご連絡が遅くなり、誠に申し訳ございません」
感謝を伝えるときも、日常会話では thank you を使って言うのが一般的ですが、丁寧にお礼を言いたいときは「appreciate」や「grateful」を使って言います。
「会議であなたが指摘してくださったポイントをありがたく思います」
「この10年間私を支えて下さり感謝します」
「英語では遠回しな言い方をしないではっきり言う」と思っている日本人は多いかもしれません。
確かに思っていることをはっきり言う人もいますが、ビジネスシーンで相手に反対したり、好ましくない内容を伝えたりするときは、文頭に「I’m afraid that …」「Unfortunately …」「It is true that …, but …」のような言葉をつけ加えワンクッション置くことで、丁寧で柔らかな英語表現となります。
「申し上げにくいのですが、貴社の提案は弊社のアイデアといまひとつ合致しないようです」
「残念ですが、貴社よりもっと安くパーティーのケータリングをしてくれる業者を見つけました」
「確かにセールスは上がっていますが、達成されるべきところには届いていません」
文頭に言葉を加えることで丁寧さと柔らかさが増すと述べましたが、主語を非人称にすることでもワンクッション置くことができます。
たとえば、下記の例文1と2を見てみましょう。
「あなたはプレゼンにもっと図を入れるべきだ」
「あなたのプレゼンはもっと図を入れたらずっと良くなるよ」
1のように主語を You とするより、2のように Your presentation とした方が威圧的な言い方にならず良いですよね。
次の例文3と4も同様です。
「経費を削減したら、利益が上がるだろうに」
「あなたのプレゼンは興味深いポイントがあるけど、もう少し視覚に訴えるものがあった方が良いだろう」
今日はビジネスで役立つ丁寧な英語表現を紹介しましたが、いかがでしたか?
日本語の敬語表現は誰に対して話すか、自分の立場は相手と比べてどこに位置するか、が重要ですが、英語の敬語表現は相手へどのくらいの心遣いを示すかによって使う表現を選ぶことができました。
またビジネスシーンでは日常会話とは異なる単語を使ったり、言葉を付け加えたりしてワンクッションを置くことで、丁寧な英語表現にできることも紹介しました。
英語の丁寧表現は、学校で習う表現や友達に対して使うカジュアルな表現とは異なり、慣れるまで大変かもしれませんが、とにかく使って覚えることが一番です。
会社の周りの人の英語表現を参考にしながら、適切な丁寧表現を身につけるのも良いでしょう!